血の轍最新刊2巻(2集)レビュー。発売日や感想記事、加筆修正点のまとめ。

血の轍 第2集

12月27日、いよいよ血の轍の第2集が発売となる。

前巻も衝撃的だったが、2集もまた見所がたくさんあると思う。
むしろ2集の方が精神的な重苦しさでは勝っているかもしれない。

血の轍 第2集

第1集のラストは衝撃の展開だった。
第2集はその続きとなる第8話から。

第8話 母の背中

崖の淵で静子に正面から抱き着かれる静一。
静一は言われるがままに母の汗ばむ背中に手を回す。

第9話 眼差し

しげるの落下地点へと向かう静子と静一の見たもの。

第10話 脳圧

病院で治療を受けるしげる。
その容態が静子たちに伝えられる。

第11話 十字架

刑事に静子の証言の正しさを問い質された静一。
果たして静一は静子を告発するのか?

第12話 来訪者2

罪悪感に一人苦しむ静一。
そこに意外な客が訪ねて来る……。

第13話 日陰の遊び

憔悴していた静一の元を訪ねて来た吹石。
静一は部屋に招き入れる……。

第14話 はじめましてえ

吹石と静子の邂逅。
愛想が良いのに明らかに嫌な感じの雰囲気を静子が醸し出す。
そして静子は吹石のみならず静一にまで牙を剥く……。

第1集と同じく7話構成であればここまで。

次巻への引きとしては十分過ぎるだろう。

ただ、1集の第1話は通常の2話分とまでは言わないが、長めなのでひょっとしたら15話まで収録されるかも。

個人的には収録は14話までで、次の話が読みたくて悶えていた気分を単行本派の方に味わって頂きたい(笑)。

次のスペリオールが出るまで気になってしょうがなかったなぁ……。あれは苦しかった。

でも、15話まで収録の可能性もあるので15話を付け足しておく。

第15話 救済

静子に究極の選択を迫られた静一。
果たしては静一の下した決断は。

ここまで書いて気づいたが、血の轍第2集は216ページとある。
ということはおそらく8話収録ではないかと思う。

15話までならきれいに区切りがつくのでおそらく間違いないだろう。

それでも次の巻への引きは強いけど……。
実際、第16話も衝撃的。
かつてない静子の表情が、その内面の不安定さを露呈してる。

静一も精神的な負担が見事にある症状となって自身を蝕み始めるし、果たして長部家は一体どうなる……。

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単行本の大幅な加筆修正点まとめ

※12月27日追記。
以下、16話以降のネタバレもちょいちょい含む。

 

押見先生が「大幅に加筆修正した。読み味が違うと思う」とツイートした通りだった。
2巻を通読すると雑誌掲載時とは異なる印象を抱く。

 

静子の心境がより鮮明に分かるようになっている。
そして16話の静子への布石とも言える一郎の行動の修正もある。
雑誌掲載版でもその布石はあったけど、今確認するとさりげない物だったように思う。
それが単行本ではより目立つような形になっている。

 

修正点1 第9話

なるべく話の流れ通りに書いていくと、まずあったのはセリフの加筆だった。
9話ラスト、レスキュー隊が懸命にしげるへの処置を行っている際に、静子は一度天を仰ぎみて、それから涙を流して静一を見つめる。

 

雑誌掲載時では静子はただ静一を見つめるだけなのに対して、単行本ではそこに「たすけて…」と言う静子のセリフが追加されている。

 

これがある事で、静一は静子が明らかに静一に対して助けを求めている事が分かるようになった。

 

雑誌掲載時の無言で静一を見つめる静子は、少なくとも自分はその穏やかとも言える表情から助けを求めていたというより、しげるが生きていた事で犯行がバレるかもしれないから今後、普通に生きる事を諦めて、心の中で静一に謝っていたのではないか感じていた。
もししげるが死んでしまっても、犯行を隠し通し、生きていこうと誓ったのかなとも思った。

 

しかし静一に「助けて…」と呟いた事で実は静子は追い詰められていたのだと知った。

 

しげるが意識を取り戻したら間違いなく自分は告発される。
そうなったら罪を免れる術は無い。

 

静子の凶行は覚悟して行ったものではなく、衝動的だったという事だ。

 

16話以降に書かれているが、静子は叔母夫婦や祖父母、そもそも一郎にもずっと不満を抱いていた。
19話のラストでは「静一が生まれて以来」と一郎相手に明言している。

 

しげると共に立つ崖の淵。周りにいるのは静一だけ。

そして、魔が差した。

 

事前にしげるがふざけて静一を崖に押したのも布石となり、普段から抱えていた鬱屈した感情がしげるへの凶行という形で爆発してしまった。

 

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加筆ページ 第11話

加筆されたページはしげるが入院したその日に病院から帰宅した後の様子だ。

 

雑誌では一郎は居間で煙草を吸う。
一郎は静子も静一もいる前でなんの遠慮もなしに黙々と吸いながら、静子に静一に食事をとらせるように促す。
そして静子が静一の名を読んで、肉まんとあんまんを選ばせ、肉まん、と静一が答える流れ。

 

それに対して単行本では一郎は静子に対して静一に食事をとらせるように促し、一服してくると居間を出る。

 

居間に二人残された静子と静一。静子も静一も黙って俯き加減になっている。

 

しばしの沈黙の後、静子は静一の名を呼び、静一は静子を見る。
そこには凶行前と変わらない、いつも通りの静子の表情がある。

 

静子は静一に、肉まんとあんまんのどっちが良いか、と問いかけ、静一をじっと見つめる。

 

静一は自分を一心に見つめる静子と合わせていた目を下に逸らし、肉まん、と答える。

かなり大幅な加筆修正だと思う。

 

まとめると、まずは一郎が煙草を吸う2ページを吸わずに外に出て行く様子に修正。

 

その後、4ページの追加。
一郎が出て行った後、居間に残された二人の様子が見開きで描かれ、二人の間に流れる空気がその後に続く2ページとなり、そして肉まんかあんまんかを問う流れに戻る。

 

これらの加筆修正により、静子に静一を任せ、一人で煙草を吸いに外へ出る一郎の様子から、静子に対する振る舞いが修正前よりもぞんざいに見えるようになっているように思う。

 

修正前の、静一と静子の前で遠慮なく煙草を吸いまくるというのもその感じはあった。

 

そしてさらに、この修正は、居間に静子と静一が二人残す為だったのではないかと思う。
いや、むしろこちらの意図が先に立っての修正ではないかと思った。

 

凶行を行い、隠し通す選択をした静子、その静子の凶行の一部始終を見つめ、静子を庇うことに決めた静一。

 

その二人の間に流れる空気感を表現する為には、一郎がその場にいない方が良いという判断だろう。

 

最後に静一が静子から目を逸らすようにしたのは静子に対して無意識に感じていた底知れぬ恐怖の表現なのか。
いや、圧力に圧倒されていると言う方が正しいか。

 

しげるを自ら突き落としたにも関わらず見事にしらばっくれて見せ、犯行直後はともかく、帰宅したらもう何の罪悪感も僅かな感情の変化すらも見られない様子というのは、母を守るべき対象だと強く想っている静一でも威圧されるものじゃないかな。

 

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修正点2 第12話

続いて12話、冒頭で静一は夢にうなされる。
その夢の中に静子が現れる。
まず、静一を見つめる静子の表情。目が黒く塗りつぶされて、雑誌掲載時よりもホラー感が増している。
夢に出るレベル。

 

そして続けて「ママのことゆるしてくれる?」というセリフを言う際、その吹き出し内の文字は押見先生による手描き文字なのだが、その文字の上にさらに筆を落として文字を潰す事で、より禍々しい表現になっている。

 

あと、これも12話なのだが、しげるの入院している病院に見舞いに出かける一郎と静子を静一が玄関で見送る場面。
雑誌掲載時には静子は微笑を浮かべながら「いってきまーす」と言うのだが、単行本では顔に影がかかり、微笑も無くなり、「いってきます…」と明らかにテンションが落ちている。

 

行きたくないのが丸わかりの表現へと修正されている。
これも16話以降の静子への布石だ。

 

微笑を浮かべて明るく挨拶する静子も、完璧に自分の感情を抑え込んでいて実はストレスを溜めまくってるのを感じさせる表現だし、何より良い表情だから好きなんだけど、単行本内の修正された表現によって、よりわかりやすくなったと思う。

 

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修正点3 第13話

静子と一郎が病院に行き、一人家に残って泣いている静一の元に吹石が訪ねて来る話。

 

雑誌掲載時には吹石にかかっていた影が取り払われている。
ライトが当たっていると言った方が良いか。
玄関でのやりとりの際は影がかかっているがこれは雑誌と同様。
それ以降、居間や静一の部屋に移動した後に注目だ。

 

これは吹石という陽の存在を際立たせるための演出ではないか。
そして今後、血の轍という物語の中で吹石の存在はより重要性を増し、静子の暴力的な愛に苦しむ静一を救う希望になっていくということではないかと思った。

 

現在第19話まで掲載されているが、19話で吹石は吃音を患っている静一の挙動不審な様子を見て、静子に原因があるのではないか、と静一に指摘している。

 

今のところ、吹石は静子がしげるを突き落としたという真相を静一から聞き出す可能性のある唯一の人物だと思う。
吹石は静一に告白を断られても動じないくらいに静一への想いは強い。
当然、静一が苦しんでいるならば助けたいと強く思うだろう。

 

改めて、今後の吹石の動きに注目したいと思った。

修正点3 第14話

吹石を威嚇して静一の部屋から追い出した静子。

 

静子が吹石からもらった手紙を静子の目から隠すが、その動きを見逃さなかった静子が静一に向けて「それ見せて」手を伸ばす場面。

 

雑誌掲載時には静子は目は笑っていないものの、口元では笑顔を浮かべながら静一に迫る。

 

しかし、単行本では笑顔すらない。
次のページでも「それ、手に持ってるの」と迫る静子の表情に笑顔はない。

 

有無を言わせぬ威圧感が増している。

 

そして何よりも手紙を読んだ静子が静一に手紙を見せた後の静子の表情。

 

雑誌掲載時には顔中をくしゃくしゃにして泣く静子の顔が1ページを使って描かれていた。

 

それが、目と口に関しては描き直しになっている。
あと、背景は真っ白だったのが、何本もの線で影が描かれている。

 

新しい静子の表情は見開いた両目から涙を流しているが、口元は歪んでいない。

 

はっきり言えば、美人に描かれている。

 

雑誌掲載時の静子の泣き顔はとてもブサイクだと思う(笑)。
初めて見た時はちょっと笑ったかもしれない。
多分、そうなる可能性を避けての修正なんじゃないかと思う。

 

どんな美人もマジ泣きで表情を歪ませるとブサイクだと感じておかしくないからリアルで良いな、と思ったんだけど……。
単行本で修正された静子の泣き顔は、その美しさを全く損なっていない。

 

そして静子がさらなる新しい姿を読者に見せる第16話へと続く流れとなる……。

 

3巻は2018年4月発売らしい。楽しみ。

 

 

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押見修造先生のおすすめ作品や経歴をなるべく詳細にまとめました。

血の轍第1集のレビュー。

血の轍第3集のレビュー。

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