第146話 二人暮らし
第145話のおさらい
布団に横たわり、中空をぼんやりと見つめる静子。
静一はそんな静子を見つめていたが、仕事の時間になり静子の元を後にして仕事に向かうのだった。
静子の部屋には、大人用おむつを置かれていた。
静子も元を訪れ、布団に横たわっている静子に「ただいま」と声をかける静一。
きちんと食事を用意し、ちゃぶ台の前に静子を座らせて口元に甲斐甲斐しく食事を運んでいく。
そして静子をまた布団に寝かせて、静一はその隣で眠るのだった。
ある日、近所のスーパーで買い物を済ませて静子の部屋に帰宅した静一に、静子のアパートの大家が話しかける。
それは未払いになっている先月分の家賃の催促だった。
静子の部屋の家賃を負担していた静一は、静子の元に通ううちにすっかり家賃の支払いや、その必要性について全く意識の外にあったことに気付き、大家にその場で退去の意思を伝える。
退去するなら1カ月前に言って欲しいと戸惑う大家に、静一は先の1か月分も支払うからとあくまですぐに退去する意思を曲げない。
静一はその足で静子に自分と同居しようと伝えるのだった。
部屋をきれいにして、部屋を出る静一。
静子を背負い、自分のアパートに向けて歩いていく。
、
第146話
静子から完全に生気が失われてる……。いよいよ、彼女の認知機能の回復はもう望めないのだろう。
今後も彼女の意思による自発的な行動はほぼ皆無になるのではないか。行動できたとしても、今回の話で見せたような、静一に口元まで運ばれた食事を吐き出すくらい。これも意思というより反射に近いものを感じたのだが……。
たとえ体にはまだ生きる力が遺されていても、そもそも生きる意思が無いというなら、ならもうどうしようもない。
生きる意思が希薄になってしまうと、体を動かさなくなり、体を動かさないと、精神が衰弱して、さらに生きる意思が失われていく。
静子はもうこのスパイラルから逃れられず、やがてくる永遠の眠りの時が来るのを待つだけだ。実際、意思が失われた静子にとっての救いはそれしかないだろう。
しかし静一は、そんな静子に対して献身的に接し、良く世話している。
唯一無二の母親である静子を純粋に世話したいというより、滅びゆく静子を間近で見守ることで自分が救われると信じての行動に見えた。それでも親を世話するという行動自体は尊い。簡単にできることではない。
静子の様子を見ると、そう長くは生きられないような、でもこのままの状態でダラダラを生きていきそうな気もする……。
精神的にはもうほとんど生きていないし、それに伴い肉体も衰弱し切ってしまうだろう。
この二人での生活の果てに、静一は何を得るのか。
以上、血の轍第146話のネタバレを含む感想と考察でした。
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