血の轍 最新第100話ママネタバレを含む感想と考察。検察から知らされた静子の翻意。

血の轍 8巻

第100話 ママ

第99話のおさらい

起床後、静一は静一は部屋を移動して調査官と面談する。

犯罪を犯した少年を理解し、なぜ非行に至ったかを調べる調査官の宮下は、静一から話を聞き始める。

しげるを突き落とした容疑で逮捕されてた静子のことについて、つらいことだった、と共感を示しながら、どんな気持ちだった? と宮下は静一に質問していく。

全く口を開かない静一に、宮下は静子のことを聞き始める。
「静一君にとって、お母さんはどんな人? お母さんのことを好き?」

沈黙を続ける静一に、喋りたくなければノートに書いてみて、と手渡したのはノートだった。
「何でもいい。文章でも絵でも。思いつくこと何でも。ね。」

面談はそのまま終わり、静一は自分の房にノートを持ち帰る。

そして今度は、一郎と弁護士の江角との面会が始まる。

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一郎と江角はパイプ椅子に座って静一を待っていた。

「大丈夫か…?」
一郎はやつれていた。静一のことを心配した様子で話し続ける。
「理由が…あるんだいな? おまえなりの理由が……ごめん…な……ごめんな…静一…」

「でもな静一…俺はおまえを見捨てないから。」

涙を浮かべる一郎。しかし静一の表情は全く変わらない。

「ママは知ってたん?」
話の流れを完全に無視して、静一が口を開く。
「僕のしたこと、ママは知ってたか…わかったん?」

質問された江角は、静子の弁護士から伝えたと答える。
「……お母さんは、何も言わずに、ただ黙って泣いてたって。」

「黙って…泣いてた…それだけ……?」
静一の問いかけに江角は、うん、と答えるのみ。

部屋に一郎の嗚咽だけが響く。

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消灯時間になっても静一は寝付けず、じっと天井を見ていた。
「黙って……泣いてた……」

身体を起こして、小机に向かい、ノートに文字を書き殴り始める。

”どうして泣いてた?”

”かなしかった? うれしかった?”

”僕がひとごろしになったからかなしい? なにがかなしい?”

”僕を本当はどう思ってる?”

静一の様子に気付いた職員が静一を注意する。
「十四室! 何してる!? 早く布団に戻りなさい! ほら!」

静一は無視してノートに書き続ける。

第99話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

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第100話 ママ

少年鑑別所の房内で眠っている静一の枕元に静子が座り、静一を起こす。

静子は静一を覗き込むようにしながら、自分の涙を拭ったその手を静一に向って伸ばす。

枕に頭を載せたままの静一の両頬に、静子が両手をそえる。
「ほら。起きてまた考えるんでしょ。ママのことばっかり。」

「考えなね。ほら。」
静子の両方の瞳から静一の顔に涙が流れ落ちる。
「ひとごろしちゃん。」

目を覚ます静一。
静一の呼吸は荒く、その顔には大量の脂汗をかいていた。
右手で自分の頬を触ると、ぬちゃっとした汗の感触がある。
静一は慌てて袖で顔の汗を拭き、頭を抱える。

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続く接見

宮下と接見する静一。
宮下は静一がノートに書き殴った文字や絵を読み進めていく。
「…ここに来てもう一週間か。たくさん書いたね。」
そして宮下は、静一にとってお母さんという人が本当に大きいということがわかった、と続ける。
「大きい…どころじゃない。君のすべてなんだね。」
静子は静一を支配しており、静子に精神的に殺されたから静一には自分というものが無く、静子に決められた自分しかないのだと指摘する宮下。
「お母さんがいなくなってしまったら、自分がどこにもなくなってしまった。」
だから自分を取り戻すべく、静子と同じくしげるを突き落とそうとした、と宮下は静一に確認する。

はぁ、とだけ答える静一。

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宮下は、そういう自分を自覚することが必要であり、その上で静子ではなく自分で決めた自分になることが大切だと静一を諭していく。

「僕は僕のもの、ですか?」

反応した静一を観察しながら、宮下は、うん、そうだよと答える。

静一は、宮下の指摘を、違う、と短く否定する。
「ママからママを奪ってたのは僕だ。」

「だから僕は僕を殺したのに…しげちゃんは死んで……僕はまだ生きてる。」

(それでまた、ママのこと考えてるん?)
静一は眉を寄せ、夢の中の静子の言葉を思い出して呟く。
「僕は…なんなんだ。」

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宮下との接見が終わり、静一は別の男性二人から取り調べを受けていた。
しげるが夜中にやってきたことについて、本当はしげると連絡を取っていたのではないかと静一は問い詰められる。

とってないです、と否定する静一に、男はすかさず追撃する。
「じゃあなんでわざわざ、自分からやって来たん?」

その後の静一の耳には、もはや内容が入って来ていなかった。
静一は男がしゃべる口元をただじっと見つめる。

静一は、次に弁護士と接見していた。
しげるのことについて、今はどう思っているのかと質問される静一。
弁護士は黙っている静一にさらに質問を重ねていく。
「言いたいことはある? しげる君や…おじさんやおばさんに。」

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静子の翻意

房に戻って来た静一は、物思いに耽っていた。
(僕は)
静子の視線を感じている。

十四室、と職員が静一に声をかける。

聴取だと言って通された部屋には、二人のスーツ姿の男性が椅子に座って待っていた。
男性は、自分たちは静子のことを捜査している検事であり、聞きたいことがあって来たと告げる。
検事は静子が精神鑑定を終えて責任能力に問題なしと判断され、検察の取り調べを受けていると状況を説明する。
そして、静子に対するこれまでの警察の聴取では静一が証言したのと同じく、しげるを突き落とした犯行を静子が認めていた。
しかし、言うことが変わってしまったと検察は続ける。
「本当は、やってないって。」

「しげる君を突き落としてはいない。やっぱりしげる君は自分で落ちたんだって。」

そして検察は、改めて教えて、と静一に問いかける。
「お母さんがしげる君を突き落としたのを見たんだよね?」

静一は目を見開き、固まっていた。

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感想

ドン引き

え? どういうこと?
いやいやいや、静子さんマジっすか……。ドン引きなんだけど……。

なぜ、これまで素直に認めていたしげる突き落としの犯行を、一転して完全に翻したのか?

ひょっとして、静一がしげるを殺してしまったから、全てを静一に押し付けるつもりでいるということなのか。

静一は、警察に対して静子がしげるを突き落としたと証言していた。静子も取り調べで静一の証言の内容を聞いていただろう。
観念して自分の犯行を白状し、罪を認めていたが、そこに飛び込んできたのが静一がしげるを殺めてしまったという情報だった。

おそらく、この一報が静子を変えたのではないか。

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中二にして人を殺めた静一は、傍から見れば異常性が際立つ特異な存在と言える。静子は、そんな彼の証言の信憑性がガタ落ちすると読んで、自分の無罪を主張してみせたということではないか。

犯行の日、しげるを突き落とした現場を目撃したのは静一のみだった。その証言が完全に否定することができれば自分の罪を誤魔化し通せるとでも思っているのか。

だとすれば、あまりにも浅はかすぎないか? これまでしげるを突き落としたと自白してきたことが、今更全てひっくり返るとは到底思えない。さすがに検察を舐めすぎだ。

もし息子を踏み台に助かろうとしているとすれば、その醜さと悍ましさに震えが走る。

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もう一つの説

ただ、事はそんな単純ではない可能性もある。
この親子らしく、歪んだ考え方をしてみると、ひょっとしたら静子は静一のために証言を翻しているのかもしれない。

今回、調査官の宮下が分析したように、静一にとって静子が全てだとすれば、静一がしげるを殺害し、さらに静子がしげるを突き落としたという証言を翻したなら、それは結果的に静一が身を呈して静子を守ったことになるとでも考えているのではないか?

しげるを突き落とした犯行現場を目撃していたのは静一のみ。そして突き落とされた被害者であるしげるも静一に殺害されてしまい、もはや二度としげるから証言をとることはできない。

これに気付いた静子は、静一に自分を守らせるチャンスを与えているつもりなのではないか。
もちろん、宮下が分析したように、静一にとって静子が全てであることを知った上で……。

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もしそれにより静子の罪が軽くなったり、あるいは無罪となったなら、それは間違いなく静一が助けたということになる。そうなれば静子が全てである静一の心は大いに満たされる。そんな身勝手な見通しを下敷きに、静子が今回の無罪の主張を行っている可能性もあるんじゃないか。
この親子は静子がしげるを突き落とした辺りから常軌を逸しているので、普通の感覚で考えるだけでは足りないと思う。

鑑別所に入って以降、静一はまともな様子ではなかった。以前にも増して静子が自分の全てであることがあからさまになっていたように思う。彼自身にとっては母だけが救いになってしまった。自分の味方になってくれる可能性がある一郎や吹石のことなど露ほども考えていない。

だから静一は自分が静子が助かるための踏み台にされたと薄々勘付いていたとしても、静子のために証言を翻す可能性があると思う。

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もしくは静子に心底落胆して、宮下に言われたように自分は自分のものだと完全に覚醒したとしても、今更気付けたところでしげるはもう帰って来ず、何もかもがどうでもよくなり、自暴自棄気味に静子の言い分を認めてしまうとか……。

ただ、静子がしげるを突き落としていないと主張を翻したことは、静一にとっては静子を見限る最後のチャンスが訪れたとも言える。
これを機に自分を取り調べした刑事や、宮下が言うように「自分は自分のもの」であると自覚し、静子と決別できれば、少なくとも静子から離れてその後の人生を生きていくことができるだろう。

まぁ、それができるとは全然思えないんだけど……。

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静一はどうするのか

しかし、冒頭の静一の夢の中の静子が静一に言った「ひとごろしちゃん」は静一にとっては辛いな。確かに、静子はヤバイ人だけど、静一と違って人は殺してない。

この夢を通じて、静一はようやく、しげる殺害という事実の重さを感じ始めているように見える。といっても、しげるに対する罪悪感ではなく、あくまで静子はやっていないのに自分はやってしまったという事実に慄いている感じで、まともな感覚とは完全にかけ離れているが……。

次回以降、静一はどうするのか。あくまで自分は静子が突き落としたのを目撃したと従来の証言を続けるのか。それとも静子が行っている、明らかに無理な無罪の主張を助けるべく、自分の証言を撤回するのか。

普通に先が気になって仕方ない。静一の行動に注目したい。

以上、血の轍第100話のネタバレを含む感想と考察でした。

第101話に続きます。

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