血の轍 最新第145話まなざしネタバレを含む感想と考察。静子を介護する日々を送っていた静一は、大家に家賃を催促されてある決断をする。

血の轍 8巻

第145話 まなざし

第144話のおさらい

布団の中で便をもらしていた静子をきれいにすべく、静一は静子を前から抱きかかえるようにして風呂場に移動する。

静一は静子の胸を直視しないようにして上着を脱がしていき、静子を浴槽に両手で掴まり立ちさせると、今度はズボンを脱がせる。

全裸になった静子の背にシャワーを浴びせながら、静一は静子の背を撫でるように洗っていく。

洗っている内に、静一は自分の手が溶けていく静子の身体に埋まっていく感覚にとらわれる。

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静子の身体が人としての形を大きく崩していくのを前にして、静一は為す術もなく、溶けた静子の肉を両手で受け止める。

どろどろに崩れ落ちていく顔の中の目と視線が合う。
(もう、このままで……いいです……)

静一は静子が唯一呟いた言葉を思い出す。

我に返った静一は、静子の背に優しく手を置くと、バスタオルをかけて風呂場から出るように静子を誘導するのだった。

第144話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

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第145話

前回の介護以来、どうやら静一は静子の元を介護のためにおそらくは毎日のように訪れるようになっていると思われる。

すごいなと思ったのが、静一が静子の家に入っていく時に、ごく自然に「ただいま」と言っていること……!

甲斐甲斐しく静子の口元にご飯を運ぶ静一の様子を見て、静一のことを素直によくやっているなと思うと同時に、でもそれで生活は大丈夫なのか、と思ってしまった……。

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そして大家さん登場。

そうか、家賃払ってなかったのか。てっきり静一の口座から引き落としか何かにしていたのかなと思っていたけど、おそらく静一は毎日のように通ううちに、ごく自然に忘れてしまっていたのかなと思う。

大家さんに先月の家賃について催促されて、そのことに気付いたとことで、静一はその場で即座に静子をこの部屋から退去させることを決めたのではないか。

実際、今は静子を一人にはしておけない状態だし、合理的に考えればわざわざ家賃を払って別の部屋に住まわせている静子の元に通う意味なんてないしね……。

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しかしそれにしても、退去は1カ月前にと戸惑う大家さんに、その分の家賃も払うからと即時退去の決意の固さを見せる静一がすごい……。

本当にごく自然に、それをすることが当たり前という感じの態度だな……。全く吃音っぽさが出ないし、心の底からの言葉だということがすごく伝わってくる。

でもそこにあるのは単純な母への愛だけではないように見える。

静一からすれば、客観的には虐待以外の何物でもない過干渉の末に、ついには精神に異常をきたし、取り返しのつかない大罪を犯すに至った少年時代はもちろんのこと、その後、おそらく彼女に捨てられてからも度々彼女のことを思い出しては影響を受け続けてきただろう。

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そんな静一の人生の全てと言ってもおかしくないくらいの存在である静子から、かつての感じていた印象の何もかもが、まるで溶けて消えていくのを静一は何としても見届けたいようだ。

客観的にはかつて一方的に絶縁された母を介護のために引きとる母思いの子で、実際静一はどうあっても静子のことが嫌いになれないからその側面は強いと思うんだけど、でも静一の迷いのなさから感じたのは、静子が死んでいくのを間近で見届けることで、自分の人生にプラスになるものがあると確信している風に見えるんだよな……。

復讐のような単純な感情とは全く違う。復讐するならただ放置しておけば悲惨な状況で静子は死を遂げるわけだから復讐ではないことは確かだろう。

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自分の家で静子の世話をすると決めた静一。
確かに静子は精神面が弱って、それが肉体に及んでいるようだけど、でも静一が世話することでご飯を食べたりしているから、彼女がまだ生きる可能性は高いように思える。

自力での介護が長引くと心身ともに疲れ果てると思うんだけど、静一は大丈夫なんだろうか?
静一は介護保険制度の活用をまるで考えていないように見える。今回の話の静一からは、とにかく一貫して、自分が彼女の最後の最後まで、その変遷を余すところなく見届けるんだという強い意思を感じるんだけど、静一は自分が期待しているものを得られるのだろうか。

次回以降は同居か……。果たして静一と静子はどんな結末に向かっていくのか。見届けていきたい。

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