第148話 話す
第147話のおさらい
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第148話
静一は想像の中の静子との対話の中で、静子から「おかしくなった自分を笑い飛ばしてくれたらよかった」「私はずっと静一のことを愛していた」と気持ちを明かされた。
静一の心が救われる方向で物語が進んでいる。
だけど、これはあくまで静子本人と話しているわけじゃなくて、あくまで静一の頭の中で起こっている対話なんだよなぁ……。
確かに静一のことを愛していた部分もあっただろうし、再会した静子からその気持ちを汲み取れたと感じる部分があったから、静一の心の中でこのやりとりが起こっているんだろうけど、静子本人から直接聞いているわけではないから、何とも言えない思いでこのやりとりを見ていた。
静子から生きる意思が完全に失われて以来、静一は当たり前のように、むしろ進んで静子の世話をしてきた。これは静一から静子への愛そのものだと思う。静子が失われていくのを間近で見ていたいという動機があるにしても、実際に静子を甲斐甲斐しく世話している様子はまさしく静一から静子へ示した愛の一つの形だと思う。
そして、静子がいよいよ最期の時を迎えようとしている時に起こった、この想像上の対話。
あくまで想像上の静子からの「私は愛してた」という言葉だが、それで静一が救われた、一区切りついた、これで良かったと感じられたならこれでいいのかもしれない。
結局静一と静子のこの対話に限らず、人間、お互いに話が通じたというのは本人がそう思うかどうかが大事なんだと思う。相手が本当にどう思っているか、本当に通じ合っているかどうか、その本当のところは、目で確認できない以上、信じるしかない。
静一が脳裏でずっと静子のことを考えて、最終的にこの結論に落ち着いたなら静一にとってそれが真実で全く構わないと思う。
想像の中の静子が、おかしくなった自分のことを笑い飛ばしてくれたらよかった、と静一に告げたのも、現実の静子が言ったわけではないから、静一が考えたことに過ぎない。
静一は、そんなこと思いもしなかったと返しているが、正直あの状態の静子を笑い飛ばすなんて多分静一はもちろん誰にも無理だ(笑)。というか、実際それやったら静子は余計に狂うんじゃないか。
静一はおかしくなった静子を笑い飛ばすなんてできなかった理由として、愛されたくて必死だったからだと答えている。これは間違いなく静一自身の思いだと見て間違いないだろう。
こうやって冷静に客観視して自分の心の動きを振り返ることが出来ていること自体が、静子への愛と憎しみという、自分を縛りつけて、苦しむ原因となっていた執着に対してケリをつけたのかなと自分は解釈した。
この対話の後、静子は生涯を終えるだろう。その後の話の展開はあるのだろうか?
この後、静一が生活を立て直していくのでれば、その様子は見たいな……。
以上、血の轍148話のネタバレを含む感想と考察でした。
第149話に続きます。
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