血の轍 最新第147話白昼夢ネタバレを含む感想と考察。やせ細っていく静子の様子から静一はいよいよ最期と覚悟を決めるが……。

血の轍 8巻

第147話 白昼夢

第146話のおさらい

静子の口元におかゆを運ぶ静一。

しかし静子は虚ろな目をしたまま、食べる意思もなく、ボロボロとそのほとんどを零してしまう。

静一は嫌な顔をすることもなく、もう一度静子の口にスプーンでおかゆを食べさせようとするが、静子はまるで食べることを拒否するように舌を出し、また零れてしまうのだった。

「いらないん?」
おかゆをふき取る静一。
「じゃあいいよ。」

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次に静一は、静子を仰向けに寝かせて、オムツの交換を始める。

オムツを脱がせて、丹念に尻を拭いていく静一は、静子の顔を見ながら作業を行う。
その間も静子は虚空に視線を彷徨わせるのみ。

そして静一は仕事に出る。
静一は静子に対して現在の状態から回復して欲しいなどとは思っていなかった。

帰宅すると静子は寝息を立てている。
静一には静子の寝顔が赤子に見えていた。

隣に身体を横たえて静子を見つめながら、彼女の胸のあたりを布団の上からやさしくあやすようにトントンと叩く。

第146話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

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第147話

冒頭からの静子の観察日記的な表現がすごい。
老いた静子の描写がリアル過ぎてキツイ。具体的には、1ページ目のおかゆを口にする時の静子の口元の描写とか、まさに『人が老いるとこうなる』というのをまざまざと見せつけられているように感じるというのかな……。

静一は自分の為に静子の様子を観察し、彼女の最期を看取ることを決めている。だから嫌がることもなく、むしろ積極的に介護を行っている。
だけど、読者である自分にとっては、今後直面する親の介護という現実について眼前に突きつけられて、不安を感じる。こんなことは物語の内容とは全く関係ないんだけど、自分にとってまず胸に湧き上がってきた正直な想いだ。介護について考えないわけにはいかないくらい、今回の話・描写については重く、リアルに感じた。

静子はみるみるうちに弱り、ついには座ることさえ出来なくなっていく。そしてついには寝たきりで水を飲むことしかできなくなり、みるみるうちにやせ細っていく静子が、これまたリアルなんだ……。前回の話でも、オムツ交換時の静子の足やら尻がやせ細っていたが、それを比較しても今回の話の静子の痩せ方は死期の近さを暗示している。

こんなの押見先生にしか描けないだろ……。というか描こうと思わないんじゃないか。いや、こんなリアルで重苦しい内容、そもそも描けないでしょ。まさに押見先生による唯一無二の表現に触れることができるから、この話に限らず、やはりつい最近出た16巻あたりからもきちんと読むべき作品だな。

今の展開は1巻からの静子の妖しさや狂気に静一が人生を狂わされていく話ほどキャッチーではないかもしれない。でも今の静子と再会後の展開もまた押見先生が切り拓いた新たな地平であることには違いない。それほど多く知っているわけではないが、介護をテーマにした漫画はある。でも問題意識やその共有、解決策などをを前面に押し出すのではなく、ここまでリアルな描写で、ただただ子による母の介護の様子を見せていく作品は今後、他に見ることはないだろう。

脱線気味だったので、今回の話の感想に戻る。
バイト先からの電話。そして、その電話に出ずに『もういいや。仕事は』、の一言を発する静一。
いよいよ静子の最期の瞬間が近いことを察していたらしき静一は、どうやらパン工場への出勤をサボるようになったと思われる。静一にとって静子の死ぬ瞬間までを見届けることが最優先事項っぽいし、その後のことなど静一にとっては二の次、三の次なんだろう。
もしかしたらあっさり自死してしまうのかもしれない。だが、静子の死後から静子による呪縛を断ち切り、人生を立て直してしまう展開になってもおかしくない。

暗い部屋の中、頬が落ち窪んだ状態で、虚ろな目を天井に向けている静子。
そんな静子を、体育座りをしてじっと見つめ続ける静一。
静一の行動は静子のためというよりは、何よりも自分のためだと思われる。そんな静一の態度・行動から若干の異常性も感じられるものの、しかし弱った親、それもかつて自分のことを捨てたひどい親であるのにかかわらず、をきちんと目を離さず甲斐甲斐しく世話を焼くことが出来るのは、やはり静一の心の根底にあるのは『やさしい心』なのだと思う。

そして今回の話のタイトルである『白昼夢』を指すであろう新しい展開が始まった。
デパートの中にあるレストランで、中学生くらいの頃の静一と、かつての若い静子がテーブルを挟んで向かい合う。
そして静子による『黙ってないでなんか言ったら』というセリフで今回の話は終了。

ラストのページで静子は笑みを浮かべて静一に話かけているが、その前は和やかさとはほど遠い。
果たしてここからどんな展開になるのか。
いやー、全然予想がつかない……。

以上、血の轍第147話のネタバレを含む感想と考察でした。

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