血の轍(押見修造の漫画)の最新第14話はじめましてえの感想(ネタバレ含む)と考察。毒親全開。吹石に刺激され、静子の異常性が発露する。

血の轍 第14話 静子

第14話 はじめましてえ

第13話のおさらい

長部家を訪ねてきたのは吹石だった。
血の轍 第13話 吹石
吹石がどうして来たのかがわからない静一。

夏休み前に交わしていた、遊びに行って良いようなら静一から吹石に電話するという約束を思い出し、静一は吹石にを家に入れるのだった。

静一は、静一の部屋を見たいという吹石を自室に招く。

しかし、しげるへの母の信じられない犯行と、それを庇った罪の意識の重さに、静一は、吹石と自室で二人きりにも関わらず吹石に構うことが出来ない。
血の轍 第13話 静一と吹石

吹石との会話もロクに盛り上がらず、ついには、ごめん、遊べない、と答えてしまう静一。

素直に帰ろうとした吹石はリュックからハートのシールで封をした手紙を頬を真っ赤にしながらも静一に渡すのだった。

俯いて吹石を見ようとしなかった静一は、意外そうな表情で吹石の持つ手紙を凝視し、受け取る。

その時、しげるの見舞いから静子が戻る。

玄関で異変を感じた静子は、二階の静一の部屋に一直線に駆け上がり、ノック無しに扉を開く。
血の轍 第13話 静一と吹石
「あら、おともだち?」
静一と吹石を見て笑う静子。

静一は、いつもとは違う母の、静かな威圧的な笑顔を前に、目を見開くのだった。

第13話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

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第14話

静子は静一の部屋の扉を開けた姿勢のまま、じっと静一と吹石を見ている。

 

蝉の鳴き声が響くほどの静寂が静一の部屋に満ちる中、静一と吹石もまた、突如として登場した静子をじっと見ている。

 

少し驚いた表情を浮かべる吹石。

 

静一は手元の吹石からの手紙に目を移し、静子の視線から避けるように手紙を隠す。
血の轍 第14話 静一
 

あっ…、と言葉を発しようとするが中々滑らかに声が出ない静一。

 

やっと、どうしたの病院は? と切れ切れになりながらも静子に問いかける。

 

静子は微笑を浮かべたまま、忘れ物をして取りに来た、と答える。
玄関に入ったら知らない靴があるから誰が来ているのか、と思い部屋に来たのだと続ける。

 

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挨拶

「はじめましてえ。」
静子が吹石に話しかける。
「何さんていうん?」

 

「…あっ、」
静一に相対したまま、吹石は静子を横目で見ながら自己紹介する。
「吹石です!」
血の轍 第14話 吹石由衣子
 

へえー、と静子が感心したような声を発するのを、静一は視線を落として聞いている。

 

「吹石さんてゆうん。」
まるで作りもののような笑顔を浮かべる静子。
「かわいいんねえ。」
血の轍 第14話 静子
 

静一はそんな静子を不安げに見つめる。

 

「あの…」
吹石は顔を伏せたまま、扉に足を進める。
「おじゃましました。」

 

「あら、」
静子はやはりどこか気のない笑顔の表情を貼り付けたまま、吹石の横顔を見つめる。
「もう帰っちゃうん?」
静子を見ようとしない吹石に向かって問いかける。

 

あ、と何かに気付いたような声を上げる静子。
吹石をじっと見つめたまま再び問いかける。
「おじゃまだったかしら?」

 

吹石は静子と目を合わせる。

 

少し呆れたような微笑を浮かべる静子。
血の轍 第14話 静子
 

「…」
再び静子から視線を外す吹石。
「いえ…」

 

「長部。」
吹石は静一に背を向けたまま静一を呼ぶ。

 

俯き加減だった静一の視線が吹石に向かう。

 

「…また…」
切なげな表情で静一を横目で見る吹石はそれだけ言って、部屋から出て扉を閉じる。

 

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吹石からの手紙

部屋にはベッドに座る静一と、少し離れた所に立って静一を見下ろす静子の二人きりになる。

 

再び、微かな蝉の鳴き声だけが部屋の空気を支配する。

 

「静ちゃん。」

 

沈黙を破る静子の自分を呼ぶ声。
静一は視線を静子に向ける。

 

「それ、」
静子は静一に向かって右手を伸ばしていた。
「見せて。」
血の轍 第14話 静子
 

手紙を渡すように求める静子の言葉が信じられず、静一は、え? と静子を見つめたまま漏らすのみ。

 

「それ。」
静子は貼り付けたような笑顔を浮かべたまま、静一に堂々と要求する。
「手に持ってるの。」

 

静子を見つめたまま無言の静一。

 

「ママに見せて。」
静子は静一の言葉を待つことは無い。
「早く。」

 

有無を言わせぬ静子の落ち着いた声音に、まるで静一は催眠術にでもかかったかの如く、静子の視界から隠していた吹石の手紙をゆっくりと静子に向けて差し出す。
血の轍 第14話 吹石の手紙
 

静子は静一から手紙を受け取り、封筒を留めるハートのシールをじっと見つめる。
細めた目で封筒を見つめていた静子は、ビッ、と全く躊躇なく封を剥がす。

 

視線を伏せたまま、静一は静子の行動を待っている。

 

続けて静子は封筒から凝ったデザインの便箋をスッと取り出す。

 

しかし静一は、やはり黙っておとなしくその場に座っている。

 

開いた便箋の中の文章を黙読する静子。
血の轍 第14話 静子
 

その表情は、憂いを帯びていく。

 

静ちゃん、と手紙を読み終えた静子が静一に呼びかける。
「見たい?」

 

静一は静子の顔を見上げる。

 

「見たい?」
笑顔で静一を見下ろしながら静子が再び問いかける。

 

静一と静子の視線が交錯する。

 

「ほら。」
ベッドの上に座る静一の隣に腰を下ろし、静子は静一に手紙を見せる。

 

静一は、静子が両手で持ったままの手紙の文章を読んでいく。
血の轍 第14話 静一
 

目を見開く静一。

長部へ

14年間生きてきて、初めて手紙を書くとゆうことは、あなたが私のほんめーくん

1年間も人を好きになったのは初めてだ。

もし長部が良ければ、私とつきあってくれない?
OKでも、OKじゃなくても、返事ちょーだいよ。

でも このこと誰にもゆわないでね。

由衣子 より

手紙を見つめたまま、静一は呆然としている。

 

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我がまま

その右腕に、水が落ちて来るのを感じ、静一はそれが何なのか視線で追う。
血の轍 第14話 静一
 

静一が顔を上げると、口をへの字に歪めた静子が両目もくしゃくしゃにして、大粒の涙を流している。

 

「静ちゃん。」
静子は手紙を静一の前に構えたまま、顔をぐいと静一に近づける。
血の轍 第14話 静子と静一
 

静一は呆気ととられ、何も反応できない。

 

「むり。」
静子が短く拒絶を示す。
「むり。」
両手で持っている手紙が、力を籠めた静子の親指で、くしゃ、と歪む。

 

「だめ。」
静子の右手が静一の胸に置かれる。

 

静一はすぐそばまで迫っている静子の顔を呆然と見ている。

 

「私は受け入れられない!」
静一の両肩を両手で掴み、静子ははっきりとした口調で静一に呼びかける。

 

「静ちゃん、」
静子は流れる涙を拭う気配すら見せず、静一の首に両手を回す。
「この手紙、捨てていい?」
さめざめと涙を流しながらも、確固とした意志を秘めた目で静一を見る。

 

静一は戸惑い、言葉を失う。

 

しかしすぐに、返事をする為に、口をゆっくり、大きく開いた。

 

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感想

やはり、「吹石VS静子」だった。

吹石と静子の交わした言葉は僅か。過ごした時間も僅か。

しかし、静子の自分に対する明らかな敵対意識が吹石にはビンビンに伝わっていたに違いない。

そして静子もまた、吹石から自分にとって何か不穏なモノを感じ取っていた。

静子にとって何よりも大切だと思われる静一という存在を奪おうとしている事を、静子は吹石の真っ直ぐな気持ちを記した手紙の内容からはっきりと知る、その前から感じ取っていた。

そもそも静子は元々、3話で夏休み前最後の登校日に静一が吹石から夏休みに家に来たいと言われてから帰宅した時に、既に静一の様子がどこかおかしい事に気付いていたように思う。

第3話の詳細は上記リンクをクリック。

吹石の事は知らなくても、静一に悪い虫がついたかもしれないという高感度センサーが静子の内で働いていたのだと思う。

勘が鋭すぎる。

そして、その理由は「静一が好きでたまらないから」。

もっと言えば、「静一を自分の管理下で支配しておきたい」からなのだろう。

「静子があまりにも静一を自分の一部として見ている」というのもあるかもしれない。

ここに来て、静子の本質が顔を出し始めた。

「だめ。受け入れられない。私は受け入れられない。」

究極の毒親。晴れて、ここに開幕である(笑)。

既にここまでずっと読んでいる人、あるいは1集を読んだ人にとっては、しげるを突き落とした時に既に毒親っぷりは発揮されてたろ? と思われるかもしれないが、あれはセンセーショナルではあったけど究極の毒親とまではいってないように思っている。

何故なら、息子の安全を脅かす人間を何とか居したいという気持ちと、魔が差した犯行という側面も強いと思ったから。

たまたま整っていたあの状況も、犯罪を誘発する上で決して少なくない影響を持っていたように思う。

もちろん静子の行動は褒められるものではない。

しかし自分は、しげる突き落としに関しては、「ついやってしまった」という印象を受けていた。計画していたなんてあり得ない。そう思えるような状況だったように思う。

そもそも、しげるを突き落とした際は静子の心の内にはまだ人として、一人の親としての罪悪感のようなものが窺えた。

だからこそ、一時、静子は壊れていたのだと思う。

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しかし今回の静子はやばかった。

静一がまだ読んでいない吹石の手紙を、手紙をもらった静一本人の前で、静一よりも早く読んでしまうという明らかば異常行動。

それを「当たり前」と信じて疑っていない異常性。

その異常性が、とにかく目立つ回だった。

静子が顔をくしゃくしゃにして泣く、その表情も衝撃的だった。

ぜひ、雑誌で、漫画を確認して欲しい。

恐らく12月に出る2集にこの14話が収録されると思うので、それで確認しても良いと思う。

静子マジでヤバイよ。

※2018年1月1日追記
2集では大幅な加筆修正がされており、この静子の1ページ全てを使った泣き顔も修正の対象になっている。
修正された静子の表情は目や口をくしゃくしゃにすることなく、呆然とした表情で、見開いた目から涙が流れている様子になっている。

静一が、静子による、吹石の手紙を捨てていいかという質問に答えようとしていたところで14話は終わった。

これまた引きが強い終わり方だ。次回が楽しみ過ぎる。

そして、14話の特筆すべき点として、吹石の下の名前が『由衣子』だと言うことが分かった点が挙げられる。

良い名前だと思う。
○子ってつく名前は賢い子が育ちやすいなんて統計を聞いた事があったような気がする(笑)。

手紙の文章がめちゃくちゃかわいいよなぁ~。なんという甘酸っぱさ!

確かに小学校高学年から中学生くらいまではこんな感じの文章に近いものがあったような気がする。

この手紙の文章を、押見先生は一体どうやって考えたんだろう。

これを独りで、全くゼロから考えたんだとしたらとんでもない才能だと思う。

押見先生は女の子になりたい願望を持っていると過去、単行本のあとがきに書いていた。

ついに、女の子になったのかと思った(笑)。

手紙で人生初の告白をした吹石は、静子と戦うのだろうか。

簡単には諦めないだろうな。

静子が「再犯」しそうで怖い。吹石の無事を祈る。

あと最後に、手紙を見たい? と聞かれても静一が一切返事が出来なかったのは衝撃的だったな。

静一は、静子に逆らえないように出来ているように感じた。

この呪縛こそが「血の轍」なのかもしれない。

見逃せない展開が続く。

以上、血の轍第14話の感想と考察でした。

15話の詳細は↑をクリック。

第14話収録の血の轍第2集の詳細は以下をクリック。

血の轍第1集の詳細は以下をクリック。

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