血の轍(押見修造の漫画)の最新第12話来訪者2の感想(ネタバレ含む)と考察。罪の意識に苛まれる静一。そこに現れたのは……。

血の轍 第12話 静子

第12話

第11話のおさらい

刑事から事故の状況を問われた静子はしげるは足を滑らせて落ちた、事故だと証言する。

静子がしげるを突き落としたという事実とは異なる証言をさも当然のことのように話す静子に静一は動揺を隠せない。

静一は刑事から静子の証言が正しいかと問われるが、病院の床に膝をついたまま言葉を発さない。

静子は静一の傍らにしゃがみ、静一の左肩に手を置いていたが、静子はゆっくりと手を離していく。
血の轍 第11話 静子と静一
静一が静子の表情を窺うと、静子は穏やかな笑みを浮かべていた。

刑事に再び母の証言が問題ないかと問われ、静一は母の言う通りだと証言する。

刑事は静子と靜一に関して特に不審に思うことも無く、証言をとる対象を叔父たちに移す。

夜になり、一郎が病院の玄関口に車をつけている。

しげるの両親を残し、祖母、そして静一が後部座席に乗り込む。

乗車の順番が最後になった静子がおもむろにしげるの両親に向かって頭を下げる。

叔母は穏やかな表情で静子のせいではない、自分のせいだと静子を励ます。

静子は頭を下げたまま、叔母の言葉を聞いている。

家に着いた一郎、静子、静一は居間に落ち着いていた。

煙草を吸って一息ついていた一郎は静一が何も食べていないことに気付き、静子に用意を促す。

静子はいつもの穏やかな調子で静一に肉まんとあんまんのどちらを食べるかを問う。
血の轍 第11話 静子
静一は暫く静子と見つめ合った後、肉まんと静かに答えるのだった。

第11話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

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第12話

静一が幼少時、撫でた猫が死骸だった時の記憶。

 

猫の死骸に触れた幼い静一が、冷たいよ? と静子に問いかける。

 

触れた猫の死骸の顔が、唐突に、頭部から血を流し目を閉じているしげるの顔に変化する。

静子は事も何も意に介することなく、死んじゃってるんさ、と答える。

 

幼い静一は、どうして? どうして死んじゃってるん? と静子に問いかける。

 

どうして? と何度も繰り返す静一に、静子は僅かに口角を上げ、目を細めて、静一をじっと見据える。
ただそれだけで、静一の質問には何も答えない。

 

笑みを浮かべる形に微かに上がっていた口角は、一直線になる。

 

静一に向けて細められていた目は、徐々に大きく見開いていく。

 

「せいちゃん、ままのことゆるしてくれる?」

 

そう言う静子の口元が静一の目に大きくクローズアップされていく。
血の轍 第12話 静子

見舞いを拒否する静一

蝉が鳴いている。

 

自室で目を覚ました静一。その顔には汗が浮かび、呼吸は乱れている。

 

起き上がり、一階の居間へと向かう。

 

「おう静一」
父の一郎が静一を見るなり、おはよう、と挨拶をする。

 

静一は、おはよう、と返しながら自分の定位置の座椅子に座る。

 

一郎は元気に欠けた様子の静一を観察するようにじっと見つめる。

 

静一の背後から静子が居間に入ってくる。

 

おはよう、と挨拶するその様子は山登りに行く以前と全く変わらない。
血の轍 第12話 静子
「朝はんツナマヨおむすびでいい?」

 

静一は、静子を見ずに、うん、と短く答える。

 

静子は目を細めて静一を見ている。

 

「静一。」
一郎が静一に話しかける。
「ごはん食べたら、みんなで病院行ぐんべ。」
血の轍 第12話 一郎
「しげるのところに…」

 

静一はすぐに返事をせずに黙っている。

 

「9時には出るかい?」

 

静子は一郎の呼びかけに、そうね、と答える。

 

「やだ。」
静一は短く拒否の意思を示す。

 

一郎と静子は揃って静一を見る。

 

「行きたくない。」
俯いたまま再び拒否する静一。

 

静子は俯いたままの静一をじっと見ている。
血の轍 第12話 静子
「…静一。」
一郎は特に静一を咎めることもせず、穏やかに続ける。
「うん…わかった。無理しなくていい。」

 

静一は一郎の言葉に反応せず、俯いたまま固まっている。

 

「パパとママふたりで行ってくるよ。な? ママ。」

 

「ええ。」
静子は、いつものように微笑を湛え、穏やかに返事をする。

 

静一は静子の顔も見ずにじっと俯いている。

 

玄関の扉が開く。

 

蝉が鳴いている。

 

「じゃあ、夕方までには帰るから。」
一郎は扉を開いたまま、家の中から自分たちを見送る静一に向かって呼びかける。

 

靴を履いた静子も静一に振り向いている。

 

静一は立ったまま、扉から外へ出て行く静子の後ろ姿を見ている。

 

静子は扉を閉める直前、静一に振り向く。
「いってきまーす。」
その声音も表情も、どこまでも穏やかを保っている。
血の轍 第12話 静子
静一はそんな静子をじっと見つめる。

 

バタン、と扉が閉じられ、静一は自室に戻る。

 

ベッドに座り、体を横たえる。

 

蝉が鳴いている。

 

目の前で軽く握った右手を開き、手のひらを見るともなく見て、右手で目を覆う。

血の轍 第12話 静一

一瞬の間の後、静一の口から掠れたような、悲鳴に近い声が出る。

 

「あ…」

 

「ああ」

 

「あああ」

 

静一は両手で目を覆い泣きじゃくる。

 

「うあ」

 

「うううああっ」

 

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意外な来訪者

ピンポーン。

 

ピンポーン。

 

家のチャイムが鳴る。

 

目から手を離し、静一は階下に降りていく。

 

玄関扉のガラス部分から人のシルエットが見える。

 

静一の目は泣いた事で少し腫れている。

 

玄関にいる訪問者によって、扉が、コンコン、とノックされる。

 

「は…はーい…」
返事をして、静一は扉を開ける。

 

「…こんちわ。」
血の轍 第12話 吹石

そこにいたのは同じクラスの女の子、吹石だった。

 

「吹石…」
吹石を見つめ、静一は呟く。

 

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感想

ようやく登場した吹石ちゃん!
登場は第3話以来。長かった。

 

静一は、静子が自分が犯罪を行ったという事実を完全に飲み込んで、以前と全く変わらない様子で生活していること、自分は母の犯罪を見逃して罪悪感を背負った事、しげるが寝たきり、もしくは障害を持つという事実、それら全てに圧し潰されそうになっていた。

一郎と静子が外に出かけてようやく一人になれたから、感情を放出したのだろう。

静一は賢い、自制心のある少年だと思う。

そんな静一をほんの少しでも救えるとしたら吹石なのかもしれない。

静一は吹石が好きだし、吹石もまた静一を想っているのだから。

しかし、ここまで読んできて静子の犯行を知っている一読者にとしては、静一に近づいていく度に静子という危険人物にもまた接近していってしまうという、吹石の暗い未来を想像しないわけにはいかない……。

 

絶対に、吹石は静子と衝突するって!!

おそらく、吹石はまだ静子と会ったことが無い。
きっと吹石は、早い段階で静子の静一に対する態度、そしてその逆からも違和感を覚えることだろう。

早々に火花を散らす展開になる気がしてならない。

 

そもそも、今話のタイトルが「来訪者2」ってどういうことなのか?

 

前話は「十字架」で、エピソードを分割しているわけではない。

 

12話以前の11話の中で「来訪者1」というタイトルは存在しない以上、「来訪者2」の「2」には何かしら意味があるはず。

 

まず思ったのは、これは、静子のテリトリーへの「来訪者」ってことなのか? ということだった。

 

でも、だったら「侵入者」じゃないとおかしい。

 

であれば、これは静一を訪ねた「来訪者」の事だと考えるべきなのかなと思う。

 

静一を訪ねた「来訪者1」がしげるのことを指すなら「来訪者2」は吹石のことになるということか?

 

そうなると、どうしても吹石が第二の犯行の対象になってしまいそうに思える。

 

静子は、自分から静一を奪おうとする吹石に対していくらでも残酷になれそうだし。

 

何より、既にもう、一人、犯行に及んでいるわけだから、二人目を手にかけるために越える心理的ハードルはぐっと下がっているのではないかと思う。

 

静子はしげるを崖から突き落とす直前に、まるで、突き落とすか、思いとどまるか葛藤しているような間をとっている。

 

ここで突き落としていいのか。
しかし、静一の脅威を排除するこんなチャンスは滅多にない、と葛藤していたのか分からないが、犯行に及ぶまでに確かに躊躇する時間があった。

 

しかし、吹石に目をつけ、”実行”しようとした際にはその葛藤の時間は、仮にあったとしても極端に短くなるのではないか。

 

静子によって吹石が始末されそうで怖い。

 

もしそうなったら静一は静子の犯罪を告発するのだろうか。

 

それとも静子の犯行を見て見ぬふりをして、さらに深く沈んでいくのか。

 

今話で罪の意識に苦しんでいた静一の様子から、しげるへの犯行を見逃しただけで既に精神的にいっぱいいっぱいに見える。

 

来週はいよいよ対面するのか?

それともニアミスになるのか?

 

仮にニアミスで終わっても、静子は吹石の存在に気付きそうな感じがして怖い。

 

静子に限らず、女性って残り香とかで男性の浮気を察知してるなんて話を聞いたことがある。

 

第3話でも、吹石に言い寄られて浮足立った静一の様子を見て、静子は何かを感じ取っていたようだったし、今後どう展開していくのかが楽しみ。

 

以上、血の轍第12話のネタバレ感想と考察でした。

第13話に続きます。

第13話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

第12話収録の血の轍第2集の詳細は以下をクリック。

血の轍第1集の詳細は以下をクリック。

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