血の轍(押見修造の漫画)の最新第9話眼差しの感想(ネタバレ含む)と考察。静子を見つめ返すしげるに静子は何を思う。

血の轍 第9話 静子

第9話
血の轍 第9話 静子

第8話のおさらい

崖の上に二人取り残された静一と静子。

二人は固く抱きしめ合う。
血の轍 第8話 静子と静一
幼き日の静子とのやり取りを思い出す静一。

母に対する、どうして、という疑問が静一の心を苦しめる。

ただただ狼狽する静一とは逆に落ち着きを取り戻した静子は、しげるの元に行かなくては、と森へ歩き出す。
血の轍 第8話 静子
静一は、静子の頭がおかしくなっていることを嘆き、父に言われた通り静子のことを守るという悲愴な決意をする。

森の中を進んでいくと、しげる、と何度も呼ぶ声が聞こえる。

声のする方向に静子と静一が歩いていくと、そこには仰向けに倒れたしげると、そのそばでしげるに声をかけているおばがいた。

立ち止まり、だまったままその光景を見つめている静子。
血の轍 第8話 静一
静子を見つめている静一。

おばは懸命にしげるに声をかけている。

しげるの裸足の左足の甲はあからさまに腫れ、右足は血に塗れている。

頭からも血を流しているしげるだったが、その目はうっすらと開いている。
血の轍 第8話 しげる

しげるを突き落とした犯人である静子は、その光景に特に取り乱すことも無く、しげるとおばの様子をじっと眺めているのだった。

第8話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

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第9話

蝉がけたたましく鳴く森の中。

 

森の中でも少し開けた場所で、叔母は、仰向けに倒れているしげるの傍らに跪き、頑張って、と声をかけている。

血の轍 第9話 しげると叔母

 

それを少し離れたところから見ている静一と静子。

 

「しげる…」

 

しげるは薄く目を開けてはいるが、叔母の呼びかけに反応する様子はない。

 

叔母は、すぐそばまで近寄って来ていた静一と静子に振り向く。

血の轍 第9話 しげると叔母

 

じっと叔母を見る静子。

 

そんな静子の様子を横目で見る静一。

 

「…あ、」
叔母が静一と静子に話かける。
「木が…」
引き攣ったような笑みを浮かべる叔母。
「木がクッションになってくれたんさ!」

 

静一と静子は、叔母の言葉をその場に立ったまま聞いている。

 

「あの高さから落ちたんに…だから…大丈夫だったんだいね!」

 

静一と静子が来たことにも反応を見せず、天を薄目で見続けるしげる。

 

叔母は、今、お父さんたちが救助を呼びに行ってくれている、と状況を話し始める。

 

「ね? しげる」
しげるに向けて呼びかける叔母。
「すぐ病院に連れてってもらうんべ?」

 

ぼうっと中空を見ているしげる。

 

「ね? また静ちゃんと遊ぶんだんべ?」

 

叔母の言葉を目を見開いて聞く静一。

叔母は、静一と静子に向かい、しげるに声をかけるように言う。

 

じっと聞いていた静一はしげるに向かって足を踏み出す。

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「痛い?」

静一は両膝に両手をつき、しげるを覗き込むように見る。

 

静一についてきていた静子も立ったまましげるを見る。

 

「ふぅー…」
しげるは虚ろな目を見せながらも呼吸をしている。
「ふぃー…」

 

その様子を見て、零れ出すように静一の口から言葉が出る。
「しげちゃん…」

 

「ふぅー…」
しげるの様子は変わらない。
「ふぅー…」

血の轍 第9話 しげる

「しげちゃん!」
静一は、涙を浮かべてしげるに声をかける。

 

しげるの目が先ほどよりも開き、静一に焦点を合わせる。

血の轍 第9話 しげる

目を見開き、しげるを覗き込むように見ている静一。

 

そんな静一と確かに目を合わせるしげる。

 

しげるをこんな目に合わせた張本人の静子は、観察するようにしげるを見ている。

血の轍 第9話 静子

じっとしげるの様子を観察するその表情は崖の上で見せた恐慌状態とは程遠い。冷静そのもの。

 

「しげる!」
目を開いたしげるに対して身を乗り出すようにして呼びかける叔母。
「聞こえる? わかるん!?」

「しげる!」

 

しげるから目を離すことなく、叔母の悲痛な叫びを聞く静一。

 

「しげちゃん。」
静子が声を出す。

 

静一は、その様子を横目で見る。

 

「痛い?」

静子は目を細め、眉尻を下げていかにも心配そうな表情で声をかける。

血の轍 第9話 静子

 

声をかけられたしげるは静子を見る。

「かわいそうに。こんなになって…」

 

静子がしげるにいかにも心配している様子で言葉をかけているのを、信じられないものを見ているような目で見る静一。

 

「もう少しのしんぼうだよ。」
そう言って、静子はまた、じっとしげるを見る。

 

静一はその一部始終を、じっと目を見開いて見ている。

血の轍 第9話 静子と静一

 

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レスキュー隊が到着

おーい…

 

遠くから声が聞こえる。

 

静一は静子から目が離せない。

 

「おーい! しげるー!」

 

救助を伴い帰って来たしげるの父が遠くから声を出している。

 

「しげるー!」

 

「お父さん!! ここよ!! 早く!!」

叔母は涙を浮かべ、歯を剥いて必死で父を呼ぶ。

 

装備に身を包んだ何人ものレスキューに混じって返って来た父が、大声でしげるの名を呼ぶ。

 

「ああ お父さん…!」
救助を連れて来てくれた父を迎える叔母。

 

しげるの傍らに座ったまま、救助を見つめる静一。

 

静子はしげるをじっと見ている。

 

しげるに近づいていくレスキューたち。

 

「どいて!!」

 

3人のレスキュー隊員がしげるの意識を確認し始める。

「しげるくん!!」

「レスキューです!」

「わかりますか!?」

「しげるくん!!」

血の轍 第9話 しげるとレスキュー隊

 

無線機で報告を始める他の隊員。
「現場到着しました。」

 

「ハイ、頭部出血有り。」

 

「意識混濁しています! 顔面蒼白 呼吸やや早い。」

 

叔母、しげるの父、祖父母はレスキュー隊員の動きを、少し離れたところから見ている。

 

「静一…」
息を弾ませて静一を呼ぶ一郎。

 

その場に立ち尽くす静一。

 

しげるの口元に酸素マスクが当てられる。
「がんばってしげるくん!」
虚ろな目で中空を見つめるしげる。
「すぐヘリが来るから!」

 

「全脊柱固定しろ!」
レスキュー隊員による必死の救助作業は続く。

 

それを少し離れたところに立って見つめる静一と静子。

 

静一は静子の様子を確認する。

 

「はぁー…」
僅かに天を仰ぐ静子。

 

静一はその様子を呆然と見つめる。

 

静子は涙を流し、静一を見つめ返す。

 

心配そうに、不安そうに静子を見つめる静一の頬を汗が流れていく。

 

バルバルバル、と轟音が近づいてくる。

 

丁度、森の開けたところ落ちたしげるたちの頭上にヘリが現れる。

 

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感想

静子は我を取り戻してシラを切るモードを発動させてたのかなと思ったけど、最後の涙は何なんだろう。

 

これは静一に向けられた涙のような気がする。

 

静子が狂っていないのであれば、しげるが助かってしまうかも、という後悔と謝罪の意味なのか?

 

バレたとしても、一郎とか祖父母とか世間とかはどうでも良く、しかしそれらから非難を浴びてしまうかもしれない静一に対して申し訳ないという気持ちの表れ?

 

少なくとも、魔が差して誤って突き落としてしまい、罪の意識に駆られていた静子が、しげるが助かるかもしれないから流した喜びの涙だとはとても思えない。

 

しげるに声をかけた第一声「痛い?」は、とても印象的な表情の大ゴマだった。

自分がやったくせに抜け抜けと声をかけてしまうことも怖いが、かける言葉が「痛い?」は、心配していると言うよりも、まるで具合を観察して確認しているように見えてしまう。

 

これはシラを切りとおすコースではないかと感じる。

 

静子が自分から罪の告白をすることは無いだろう。

 

そもそも、崖の縁で静一に抱き着いた時には恐慌状態から脱して、既にこのシラを切るコースを選択していたのだと思う。

 

常軌を逸していながらもなお美しいから困る。

最後、静一に見せた涙を流す静子の1ページ丸ごと使った絵は、ぜひ雑誌やコミックで確認して欲しい。

 

ただ、一話からの、優しくもどこか妖しく感じるぬるっとした色気から、恐らくは母として静一を害意から守りたい一心で犯罪を起こしてからは強かさすら感じる。

 

1話からこの話を追って来た読者は、静子の表層から深奥にずぶずぶと手を突っ込んでいるようなもの。

 

しげるを突き落とした直後の静子は人間の一面を曝け出した。

 

美しさ、優しさ、不穏さ、禍々しさを交互に見せる静子はまさに人間というよりも母そのもの。

 

静一がほんの少し羨ましくもあるんだけど、これはあまり大声では言えないな……(笑)。

 

以上、血の轍第9話のネタバレ感想と考察でした。

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