血の轍(押見修造の漫画)の最新第11話十字架の感想(ネタバレ含む)と考察。静一は母の共犯となるか、告発者となるか。

血の轍 第11話 静子

第11話 十字架
血の轍 第11話 静子と静一
血の轍 第10話 しげる

第10話のおさらい

崖から落ちたにも関わらず息のあったしげるは救助ヘリで病院へと緊急搬送される。

重苦しい待合室に高校野球の中継の音だけが響く中、ひたすら治療を待つ一同。
血の轍 第10話 一同
手術が終わり、ストレッチャーに載せられてしげるが姿を現す。

しげるは鼻に管を通され、頭を厚い包帯などで処置されて深い眠りについていた。

医師は、しげるは急性硬膜下血腫を生じていたと一同に説明する。
血の轍 第10話 CT
意識を取り戻しても後遺症を生じる可能性は高いと説明を受け崩れ落ちる叔母。

廊下に出た一同。

夫の胸で泣く叔母。

静一はその場に跪き、腹部を押さえる。

静一の肩に手を置いて心配する静子。
血の轍 第10話 静子と静一
その表情に、崖から突き落としたしげるへの罪の意識は見えない。

警察官が静子の背後にやってきて話を聞かせて欲しいと一同に呼びかける。

しげるが落ちた現場に居合わせたのは誰かという質問に私ですと応じる静子。

しげるが落ちた際の様子を淡々と語る静子。

静子は、しげるが崖で片足でふざけていたと途中までは真実を話し、慌てて駆け寄ったがよろけて落ちたと虚偽の説明を続ける。

全く動じる事無く説明する静子を信じられない様子で見る静一。

刑事は静一に質問を始める。

「静一君。きみはその様子を見てたんだよね? 間違いない?」

廊下に視線を固定し、目を見開く静一。

静一の右肩に、静子はしっかりと左手を置いていた。

第10話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

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第11話

静一は、刑事から『しげるが足を滑らせて落ちた』という静子の証言が正しいかを問われる。

沈黙する静一。

その左肩には静子の手がのせられている。

静一は床の一点を放心したように見つめている。

永遠にも思える瞬間。

静子は、おもむろに静一の肩から手を離していく。
血の轍 第11話 静子と静一
呆けていた静一は、ようやく母の姿を横目で確認し、さらに顔を見上げる。

静子は穏やかな表情を静一に向ける。

「絶対に私の証言を肯定しろ」という威圧は全くない。

「正直に告白して」という縋りつくような表情でもない。

どちらであっても受け入れるような、そんな穏やかな眼差し。

静一は、僅かに口を開く。

一向に返事がない刑事は静一にどうしたの? と問いかけ、静子の説明で間違いはないかどうか答えるように促す。

静子は薄く目を閉じる。
血の轍 第11話 静子
静一はゆっくりと刑事に顔を向け、口を開く。

「…はい。」

静子は薄く閉じていた目をわずかに開き静一を見る。

「ママの言う通りです。」
静一は刑事を見据え、母の証言を肯定する。

静子は少し意外そうに、静一を見つめている。
血の轍 第11話 静子
刑事は、そう、とだけ返事をし、話を聞く対象を叔父たちに定める。
「しげるくんを発見したのはどなたです?」

私です、と元気の失われた様子の叔父が答える。
その傍らでは叔母が手の甲で涙を拭っている。

「恐れ入りますがどんな様子だったか教えてもらえますか。」

叔父は刑事の言葉に、はい、と素直に答える。

静子の表情からは何も読み取ることは出来ない。

静一は横目で静子の横顔を見続けるのだった。
血の轍 第11話 静一

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夜。

病院の玄関口に一郎が回した車が止まっている。
血の轍 第11話 迎え
また明日様子を見に来る、としげるの両親に挨拶し、

祖母が先にタクシーの後部座席に乗り込む。

その隣に静一が座る。

静子はその様子を見守っている。

静一が後部座席に乗り込み、車の外、母を見るとしげるの両親に深く頭を下げていた。
血の轍 第11話 静子と叔父、叔母
「お義兄さんお義姉さん。ごめんなさい…」
腰を深く折り曲げ、頭を下げたまま謝る。

祖母と静一は、後部座席からその様子を見ている。

「…静子さん。」
叔母がゆっくりと口を開く。
「静子さんのせいじゃない。私のせいよ…」
叔母は疲れ切っているのか、穏やかな様子で静子を見つめながら言葉を紡ぐ。
血の轍 第11話 叔母
静一はその様子を目を見開いて見ている。

「ごめんね静子さん。」

静子は叔母の言葉を聞いてもずっと頭を下げたまま、ずっと姿勢を維持していた。

車内は沈黙が支配していた。

車の走行音だけが響く。

後部座席では静一と静子が隣り合って座っている。
血の轍 第11話 静子と静一
二人は目を合わせることは無い。

一行を乗せた車は、夜道をただただ静かに進む。

長部家。

家の前に停車し、皆、車から降りる。

鍵を開け、家の中に入る。

一郎、静子、静一は荷物を下ろし、リビングでテーブルを囲んで座っている。

一郎がゆっくりと煙草の煙を吐き出す。

部屋の中に紫煙が漂う。

静子は目を閉じ、静一はテーブルを見つめている。

煙草を吸ってようやく一息ついたのか、一郎は、静一が何も食べていないことに気付き、お腹が空いていないかと静一を気遣う。

「ママ何か…」

リビングには一郎の煙草の煙が充満している。

「静ちゃん」
静子が静一を見ながら、いつもの調子でその名を呼ぶ。

その言葉に静一は目を見開く。

「肉まんとあんまん、どっちがいいん?」
静子の表情には罪を犯した疚しさなど一切なかった。
血の轍 第11話 静子
いつも通りの穏やかな静子を静一はじっと見つめる。

一郎は二人のやりとりを見守っている。

静一は静子の視線をじっ見返す。
血の轍 第11話 静一
静子は穏やかな目で、静一から目を離そうとしない。

「…肉まん。」

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感想

やはり静一は静子を庇うルートを選択した。

タイトルの通り、静一は重い十字架を背負ってしまった。

静一が「ママの言う通りです」という一言を繰り出したその瞬間、それまで母を告発するか否かそのどちらを選択するかで激しく葛藤していた静一の心の揺れは完全に停止した。

母と同じ罪を背負う覚悟を静一が出来たのは、ひとえに母を守りたいという静一の心の動きによるものであり、そこに計算は無いだろう。

静子が静一の肩から手をどかした後に静一に見せた表情が、「私を守れ」でもなく、「私を告発して」でもなかった。
極めて穏やかな、何でも受け入れるといった風情の達観した表情。

だから静一は母を守ることを決めたのではないか。

静一は今のところ、そこに後悔は無いように見える。

しかし、静一に庇われて窮地を脱した静子は、どこか静一の選択にがっかりしているように見えた。

どこかで自分を告発することを望んでいたように思える。

静子は本当は静一が真実を言う覚悟をしていたのではないか。

心境を表現する台詞があるわけでもないし、あくまで表情から読み取って推理及び判断することしか出来ない。

静一が静子の証言の通りだと言い前は静子はどこか覚悟を決めたような表情に思えたし、静一が母の言う通りだと言った時、静子はどこか意外そうな表情になったように見えた。

これは自分のただの印象に過ぎない。

一郎の運転する自動車の後部座席で、静一と静子は二人並んで座っているが、特に会話も無ければ目配せもない。手を繋ぐことくらいあるかと思ったらそれもない。

ここまで血の轍を読んできて、もっと静子から静一に身体的接触があってもいいかなと思ったんだけど、静子がそれをしないのは事件以前と以降で静子の静一を見る目が変わったことを意味してはいないか。

ラスト、長部家の家の窓の明かりがまるで十字架を浮かび上がらせているように感じてしまった。

静子と静一の、絶対にバレてはいけない秘密は、翌日以降、家族にどんな変化を齎していくのか。

以上、血の轍第11話のネタバレ感想と考察でした。

第12話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

第11話収録の血の轍第2集の詳細は以下をクリック。

血の轍第1集の詳細は以下をクリック。

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