血の轍 最新第99話面会ネタバレを含む感想と考察。弁護士の江角から静子の報告を受けた静一。

血の轍 8巻

第99話 面会

第98話のおさらい

静一は職員に伴われて、面会に向かう。

部屋に通されると、一人の女性が静一を待っていた。

女性は弁護士の江角だと名乗り、一郎の依頼で、静一の権利を守り、味方になる人付添人になったと説明する。
「おばさんは味方だから。安心してね。」

そして江角は静一には黙秘権があることを説明して、何か聞いておきたいことがあるかと訊ねる。

それに対し、べつに、と素っ気ない静一。

江角は、一郎が明日一緒に面会に来られると思うと言って、面会するかどうか問いかける。

どっちでも、と静一はそっけなく答える。

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江角は、お父さんは会いたがっていたので、明日一緒に来る、と言って、お母さんに伝えたいことはあるかと問いかける。

しばしの沈黙の後、ないです、と静一。

しかし房に戻るため部屋を出て行こうとする時、静一が江角に質問する。
「…あの。このことを……僕がしたことを…知ってるんかな? ママ…は……」

江角は、わからない、確認しておくと答える。

自分の房に戻った静一は、窓に向かって体育座りをしていた。

部屋についているスピーカーが六時の内省の時間だと告げる。

職員が扉越しに内省とは壁に向かって正座して目を閉じ、一日の反省や事件のこと、被害者のことを考えることだと説明する。

静一の胸が明るく光る。蝶は光を放ちながらゆらゆらと飛んでいく。

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職員の号令と同時に目を閉じる静一。

静一は静子のことを考えていた。
(ママが、知ったら…)

静一は、しげるを殺めたことを静子が知ったらどう思うだろうかと考えていた。

蝶が飛んでいく先には、背を向けて正座している静子がいた。

「静ちゃん。がんばったんね。」
静子は静一に微笑を向ける。

「うん…」
内省中の静一は、微かに返事をする。

第98話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

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第99話 面会

ノート

起床、と声をかけられ、目を覚ます静一。

鑑別所の職員は、自分たちが来る前に起床し、正座で待つようにと静一に正座を促す。
「私が『おはようございます』って言うから、そしたらあいさつ。」

あいさつが済むと、職員は、布団を畳んで、着替えて掃除をするように言ってその場を去っていく。

黙々と、言われた通りに作業する静一。

朝食を済ました後、静一は部屋を移動して調査官と対峙していた。

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調査官は宮下と名乗り、自分の仕事は静一から話を聞いてどうして非行に至ったのかを調べることだと簡単に説明する。
「話を聞かせて欲しい。これからどうしたらいいのか一緒に考えるんべ。」

静一は黙って宮下の話を聞いている。

宮下は静子がしげるを突き落とした容疑で逮捕されていることを確認する。
「君にはとてもつらいことだったね。とても普通ではいられなかったよね。」

「どんな気持ちだった? なんでもいい 教えてくれる?」

静一が全く口を開かないことから、宮下は静子のことに質問を変更する。
「静一君にとって、お母さんはどんな人? お母さんのことを好き?」

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相変わらず黙っている静一に、宮下は、喋りたくなければノートに書いてみて、とノートを手渡す。
「何でもいい。文章でも絵でも。思いつくこと何でも。ね。」

自分の房に帰って来た静一は、部屋の中央で体育座りをして、小机の上に置いたノートをじっと見つめていた。

「十四室!」
やってきた職員は、一郎と弁護士の江角が面会に来たことを知らせる。

職員3人に囲まれ面会室に移動する静一。

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報告

一郎と江角はパイプ椅子に座って静一を待っていた。

テーブルを挟んで、静一もパイプ椅子に座る。

「静一…」

静一は一郎から名を呼ばれ、それまでずっと伏せていた視線を始めて一郎に向ける。

「大丈夫か…?」
そこには、すっかりやつれてしまった一郎がいた。
一郎は眉根を寄せ、俯き加減になり口を開く。
「理由が…あるんだいな? おまえなりの理由が……ごめん…な……ごめんな…静一…」

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「どう……して…………」
無表情で一郎を見つめる静一。
静一からは一郎の白髪が混じった頭頂部が見えていた。
「でもな静一…俺はおまえを見捨てないから。」

「なあ。大丈夫だから。」
一郎は涙を浮かべて、静一を正面から見つめる。
しかし静一の表情は全く変わらない。

「俺…俺…は…」

話の流れを無視して静一は、ママは知ってたん?、と口を開く。

一郎は驚いたように静一のことを見つめる。

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「僕のしたこと、ママは知ってたか…わかったん?」
表情を一切変えず、静一は江角に単刀直入に質問する。

「…え? ああ…うん…確認したよ。伝えたって。」

「……何を…言ってた……?」

江角は答える。
「……お母さんは、何も言わずに、ただ黙って泣いてたって。」

「黙って…泣いてた…それだけ……?」
静一の問いかけに江角は、うん、と答える。

静一はそれ以上何も言わず、呆然とするのみだった。

部屋に一郎の嗚咽だけが響く。

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知りたい

消灯の合図がかかり、部屋が真っ暗になる。
静一は寝付けず、布団の中で目を空けてじっと天井を見ていた。
「黙って……泣いてた……」

身体を起こし、小机に向かうと、ノートを開いて猛烈な勢いで文字を書き殴り始める。

”どうして泣いてた?”

”かなしかった? うれしかった?”

”僕がひとごろしになったからかなしい? なにがかなしい?”

”僕を本当はどう思ってる?”

音に気付いた見回りの職員が静一を注意する。
「十四室! 何してる!? 早く布団に戻りなさい! ほら!」

その命令を無視する静一。
書き続ける手は、止まらない。

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感想

取り返しがつかない

本来、中学生として教室で授業を受けているはずの静一が、殺人の被疑者として塀の中で自由を制限されて生活している。

こんな展開、想像してなかった。

もちろん1話を読んだ時点で、少なくとも明るい話になるとは思わなかった。
ネットでも紙面から漂う不穏さが話題になっていたし、実際、それに応えるかのように、静子によるしげる突き落とし事件が1巻の時点で起こっている。

小倉たちにいじめられてしまうことは想定できていたけど、まさか、静一が現在のようなあまりにも不憫な身の上になることまでは予想できなかった。
クレイジーな(もしくは追い詰められて錯乱した)静子が、静一を追い詰めていく話であり、静子の闇に迫っていくのかなと思っていたんだけど、いつの間にか静一自身がおかしくなってしまった。

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少年鑑別所のリアリティある描写も相俟って、今後静一がどうなっていくか気になってしかたない。もう決して普通の人生を生きることが出来なくなってしまった今、彼は一体どんな経験をしていくのか。

少なくとも楽しい人生はあり得ない。
仕事についたはいいが、過去の犯罪が暴かれて、仕事だけではなく住む場所まで変えなければならなくなる……、といった、積み上げることが困難な人生になっていってしまう可能性が十分ある。

この漫画の終わりで、静一はどうなっているんだろうか。

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静子の真意とは

今回の話で、今更ながら、静一が殺人という大罪を犯してしまった事実を再確認したような気がする。

久々に登場した一郎は、明らかに憔悴していた。静子がしげるへの殺人未遂容疑で捕まり、その後を追うように、今度は静一が殺人で捕まってしまったことから、それ自体は全く予想できた反応だ。

一郎は気の毒なくらいにげっそりしていた。白髪も増えていたように見える。
非常に大きなストレスを受け続けていることが窺える。
しかし一郎は誰にキレたりもせず、ただ耐えているのだろう。

静一を見捨てないと訴えかける一郎が、ただただ気の毒でしょうがなかった。
一郎の健気な振る舞いは、決して当たり前のことではない。
正直自分が一郎の立場なら逃げださない自信はない……。

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しかし静一には一郎の想いは全く通じず。あくまで静子の反応を気にするのみ。
あまりにも悲し過ぎる……。

しかし静子に関しては、違う感想を持った。
静一の犯行を知った時、泣くというごく普通の親のような反応をとった静子に対して、意外に思った読者は自分だけではないだろう。

もちろん、これまでの静子の延長線上の行動と考えると、彼女が泣いているのは悲しいのではなく、自分にそこまで寄り添おうとしてくれて、感激のあまり泣いているという屈折した感情の表れという可能性も捨てきれない。

だが一郎はもちろん、静子も、息子が取り返しのつかないことをしてしまった現実に打ちのめされているという、普通の親であれば当たり前の反応である可能の方が高いと思う。

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もし静子が感激で泣いているなら、静子の反応を目の当たりにした静子の弁護士が、それに違和感を持ってもおかしくないのではないか? しかし江角からの静一への報告は、ただ黙って泣いていたという、それだけだった。静子の弁護士は静子の反応に違和感を覚えなかったと考えられる。もちろん静子の弁護士が静子の反応の詳細までも報告しなかった可能性はあるし、仮に別の反応だったとして、それを正直に報告しなかったことも考えられるが……。

静一は静子が自分の想定していなかった反応を見せたことに落胆している。いや、静子が喜んでいないことを信じたくない様子であるように見えた。自分が見事にやり遂げたことを喜んでもらえると思ったのに、ただ泣かれてしまうだけなら、何故自分は罪を犯したのか、という心境なのだろうか。ノートに殴り書きしているように、ただただ彼女のことがわからない。自分が彼女のことをわかっていない。それがたまらなく不安なんだな……。

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確かに、一読者である自分も静子の反応が正直意外に感じた。
これまでの物語の中で、静子からは自分自身はもちろん、静一すらもどうでも良いという捨て鉢な態度が見て取れていた。それも関わらず、彼女がまるで普通の親のような反応を見せるというのは、やはり意外に感じてしまう。
自分もまた、静子にもっと別の、狂気を感じるような(静一は狂気とは思っていないだろうが)リアクションを期待してしまっていたということだ。

今回の話のラストの静一からは、焦燥感と狂気が伝わってくる。
静一は静子の自分への気持ちがわからない。

そして読者である自分も、翻弄されるのみ。静子の真意を知りたい……。

以上、血の轍第99話のネタバレを含む感想と考察でした。

第100話に続きます。

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