血の轍 最新第89話ぜぇんぶネタバレを含む感想と考察。静子に現実の捉え方を根本から否定される静一。

血の轍 8巻

第89話 ぜぇんぶ

第89話のおさらい

静一は目の前でしげるから静子へと姿を変えた存在に対して静子への鬱屈した思いを吐き出していく。

自分を人間として認めてくれたことがあったのか?

吹石との付き合いは汚くなどない。

日常のあらゆる局面での事柄について、ペットのように弄ぶなと訴えかける。

言いたいことを言っているにも関わらず、いつしか静一は黒い粘液のようなものに身体を覆われていた。それと逆に、目の前の静子から黒いものがなくなっていた。静子は裸身を晒しながら静一に何の感情も籠っていない視線を向ける。

静一は顔を手で顔を覆う。
「そうやって見るくせに……僕を簡単に…突き落とす…殺すんだ…」

「殺すのに……それを無かったことにする…無視する……僕がつらいのを…わかってるのに…僕が見て欲しいところは…見ないんだ……!」

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静一は、なんで自分をよろこんでくれないのかと訴える。
「僕が生きるのを…僕の心を…僕がよろこびを感じるのを…なんで…なんで見てくれないん…?」

静一は胸の前で腕を組んで、沈黙したまま顔を伏せていた。

「ひきょうもの。」

その言葉を発したのは静子だった。

「私のせいにしないで。自分を見なさいよ。」
相変わらず静子の顔には、表情が無かった。

第88話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

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第89話 ぜぇんぶ

見たいものしか見ていない

「おかしいのはおまえだがん。静一。」
巨大な静子が無表情で静一を見下ろす。
「おまえは、おまえの見たいものしか見てない。」
「この私の姿は何? おまえはこんなふうに見てるんね。私を。」

「異常に綺麗で。異常に怖くて。化け物みたい。」

「こんなの私じゃない。おまえはぜぇんぶ私のせいにしたいだけ。」

静一は真っ黒に汚れたまま、完全に言葉を失っていた、

「見な。なにその自分の姿は?」

静子が指さしたところには純粋無垢な自分の姿がある。

「純粋なフリして。かわいこぶって。」

「全部私にかぶせて。被害者ぶって。本当はぜぇんぶ、おまえなんじゃねぇん?」

「誰も愛してないのはお前だがね。」

静一は放心状態で静子を見上げ続ける。

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静子の視点

「ほら。はがしてやるんべ。」
静子は頬の肉を摘む。
「おまえが私にかぶせたこの皮。はがしてやるんべ。」
全身の皮を剥いでいく静子。

全て剥がし終えた静子は、白く眩く輝き、輪郭以外が判別できなくなっていた。

「ああ…あああ……」
静一は苦しみながらも、静子から視線を外すことができない。
「あああああああ」

「よく見な。本当のママを。」
光だけの存在になった巨大な静子の顔が静一に重なっていく。
「本当のおまえを…」

次の瞬間、静一は、しげるの事件があった夏の日の山中に飛んでいた。

静一としげるの二人を探す静子の視点から、事件が起こった崖に徐々に近づいていく。
(ママ…今…僕はママの中にいる…)

(ママの目で…「あのとき」を見てる…)

やがて林が途切れて、視界が開ける。
(あ……)
視線の先に、しげるが背を向けて立っている。

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感想

静一の主観

これは……”あの日の真実”が見られるということなのか?
今からもう、次の話が気になって仕方ない。
真実の静子の姿で、静子の行動が見られる。一体何が起こるんだ?

そもそも、この漫画はあくまで静一の主観から描かれているというのは第1巻から分かっていたことだった。

しかしまさか、静子の姿がここまで美化されていたとは……。これは驚いたわ。
ビジュアルが全然違う。今回新しく出てきた静子は何というか、すごくリアルだ。
これまでの美しい静子の面影がないことはないんだけど、年相応の加齢も加味して、別人という印象は否めない。
しかしこれまでの静子よりも、より人間味があるという印象も受ける。

「異常に綺麗で。異常に怖くて。化け物みたい。」

まさに自分が静子に抱いてきた印象そのものだ。他の読者の方も似たようなものではないだろうか。
つまり押見先生は、今回の展開をやるために第1話からずっと積み上げてきて、その試みが成功したということになる。

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静一と会話する美化された姿の静子は、美化しているのは自分の姿だけではなく、静一自身の姿もまた同じなのだ指摘する。
いや、静一の場合はもっと根本的に、その在り方自体が異なるようだ。
少なくとも純真無垢などではないと。

前回から続く静子との対話の意味がようやくわかった気がする。
これは静一の奥深くにある、決して誤魔化せない潜在意識が見せているやりとりなのだと自分は解釈した。
静一の内にある良心? それとも罪悪感がこの夢を見せているのではないか。

夏の事件以降、静一は吃音症を抱えてしまった。
これまでそれは、静子の犯行を庇ったことで中学生としてはあまりにも重すぎる十字架を背負い、しかしその真実を誰に対しても決して口に出せないという強烈なストレスに起因しているのだと思っていた。

しかし今回の展開を見るに、実際はもっと別の真相があったか、そもそも吃音症自体が偽装だった可能性もあるということだろう。

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「誰も愛してないのはお前だがね。」

この指摘の通りだとすれば、静一は自分の都合のために、静子を異常だと思い込んでいたということ?

静一は見たいものを見たいように見て、自分を誤魔化していたのだと静子は言う。
つまりそれは、静一自身の良心、罪悪感が、静子の姿をとって自己批判をしているのではないか。

今回新しく出てきた静子の視点は、当然ながら静一が直接見たものではない。
おそらくこの後起こった本当のことから逆算された、少なくともこれまでよりも真相に近い静子の行動を推測となるだろう。
つまり静一にとって都合の良い主観が可能な限り排除された、想定され得る静子のあの日の行動ということだと思う。

その内容によっては実は静子はしげるを突き落としていなかったという事態もあり得る?

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次回で真相が語られる?

果たして、あの日の真相とは一体何だったのか。

もし第1巻で静一が目撃した静子の犯行の一部始終が、静一が自分が見たいものを見ていた結果であり、正しいものではないというなら、実際は何が起こっていたのか。

これまで自分は静一が純粋無垢で、ひどいマザコンだが母親思いな少年だと思ってきた。

しかし今回の静子がそれを否定したように、その前提を覆して考えることで、新たな真相が導かれる。

しげるが崖から落下して、生死をさまよう重傷を負ったのは事実。
しかし果たして落としたのは静子だったのか?

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これまでは、高所でふざけて落下の危険に晒されているしげるを保護しようと静子が駆け寄ってしげるを抱き留め、しかしふと何かを思い立ち、しげるを突き落としたというのが静一の目撃した内容だった。
その後、静一は警察にもそう証言している。

しかし実際はそうではなかったとしたら、何があったのか?

……色々考えて途中まで書いてみたけど、全然まとまらないから消してしまった(笑)。

次の話までにああでもないこうでもないと思考を遊ばせてみたいと思う。

以上、血の轍第89話のネタバレを含む感想と考察でした、

第90話に続きます。

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