血の轍 最新第58話静子さんネタバレを含む感想と考察。しげるを救った静一の行動が、しげるのあの日の記憶を呼び覚ます。

血の轍 第44話 静子

第58話 静子さん

第57話のおさらい

伯母の家に着いた静子と静一。

玄関の扉を開けて出てきたのは伯母は、二人を心から歓迎する。

玄関を上がってすぐ、リビングのソファにはしげるが座っていた。

静一と静子が来てくれたと声をかける伯母。

ぼうっとしているしげるに、静子が笑顔で挨拶をする。

しげるの視線が静子に注目する。

伯母は静一が来てくれたこともしげるに伝えるが、わからない、と呟くだけのしげる。

静子はしげるのそばにしゃがんで、話しかける。
「はやく思い出してね。私達のこと。」

 

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伯母は、今日病院に行ってリハビリをやってきたと報告を始める。

左手の麻痺が入院時よりも良くなってきている、リハビリすれば動かせるようになるかもしれない、という伯母の報告に、大きめのリアクションで喜んで見せる静子。
「わー…よかったんねしげちゃん…」
静子は口元に両手を当てる。

伯母はしげるの隣に腰を下し、ここまで来てくれた静一、静子に感謝を述べる。
そして、再びしげるは静一のことをわかってるから大丈夫だと言って、前みたいに、遊ぼうと続ける。

静一は伯母からの呼びかけにたどたどしく返事をする。
そして横目で静子の様子を観察する。

静子も静一のことを笑顔で見つめていた。

ご飯の用意をするからと、しげるを静子と静一に任せて伯母は台所へ向かう。

 

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静子は伯母を呼び止めて、自分も手伝うと主張する。

伯母はその申し出を断るが、静子は笑いながら食い下がる。
「手伝います。」

静子の手伝いを受け入れた伯母は、静一に対して、しげると一緒にいてくれるかように頼むのだった。

伯母は続けて、しげるには話しかけることがリハビリになるから、と静一にしげるに話しかけるよう促すのだった。

静子は伯母の行く台所についていくその刹那、静一の方に無言で視線を向ける。

 

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台所から作業音や話し声が聞こえてくる。

静一は台所の方に視線と意識を向けていたが、やがてゆっくりとしげるに視線を移していく。

視線を中空に彷徨わせていたしげるだったが、やがて目の前で正座している静一に視線が移動する。

静一は困った様子で、何を話すか迷っていた。

「……ここ、どこ?」
しげるからの思わぬ言葉に思わず、そちらに目を向ける静一。

しげるは台所を見ていた。
「かあさん…」
そう呟き、ソファから立ち上がり、台所に向けて歩こうとする。

静一は正座したまましげるの様子を見つめていた。
「しげ…ちゃん……どうしたん?」

麻痺しているという左手をぶらん垂らしたまま、しげるが呟く。
「かあさん…どこ…?」

その言葉に、思わず静一は目を見開く。

しげるは今にもバランスを崩し、体が宙に踊とうとしていた。

しげるの身体が、まるで地面に吸い寄せられていく。

第57話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

 

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第58話 静子さん

「おばちゃん…?」

バランスを失い、前のめりに倒れていくしげる。

それを背後から見ていた静一は、咄嗟にしげるの身体を背後から抱きかかえる。
「しげちゃん…! あぶないよ…!」

沈黙し、静一に抱きかかえられたままのしげる。

しかし静一は、顔を上げたしげるが呟いた一言に戦慄する。
「おばちゃん…?」

あの夏の山登りの日、崖で見た蝶が舞い始める。

次の瞬間、静一は抱きかかえていたしげるの身体を思いっきり床に向けて押す。

ゴッ

う……、と呻き声を上げるしげる。
しげるは床にうつ伏せに倒れたまま、泣き始める。

 

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手を前に突き出したままの状態で、静一は固まっていた。

異変を感じた伯母が台所から駆け付ける。
泣いているしげるを抱き起し、大丈夫? と声をかける伯母。
「どうしたん!?」
伯母は静一に強い口調で問いかける。
「何があったん!?」
静一は何も答えない。
ただ、伯母と一緒に台所からやってきた静子をじっと見つめていた。

居間にしげるの泣き声だけが響く。

静子もまた、静一を呆然と見返していた。

やがて静一が口を開き始める。
「しげちゃんが…自分で…転んだん。」
静一は一切取り乱すことなく、落ち着いた様子で端的に説明する。
「ひとりで、かってに。」

 

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告発

伯母は静一をじっと見つめていたが、ふと、自分が腕に抱いているしげるが右手を動かそうとしていることに気付く。

しげるは震える右手をゆっくりと上げて、人差し指をさす。

その相手は直前に自分を押した静一ではなく、静子だった。

ピンと伸びた指先で、しっかりと静子のことを指し示すしげる。
その表情は眉間を寄せ、目を剥き出しにし、歯を食いしばっており、明らかに何かを必死に訴えていた。

その表情には、しげるが意識を取り戻して以来、まだ見せたことのない確固とした意思が宿っている。

しげるを見下ろしている静子を、静一は呆然と見つめていた。

「……しげる?」
伯母はしげるの尋常ではない様子を目の当たりにして、その意図するところを読み取ろうとしていた。
「どうしたん…?」

 

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しげるは静子に人差し指をさしたまま、口を開く。

あ…、あ…、と中々声にならないが、伯母はしげるが必死に伝えようとしているメッセージを受け止めようとしていた。
やがて、じっとしげるを見つめていた伯母は、しげるが指をさし続けている静子を移していく。

伯母は目を見開き、静子をじっと見上げる。

静一は目の前でその光景を呆然と見つめていたが、静子に視線を向ける。

静子は特に口を開くこともなく、じっとしげると、彼を抱く伯母を見下ろしていた。

「静子さん…」
見開いた目で静子を見上げ続けながら、微かに呟く伯母。

やがて、静子の口がゆっくりと開いていく。

 

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感想

告発?

これは……ひょっとしてしげるは完全に記憶を取り戻した?

静一はしげるを救おうと背後から身体を抱きかかえる。
それがしげるの記憶を呼び起こしたようだ。

山登りの日、静子に一回は救われたものの、その後すぐに突き落とされたその流れを克明に思い出したのか?

これは静一にとっては意図しないことだった。
静一はこれが静子を窮地に追い詰める記憶であるとすぐさま解釈し、ほぼノータイムでしげるを突き飛ばしたわけだ。

伯母に床から抱き起こされた後、静子を指さした瞬間のしげるの表情には、静子の犯罪を告発するという確固たる意思が現れていた。
静子を指さしているその人差し指はピーンと伸び、力が漲っている。

 

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しげるの表情は意識が戻って以来ずっと茫漠として、曖昧な印象だったから、果たしてここからの回復はあるのかと思っていたが、思ったよりも”その時”は早かった。

しかし静子はうどん屋で一郎と静一を前に呟いたことが本心だとすれば、しげるが記憶を取り戻し、自分を告発することで今の生活が破壊されることを望んでいた。

しげるによる告発は静子の望みでもある。
これが、今回は話のラストの静子の表情から先の反応を読めなくしている。

しげるの告発を受けて、静子はどう反応するのか。
今からもう、次回が楽しみでならない。

色々と察した伯母さんが参戦することで、これは嵐が吹き荒れるのか……?

 

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これまでは長部家内部だけで嵐が起こっていた。
それにより長部家の日常はゆっくりと自壊しつつあったが、ここから外部の介入が加わることでさらに壊れる速度や破壊力は増していくのだろう。

でもそれが必ずしも静子や静一にとって不幸なのかというと、どうなんだろう?
静子は今の生活が嫌だったと言っていたし、罪を償い、リセットすることは静子の望みなのかもしれない。

そして静一もまた、自分を狂わせる静子のそばから離れる、たとえば祖父母のところに預けられたりしたならば、平穏に暮らせるようになるかもしれない。

一郎はある意味、最も被害を受けるんじゃないか……。
静子が警察に捕まっても離婚せずに静子を支え続けられるのだろうか。
そもそも静子が親戚も含めて自分のことまでも嫌っていることを一郎は知っている。

周囲の中傷をはねのけてまで、自分を嫌う静子を守ってやるという気概が、果たして一郎の内にあるのか?

すでに失われていると見るのが妥当ではないか。

 

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罪悪感の消失

静一やばいな……。

これ、静子とやってること同じじゃないのかな? と思った。

あの夏の山登りの日、静子は静一を守るために咄嗟にしげるを崖下に突き落とした。
そして今回、静一は静子を守ろうとして明らかに害意を以てしげるを押した。

今回も『血の轍』というタイトルを強く意識した。
親子で同じ道を辿る……。

ひょっとして静子も子供時代に似たような経験をしていたりするのか……?
静子は両親に愛されていなかったと言っていたけど……。
もしそういう過去が静子にあったとなると、益々、この物語のタイトルが『血の轍』に相応しいといえるのではないか。

静一は吹石家から帰ってきたあの夜に静子の逆鱗に触れ、彼女の赦しを請うために絶対の忠誠を誓って以来、わかりやすく静子第一主義になった。

 

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しかし実は、あの山登りの日の時点で母を守るという決意自体はしていた。
お母さんがおかしくなってしまった、だから自分が守らなきゃ、と子供ながら、おかしくなってしまった静子をフォローする必要性を感じていたんだよな……。
だから警察の事情聴取に対しても、母が突き落としたという真実ではなく、しげるが勝手に落ちたと嘘を述べた。

しかしその頃の静一はまだ、罪悪感を覚えていた。
吃音の発症はそれによる強いストレスの表れだ。

しかし今回は違う。

静一はしげるが静子にやられたことを思い出したと解釈し、とっさの判断で思いっきり突き倒した。

静一はしげるに頻繁にイジられていた。だからしげるに対する積もり積もった恨みつらみが全くなかったとは言えない。
しかし今回静一がしげるを突き倒したきっかけは、間違いなく静子にされたことをしげるが思い出したと判断したためだ。

 

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少なくとも、もはやそこには、静子を守るために刑事に嘘をついて以降、吃音に苦しんでいたほどの罪悪感はない。

しげるが勝手に転んだとさらっと嘘を言った際の静一の表情は、静子そっくりだと言えよう。

吃音はなく、きわめてスムーズな発音であることからも、そこに罪悪感は一切ないことが良くわかる。

山登りの日の静子を守らなきゃという想いと、今回の静一の行動の裏にある想いは同じなんだけど、この二つの間の明確な違いは罪悪感の有無ではないかと思う。

静子を全てに優先すると誓ったことで、それまで静一の中にあった倫理観が狂ってしまった。
今の静一は、暴力も含んだあらゆる選択肢は、静子を守るためであればやむなしの状態なのだ。
もはやそこに良心や罪悪感の入り込む余地はなくなってしまった。母からの愛が全て。

先にも書いたように、元々静一が本当にしげるのことを大切に想っていたかどうかは疑問なところがある。
実は普段からしつこく自分や静子のことをイジってくるしげるのことが内心ではすごく嫌であった可能性は否定しきれない。

しかし静子を守るためには口を封じないといけないという判断が、今回、静一がしげるを突き倒すという、行動の最も明確な動機であることは疑いようがない。

 

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伯母の行動は?

伯母は、静子を指さしたしげるの意図するところをはっきりと気付いたのだろうか?

静子がしげるを突き落としたという真相に気づいたなら、伯母の豹変っぷりはとんでもないことになりそうだ。

2話での初登場時や、山登りの際には彼女に対してあまり良くない印象があった。
しかししげるが入院して以来、静子への見方が変わり、さらにしげるに次いで辛い境遇にある伯母の良い人の側面がクローズアップされるようになる。
一郎と一緒にしげるの見舞いに来た静一に対する振る舞いは優しさに溢れていたと思う。

そこで、実は伯母は本当に良い人で、実は2話などでどこか嫌な感じに描かれていたのは単に静子が嫌いであることを静一が感じ取っていたからに過ぎなかったからなのではないかと思うようになった。
この話は静一視点だし……。

しかし伯母がどんなに良い人であったとしても、実は静子こそがしげるをこんな目に遭わせた犯人であり、これまでそんな素振りすら見せずにしれっとしていたことを知ったなら激昂は避けられないと思う。

もしここで激昂せず、冷静さを保って静子を問い質して真相を聞かされてもなお、ただこの場を立ち去るようにと言うだけだったら、いよいよ人間が出来すぎだわ。
そして1巻時点で多くの読者が感じるであろう伯母の悪印象は、実はただ単に静子の伯母に対する嫌悪を静一が感じ取っていただけだった、伯母はマジで人間が出来た人だったと判断しても良いだろう。

次回が楽しみだ。

以上、血の轍第58話ネタバレを含む感想と考察でした。

第59話に続きます。

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