血の轍(押見修造の漫画)の最新第38話雨の感想(ネタバレ含む)と考察。吹石父に見つかるかどうかの状況に置かれた静一。そして吹石家に来客が……。

第38話 雨

第37話のおさらい

静一の夢の中。ぼやけた視界に静子の声が響く。

 

幼い静一は静子に手を引かれながら住宅街を歩いていく。

 

どこに行くのかと静一が問いかけても、静子は一向に答えない。

 

いつかしか静子は上機嫌な様子で鼻歌を歌い始める。

 

静一に振り向いた静子は、心底楽しそうな表情をしていた。

 

 

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目覚めた静一の顔は汗にまみれていた。

 

すぐ隣で眠る吹石の唇をじっと見つめていると、静一の耳に幻聴が聞こえる。
(「せいちゃん。」)

 

思わずがばっ、と体を起こす静一。

 

既に外は明るくなっていた。
時計の針は朝6時にさしかかろうとしている。

 

呼吸を荒くしている静一に、目を覚ました吹石が声をかける。

 

 

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静一は吹石の表情に見惚れたが、学校をどうするかという問題に気づいて慌てる。

 

しかし吹石は落ち着いた様子で、今日は第二土曜日なので学校が休みだと答える。
そして静一の手をとると、優しく呼びかける。
「一緒にいよ。今日も。」

 

静一は照れた後、吹石にトイレに行きたいと告げる。

 

吹石の後についてトイレに到着した静一は、早速ズボンを下ろそうとするが、パンツの中がおかしなことになっているのに気づく。

 

パンツにこびりついた白いものを観察する内に、静一はその原因が昨夜交わした吹石とのキスだったことに思い当たる。
「…………あのとき……あのとき……なんか出た…」

 

静一は、自分の体に一体何が起こっているのか分からなかった。
動揺した様子で、パンツの中を探る。

 

 

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局部に触れているうちに、静一の呼吸は徐々に荒くなっていく。

 

(「すっごくたのしい。」)
しかし静一の脳裏に夢で見た静子の満面の笑みがフラッシュバックすると、静一はすぐに股間から手を引っ込める。

 

その後も、静一は頬を染めたまま、呼吸も荒く、ただその場に立ち尽くしていた。

 

その時、ガチャ、とドアを開ける音の後に廊下をドタドタと歩く音が近付いてくる。

 

同時に、あっ、という吹石の声が聞こえてくる。

 

「おっ! びっくりしたあ~ 由衣子かい!」

 

廊下を歩いてやってきたのは吹石の父親だった。

 

静一はドア越しに二人の会話を聞いていた。

 

第37話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

 

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第38話 雨

危機一髪

トイレのドアの前に立つ吹石は、トイレにやってきた父親を見つけると、お父さん、と呟く。

 

「なんだい 由衣子かい!」
そこに吹石がいると思っていなかった父は、びっくりしたあ~、と声を上げる。

 

静一はトイレの中でそのやり取りにじっと耳を澄ませる。

 

「何してるん? 便所か?」

 

「もう! お父さん!」
吹石は父にイラついたような声を上げる。
「あっち行っててよ! 部屋 戻って!」

 

静一はゆっくりと振り向き、トイレのドアの曇りガラス越しに朧げな吹石の横顔を見ていた。

 

 

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父は、便所に行ぎたいんだけんど、と吹石に食い下がる。

 

「いいから! もう うざいなあ!!」
父に罵声に近い言葉を投げつける吹石。
「私がいいって言うまで部屋から出てこないでよ!」

 

「…ったく…はいはい。」
父は呆れた様子でトイレの前から立ち去っていく。

 

遠ざかる足音を聞き届けてから、静一は自身の股間が妙な液体で汚れていることを思い出すのだった。
その汚れを処理した静一は、トイレの水を流してから、廊下の様子を窺うように静かに、少しだけドアを開ける。

 

「はやくはやく、今のうち!」
吹石は小声で静一に呼びかけながら指先だけで手招きする。

 

 

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ベッドの中

外はいつしか雨が降っていた。

 

穏やかな雨音と時計の規則的な音だけが響く部屋で、静一と吹石はベッドで布団を被り、互いに身を寄せ合っていた。

 

うっとりした表情とお互いを見つめ合う二人。
ベッドの中で、ずっと変わらず香り続ける匂いに包まれていた。

 

二人は体を横たえ、互いに向き合って手を繋いでいる。
自覚しているのか、無意識なのか、吹石が膝を曲げて静一の膝にくっつける。

 

静一はさきほどトイレで自分の股間から何かが出たのを確認した時のことをぼんやりと思い出していた。
そして何気なく、手を繋いでいない左手を自らの股間にもっていく。

 

「ん。」

 

静一は突然の吹石の声に目を見開く。

 

「すん すん すん」
吹石は静一の頭に鼻を近づけて、そのにおいを嗅いでいた。
「すん すん」
そして、ふふっ、と笑う。
「長部、あたまくさい。」

 

 

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「…え…」
途端に顔が赤くなる静一。
「あ…! ごめ…」

 

そんな静一の頭を吹石は胸に押し付けるようにして抱き締める。
「好き。」

 

静一はうっとりとしていた。
その手は吹石の体を抱き締めようと吹石の体をなぞる。

 

「…ん。」
吹石もまた静一と同様に顔を真っ赤に染める。

 

吹石は静一の頭を自らの胸に埋めるようにして抱き締めていた。

 

そして静一もそれに呼応するように吹石の背に両腕を回すのだった。

 

静一と吹石の呼吸が大きくなっていく。
体を離し、互いに見つめ合うと吹石が切り出す。
「もっかい…キスしよ…」

 

近付いていく二人の唇。

 

 

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来客

ピンポーン ピンポーン

 

突然のチャイムの音に静一は我に返る。

 

ドアの向こう、さらに階段を下った1階から、はぁ~い、という吹石の父の返事と共にバタバタという足音が聞こえる。

 

「……誰か来た。」
来客を気にする様子を見せる吹石。

 

静一は、うん…、と答えるのみ。

 

部屋にはまた雨音が響く。

 

「由衣子――っ! 由衣子ちょっと来い――!」
玄関から吹石を呼ぶ父の声が響く。

 

なに――っ!? と階下の父に聞こえるように大きな声で返事をする吹石。

 

「友達の…長部くんのお母さんが、聞きてえことあるって言ってっから!!」

 

聞こえてきた吹石の父の言葉に静一の表情は一瞬で引き攣ったように歪む。
「…きっ きっ きっ」

 

「きっ」

 

吹石は静一が歯を食いしばって顔を強張らせたまま、必死に何かを言おうとしているのを見て、すぐに表情を引き締める。
「長部、ベランダに隠れてて!」

 

静一の目が大きく見開く。

 

 

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ベランダから

雨の降る中、静一は自分のリュックを背負って静かにベランダに出る。

 

降り続く雨を呆然と見つめながら、静一は、はあはあ、と大き目の呼吸を繰り返していた。
その表情には怯えの色が浮かんでいる。

 

「ああ由衣子!」
階下、玄関から吹石の父の声が静一に聞こえてくる。
「あのな…静一君がいなくなっちゃったんだって! なんか知ってるか由衣子!?」
静一は怯えた表情のまま、ただ呆然とその会話を聞いていた。

 

父の質問に吹石は、知らない、とだけ答える。

 

静一は会話が行われている階下を覗くようにベランダから玄関の方に視線を送る。
玄関には静子が立っていた。
「由衣子さん…」
遠目にも明らかに憔悴した様子が窺える静子は、ぽつりぽつりと吹石に質問をする。
「昨日…あのあと…どうしたん? 川原で…一緒に…いたわよね…」

 

静一のいるベランダからは、玄関の庇で静子の顔が隠れてしまい、その表情は見えない。

 

 

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そうなんかい!? 由衣子、と父が吹石に答えを促す。

 

吹石は玄関から半身を出している父の隣に立ち、静子の質問に淀みなく答える。
「…川原でたまたま会っただけです。静一くんはひとりで帰りました。」

 

本当に? と静子。

 

静一は二人のやりとりをじっと見つめている。

 

「私は知りません。」

 

静一の位置からは玄関の内にいる吹石の表情は扉のガラスによって見えない。

 

「おばさんのせいじゃないんですか? 静一くんが帰って来ないのは。」

 

「由衣子…何言ってんだおまえ!」
父は、失礼だと吹石を咎め、静子に向けて謝罪するようにと促す。

 

いつしか静一はベランダの柵から身を乗り出すようにして玄関での三人のやりとりを見つめていた。

 

「…そうね。」

 

静一は、俯き加減の静子が涙を流しているのを目撃する。

 

「私のせいね……」

 

 

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感想

酒飲まなければまともな吹石父

お父さんとケンカをよくすると吹石は言っていたけど、第31話を読み返してみたら、”酒を飲むとすぐキレる”とのこと。
普段から暴力的で最悪な父親ではないというのは良かった。

 

ここまで(と言っても前回のラストと今回だけだけど)見てきて、普段のお父さんは娘の反抗期に手を焼いているだけのごく普通の父親という印象を受けた。

 

酒を飲むとすぐキレるというのは気になる要素だけど、その設定が使われるシーンは少なくとも描写はまだされない気がする。
自分が考えたのは、ひょっとしたらこの日、吹石が静一を匿っているのが父親にバレて、その流れで酒に手を出した父が吹石にキレる流れはあるのかもしれないということ。
その場に静一はいないので、後に吹石からの報告という形で静一(+読者)がそれを知る感じかな。

 

とりあえず、今回は吹石の堂々とした立ち回りにより窮地を脱したことで、お父さんの顔を見ることは無かった。

 

でも静子が吹石家にやってきたことで、もし静一が彼女に見つかって引きずられるようにして帰宅していくとしたら、ひょっとしたら次回、父親の姿が一瞬見られるのかも知れない。

 

 

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ずっとベッドで同衾?

時計が午後の3時半過ぎを示してるけど、朝からそれまでの間ずっと二人でベッドで一緒だったってことかな?

 

ナニソレ。もう最近毎回書いているような気がするけど、羨まし過ぎる。
中学生が何やってんだよと。

 

どうやら静一は性に目覚めたっぽい。
それが元で暴走して、何か吹石にやらかして嫌われる流れが来るのかと思ったけど、全くそういうことはなかった。
吹石もまた静一への気持ちでいっぱいで、静一が自分に向けて抱いているマグマの如き欲望に気づいてない感じ。

 

吹石に抱き締められ、それに応じるように静一も吹石を抱き締めるシーンで、吹石は体の線がはっきりと描かれているのに静一は禍々しさを含んだ黒い陰のように描かれている。
それはお互いの、抱き合う動機の違いを表現しているように感じた。

 

吹石は純粋に静一のことが好きなのに対して、性に目覚めた静一は吹石のことが好きというのはもちろんだが、それ以上に欲望に火がついて女を強く求めてる感じがする。
こんな状況なら正直仕方ないとは思うけど、嫉妬心に駆られたおっさんとしては静一くんには一度、彼女からのビンタの一つも食らってみて欲しいところだ(笑)。

 

 

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しかしそんな若々しい二人の濃密なる幸福のひとときは吹石の父親の一言で破られる。

 

ついに静子が訪ねて来た。午後4時前まで一体どこを探していたのかわからないけど、雨の中傘もささずに探し回っていたのかな。おそらく静子は静一が吹石と一緒にいた可能性を一番に思いついたのではないかと個人的には思っている。だけどなるべく吹石家には足を運びたくなかったのではないか。
前日に二人と草叢であんな激しいやりとりをした後だったし、一度は静一にフラせたはずの吹石が自分ではなく静一と一緒にいて、しかも静一の心を捉えて離さないとは信じたくない。
静子が玄関に立っているそのどことなく疲労感に包まれた姿から、朝から昼過ぎにかけて心当たりを色々と探し回り、ようやく意を決して吹石家にやってきたのかなと感じた。

 

静一も吹石と一緒にベッドに入っている時もずっと静子の事が脳裏でフラッシュバックしていたし、心のどこかで母がその内ここまでやってくると思っていたのかな……。

 

 

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パンパンの風船を針で突きまくる吹石

吹石はあまりにも堂々と嘘つき過ぎ+静子をグサグサとクリティカルで攻撃し過ぎ。
すぐに割れちゃうよ。

 

静子が大人しいのは怖い。一見まともに反省してるっぽいところが何とも不気味だ。
返って、それだけに後に来る大嵐の予兆っぽいというか……。

 

しげるの末路を知っている読者からしたら、これはヒヤヒヤするわ。
この嘘が静子にバレた時にどうなるか……。
そもそも親元で暮らす未成年がいつまでもやはり未成年を匿うことなんて普通の過程では土台無理な話なわけで、すぐに”その時”はやってくる。

 

確かに、吹石が”静子が来たから降りてこい”と父親に呼ばれた際に見せた静一の態度は、それが好きな相手だったなら守ってやりたくなるだろう。
実際、静一に”ベランダに隠れてて”と告げた吹石の表情は何としても静一を守らなくてはという使命感に溢れている。

 

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静一の顔は恐怖に引き攣り、快方に向かっていた吃音症状もぶり返してたもんなぁ……。
彼が一気に精神的に追い詰められたのがよく分かるわ。

 

静一は吹石の顔を見ながら”きっ”と何度も繰り返していたけど、何を言おうとしていたのかな?
”(静子が)来た”? かと思ったけど、どうなんだろう……。全く思いつかない。

 

静子はもう吹石の家に静一がいると確信していると思う。
いくら吹石が知らないと言い張っても静子は帰らない気がする。

 

恐らく静子は午後4時前まで一郎と手分けしてずっと探していたのではないだろうか。
中学生が身を寄せる場所なんて限られているのもわかっているし、まだ警察には捜索願を出してはいないっぽい。

 

何より静子は吹石と実際に対面して、その態度から静一の存在を感じ取れたのではないだろうか?
男には分からない、女の、それも母親の勘ってあると思う。超鋭いやつ。
次号、ベランダから静子の様子を見ている静一をいきなり発見しても何らおかしくない。もしそんなことやったら妖怪だけど(笑)。

 

 

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全部私のせい、と憔悴し切った様子を見せる静子だが、大いなる飛躍を前に限界まで縮んでみせているようにしか見えないんだよね……。

 

涙を流してるし、”さすがに静子が可哀想”という声もあるかもしれないけど、でもやっぱそれ以上に怖い……。
可哀想なのはわかるけど、でもしげるを突き落として植物状態にした犯罪者だし、この後静子と吹石の間に何が起こるんだろう、とつい考えてしまう。

 

第6話以来の衝撃の瞬間がじわじわと近づいてきているという予感は、多分、1話から読んでる人は同じように感じてるんじゃないかなぁ。

 

ここのところ、吹石が静一に深く関わり始めてからは静一のズタズタの精神は癒され、それに伴って吹石が随所で見せるかわいさに読者も癒される(笑)という展開が続いた。
静子から身を隠す回を除けば比較的穏やかな展開できたので、ここらで吹石VS静子の間に起こる劇的な瞬間が見られるとすれば、物語としては非常に楽しみ。
でもここまで読者として吹石や静一を見守ってきたわけで、彼らが幸せから一気に不幸のドン底に落ちるのを見たくない……。

 

次回、果たして静子は素直に吹石家を後にするのか。それとも静一を探り当てるのか。
後者の方が話としては面白いのでそちらに期待したい。

 

以上、血の轍第38話のネタバレを含む感想と考察でした。

第39話に続きます。

 

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2 件のコメント

  • 初めまして。めちゃくちゃ読み応えのある模写で、分かりやすく、いつも楽しく読ませていただいています。
    文章力や、深い考察に、なるほどなぁと新たな発見があったり…
    陰ながら、更新、楽しみにしていますね!

    • friskさん、コメントありがとうございます!
      楽しんでもらえてるなら幸いです。
      文章に関して、かなりメチャクチャなところもあるかと思っているので、読んでくれている人がさらっと読めるよう勉強+気をつけていきたいと思います。
      よかったらまた遊びに来てください。

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