血の轍 最新第91話ぜんぶ僕ネタバレを含む感想と考察。自分こそが母を苦しめる元凶と理解した静一の前に現れたのは……。

血の轍 8巻

第91話 ぜんぶ僕

第90話のおさらい

静一は静子の視点から、あの日の自分自身の視線を受けて驚愕していた。
(これ…これが…僕…ママから見た…僕。)

静子が自分のことを恐れ、怯えていることを感じ取る静一。
目の前にいる静一の視線には静子に対する憎しみが籠められており、静子のことを強く非難していた。
(おまえさえいなければ。僕は幸せだったのに。)

(おまえの子供になんか、なりたくなかった。)

(どうして、僕を産んだん?)

(取り消せ。)

(取り消せ 全部 生まれてから今までの僕を)

(償え 僕を産んだことを 償え)

(償え)

静子は静一の剣幕に怯えている。
静子の中の静一は、静子が自分のことをどのように見ていたのかに驚いていた。
(これが…ママの中の僕………?)

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静子は崖でバランスを崩したしげるを助けるために、慌てて走り出す。
しげるを抱きしめてから、しげるを諭そうとする静子。

「うるっせえんなあ!! 大丈夫だって…」
しげるの顔は醜く変化していた。

静子はしげるを呆然と見つめる。
(みんな死ね)
すぐ背後から静一による呪いの言葉を受けていた。
(みんな死ね 何もかもみんなみんな 死ね)

(やれよママ 落とせ)

(それを殺せよママ)

静子は特に抵抗の意思も見せずに静一の命令を受け入れる。
「うん…」
両手をしげるに向ける静子。
「やるから……許して…静ちゃん…」

第90話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

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第91話 ぜんぶ僕

理解する静一

背後の静一に「落とせ」と促され、静子はしげるに向けて手を伸ばしていく。
「やるから……ゆるして静ちゃん……」

そして静子が突き落とそうとするその瞬間、時間が止まったように静子のみならず周囲の動きが止まる。

静一は、静子の犯行を見ている過去の自分の姿を見ていた。その笑顔は狂気に満ちている。

そっか、と納得する静一。
「僕が……ママに…落とさせたんだいね……」
静一は、過去の静一と向かい合い、その表情を見据えて呟く。
「たしかに…僕は…思ってたんかな…心の……そこで…「落とせ」。「殺せ」って……」

固まったままの静子としげるの元に向かい、すぐそばから静子の顔を見上げる静一。
「ママ…」
しげるを突き落とそうとする瞬間の静子は、引き攣った表情で笑みを浮かべている。

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静一はそんな静子に、自分がママを苦しめていたのか、追い詰めていたのか、と問いかける。
「……僕だったん? ママにくっついて…しばって……閉じ込めてたんは…僕の方だったん?」

「ママの苦しみを吸い取って、膨らませたんは僕だったん?」
静一は静子の頬にそっと触れる。
「最初から……生まれた時から……僕こそが…ママの苦しみの元だったん……?」

「全部……全部……僕のせいだったん……?」
両手を頬に添えてじっと見つめる。
「ママ……ママ…」
静一は涙を流し、ごめんねと繰り返し呟きながら、静子の口に口づけをすると、静子を抱きしめながら声を上げて泣く。

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「ぼくを、ちゃんところして」

声を上げるのを止めた静一は、抱きしめたまま目を閉じ、静子に問いかける。
「ママ…僕は……どうすればいい……?」
そして意識が暗転していく。
(もう……僕が……生まれなかったことになればいいのに……生まれなければ……)

「じゃあ、ぼくをころして。」

突然聞こえた声に、静一ははっとして目を開く。
すぐそばにいたはずのしげると静子の姿はない。
静一は崖に背を向けて、土下座のような態勢をとっていた。

その背後には、頭から出血した幼い静一が立っていた。

振り向いた静一に、幼い静一が話しかける。
「あのとき。ままにおとされたとき。ちゃんとしななかったからだめだったんさ。」

「せっかくままが、ぼくをころそうとしてくれたんに。」

「ぼくを、ちゃんところして。」

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感想

本当に静一のせいなのか……?

しげるは第2話で出てきた時から嫌な奴だなと感じていた。
きっと自分以外の多くの読者もそうだったことだろう。

当然静一自身もそう感じていたはずだ。

その静一のしげるに対する嫌悪を静子はきちんと把握していて、最初は崖から落ちそうになったしげるを助けたものの、直後に「静一の脅威を排除する機会だ」と思い直して一転突き落とした?

静一はそれを全て自分のせいだと思っているのか。

だとすると、自分が静子にしげるを突き落とさせたという罪悪感が、犯行翌日以降、静一が吃音を患った原因になるということ?
確かにそれだとしたら、これまで静一が大きなストレスを抱えるようになった一番の原因を「静子の犯行を黙認していた罪悪感」と考えるよりも、もう少し当事者に近い理由になるので、いくらか納得がいきやすくなるかなと感じた。

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しかし、仮にそうだったとしたら、やはり静一は前回までの悪魔のような存在などではなく、実際は素直な子なんじゃないのか……?

静一は自分が母を操って静子を落とさせた悪魔だと思い込んで苦しんでいるようだけど、それはあまりに純粋……いや、幼過ぎるのではないだろうか。

人が生きていく上で、気に入らない他人は必ず存在する。時にその人物に対して殺意に近い感情を抱くこともあるだろう。
静一の場合はその対象が常日頃からうざかった親戚のしげるであり、まだ静一は子供だから関係を断ち切るといった思い切った対処もできなかった。

子供の立場から出来る対処はせいぜい、しげるが嫌な言動をしてくる、と静子や伯母に言いつけるくらいだろうか。しかし静一の選択はそういった能動的な行動ではなく、我慢し続けるという自分を苦しめるものだった。

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静子はそういう静一の苦しみを、よりにもよって最悪の手段で取り除こうとしたということ?
母親になって以来、自分は子供のために生きなくてはならないという強迫観念が彼女を苦しめていて、幼い静一を高台から突き落としたのもそれが原因なのか?

良い母親になろうとするあまり、疲れ切ってしまう。この気質は静一にもきちんと受け継がれていたということなのかな……。

静子は親から愛を受けなかったと言っていたけど、静子の環境に無理に適応しようとして心身ともに疲弊する気質が、そういった満たされない思いを持つことになった理由にも繋がってくる気がした。
本当にただただ親から冷遇されていただけなら静子は一方的な被害者に過ぎない。しかしそうではないというなら、自分は良い子でいようとしているのに、親は私にとって良い親であってくれない……といったフラストレーションが原因の可能性もあると思った。

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結局は静子の気質が、静一をここまで追いつめて知った原因なのでは……などと勝手に書いているが、良く分からなくなってきた……。

静一が自殺しないか心配

しかしこれ、静一は下手すると自殺しかねないのではないか?

この夢? が覚めた時、果たして静一はまともでいられるのか?

だってラストのページなんて、幼い頃の自分自身から自殺を促されているようなものだろう……。自分は、こんな恐ろしい事はないと思う。多分自分がこんな夢を見たら発狂すると思う。

静子に殺されかけたことを思い出したのは、静一にとって大打撃だったな……。

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その件に関しては、ただただ静子が悪く、静一には何の咎もない。
しかし当の静一の中では、ただただ自分が悪いから、幼い頃に静子が始末しようとしてくれたという解釈が成立してしまっている。

静子の苦しみの元が静一というのは、一部正解なのかもしれないが、根本的な原因ではない。
描写は無かったが、おそらく静一が生まれる前から静子は苦しんでいたと思う。

そんな静子から、静一が今抱えている苦しみは伝播したんじゃないのか?
静一は自分自身を責めるけど、やはり悪くはないと思う。

生まれてきたから苦しめたなどと子供に思わせるような大人は、そもそも子供を生んではいけなかった……。

ただ一つ言えるのは、この母子は悲し過ぎる……。

一体ここからどうなるんだよ……。

以上、血の轍第91話のネタバレを含む感想と考察でした。

第92話に続きます。

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