血の轍 最新第143話くさいネタバレを含む感想と考察。静子の世話をする静一。しかし認知症は急激に進んでいく。

血の轍 8巻

第143話 くさい

第142話のおさらい

転倒した静子の退院に付き添う静一。

静子は弱りきっており、アパートまで乗って来たタクシーから降りるのにも苦労していた。
そんな静子の手を引き、静一は何とか静子を部屋まで連れていくのだった。

部屋に力なく座る静子の表情に気力は全く無い。

静一は静子の入院費用を払っていた。
自宅へ帰る前に、静子の経済事情を知っておこうと銀行通帳を探し出す。

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静子は小刻みに震えながら、土下座するように、ゆっくりと畳に突っ伏していく。

入金があることから静子が働いていることを把握できたものの、残高は6千円を切っており、今後も困窮した生活が続くことがわかった静一は、近場の店で食料を買い、静子に与え、また来ると言い残して帰宅するのだった。

夜勤を終えた静一は、その足で静子のアパートを訪ねる。

チャイムを押しても静子からの反応がない。
ドアを開けると、静子は奥の部屋で横たわっている。その脇には前日に静一が買い与えた食料品が全く手つかずのそのままの状態で置かれていた。

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ずっとそうしてたの? 何も食べてないの? という静一の問いに静子は病院で言ったことと同じことを虚ろな表情で答える。
「もう……このまま……このままで……いいです……」

静一は、わかったから食べなよ、と言って、袋から肉まんを手に取る。
静子が朝食に肉まんを出していたことを思い出しながら、静一は、肉まんでいい? とやはりかつての静子と同じように静子に問いかける。

レンジで温めて静子の元に持っていくが、静子は横たわったまま反応しない。
静子の身体を抱きあげて、肉まんを口元に運ぶ。
一口食べると、静子は虚ろな目をしたまま、次の一口を求めて口を開けるのだった。

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第143話 くさい

静子の認知症気味だった症状が一気に悪化して、ついには寝床で漏らしたままでも無反応状態になってしまった。タイトルでまさかと思ったけど、いざこのような形で突きつけられるときつい。静子の認知症は急激に進行してしまった……。実際、悪化する時は一気に来ると小耳に挟んだことがある。
ラストのコマ、静一の『こぼれちゃう』の一言は、自分の知っていた静子がどんどん失われているという、どうしようもない状況を前にしての言葉だと解釈した。これはもう食い止めようがない……。

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今回の話を読んで思い出したのは、今は亡き自分の祖母も、自転車で転んで大腿骨を折って入院したことをきっかけに一気に体力を失い、認知機能も明確に衰えて、老けてしまったことだ。ただ、静子と違って、即日退院ではなく2~3ヶ月くらい入院していたかな? 老人になるとケガをきっかけにこうなってしまうことがあるんだと思い知らされた経験がある。

どうやら即日退院したとはいえ、静子は静一が訪ねて来るまで日がな寝床で横になりっぱなしの毎日を過ごしていたようだ。
そもそも静一と再会した時、ケガをする前から静子にはもう認知機能の衰えの兆候が出ていた。そして、静一と再会してからちょっと落ち着いていたと思う。

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しかし静一が静子の過去を知った翌日から、しばらく静一が静子の元を全く訪ねることなく自分の荒んだ生活を整えていた頃に、すでに静子は症状を悪化させていたのではないか。

話し相手もなく、やりたい事も無い。人生に希望がなく、刺激が無い日々を過ごし続けて、ついにはトイレで排便することすら忘れて漏らしても、それを彼女自身が自覚しているかどうかすら判別がつかないくらい自分を失ってしまった。
ここまでになると、もう以前の静一に自分の過去の話を披露した頃の小康状態にまで戻ることも出来ないだろう。

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静子の場合、入院した時に放った一言「もういいです」から推測するに、あの時からすでにゆっくりと死に始めていたのかもしれない。
生きることへの希望、執着を完全に無くしてしまっていたから、こうなるのが早まってしまったのかなと思う。

静一は偉いと思う。自分のことを捨てた母の家賃を払い、病院に連れていき、さらにはこんな状態の彼女の世話まで黙々とこなして……。しかし、無慈悲にも、こんな状況に直面してしまうんだな。
前回から、静一がこのまま静子に関わっても、生活を整えた今の静一がこれ以上何かを得られるとは思えなかった。決して高給取りというわけでもないであろう静一が、このまま静子のアパートの家賃を負担し続ける。果たしてどのくらいこの先々が不透明な日々が続くのかなと思ったらこれか……。

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自分もたった一度だけだが、祖母が漏らしてしまったのを掃除したことがある。人の便の掃除ってほんっとーにきつい……。日常的に介護、あるいは介護の仕事をしていて、毎日のように掃除や排便の世話をしている人は本当に大変なことをやってると思う。

しかし静一はここからどうするのかな……。たとえば、要介護認定を申請するとか? ついにこの漫画は介護問題という、親御さんがご存命であれば誰もが遅かれ早かれ直面するであろう重大テーマに踏み込み始めている……。

静一の状況は自分にとっても他人事ではない。これからの静一の行動を見守っていきたい。

以上、血の轍第143話のネタバレを含む感想と考察でした。
第144話に続きます。

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