血の轍 最新第92話ありがとうネタバレを含む感想と考察。幼い自分からの言葉で静一が遂げた変貌とは。

血の轍 8巻

第92話 ありがとう

第91話のおさらい

静一からの「落とせ」という命令に従い、静子はしげるに突き落とそうとする。
「やるから……ゆるして静ちゃん……」

静子がしげるを突き落す瞬間、時間が停止したかのように周囲の全ての動きが止まる。

静一は、静子の犯行の瞬間を見ている過去の自分が狂気に満ちた笑顔を浮かべているのを見て、自分が静子を落とさせたのだと理解する。
「たしかに…僕は…思ってたんかな…心の……そこで…「落とせ」。「殺せ」って……」

そして静一は、犯行の瞬間で固まったまま静子としげるの元に向かう。
静一が見上げた静子は引き攣った表情で笑みを浮かべている。

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自分がママを苦しめていたのか、追い詰めていたのか、と静子に問う静一。
「最初から……生まれた時から……僕こそが…ママの苦しみの元だったん……?」

「全部……全部……僕のせいだったん……?」

静一は涙を流して何度もごめんねと謝罪しながら静子の口に口づけをすると、静子を抱きしめ、声を上げて泣く。
そして目を閉じ、静子に、自分はどうすればいいのかと問う。

(もう……僕が……生まれなかったことになればいいのに……生まれなければ……)

「じゃあ、ぼくをころして。」

目を開けると、しげると静子の姿はない。
静一は崖に背を向け、土下座のような態勢をとっていた。

その背後には、頭から出血した幼い静一が立っている。
幼い静一は静一に呼びかける。
「ぼくを、ちゃんところして。」

第91話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

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第92話 ありがとう

「まま」

「ぼくを…ちゃんところして」
幼い静一が静一に語り掛ける。

静一はゆっくりと立ち上がると、自分をじっと見上げている幼子の両脇に両手を差し入れ、持ち上げる。

「…………うん……」
高く持ち上げたまま、静一は幼子と視線を合わせて語り掛ける。
「消える……消えようね。」

「やっと…消えられるんだね。よかったんね。」

うん、と返事をして笑う幼児の静一。
「うん まま」

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「…………ママ?」
幼い自分から発せられた予想外の言葉に呆然とする静一。

幼い静一は静かに笑みを浮かべて静一を見つめている。

「ああ……そうだね…静ちゃん。今後はちゃんと死のう。」

「うん!」
幼い静一はにこにこと笑う。
「ぼくがちゃんとしんだら やっとらくになれるね まま」

うん、と答えて、静一は遠い目をする。
「そうだね……そうだね。」

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突き落とす

「ありがとうね。」
静一の顔の左半分が静子の顔に変貌していた。
「ママのために消えようね。」

「うん」

「じゃあ…いくよぉ?」
幼い静一を抱き上げる手も、静子のそれに変わっている。

「うん まま」
期待に満ちた目で左半身が静子になっている静一を見つめる。

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「ばいばい。」
その瞬間、静一は全裸の姿になっていた。
右半身が静一、左半身が静子の状態で、高く掲げた幼い静一を見つめる。
「ばいばい静ちゃん。」

「せぇーのぉー」
崖から幼い静一を容赦なく投げ落とす。

その瞬間、静一は高台からしげるを突き落としていた。

しげるは特に声も上げずに転落していく。

静一は笑みを浮かべて、両手を前に突き出したまましげるが落ちていくのを見つめていた。

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感想

まだ夜の明けない早朝にしげるが長部家に来たこと、そしてしげるの後を追って高台に来たことまでは、どうやら現実だったらしい。

雪が降る中、早朝4時くらいにしげるが長い距離を歩いてやってくるということにも、静一にとってのトラウマ体験の現場となった高台に来たことにも違和感があったので、てっきりしげるが来たところからずっと静一の悪夢の中での出来事だと思っていたんだけどな……。

おそらく、高台の柵の前に立ったしげると向き合う静一が、背後の林から聞こえるはずのない静子の声を聞き始めたくらいから静一の妄想は始まっていたということか。

何話も使って、かなり濃厚なトリップ体験をしたように思う。
正直、毎回読んでいて頭がおかしくなりそうだった。あまりにも鬼気迫る表現のオンパレードだったから……。この漫画は絶対に押見先生にしか描けない。

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静一にとって、高台は静子に自分の存在を否定された場所だ。
静子に突き落とされていたことを伯母に教えられ、自分の存在は母を苦しめるだけで、母にとっては不要と知ったことは、やはり静一の心をジワジワと蝕み、今回の話で完膚なきまでの破壊に至ったようだ。

自分は生きているべきではないと悟ったのは、結局静子を愛するあまり、彼女と気持ちが同一化してしまっているからなのかな……。
取り調べをした刑事からの「君は君だ」という静一を蝕む毒を中和するかのようなメッセージは、静一に確実に響いているように見えたんだけどな。それを機に生まれ変わったと思ったのに……。

でも、静一の心は修復不可能だったようだ。結局、選んだのは母と同じ破滅の道。

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この、生きる事に絶望して自暴自棄な感じ。
静子そっくりだなと思った。

親の通った道を子が通る。
タイトルの血の轍とは、つまりこういう意味なのか?

今回の話で静子と静一が一体化しているかのような描写になっているのは、つまりそういうことなんだろうと自分は解釈した。

そうなると、静子が親から似たような扱いを受けていた可能性はある。
親は静子のことを愛していたとしても、それが伝わっていなかったらその愛は無いのと一緒だ。吹石家を訪ねた静子が「親に愛されなかった」と言っていたということは、静子にそう言わせる何ががあったはずだ。
もちろん、ただ静子がおかしかっただけという可能性もあるけど……。

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静子が静一にしたように、静一がしげるを突き落とす。

いじめをする子供は、親からそういう扱いを受けていることがあると聞いたことがある。
親から暴力を受けて育った子供が親になると、同じように子供に暴力を振るうという話もよく聞く。

悲しい負の連鎖か。何とも救われない話だ……。

静一は自分に見立てたしげるを高台から突き落とした。

すでに静一の心は壊れており、積極的には生きていない、ただ死んでいないだけの状態だったのだろう。
それがしげるの登場と高台というロケーションによって自分が死に切れなかっただけの、本来この世にいてはいけない存在だったとはっきりと自覚した。

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母に囚われた心は、物理的に静子と離れたところで、もう手遅れ状態だったわけだ。

一時はここから立ち直っていくのかなと思ったのに……。

重体から治癒し、知的、肉体的にも障害が残ったしげるが高台から突き落とされて生き残れるとはとても思えない。
雪の降る早朝だから、誰かがしげるを発見して救急車を呼んでくれることも期待できない。

おそらくしげるは亡くなる。

警察の捜査の手は静一を放っておくことはないだろう。
果たして静一はどうするのだろう。自首か、それとも隠蔽か。

ここから物語はどう展開していくのか。楽しみだ。

次回が楽しみ。

以上、血の轍第92話のネタバレを含む感想と考察でした。

第93話に続きます。

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