血の轍 最新第112話面影ネタバレを含む感想と考察。夜勤を終えた静一に飛び込んだ一報。

血の轍 8巻

第112話 面影

第111話のおさらい

静一のアパートを訪ねてきた一郎。

二人は街の居酒屋に入る。

テーブルを挟み、向かい合って座る二人。

一郎は初めて静一と入った居酒屋に浮かれて、楽しそうにしていた。

注文した料理が来て、二人は食事を始める。

「静一は…いくつになったんだっけ?」

「………36だよ」

「そうか……俺ももう63だよ。早かったような…長かったような…」

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一郎から、あいかわらずひとりなのかと訊ねられて、静一は冷めた様子で答える。
「…こんな人間……誰かといられるわけないだろ。」

楽しそうな様子から一転、寂しそうな表情になる一郎。
「……ごめんな。何も……してやれなくて…」

静一は、こんな人間を見捨てないでいてくれただけで、もう十分と答える。

居酒屋を出て、駅での別れ際、一郎は静一に訊ねる。
「静一…ひとつ聞いておいてもいいかい?」

「静子のこと。もうこのまま……一生会わないままでいいんかい?」

いいよ、と答える静一。
「どうでもいいよ。あたりまえだろ。」

そうだよな、と一郎は静一の答えを受け入れる。
「わるい。それだけだ。」

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一郎を見送りアパートに戻る道中、静一は背後にしげるの気配を感じていた。
「……うん しげちゃん。もうじきそっちに行くから。」

「僕の中身はもう死んでるから。外身も死ぬまで。生きてるだけ。」

静一は振り返り、しげると手を繋いで歩き始める。

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第112話 面影

ミス

6月。

日が暮れて、雨の降る中、パン工場に出勤する静一。

静一はパンがたくさん入った容器を台車に積んで運んでいた。
容器ごとエレベーターに乗り、目的の階に着くまでの間、静一は一郎と呑んだ夜の、別れ際のことを思い出していた。

(静子のこと。)

目的の階に着き、前方を注意しながら台車を転がしていく。
軽い下り坂に差し掛かり、床の横に走っている僅かな溝に引っかかる形で、台車の小さな車輪が止まる。

静一は半分、心ここにあらずだった。

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(もうこのまま…一生会わないんでいいんかい?)

静子のことを思い出し、目を見開く静一。

その時、床の溝を超えて、静一の手を離れて台車が加速していく。
「…あっ」

静一は台車が勢いよく前方に滑っていくのを呆然と見ていることしか出来なかった。
台車は前方の壁にぶつかり、パンが床にばらまかれる。

「………申し訳ありません。」
上長らしき男に謝罪する静一。

ここでどれくらい働いているのかという男からの問いかけに静一は3年ですと答える。

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「っとに……どうしようもねえな。」
呆れた様子で呟く男。

それを受けて、静一は男をじっと見つめる。

「…あ?」
静一の視線を受けて、男は不愉快さを隠そうとしない。
「なんだよその目は。反省してんの?」

すみません、と謝罪する静一。

「……いいよ もう行って。」

「……はい…すみません。」

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病院

夜が明けて、外はまだ雨が降っていた。
仕事を終えた静一は、傘をさして工場から出る。
何気なくスマホを確認すると、着信が6件、いずれも同じ番号で入っている。
留守番電話を再生すると、病院からの折り返しを求める内容だった。

静一はその場で折り返す。
「あ……あの…おっ…長部と申しますが…えーと……ご連絡を頂いて……あっはい。」

「はい…そうです はい……一郎…は父です…はい…」

「…え?」

電話を終えた静一は、弾かれたように駆けだしていた。

電車を降り、小走りに病院に向かう。

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病院に着き、受付の女性の前に立つ静一。

口を開けるが、すぐに言葉が出て来ない。
「くっ… か… は…」

「ちッ」

「父っ…が……こちらに運び込まれたと……電話をいっ…いっ………いっ……」

静一はエレベーターで、受付で教わった場所に向かう。
ICUに辿り着いた静一は、渡されたマスクと透明のキャップ、透明のコートを装着し、部屋の中に入る。

静一が向かった先のベッドには、一郎が呼吸器を口元にあてられた状態で眠っていた。

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感想

一郎が倒れてしまった。
酒を酌み交わし合った直後ではなく、2、3か月経過してからというのが何ともリアルな感じだ。

いくら普通の人生を半ば諦めているとはいえ、自分のことを決して見捨てず面倒を見てくれた父が倒れたことを淡々と受け止められるほどの冷淡さは、静一には無かった。

静一の、病院に小走りに向かう様子や、受付で女性に一郎の所在を聞く際の焦燥ぶりは、一郎への想いの強さの表れだと思う。おそらく人間関係の構築を諦めているであろう静一にとっては、血の通った関係は父の一郎くらいしかないのではないか。まだ吃音が出てしまっているのも、人間関係を希薄にしている一因のように思う。もしこの状況で一郎がこの世を去ったら、いよいよ静一はこの世に独りになってしまう。可能な限り静一の立場になって想像すると、とても寂しく、悲しいことだと思った。

しかし静一にはまだもう一人、肉親がいる……。
一郎が倒れたことで、病院に集う機会が出来たわけだ。
これは、静一が拒否していても「会ってしまう」流れということなのか……?

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果たして病院から一郎が倒れた連絡がいったのは静一のみなのだろうか。もし静子にも連絡がいっているとしたら……? 仕事中で病院からの着信を受けられなかったから、その間に静子に連絡がいった可能性はあるのではないか。

前回の話で、一郎との別れ際、静一は静子と顔を合わせることを強く拒否した。
一郎が自分を最後まで見捨てなかったのに対して、静子はあの裁判の場で静一をあっさりと捨てている。それに、そもそも中学二年の時の静子による過剰な干渉があったから、静一の人生は狂っていった。大人になった静一は、それを客観視出来ているのだと思う。だからこそ、前回の一郎との別れ際に見られるように、静子を全力で拒否しているのではないか。

気になるのは、現在の一郎と静子の関係だ。一体、現在はどういう関係なのだろう?
どうも一郎の様子を見る限り、静一とは違って、静子と全く会っていないわけではなさそうな雰囲気なんだが……。

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静子は一郎のことを忌み嫌っていたが、一人では思うように生きられず、一郎の元に戻って一緒に暮らしているという可能性もゼロではないと思う。もしそうだとすれば、静子と会うことを全力で拒否する静一の態度にも納得だ。あまりにも節操というか、プライドが無さすぎる……。

裁判の場で、静子は静一を堂々と捨てて、これで自由に生きられると有頂天だった。それは言外に、一郎を捨てることも意味していた。あの裁判の後、いったい長部家に、いや、一郎と静子に何があったのか。それがここからの話で分かるのだと思う。

静一は今、普通の人生への執着に苦しみながらも、しかし自分の犯した罪を踏まえて静かに、毎日を耐えるように暮らしている。その生活を積極的に変えるつもりはなく、おそらくは人生の最後までそうしてやり過ごそうとしているように見えるのだが、どうやらそうはならないようだ。
今回の静一の仕事中のミスは、静子のことを考えてしまったことが原因だった。静一は、未だに静子に対してただの嫌悪しているというだけではなく、複雑な想いを抱いているように見える。

ストーリーに、徐々に波乱の空気が立ち込めてきた。
次回以降が楽しみだ。

以上、血の轍第112話のネタバレを含む感想と考察でした。

第113話に続きます。

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