血の轍 最新第76話再訪ネタバレを含む感想と考察。現場での実況見分に立会人として参加する静一。

第76話 再訪

第75話のおさらい

取調べを終え、部屋から出ていく静一を呼び止め、感謝を伝える刑事。

そして最後に思い出したように、メリークリスマスと声をかける。

一郎の元に戻った静一を待っていたのは一郎と、そして女性弁護士の岩倉だった。

岩倉に車で話そうと促され、三人は一郎の車に移動する。

一郎から、これからどうなるのかを問われた岩倉弁護士は、静子は警察の取り調べを受けており、淡々と話をしていると説明する。

静子はしげるを突き落としたことは認めているものの、その動機については、はっきりとは答えていないのだという。

静子には会えないんですか、と一郎。

岩倉弁護士は、今は弁護人以外会うことはできませんと答える。

 

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岩倉弁護士は今後の見通しについて説明をしていた。
明日にも検察に送致され、その後20日間の勾留される。その間に現場検証など証拠集めが行われた後、起訴されるかどうかが決まると淡々と続ける。

一郎から、実刑になるのかと訊ねられた岩倉弁護士は、そうならないよう最善を尽くします、と答える。

そして静一に視線を送り、刑事にどんな話をしたかを問いかける。

「僕は…僕が……見たことを、話した。」

「それはつまり、お母さんがしげる君を突き落としたって、言ったん?」

その確認にはっきりと同意する静一。

岩倉弁護士は、ハンドルに突っ伏した一郎を勇気づけるようにその肩に手を置く。
「……お気持ち、お察しします。」
そして静子の動機が不明確であること、証拠がなければ不起訴になる可能性もあると言って、静一に笑顔を向ける。
「静一君。がんばろうね。」

 

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夜。

静一は自室のベッドで夢を見ていた。

自分の歩いていく先に、ハエのたかり始めている猫の死体を囲む静子と幼い頃の自分がいる。

静子は静一に気付き声をかける。
「ママは、みじめなん?」

「静ちゃん。静ちゃんはママのこと、本当は嫌いだったん?」
涙を流す静子。
「ママがいなくなるんが、嬉しいん?」

 

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静一は泣きそうになるが、踵を返して元来た方向に歩き出す。

静ちゃん待って、という静一を呼び止めようとする声に負けず、静一は静子から離れていく。

ベッドで目を覚ました静一。
その目からは涙が零れていた。

静一は起き上がり、呼吸を整えてから自分に言い聞かせるように何度も呟く。
「僕は、僕のもの。僕は僕のもの。」

(僕は僕のもの…)

第75話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

 

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第76話 再訪

現場へ

静一はパトカーで山に来ていた。

パトカーから降りて、事情聴取を受けた刑事と顔を合わせる。

刑事から、今日は実況見分で山に登ってもらうが大丈夫かと問われた静一は、はいと返事をする。

「じゃあ行こうか。お父さんはここでお待ちください。」

刑事からそう言われ、一郎は暫くの間を置いて返す。
「これも別々ですか。」

別々でお願いします、と刑事。

「……静一…」
一郎は刑事と一緒に山に向かって行く静一の背中を何とも言えない表情で見送っていた。

 

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静一は「立会人」の腕章をつけて、警察官たちと一緒に山に登っていた。

静一の少し後ろから刑事が話しかける。
「静一君。この道を登って行ったんだね?」

「……はい。」
静一は息を切らしながら答える。
その脳裏には、あの夏の日に、楽しそうに山に登っていた一郎や親戚たちの姿が浮かんでいた。
黙々と山を登る静一。

「……」

静一の耳に微かに何かが聞こえる。
林の中に誰かが胸の前で手を組んで立っている。
徐々に姿を成したそれは、静子だった。
(静ちゃん……静ちゃん……)

(待って……待って……)
静一の耳には、懇願するような声が聞こえていた。
(行っちゃダメ……ダメ……)

(静ちゃん………)

しかし静一は前だけを見て、黙々と現場に向かって山を登っていく。

 

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現場到着

鬱蒼と茂る植物の間の道を越え、開けた場所に出る。

そこは静子がしげるを突き落とした崖のある”現場”だった。
「………ここです…」
崖を指さす静一。
「この場所…です……」

刑事が静一に声をかける。
「じゃあこれから、事件の再現をするからな。」

現場に立入禁止の黄色いテープが張られ、警察官たちが準備を終えると刑事が号令をかける。
「よし。じゃあはじめよう。おい頼む!」

静一の前に姿を現したのは、あの日のしげるの格好を模した警官だった。
警官は万が一の落下に備えて、命綱となるハーネスによる安全帯を装備している。

 

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「この人をしげる君だと思って。」
そして、刑事は静一に質問する。
「しげる君はどこに立っていた? 教えて。」

「…あ…あそこ…です………」
崖を指さす静一。

しげるの格好を模した警官が小走りに崖に向かって行く。

「あ…」

警官が崖の渕に立っている。

「そう…です…向こうを向いて…こっちを振り返る……」

そこに現れたのは、まさにあの夏の日に静一が見た光景だった。
「そう…です…」

「お母さんは? どこから来た?」

刑事から質問を受け、静一が答える。
「………ママ……ママは………こっ…こっ…ここに僕が…立っていて…せっせっせっ『静ちゃん』って声がして…」
後ろを振り返る静一。
「ふっ 振りっ向いたら…」

 

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そこにはあの夏の日の姿の静子が立っていた。
腕には”被疑者”の腕章をつけている。

(静ちゃん……)

驚きのあまり固まる静一。
しかし静子に見えたのは一瞬で、立っていたのは静子の格好を模した女性警官だった。

(ダメ……やめて……)
静子の声が聞こえる。

刑事は女性警官をお母さん役だと紹介して、実況見分を進めていく。
「お母さんはここに立っていた?」

静一は呆然としていた。

「…静一君?」

再び刑事に声をかけられ、静一はようやく返事をする。
「……はい。そうです…」
そう答えた静一は、小刻みに震えていた。

 

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感想

実況見分

うおおお! 先が気になる!

前回からの続きがいきなり実況見分当日! 現場検証ともいうんだったか。
重大事件だと、中継されたりするアレのことだな……。
警察に取材をしたのか、それとも資料を参考にしたのか。描写にリアリティを感じる。
犯人の実況見分の描写は見たことがあるけど、立会人のそれは記憶にないので中々新鮮だった。

静子に関しては、おそらく時間をずらすか、もしくは別の日にここに来て、自分がここで何をしたかを証言することになるのだろう。
静子がこの現場で警察官たち相手にどう振舞うのか、何を証言するのか気になる。
しかしこの物語は一貫して静一の視点で描かれているので、静一と同じく読者はそれらを直接確認することは出来ない。

 

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静子はもう何もかも終わりにしたいと思っている。
だから正直に自分の犯行を証言するのではないかと思うんだけど、静一に関しては正直に話すのかどうか、ちょっと微妙な印象を受けた。

前回までの刑事とのやりとりで静一は自分は自分であることを自覚し始めた。
このまま静子の影響下から脱するのかと思いきや、林の中に静子の幻影を見たり、警察署では見られなかった吃音症状が出たり、静子役の女性警察官の姿に明らかに動揺したり……。
明らかに緊張している。その原因は静子であることは間違いない。

 

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ここにきて静子の影響がぶり返してきたのは、やはり現場の空気が大きいのではないか。
実況見分の日は、12月の終わりか、もしくはおそくとも1月初旬だろう。
夏の暑さとは真逆の環境だが、山を登っている内に事件の日の感覚を色々と思い出していたのだろうか。
そもそも、あの事件の日以来何度も思い出している光景を、これから現場に行って目の当たりにしようとしているのだから、動揺するのは当然だと思う。

静一はこれまで静子に支配されることが当たり前だった。
静一の取り調べを担当した刑事から、自分は自分であるということを学んだことで、静子の影響を振り払えるようになったものの、母を犯罪者にしたいとまでは思わないだろう。

今、静一はどうしたら静子を救えるかという気持ちと、正直に話したいという気持ちがせめぎ合っているのではないか。

 

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きちんと証言できるか?

今回の静一の様子は明らかにおかしい。
きちんと本当のことを話せるかどうか、雲行きが怪しくなってきているように見える。

犯行現場にいて、事件の瞬間を目撃したのは静一だけだ。

静一は自分の証言が力を持っていることを自覚していると思う。
そしてもしその自覚があるなら、自分が実の母に引導を渡すということにも考えが及んでいるだろう。

事件の日以降、静一は静子から散々な目に遭わされているが、これまで一緒に生活してきた実の母だし、仲良くしてきた思い出もある。そもそも実の子が感情を排して母が犯人であることを証言することなど出来なくて当然だと思う。

 

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果たして、しげるが静子に突き落とされたシーンをきちんと再現できるのか?

ラストのコマの静一は小刻みに震えていた。
まだ母親を犯人として確定する作業に協力する覚悟が決まっていないのだと思う。

静一は心の内での戦いに打ち勝ち、正確に自分の見たことを証言できるのか。

スムーズに証言が終わらないであろうことだけは確かだろう。

以上、血の轍第76話のネタバレを含む感想と考察でした。
第77話に続きます。

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