九龍ジェネリックロマンス 第19話
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九龍ジェネリックロマンス 第19話 感想
際立つ違い
工藤さんも鯨井さんも切なすぎるだろ……。
互いを見ているようで、見ていない。
鯨井さんは工藤さんを見ているけど、工藤さんが見ているのはあくまで過去の鯨井さん。
それもかつて自分の先輩だった鯨井さんだ。
今は鯨井さんは後輩だし、かつては無かったぬいぐるみが置いてある……。
それでも、全く違うわけではないのがまた切ないな。
歯ブラシが置いてあったのは台所。それは以前と同じ。
化粧品の置いてある位置も同じだったはずだし、以前の鯨井さんとの共通点の方が多いくらいだ。
だからこそ工藤さんにとっては以前の鯨井さんとの違いが際立って見えるのかもしれない。
ベランダに出た工藤さんは、かつて自分が愛した鯨井さんの影を見てしまった。
今、確かに部屋の中にいるはずの鯨井さんではなく、鯨井さんの影に心を奪われているのは、現在の鯨井さんが可哀想だと思った。
でもどうしようもないんだろうな。
工藤さんは自然に過去の鯨井さんに意識を持っていかれている。
悪気があるわけではないが、それだけに問題の根は深い。
果たして鯨井さんは工藤さんの目を自分に向かせることができるのだろうか。
現在の関係性も仲が悪いわけではない。むしろ恋人未満といった風情の良い感じなのだが、工藤さんの気持ちが完全に現在の鯨井さんに向くまでは、まだまだ先は長いように思える。
他人からは鯨井さんが工藤さんの後輩に見えていることに、工藤さんは落ち込んでいた。
やはり、以前の鯨井さんが現在の鯨井さんになるまえでに時間が経過していたということなのかな。
先輩後輩
工藤さんは年齢を重ねたけど、鯨井さんは以前と年齢は変わらない。
そして経過した時間分、工藤さんは仕事の経験を積んでいることになるから、当初鯨井さんの後輩だった頃よりベテランになっているわけだ。
自分は工藤さんが現在の鯨井さんとイマイチ前向きに向き合えていないことが不思議でもあるけどなー。だって現在の鯨井さんも魅力的でしょうに……。
前向きにやり直す気になれない。気持ちが切り替えられないくらい、以前の鯨井さんが好きで仕方なかったということなんだろうな。
「部屋ってのは住んでる人の色に染まるもんだから。」
本来は、以前壁を塗った部屋に入居者が入った話であるはずが、このセリフを言っている工藤さんにとっては鯨井さんの部屋で今感じている気持ちそのままなのが何とも切ない。
帰り際の工藤さんの様子から、鯨井さんは彼が過去の自分を見ている事に気付いているのがわかる。
こういうことは女性の方が鋭い傾向にあるから、全く不思議ではない。
それでも鯨井さんは心を乱すことなく工藤さんを見送った。
少し前の、鯨井Bの存在に気付く前の鯨井さんなら心を乱してただろう。
だって工藤さんがあまりにも目の前の鯨井さんを見ていないから……。
そんな態度とられたら女性は怒るし、悲しむし、傷つく。
でも鯨井さんは工藤さんが見ているのが過去の自分だと分かっているのもあって、そのあたりは克服しているんだな。
この前向きさがあれな、鯨井さんはいつか工藤さんの気持ちを掴むことができるのではないかと感じた。
過去の鯨井さんと現在の鯨井さんの違いがなぜ、どうやって生じているのか、今後明かされているだろう。そのからくりがはっきりと分かる時が来るのが楽しみだ。
以上、九龍ジェネリックロマンス第19話のネタバレを含む感想と考察でした。
第20に続きます。
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