血の轍 最新第73話聴取1ネタバレを含む感想と考察。静一の事情聴取が始まる。

血の轍 第42話 橋の上

第73話 聴取1

第72話のおさらい

静一は吹石との思い出のベンチに座っていた。
目を閉じて自然を感じていると、隣に誰かが座る気配を感じる。

静一が目を開けると、そこには吹石が座って自分を見て微笑んでいた。

吹石に見惚れる静一。

吹石は静一の名を呼び、その頬に触れる。

吹石を抱きしめながら、静一は謝罪する。

ギィイッ…

扉が開くような、何かが軋むような不穏な音が響く。

静一は吹石から離れて、呼吸を整えようとする。

「長部。」
優しく静一に語りかける吹石。
「大丈夫、お母さんは行っちゃったから。」

「長部。長部の、好きなようにしていいんだよ。」

静一は吹石のジャージを脱がせると、夢中になって吹石を押し倒す。

 

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目を覚ます静一。

静一は静子を追って家を出てから帰宅後、真っ暗な自室のベッドの上でいつの間にか眠っていたのだった。
帰宅時は明るかった窓の外は既に暗い。

下半身を見ると、股間が盛り上がっている。

静一は興奮した様子で局部を晒し、しごき始める。

そして手の平に精を放つと、それをじっと見つめて陶然とした表情で微笑む。

居間に降りた静一は、カップラーメンを食べていた。
その表情はどこか活き活きとしている。

 

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外で車が停車する。
玄関のドアを開けて居間に姿を現したのは一郎だった。

一郎は居間の入り口に立ったまま、その顔を歪めると大声で泣き始める。
眼鏡を外して目元を手で覆う。
「ママ…つかまっちゃったい……」

静一は一郎を黙って見つめていた。

一郎は、明日、静一にも警察が話を聞きたいから話をしなくてはならないと告げるのだった。

静一は放心したように父を見つめていた。

第72話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

 

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第73話 聴取1

警察に到着

高崎警察署に到着した一郎と静一。
署の受付に進んでいくと、ご苦労様です、と一人の警察官が近づいてくる。
「静一君だいね。」
警察官は一郎にこちらで待っていて下さいと言って、静一を取調室へ案内しようとする。

「…静一。」
一郎は疲れ果てた表情で静一に声をかける。
「大丈夫だよ。普通に…話せばいいからな。大丈夫だから。」

一郎は立ち尽くして、警察官の後についていく静一の背中を見守っていた。

取調室に通された静一。

 

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殺風景な部屋の中央にはテーブル、そして既に椅子に座って待っていた一人の刑事が振り向いて静一を迎える。
「座って。」

静一は刑事に促されるままテーブルを挟んだ対面の椅子に座る。

「じゃあ静一君。」
刑事は早速話し始める。
「お母さんのことはお父さんから聞いてるかい?」

「…はい」

「これから質問するから。正直に、あったことをそのまま話して。」

 

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証言開始

「……あの、マ…お母さんは今、どこにいるんですか?」

刑事は、お母さんは署内にいて、詳しい話を聞いているところだと答えると早速尋問を開始する。
7月28日に両親と親戚とで山登りに行った日のことを朝から順にひとつずつ言ってみてと言われ、静一は話し始める。
「朝…朝…は…お母さんが…起こしてくれました。肉まんと……あんまんと…どっちがいいん? って聞かれて…僕は…肉まんって…言いました。」

それに対し、良く覚えてるね、と刑事。
「肉まんってハッキリ覚えてるん?」

それに対し、いつもそうだったから、と静一。
「肉まんと…あんまん…どっちがいいって聞かれて、いつも…肉まんって言ってたから…だからその日も…たぶん絶対そうで……」

「うん。それで?」
刑事はメモを取りながら静一に証言の続きを促す。

 

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「……それで…荷物はママがまとめてたから、車に……乗って……僕と…お父さんとお母さん、3人で…向かいました。」

お母さんに普段と変わった様子はあったかと訊ねられた静一は、なかったと思いますと返す。

続きを促され、山のふもとの駐車場でみんなと会ったと続ける静一に刑事が確認する。
「おじさん、おばさん、しげる君、おじいさん、おばあさん…この5人だね。」

「…しげちゃんが……しげちゃんが…おじいちゃんの杖をかっこいいって言って……2本あるうちの1本を…貸してもらってました…でも僕は…木の杖を渡されました。」

 

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それをどう思った? と刑事。

「………どう……別に…いつも……そんな感じだった…ので…」

「”そんな感じ”って?」
刑事は静一の何気ない証言を深く掘っていく。

「…つまり……しげちゃん…は…しげちゃんの…方が…親戚の中で…かわいがられて…いる…?」

なるほど、と刑事。
「君はそう感じていたんだね。」

静一は一瞬の間の後、そうだと思いますと刑事の言葉を肯定する。

 

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みじめ

「お母さんも、それを感じていたと思う?」

「………はい…」

刑事は静一の表情をじっと観察して、続きを促す。

静一は、みんなで山を登り、開けた場所で座って休憩したと話す。
「そこで…しげちゃんが崖の淵に立って。こっち来てみって呼んだんです…」
喘ぐように口を大きく開き始める。
「ぼっぼっぼっぼっくは…イヤだった…けっど……だって…しげちゃんはいつも僕に…いっいじわるっするっから…ゲームに負けたらいつもデコピンしてくるし、いっいっいっいっ…つも、バカにして………」

刑事は口を差しはさむ事なく、静一の顔をじっと見つめて証言を聞いていた。

「でも…僕は………いつも……断れなかったから……」

 

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「あっあっあっ…あのとき…も……僕はしげちゃんの横で崖の下を覗き込んで…でも…ママがっ、ママが僕の服を掴みました。そしたらしげちゃんが」
目を見開き、手を大きく広げてしげるの行為を再現する静一。
「”わっ!”って……押したから………ママは…」
静一はその時の静子のひきつったような表情を思い出す。
「ママは僕のこと、必死に助けて…それを…みんな笑った。」
次に静一が思い浮かべたのは、、その時の親戚たち、一郎、そして静子の笑顔だった。
「過保護だいねぇって…パパも、一緒に笑ってた。ママも、ママ…も。」

「僕のせいでママが笑われた。僕の………せいで…」

悲しそうな表情で証言を続ける静一を、刑事はじっと観察する。

「…でも…………でも…わからないふりをしてました。気付かないふりをしてました。見えてないふりをしてました。」

 

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「何を?」

静一は自分の心に踏み込んできた刑事を驚いたような表情で見返すと、口を大きく開けて続きを話し始める。
「マッマッマッマッマッマッマッマッ」

一段とひどくなった静一の吃音に驚く刑事。
静一に背を向けて調書を作成していたもう一人の刑事も静一に視線を向ける。

「マッ ママッ……ママッママッが、みっ、みっみっみっみっみっみっ、みじめ…な…こと…」
静一は今にも泣きだしそうな、悲しそうな表情を浮かべる。

刑事は静一を観察していた。

「みじめ…」
静一は直前に自分が言った言葉を確認するように呟く。

「続けて。」
刑事が続きを促す。
 

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感想

事情聴取

ついに事情聴取開始。

とりあえず今回の話では、静一は自分と向き合い、相当正直に話しているように感じた。

静一が刑事に対して証言した内容を一つずつ確認していきたいと思う。

1巻を読み直してみたが、7月28日の山登りの日は第4話からだった。

4話は一郎、静子、静一が車で駐車場に着いたところから話が始まっているので、今回静一が証言していたように朝食が肉まんだったかどうか、家から山までの車中での静子の様子が普段と変わりなかったかどうかなどは単行本では確認できない。

次に静一が証言した、しげるが祖父から杖を貸してもらったというのは確かだった。
しかし続く「木の棒を渡された」という証言については、ちょっと説明が足りない。
これではまるで祖父からその場できちんとした杖の代わりに木の棒を渡されたかのように読めるが、しかし実際は「山登りをしている最中でしげるから木の棒を渡されている」のだ。静一はその場で祖父に杖をねだっていないし、祖父は静一に杖がいるかどうかを確認すらしていない。

 

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これは静一が単に覚えていなかったのか、それともただしげると比べて可愛がられていなかったという話につなげるために意図的に、あるいは無意識的に行った改ざんなのかはわからない。

しかしその後に続く静一の証言から、親戚の中で自分よりしげるの方が可愛がられているという格差を普段から感じていたようだ。
その意識がこうして何気ない証言の歪みとして現れたということかもしれない。
静一には話をミスリードしようという気持ちなど一切なく、逆に偽りなく話そうとしているからこそ出てきた証言のように感じた。

その後、事情聴取している刑事が「お母さんもそれを感じていたと思うか」と問い質したのはちょっと誘導尋問くささを感じたが、しかし実際そういった積み重ねが静子がしげるを突き落とすに至った遠因だし、刑事もそのあたりを確認しようとしているのかなと思ったので、自分はこれを理由に刑事がフェアではないという印象を抱くまでには至らなかった。

 

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ストレスを受ける静一

そして証言は広場で休憩していたところにさしかかり、静一の様子に変化が生じ始める。
証言している静一のセリフに吃音が入り始めたのは、彼が大きなストレスを受けていることの表れだろう。
あの7月28日以来、静一は心理的に言いにくいことを話そうとするとどもるようになってしまった。
ここらへんでお母さんからママに呼称が変わっているのも、”お母さん”と取り繕う余裕が無くなったからだと思われる。

しげるが崖の淵で静一を呼んだことについて、静一は普段からしげるに意地悪ばかりされるので嫌だったことを正直に話している。
この証言について、静一が静子のためにしげるの心象を悪くしようとした意図など全くないと思う。
その後、静一が証言した通り、しげるに押されて崖から危うく落ちそうになるところを静子に助けられた。そしてそれを一郎も含めたその場にいた親戚たちが笑ったのも本当だ。静子も特に怒りを見せるわけでもなく、その場の空気を壊さないように力なく笑った。

 

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静一はそれに対して自分のせいで静子が笑われたのだと解釈していた。静一のその認識は正しい。4話の過去記事を読み返すと、当時の自分もこの場にいた親戚たちや一郎はひどかったと指摘している。ここまで物語を追ってきて、静子がちょっと精神的におかしいことを知っていても、第4話を読み返してみて当時の親戚たちの振る舞いがひどいという印象は今でも全く変わらなかった。第4話が秀逸なのは、日常にある人間関係のさりげない邪悪な部分が上手く表現されているからだと思う。

そして静一は続けて親戚たちに笑われたことについて「わからないふりをしていた」「気づかないふりをしていた」「見えていないふりをしていた」と、その時感じていた自分の気持ちにより一層踏み込んだ証言している。
この証言の内容に、何だか読んでてとても切なくなった。でもここまで客観的に自分を見つめ直すことが出来ているのは、静一の精神的な成長の一つなのかもしれない。

 

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刑事に「何を?」と問われ、一気に噴き出す吃音。そして静一は辛そうな表情で「ママがみじめなこと」とぽつりと証言した。
これは切ないわ……。そうか、静一は静子がみじめだと思っていたんだな……。
だから、それもあってしげるを突き落として様子がおかしくなった静子を助けたいという強い気持ちが生まれたのかな。

次回はいよいよしげるを突き落としたところの証言となる。
ここで静一がどう証言するのかが大事になって来る。

正直に答えるのか、それともあの日病院で刑事にしげるが自ら落ちたと証言したのと合わせるのか。

 

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どちらもあり得ると思うが、静子が連行された後、自宅で一人になった静一が開放的な気持ちになっていた様子を踏まえると、おそらく正直に静子がしげるをいきなり突き落としたと答えてしまうのではないか。

しかし、おそらくその後で刑事に、なぜその日のうちに警察官にそう言わなかったのかと問われるのではないか。
その時どうするのか……。

次回は色々と注目すべき回だと思う。今から楽しみ。

以上、血の轍第73話のネタバレを含む感想と考察でした。

第74話に続きます。

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