血の轍(押見修造の漫画)の第4話行楽日和の感想(ネタバレ含む)と考察。山登りをする長部一家と親戚たち。それは休憩中に起こった。

第4話
血の轍 第4話 一同
山登りする長部一家としげる、しげる父(おじさん)、しげる母(おばさん)、祖父、祖母の8人。急な山道の斜面を登り、一同は開けた場所で休憩をとっていた。そこでしげるが静一を絶景が見えるポイントに誘導しようとする。

第3話のおさらい

夏休み前最後の登校日、終礼を終えていつもの友達3人組と帰途につく静一。

友達3人組と別れると、背後から走って来る音が聞こえ、振り向くと同じクラスの吹石と大谷がいた。
血の轍 第3話 吹石と大谷
大谷が、吹石が静一と一緒に帰りたい、と代弁し、走り去っていく。

あとに残された静一と吹石は二人、並んで帰っていく。

二人黙って、並んで歩いていると、猫を発見して吹石が走っていく。

猫を撫でながら、静一の家に遊びに行っていいかと静一に問いかける吹石。

静一は、いとこが来るときは遊べないから母に聞かないとわからない、と答える。

その静一の答えを受けて、連絡して、約束だよ、と言う吹石。
血の轍 第3話 吹石
帰宅した静一を笑顔で出迎えた静子。

通知表を静一にねだり、通知表を開いてすぐに好成績なのを理解して静一の頭から頬にかけて撫でていく。

撫でられながら静一は吹石の事を具体的に言わず、友達を呼んでいいかと静子に聞く。

旅行などもあるので落ち着いてからにして、という静子に素直に了解する静一。

2階に上がっていく静一に、なにかいいことがあった? と問う静子。
血の轍 第3話 静子
静一は別に、と自室に行く。

静一が去って行ったあと、階段をジッと見ている静子。
血の轍 第3話 静子

第3話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

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血の轍 押見修造 漫画 第4話

親戚と揃って山登り

山の中、広場に一台の車が乗り入れる。

停まった車から出てきたのは静一、静子、父。
山登りのために帽子をかぶり、リュックを背負っている。
血の轍 第4話 静一と静子と一郎
同じく広場にいる祖父母としげる、おばさん、おじさんの5人も同様の恰好をしている。

「いい天気でよかったんねぇ。」と笑顔の祖母。
血の轍 第4話 祖父母
「ねぇほんと!」と返すおばさん。
血の轍 第4話 しげる一家
「ですねえ。」静子も続く。

静一の父とおじさんは煙草を咥えている。

「おじいちゃん!」
しげるが笑顔で祖父に話しかける。
「その杖かっこいいんね!」
しげるは笑顔の祖父が両手にそれぞれ持っている杖を見ている。

はは、と笑う祖父。
「もう一個あるからしげるも使うかい?」

やりぃーと笑顔のしげる。

「一郎くん運動不足じゃねぇん?」
おじさんが煙草を片手に静一の父に話しかける。
「気をつけてな。」

いやあ~がんばります、と煙草を吸いながら答える一郎。

夜は旅館でうまいもん食べられるから、とおじさん。

もーお父さんは! とおばさんがおじさんを窘める。

ははは、と笑い声が起こる。

会話しているのをじっと見ている静子。

静一はそんな静子を見つめている。

「さあ、じゃあ出発すんべえ!」
笑顔の祖父が声をかける。

ミンミンとけたたましく蝉が鳴く山道を一列になって歩いていく一行。
血の轍 第4話 山登り
ふうふう、と息をする音と蝉の音だけがする。

ひとつ息を大きくついたおばさん。
「けっこうきついんねぇ。」

ほれしっかりー、と振り返って笑顔で声をかける祖父。

静一は静子の後ろをついていく。

「お義母さん、大丈夫ですか?」
笑顔で前の背中に声をかける静子。

「大丈夫大丈夫」と笑顔で返す祖母。
静ちゃんがんばれー、と静一に声をかける。

ん、と返事をする静一。

「静ちゃーん!」
先行するしげるが大きめの声で、早く来いよ、と呼ぶ。

静一が、ん…、と一瞬の間をとって、しげる目がけて駆けだす。

気を付けてね、と心配そうに声をかける静子。

追い抜いていく静一に、やるわね、と声をかけるおばさん。

静一は横目でおばさんを見て微笑む。

前方から、静ちゃん、と伸ばされた手。
「へい!」
しげるがしゃがんで手を伸ばしている。

しげるを笑顔で見る静一。

静一は右手をしげるの差し出す左手と繋ぎ、しげるが引き上げるのとタイミングを合わせて登る。

これやるよ、と大き目の枝を静一に差し出すしげる。
「杖にちょうどいいんべ?」

静一はもらった杖を見ながら礼を言う。
「あ、ありがとう。」

おじいちゃんはえー、と言って登るしげるのすぐ後ろを笑顔でついて行く静一。

その様子を笑顔で見つめる静子。
血の轍 第4話 静子
蝉の鳴き声はずっと続く。

空には鳥がピロロロ、と鳴きながら悠然と飛んでいる。

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静子の心配と恐怖

一行は開けた場所で岩や地面に座って休んでいる。
血の轍 第4話 休憩
「今どのくらいまで来ました?」
おじさんが煙草を片手に祖父に問いかける。
「半分くらいですか?」

まだまだ、3分の1くらいだ、と笑う祖父。

それを聞いて、うへぇー、と声を出す静一。

笑顔で静一を見つめる静子。
「静一、大丈夫?」

静子と目を合わせて、うん、と返事する静一。

静ちゃん、と呼ぶ声。
崖のようになっている場所に立っているしげるは、こっち来てみ、と静一を呼ぶ。
「なっから高けー!!」
血の轍 第4話 しげる
静一は、えー? としげるの元に歩いていく。

静子は口を一直線に引き締めてその後ろ姿を見つめている。

ほら、と静一を促すしげる。

静一は辺りを一望できる絶景に、わっ、と声を漏らす。
「ほんとだ!」

「もっとこち来てみ?」
笑顔で静一を呼ぶしげる。
「ゾクゾクするから!」

「え…うん…」
静一がしげるに向けて一歩踏み出す。

「!」
静一の体が、ぐっ、とその場に止まる。

「静一、気を付けて。」
静一に追いついた静子が、静一のポロシャツの袖を右手で掴んでいた。
血の轍 第4話 静子と静一
静一は頬を少し染めて、静子を振り返る。

「静子さん!」
おばさんが声をかける。
「だーいじょうぶよ!」

おばさんを横目で見ながら、は…、と声を出す静子。

あっ静ちゃん、あそこ見て! としげるが指を指し示す。
しげるは、え? と示された方向を見ようとした静一の肩をどっ、と押す。
血の轍 第4話 静一としげる
静一は崖に近づき、ひゃ、と声を出す。

静一の身体を後ろから、がばっ、と抱く静子。
血の轍 第4話 静子と静一
横目で母を見る静一。

静子は恐怖に引き攣った形相をしている。
血の轍 第4話 静子
「あはははははっ」
おばさんがけたたましく笑う。
「何してるん静子さん!? 本当過保護ねぇ!!」
血の轍 第4話 一同
おじさんがふふ、と笑う。

押した張本人であるしげるも、はははっ、と笑う。

祖父も笑顔を向けている。

一郎は座ったまま静子と静一を見ている。
その口元には、周囲に同調したようなわずかな笑み。
血の轍 第4話 一郎
静一はその光景を呆然と見ている。

静子は、…あは! と声を出す。
「すみません…」
一同から視線を逸らせながら謝る静子。
血の轍 第4話 静子
笑顔の祖父が、そろそろ行ぐんべえ! と声をかける。

再び登り坂の山道を行く一同。

後方を歩く静一は、じっと静子の後姿を見ていた。

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感想

危ないなぁ。

高い場所でふざけて身体を押すとかそもそもやるべきではない。

もしふざけてやるとしても、柵なんかの対策がしっかりしてあってまず落ちないところか確認の上、絶対落ちないという確信を得るべきだろう。

しげるが静一を押した場所は、少し間違えれば本当に落ちてしまいかねない危険な場所だと思う。

おばさんに過保護だと言われ、それに引きずられるようにみんなが笑っていたが、静子がとった行動が果たしてそこまで過保護なのかとも思える。

それは自分が高所恐怖症だからなのか?
しげるに肩を押されバランスを失いかけた静一に静子が見せた恐怖に引き攣った表情は親として当然のものだとも思う。

親戚は、そして父の一郎でさえも、静子の行動をまるで「大げさだなぁ」とでも言うように笑っていたけど、静子の心配は分かる。

読んでて辛いのは静一を心配して行動をした静子を親戚一同が笑っていたことだ。

別にそこまで馬鹿にされていたわけではない。しかし純粋な守りたいという想いから出た行動を笑いものにされてしまった。

せめて静子が親戚たちに反論したり、しげるに注意したならまだ溜飲が下がろうものだが、静子はただ、笑う親戚たちに同調して弱々しく笑うことしかできなかった。

静子が、自身のプライドを最優先するあまり周囲を敵に回しても構わないという盲目的な視野の持ち主ではなく、周りとの関係もきちんと築き、守って行こうとしている良識を持ち合わせた人物だと読み取れる。

前者だったら間違いなくキレている場面だ。

静子は、少なくとも自分が笑われることは許容できる。ただ静一が心配なだけ。

というか、少なくとも父の一郎はもう少し心配してもいいと思う。
子供同士のやりとりで他愛のない悪戯だと認識しているならともかく、自分の妻が恐怖に駆られて息子を救うための行動を起こしたんだから、とりあえず駆け寄るとかしてもバチは当たらないと思う。

しかし一郎は親戚に混じって薄い笑顔を浮かべて周囲に同調していた。

静子の味方になってやれないものかね。

静子はそんな一郎にちょっと愛想が尽きているのか?
今回の出来事で、静子が静一に向けるのと一郎にむけるのとでは明らかに言葉の温度が違う理由が伺えたような気がする。

今のところ、静子は静一と距離が近すぎるとも思うけど、総合的な評価としては良い母だなぁと思う。
優しいし、可愛いし。

今後、それが変わっていくのか。変わるとしたら善悪どちらの方向にイメージが変わるのかが楽しみ。

今のところ、物語はまだ大きく展開していない。日常を淡々を描くのに終始しており、静かな物語の進行を見せている。

果たして押見修造先生は、どこでアクセルを踏むのか。楽しみだ。

以上、血の轍第4話のネタバレ感想と考察でした。

第5話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

あわせてよみたい
押見修造先生のおすすめ作品や経歴をなるべく詳細にまとめました。

 

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2 件のコメント

  • 初コメ失礼します。

    この作品最初から読んでますが、最初の頃はお母さんが何か精神に異常を抱えてるのか
    と思いながら読んでたんですがこの4話を見る限りむしろ異常なのは周囲の方ではないか
    と思いました。それぐらいこの4話は読んでて胸糞悪かったです。
    ああいう柵もないような高所で悪ふざけして転落死した例はいくらでもあります。
    中学にもなってそれを理解してないあの従兄弟は精神が幼すぎるしそれを注意しない
    どころか助けた静子を大げさだと馬鹿笑いするあの危機意識が欠如した平和ボケの
    お花畑頭脳の頭パープリンの大バカ叔母こそ典型的な過保護な毒親ですね。
    いじめっ子の親とかにはああいうタイプが多いらしいです。従兄弟も学校でイジメとか
    やっててもおかしくないようなゲスさだしそういう設定でも納得出来ます。
    また輪をかけて酷いのが周囲の親族ですね。特に静子の夫。妻にも冷淡だし何より
    息子が危険な状況だったのに心配すらしないで愛想笑いって実は血が繋がってない義理
    の息子なのか?と勘ぐってしまいました。それぐらいあの冷淡さは酷かったですね。
    これから話がどう転ぶかわかりませんが静子と静一以外はどこでどういう不幸な展開に
    巻き込まれようがもう勝手にやってくれ、主人公達に影響しないで勝手に不幸になってろとしか思えません。
    主人公とお母さんが幸せになってくれればもうそれでいいです。

    • ジンガさんコメントありがとうございます!

      >4話は読んでて胸糞悪かった

      同意です。
      1話~3話はどこか不穏さを滲ませただけの、基本淡々とした日常を描いていたものだったのが、
      4話ではしげるのウェイっぷりとおばの静子へのマウントともとれる反応、
      そしておばに扇動されるがままの鈍感な親族たちが混然一体となってむかつきました。

      >いじめっ子の親とかにはああいうタイプが多いらしい

      あー、なんかすっごく腑に落ちる表現ですね。
      大したことないとか笑いながら相手が嫌がっていることに耳を傾けない感じというか。
      実生活でもそういうタイプには十分に警戒したいと思いましたね。

      >また輪をかけて酷いのが周囲の親族ですね。特に静子の夫。

      同意です。これが一番ヤバイと思いました。
      こういう夫だから静子は静一を偏愛するようになったのか、
      それともそれが始めで、気付いた夫が静子と心の距離をとった結果なのかと思ってましたが、
      ご指摘のこの可能性↓には気づいてませんでした。

      >実は血が繋がってない義理の息子なのか?

      これだったら怖い。再婚ってことですよね。
      仮にそんな状態の家庭だったなら静子と静一が断然可哀想です。
      二人で協力して耐えていかなくてはいけなかったとしたら
      両者の結びつきが必要以上に強くなっても不思議じゃないのかも。

      1話からのわずかな静子と一郎のやりとりを見ると
      明らかに静子の一郎に対する態度は静一に向けたそれより冷めたものです。

      自分が腹を痛めて産んだ子なのでそれはある意味普通なのですが、
      静子の一郎に対するわずかな素っ気なさにそうした生物的理由だけではないものを感じるんですよね。

      >これから話がどう転ぶかわかりませんが静子と静一以外はどこでどういう不幸な展開に
      >巻き込まれようがもう勝手にやってくれ、主人公達に影響しないで勝手に不幸になってろとしか思えません。
      >主人公とお母さんが幸せになってくれればもうそれでいいです。

      心から同意出来ますね。
      静一と静子には幸せになって欲しいし、他の親族は祖父母以外はそれなりに不幸になって欲しい。
      まぁ、そうなったら結果的には祖父母も不幸なんですが(笑)。

      ただ、静一と静子がこの漫画の志向しているであろう幸せを追求していくとなると、
      田舎ではたちまち噂が広まってしまうので、親族一同は間違いなく静一と静子の強力な敵になるでしょう。
      特にしげるの母(おば)はボスになるでしょうね。
      優しそうな祖父母も、一郎も豹変するでしょう。

      なんかこの話の進んでいく展開がひとつ見えたような気がしてきました。

      静一と吹石が仲良くなるのに危機感を抱いた静子が、静一を愛するあまりの異常ともとれる行動をとる。
      それを見た吹石が最初は静一を静子から奪おうと必死になる。
      それが無理だと分かって何もかもブチ壊す方向にシフト。二人の関係を周囲に暴露。吹石が静一と静子の一番の敵になる。
      一気に田舎で噂になる静一と静子。
      静一は中学校で壮絶ないじめに遭い、静子ともども親族からいじめられる。

      登下校で一緒になる3人の男友達が静一を壮絶にいじめる様がありありと思い浮かびます。
      そして迫害された静一と静子はさらに結びつきを強くして寄り添って生きていく覚悟をする、と……。

      押見修造先生なのでこのくらいの展開は覚悟しなくてはいけないですね。
      なんか、悪の華と似た展開といえるかも。

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