血の轍(押見修造の漫画)の最新第36話契約の感想(ネタバレ含む)と考察。吹石とベッドで同衾することになった静一。緊張した様子の二人はやがて……。

第36話 契約

第35話のおさらい

静一は吹石の部屋中に充満する彼女の匂いに包まれ、一人、部屋の中央に座っていた。

 

まるで吹石の匂いに酔っているように静一は頬を紅潮させ、ひとつため息をつく。

 

階下から戻ってきた吹石は、父親が飲みに行ったことと、祖母が就寝することを静一に報告する。
そして、おにぎりが三つ乗った皿を静一に差し出し食べるよう促す。

 

頬を紅潮させ、礼を言い、静一はおにぎりを一つ手に取って食べる。

 

「どう?」

 

吹石の問いかけに、静一は笑顔で答える。
「お…おいしい…! ん! むぐ…おいしい!」

 

「…かわいい。」
静一の反応を見つめていた吹石がたまらず呟く。

 

その呟きを聞き、静一が吹石に視線を向ける。

 

吹石は笑顔で続ける。
「かわいいね。長部。」

 

目を伏せて、黙ってしまう静一。

 

静一は正座していた。
その右膝には吹石の左手が置かれている。

 

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ラジカセから軽快な音楽が流れる。

静一は吹石が開いている歌詞カードを覗くようにして見つめる。

 

一番好きな曲なんだ。知ってる? という吹石からの問いかけに静一は、ううん、と答える。
「音楽とか…あんまり聞いたことなかったから。」

 

音楽が鳴り続ける中、二人はぽつぽつと会話を続ける。

 

「…どう?」

 

「うん…いい曲だね…」

 

「ふふっ」
吹石は歌詞カードから視線を静一に移す。
「ね!」
顔を真っ赤にして楽しそうに笑う。

 

静一はそんな吹石の顔を見つめる。

 

吹石は時計が10時過ぎなのに気付く。
「もう10時だ。私 お風呂入ってくるね。」

 

そして、静一にお風呂はどうするのかと尋ねる。

 

静一は突然の質問に戸惑いながら、見つかったらヤバイとお風呂を断る。

 

吹石は、そうだよね、と言って、お風呂に向かう為にドアを開ける。
「じゃあ…私 入ってくる。待ってて。」

 

吹石がドアを閉じて、部屋には再び静寂が訪れる。

 

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吹石がお風呂に入っている間、部屋に残された静一はCDのジャケットを見つめていた。

 

ふと目を上げると、カーテンに目を留める。

 

静一は立ち上がり、カーテンを開けて窓の外の景色を見つめる。

 

暗闇の中、強い風がビュウウ、と吹き付ける。
遠くには教会が見えている。

 

じっと窓から外の風景を眺めていると、吹石が戻ってきたことに気付き静一は振り向く。

 

そこにはパーカー、短パン姿で、まだ髪が乾ききっていない湯上りの吹石がいる。

 

「なに見てたん?」

 

「…あ…いや…べつに…」

 

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「…じゃあ、そろそろ、ねようか。」
吹石は静一を真っ直ぐ見つめる。
「どこでねる?」

 

静一は思わず目を伏せて、床でいい、と答える。

 

二人は互いに向かい合っている。しかし二人とも目を伏せている。

 

少しの間を置き、吹石は床だと父が入ったきた時にすぐ見つかるからと答える。

 

静一は、そうだね、とだけ答える。

 

吹石は静一に、いっしょにねない? と提案する。

 

吹石に視線を移す静一。

 

吹石は顔を真っ赤に染め、静一から目を逸らし気味に目を伏せている。
「ベッドで、いっしょにねよっか。」

 

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静一の心臓の音が一気に高鳴る。

 

静一は吹石からの提案に対し、すぐに答えられず、また視線を床に落とす。

 

吹石は照明の紐を引っ張って灯りを落とす。
部屋は一気に闇に包まれる。

 

暗がりの中、吹石はベッドに移動して布団に入る。

 

その様子を静一は黙って見つめるのみ。

 

ベッドに体を横たえた吹石は静一をじっと見上げる。

 

静一は胸の鼓動を感じながら、どうして良いか分からずその場に立ち尽くしていた。

 

「…どうぞ。」
そんな静一を吹石がベッドに誘うのだった。

第35話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

 

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第36話 契約

小指

静一は吹石のベッドに、ピシッとした気をつけの姿勢で体を横たえ、天井を呆然と見つめていた。

 

胸はドクンドクンと高鳴り、頬は真っ赤に染まっている。

 

その左隣では、吹石もまた頬を紅く染め、首を静一から離す様にして左に傾けつつも仰向けで寝ていた。

 

沈黙する二人。

 

静一の右腕、吹石の左腕が触れ合っている。そこで起こるじんじんと響くような感触を、二人は強く意識していた。

 

静一は吹石のいる左側にゆっくりと目線を送る。

 

吹石は左に顔を向けている為、表情は分からない。

 

心臓を高鳴らせつつ、静一は目を薄く閉じようとする。

 

その瞬間、静一は自身の左手に吹石が触れる感触を覚える。
心臓が一際大きく跳ねるのを感じていた。

 

吹石は静一から顔を逸らしたまま、右手の小指を静一の左手の小指に絡ませていく。

 

 

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左手

静一は左手に集中する。
小指だけだった絡めた指は、間もなくどちらともなく恋人繋ぎとなっていた。

 

ぎゅっと握りしめる感触に、静一は思わず吹石の方に視線を送る。

 

それまで静一から顔を背けていた吹石は、いつの間にか静一の方に体ごと向けていた。

 

じっと見つめて来る吹石と目が合った静一は、少し驚いた表情で吹石を見つめ返している。

 

「私のこと…すき…?」

 

吹石からぽつりと問われ、静一は目を見開く。

 

「ずっと…捨てない…?」
静一の目をじっと見つめて、吹石が再び問う。

 

静一の脳裏に、涙を流し微笑を浮かべる静子の姿が浮かぶ。

 

「………うん。」
静一は吹石を見つめ返しながら、答える。

 

目を閉じ、唇を尖らせる吹石。

 

静一はその光景を戸惑いながらも目を逸らすことなくじっと見つめる。

 

 

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キス

繋いだ手は熱を帯び、汗がじっとりと滲み始めていた。

 

ゆっくりと吹石の唇に近づいてく静一。

 

体を巡る血流はズグンズグンと音を立てて駆け巡る。

 

再び静子の顔が浮かぶ。

 

自分の顔を両手で持ち、覗き込む静子。

 

夏休み中、自宅を訪ねてきた吹石が帰った後、静子と吹石のラブレターを破り、その後キスをした直後の静子。

 

静一は徐々に吹石の唇に自分の唇を近づけていく。

 

その間、静一の脳内で静子の顔が渦巻く。

 

その高速で動く静子の映像は、やがてただの線になってしまう。

 

むにゅ、という感触を唇に感じる静一。

 

その瞬間、静一は眼球が上を向き一気に頂点に達する。
体全体が液状になり、股間と顔を中心に四散してしまったような感覚に陥る。

 

ドクッドクッドクッ

 

静子の微笑を背景に飛び散っていく静一の液体。

 

やがて最後の鼓動と共に、静一の意識はブラックアウトするのだった。

 

 

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感想

絶頂に達した静一

待ちに待った続き!
1か月は長過ぎた……。

 

静一、完全にイッてます(笑)。
いや、実際これ、触らずに果てた描写ってことでいいのかな?
描写が変態過ぎます、押見先生。

 

またド派手に果てたもんだ。体全体がとんでもない感覚に襲われてるのが分かる……。
キスしている顔の辺りと、股間の爆発がひどい(笑)。

 

あと吹石の方に向けている体の前面の融解が激しい。
それに対して、反対側となる右手は完全に形を保っている。
まるで吹石に近い部位から溶けてしまっているようだ……。

 

多感で全く経験がない中学生が好きな子とこんなことになれば無理もないのかな……。
こんな事が経験出来て、静一は本当に幸せな奴だ。

 

吹石と向かい合う静一の脳裏で盛んに静子の顔がフラッシュバックしていたけど、それだけ彼女からの呪縛を静一が強く感じていたということなのかなと思った。

 

それも男としての快感に全て奇麗に押し流され、静一は母の心への過度の干渉を一切許さない逞しい男へと見事に生まれ変わる一歩を踏み出すのか。
そういえば草叢に吹石と一緒に逃げ込んで、静子に見つかってしまったとき、静一は吹石を反射的に庇った。

そう考えると実は静一は既に立派な男だと思う。

 

夏休み、静一の部屋で静子ともキスしてたけど、あの時とはまるで比べ物にならない反応だわ。
あの時はただ静子の笑顔に静一が笑顔を返しただけ。
あれは静一が静子の闇に飲み込まれたという描写だったように思う。

 

 

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今回、静一は吹石の唇の感触に思わず静子の事も含めて全てが吹っ飛んでしまった、という感じに見えた。

 

ラストのコマで意識が途絶えたみたいな描写があったし、きっとこの夜はこれで終わりだろう。
一足飛びにさらにすごいことを経験するとか、羨ましくて悶えてしまう……。

 

というか、これでこの先に行ったら描写が生々しくなり過ぎて引くかも……。

 

押見先生の描写力の向上が激しく、惡の華の前半より格段にアップしてるからアレどころじゃなくなるだろう。

 

読みたいけど、もっと焦らして欲しいかな。ここで一気に出さないで欲しい(笑)。

 

 

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吹石はもう立派な”女性”

「ずっと…捨てない…?」か……。

 

吹石も中学生で既に立派な女性だわ。

 

今回も、吹石は完全に静一をリードしていた。
吹石から小指を絡めにいってた。こんな静一が耐えられるわけない。

 

振り返ると、自分が中学生くらいの時期は、女性の方が精神年齢が高かったなぁ。

 

吹石は静一に対して一途であり、気持ちが真剣なのが伝わってくる。
あまりに真っ直ぐで、逆にうっすらと闇が漂っているように感じられてしまった。

 

中学生にしては、ちょっとばかりセリフが重いかな……。
それだけ純粋に自分の気持ちをぶつけてるってことなんだろう。
でも、静一は受け入れてたっぽいしこれでいい。

 

あとひょっとしたら吹石が今回のような行動に出たのは、母が離婚で家を出て行って、父とも折り合いが悪いからこそ心の安定のために静一を強く求めたという側面もあったりするんだろうか。

 

 

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吹石はあまり良くない家庭環境にありながらもグレたりしない賢さ、我慢強さがある子だ。でもそれだけに、張り詰めていた気持ちを休める場所として、好きな男の子である静一に縋りたい気持ちはあるのかな。

 

偶然やってきた静一を自分の部屋に泊めるという夜に、より静一との絆を深めたいと思っていたろうし、実際成功したのだと思う。

 

おっさんである自分が女子中学生の気持ちをあれこれ想像しているのが気持ち悪くなってきたのでこの辺にしておくか……。

 

やっぱ大したこと書けないし、実際書いてないな……(笑)。

 

 

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一郎と静子の反応は……?

静一は文字通り”絶頂”の最中にあるわけだけど、しかしこれから彼の直面していくであろう現実は厳しいと思う。

 

まず中学生が無断外泊という時点でまずい。

 

静子はメンタルブレイクしてるっぽいけど、事情を一切知らない一郎は静一を探すべく方々を駆けまわり、警察にも駆け込んでいるかもしれない。

 

ちょっとした騒ぎになっている可能性は高いと思う。

 

最近も先生から静一が教卓を破壊したことを聞いたばかりだし、これまで静一に優しかった一郎もさすがに今回ばかりはキレそうな気がする。

 

というか、さすがに無断外泊に関しては強く叱らないとダメな案件だと思う。
無断外泊、しかも家に連絡もしないことで、壊れた静子はともかくとして、一郎がまともな親なら心配と同時に怒り心頭なはずだ。
心から静一の事を心配しているならば、だからこそ叱らないと……。

 

 

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もし一郎が、思春期真っ只中の静一が同級生の女の子と一夜を過ごしたことを表面上では叱りつつ、しかし裏では”いいなぁ”とか言って理解を示すような面があれば、個人的には一郎のことを人間味がある父親として少し見直すかも知れないなー。

 

予想としては、一郎が静一をきちんと叱るという展開に一票。

 

仮にここで一郎が静一の今回の行動を適当に流した場合、一郎のその無関心が静子の狂気を育てた一因という可能性が出てくるように思う。
でも多分その可能性は薄いかな。見舞い以降、それまで存在感が無かった一郎に対する見方が変わったのを思い出す。

 

静子が狂気を見せ始める6話までは、一郎はただ事なかれ主義者で静子のストレスの元なのかなと思っていたけど、見舞い以降で感じた一郎の印象は単に争いを好まなず、穏やかなだけなのかなと思うようになった。

 

 

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翌日以降の現実は厳しい?

静一は翌日以降どうするのだろうか。

 

きっと静一は静子の反応もそうだが、一郎の反応も推測して、翌日も帰宅し辛いだろう。
自分が中学生くらいの時は、門限を守らなかった時は、親に心配かけることより親に怒られる事ばかり気にしてたのを思い出す。

 

静一が吹石の部屋に二日連続で泊まる選択もあるかな……?

 

そうなると一郎と静子が、もしこの夜に警察に捜索願を出していなかったとしても翌日にはさすがに出す?
いや、翌日になれば、まず静子か一郎が学校に連絡するか。静一は登校してますか? と。
それは恥ずかしいことではあるけど、もし自分が親で、警察に頼らず一晩探したけど息子、娘の行き先が全然分からなかったら、まず翌日学校に出席を連絡するかも。

 

静一の場合は真面目だし、もし吹石に止められても翌日は学校に行く気がする。

 

最後に、吹石の父親と祖母が気になる。

 

この二人は、この夜は静一が吹石の部屋にいることは夢にも思わない。

 

 

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でももし翌日も静一が吹石の部屋に泊まるとなったら流石に父親と祖母にバレる確率はグンと上がる。

 

静一も吹石も、今回の事がバレればその時点で何らかのお咎めを受けることになるだろう。

 

人によっては烈火の如く怒るかも……。

 

でもこの夜を経験した静一と吹石にとっては、そんなことは何てことない気がする。
きっと気分は有頂天だろう。二人は幸せの絶頂に達してる。

 

しかしそうなってくると、ますます静子の存在が怖い。

 

静一に執着し、支配しようと躍起の静子と、実際に静一とキスをして絆を深めた吹石が争いにならないはずがない。
果たしてこの二人の対決はどんな結果になるのだろうか。

 

静一は吹石を守り切れるのだろうか。

 

血の轍 第36話のネタバレを含む感想と考察でした。

 

第37話に続きます。

 

あわせてよみたい
押見修造先生のおすすめ作品や経歴をなるべく詳細にまとめました。

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