第1話 血の轍
青年誌での新作が登場。
「キレイなお母さんは好きですか?」ってことはアレか?
押見修造先生の作品好きなので楽しみ。
幼児期の母との記憶。
母親に手を引かれ道を歩く子。
幼児の低い視点で右隣の母を仰ぎ見ている。
母が先に道端に寝転がる猫を発見する。
急いで駆け寄る子。
「わぁ~…かわいいねぇ!」
しゃがみ込んで猫の寝顔を見ている。
触っても良いかを問う子。いいわよ、と了承する母。
「ねこさーん」
子は呼びかけながら撫でるが違和感を覚える。
猫がつめたいと母に訴え、視線を猫に移す母。
そして猫に触り、しんじゃってる、と口にする。
何度も「どうして?」と母に聞く子。
応えず笑みを浮かべる母。
なんというか、最後の笑みに意味ありげな印象を持った。
仲の良い母と子なんだけど、見開きの母の微笑は慈愛に満ちているのだが、「血の轍」という題名もあってか、かすかな不安を覚える。
「[悪の華]のその先へ…!」なんてキャッチコピー書かれたら期待するよ。
朝
場面はうって変わってカーテンの閉ざされた部屋。
白シャツ、黒ズボンを身にまといベッドの上に寝ているのは少年だった。
目を覚ますが、枕に顔を伏せて起きるのを拒否する少年。
階段を上がり「静ちゃん」と部屋に近づいてくる声が聴こえる。
再び名前を呼び、ノックなしにドアが開かれる。
ベッドに座って「もう7時よ」と呼びかける母らしき女性。
それでも起きない少年のうなじをくすぐる。
驚いて勢いよく振り払いながら起きる少年。
余裕で見つめるのは母。
朝食をあんまんか肉まんが良いかを少年に問う。
早く下りて来なといいながら部屋を出る母。
普通なんだけど、なんだか違和感があるのは丁寧に描写されてるからだろう。
母は幼児の頃と同じ愛情を注いでいても、幼児から少年へと成長した子供は程度の差はあれど親と距離をとり始める。
母の変わらぬ愛情と違い、母に対する素っ気なさが先行する少年の態度。
しかし母は全く揺るがない。
少年が階下に下りていくとリビングには父。
肉まんののった皿と水の入ったコップが差し出される。
少年の目の前で交わされる父と母のやりとり。
天気予報を見る母を後ろから眺める少年。
「今日も暑いって」と少年に振り向く母から目を逸らす少年。
そんな少年の態度など意に介さず消えかけた水着の名札を書いておいたと言う母。
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学校
セミの鳴く中、学年と組、名前の書いてあるシャツとジャージのズボンの姿で道路を歩いていく少年。
リュックを背負い、手にはバッグを持っている。
少年の背後から誰かが走って近づいてくる。
少年のリュックに体当たりをする少年と少年と同じ格好で眼鏡をした同年代の男。
「長部(おさべ)ー おはよう!」少年を長部と呼び、肩に手を回して言う男。
その後ろからさらに二人同じ格好の男が来ていた。
水着をジャージの下に履いてきたかと眼鏡が後ろの二人に聞き、「長部は?」と長部のズボンをずらす。
やめろよ! と言うも後の二人も参加してジャージをずらそうとする。
抵抗する長部。
なんだか、いじめに発展しそうな雰囲気を若干感じた。過敏なのか?
だって1+3じゃないこのグループ。長部くんは簡単に弾かれるポジションじゃん。
あー、こわ。
中学校。教室で席につこうとする長部は窓際の女の子に目がいく。
吹石という女生徒は後ろの席の女子と笑いながら会話している。
その様子をチラ見する長部。
場面は変わってプールサイドへ。
水着の入っているバッグを片手に歩いていく生徒たち。
長部が何気なく脇を見ると既に着替えていた吹石と他の男子生徒が談笑している。
その様子を凝視する長部。
嫉妬だろうか。甘酸っぱい感じがたまらない。
長部は、吹石が男と喋ってる~、と、からかうように言い、吹石たちから死角になる場所に身を隠す。
ドキドキしながら隠れていると吹石は、わっと突然長部の前に現れて長部を驚かす。
驚く長部。
「あははっ、長部のばーか!」笑顔で言ってプ―ルサイドを走っていく吹石。
バッグを抱え、その姿を見つめる長部。
この吹石ちゃんが超かわいい。なんだか漂流ネットカフェのヒロインを思い出すなぁ。
こういう涼し気な女の子好きだよなぁ押見修造先生。俺も好き(笑)。
着替えないのか、という他の男子生徒からの言葉で我に返った長部に明日の土曜みんなでラーメン食いに行こうと言う生徒。
いいね、と同意する長部。
日が暮れて帰り道。長部は一緒に帰っていた朝の3人と笑顔で別れる。
いじめの話もあるのか? と感じていたけど、いまのところは、まだそんな感じはしない。
ただ、今後この良好な関係性がふとした拍子にいじめに変質する可能性は十分あるなとは思う。
この4人は3人+長部という図式でつるんでいる。
2+2なら少なくとも数の上で拮抗するが、1+3だと、少なくとも1がリーダーシップをとっていたり、何かしら秀でることでバランスがとれていることって必要だと思う。
しかし、少なくともそのバランスがこの4人の関係性においては見られない。
これってつるんでるグループ内においては結構危険な配置だと思うけどどうだろうか。
あと、当然だが吹石さんとの恋愛模様が気になる。
まだ一話だから日常を描くのに留めているが、描写がリアルだから困る。
ひょっとしたらいじめと恋愛が絡むのか……。
押見修造先生は特に不遇の思春期を過ごした男の心をエグる作風だからいちいち怖いんだよなぁ……。
特に恋愛関連は個人的にマジできつい……。
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母との夕食
家に辿り着いた長部は母とただいま、おかえりのやりとりをする。
机の上のお菓子を食べて良いか許可をとる長部。
「明日ね、おばちゃんとしげちゃん、また明日来るって。」
友達と約束してない? と聞く母に長部は断ると答える。
ムリしなくて良いという母に大丈夫と答える長部。
じゃあお願いね、という母にん、と素直に答える。
テレビの音が響くリビング。夕食を食べていると長部と母。
そういえば、と長部は今朝見た夢の内容を切り出す。
「たしか、本当にあった気がするんだけど…」と言う息子を驚いたように見て、「おぼえてるん!?」と表情を輝かせる母。
2歳の時の頃のことを良く覚えてたねと言う母。
あったよね、と応える長部。
思い出しながらその時のことを離す母。
「ちゃんと覚えてるんね… すごいんねえ。」
感動している様子の母。
「もう、あれから11年も経ったんかい。」
両手を伸ばしてそっと息子の頬に手を添える母。
慈愛に満ちた微笑で正面から見据える。
「静ちゃん」
動きを封じられたように母を凝視する長部。
「ママに抱きしめさせて。」
ちょ…やだよ! と頬に添えられた母の手を振り払う長部。
「ごちそうさま!」母から目を逸らして食器を台所へ運ぶ。
その背中に「でも、」と呼びかける母。
「でもあの猫…どうして死んでたんかねえ。」
振り向く長部。「さあ…車にひかれたんじゃねぇん?」
「そっか」
見開きで猫の死骸。顔の部分にハエが数匹止まっている。
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やはりテーマは近親相姦か
なんだかすごく母の愛を感じる描写だと素直に感じる。ただ健全さからは若干外れているような気がしてしまう。
なにしろ押見修造先生だからなぁ。
何かしら作品に毒があると思って間違いないわけで……。
今のところ、話の方向性としては母と子の近親相姦だよな……。やっぱり。
スペリオールの表紙に
「きれいなお母さんは好きですか?」
というキャッチコピーがあるし、カラーページの見開き、母の微笑のドアップのページにも、
「ついに[悪の華]のその先へ…!」
なんて書かれている。
これは結構な背徳の物語が期待できるのではないだろうか。
何しろ母が魅力的過ぎる。息子も中2らしく母を拒絶する部分があるが、基本的に母が好きなのが伝わって来る。
近親相姦とか雑誌でどこまでやって大丈夫なのかわからないけど、心身ともに爛れるような背徳を描いてくれることで新たな押見節が生まれることを大いに期待したい。
あ、別に近親相姦モノが好きってわけじゃないから!
決してそういう変態じゃない!
単に、押見修造先生の作品に期待してるってだけ!
でも正直、おっさんの俺に新たな属性、もといトラウマ植え付けるくらいの作品にして欲しいとは思ってる。
血の轍1話終了。次回血の轍2話に続く。
第2話の詳細は上記リンクをクリック。あわせてよみたい
押見修造先生のおすすめ作品や経歴をなるべく詳細にまとめました。
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