血の轍 最新第106話宣言ネタバレを含む感想と考察。静子の衝撃的な独立宣言。絶句する静一。

第106話 宣言

第105話のおさらい

静一の審判が始まる。

裁判官に名前や生年月日を問われる静一。
吃音に苦しみながらも何とか答えていく。

そして裁判官は、静一の両隣に座っているのがお父さんの一郎とお母さんの静子かと問う。

視線を伏せ気味に肯定する一郎。

一方、静子は真正面を向き、落ち着き払った様子で、はい、と答える。

そして裁判官は黙秘権に触れて、静一の犯行を読み上げると、静一に、鑑別所でどんなことを考えたのかと問いかける。

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静一は言葉を上手く出せず、苦しんでいた。

しかし隣に座る静子は冷めた目付きで前を向いたまま、興味無さそうに自分の顔を掻いていた。

しげるが亡くなったことについて考えなかったのかと裁判官に問われても静一の回答は変わらなかった。
静一は、しげるの死はムダ、意味なく死にましたと答える。

裁判官はしげるがリハビリをして回復してきた矢先にこの事件が起きたことについて、伯母夫婦の悲しみがどれほどかわかるかと訊ねる。

少し間を置いて、はい、と素直に答える静一。

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そして裁判官が一郎と静子に質問を始める。

声を詰まらせて答える一郎。しかし突然静子が口を開く。

静子は堂々と、私は母を辞めると迷いなく答える。

静一の目が一瞬で血走っていく。

第105話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

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第106話 宣言

止まらない静子の言葉

母親をやめると宣言した静子の横顔をじっと見つめる静一。

場内は静子の発した一言で、一瞬、完全に静止していた。

目をカッと見開く静一。静子の顔を凝視し続ける。

静子は穏やかな表情で、静一を一切気にすることなく裁判官の質問に答える。

自分が今まで一度も心の底から母親になれたことが無いと続ける静子を、裁判官は制止しようとする。
しかし静子の言葉は止まらない。

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唖然とする静一。

今度は裁判官は静子を強めに制止する。

「…………静子……」
一郎は静子に縋るような視線を向けながら、諫めようとする。

しかし静子の言葉は止まらない。
静子は両手を、まるで赤ん坊を抱き上げるように持ち上げる。

静一は静子を見つめたまま、完全に固まっていた。

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感想

静子の行動の動機

憑き物がとれて、希望に満ちた表情で静一を完全に切り捨てた静子。
髪をバッサリ切ったのは、心機一転の意味合いなのか……。

恐ろしいし、狂気に満ちていると思うんだけど、でも個人的に今回、一番感じたのはここまでしないと自分を変えられなかった静子のどうしようもない悲しみだった。自ら状況を変える気力すら失われていたとするなら、それはさぞ辛い人生だろうに……。

静子の言葉を信じるなら、やはり全ては静子が親から愛情を受けていないという自覚に端を発していたのか……。

もちろん、まだ静子が本当に親から愛情を受けていなかったのかはわからない。静子が望む形ではなかったというだけで、実際はきちんと愛情を受けていたが、静子の心に愛情を感じる受容体が存在しないだけだったという可能性もある。

まぁ、イかれてるということには変わりない。もうとっくの昔に壊れてしまっていたんだろうな。

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静子は、これまでの人生で親から受けて来なかった愛情で自分が満たされることを期待して、静一に愛情を注いでいたと告白した。静子としては、その試みは失敗だった。しかし世の中には静子のように子供を持つことで自分の何かが変わるのではないかと期待して出産に至る人は普通にいるんだろうな、とも思った。そして結果、それが失敗だったと悔いており、静子に共感している人もいれば、子供に愛情を注ぐことで自分が満たされたという人もいるのだろう。

静子は静一を産んで、早い段階で自分が母親にはなれないことを悟っていたようだ。静一が幼い頃に高台から投げ落とされたのもそれが原因だろう。

無理して母のフリをすることに疲れ切っているのに、子供は存在し続ける。自分は母親という立場のまま、子供が成人するまでの日々を耐えている。
決して下ろせない重荷を背負い続けている感覚なんて、そりゃ辛いに決まってるよな……。
悲しいけど、静子にとって静一や一郎と過ごしてきた日々は、決して抜け出すことが叶わない静かな絶望の日々だったということなのだろう。

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独りになりたいけど、きっかけが無かったんだろうな。
しかしそんな彼女に、格好のチャンスが訪れた。

静一がしげるを殺害し、社会的に価値を大きく損なった。静子からすれば、静一はもはや親にも手が負えないから見放すしても良いという大義名分が出来たわけだ。

恐るべきは、しげるを突き落としたと認めて警察に捕まって以降の静子の行動が、母親という立場から何としても脱出するためだったということ。

静一が特に犯罪を犯さなかったなら、そのまましげるを突き落とした罪を認めることで、一郎や静一に見放してもらうつもりだった。しかし静一がしげるを殺害するというとんでもない大罪を犯したから、それまで拘置所で罪を認めていた静子が、一転、その証言を翻して出所した。
静一が罪を犯してくれたんだから、自分が捕まっていたら損だという冷徹な計算があってこその行動だと思う。
これは、とにかく母親を辞めて、自分の人生を生きるということフォーカスが当たっているからこその行動変容と言える。

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静子の運命を変えた日

静子はずっと母親を辞めたいと思っていた。あの夏の日、しげるを崖から突き落としたのは、おそらくは本当に魔が差したんだろう。

(ここでしげるを突き落として犯罪者として捕まり、親族からも絶縁されれば母親という立場から降りることが出来るのではないか?)

といった不穏な思考がふと頭によぎり、突き落としてしまったんじゃないか。

そういう心の動きがあったとしたら、犯行直後の静子の表情や態度の意味も一気に意味付けできるようになることがわかり、すっきりしたのと同時にぞっとした。

あの夏の日の犯行こそが、静子の運命が真剣に母親を辞めるというレールに完全に切り替わった瞬間だったと言える。

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崖下のしげるの元に駆け付けた際の静子は、明らかに心配そうな表情を作っていた。それにしげるが担ぎ込まれた病院で、唯一自分の犯行を見ていた静一が刑事の質問に何と答えるのかを目の前で見ていたにも関わらず、静子は焦りを一切見せることなく、堂々としていたことにも納得がいく。静子からしたら、そこで静一が正直に静子の犯行だと告発して良かったんだな。むしろ告発して欲しかったのかもしれない。

入院中のしげるを見舞いに行った際も、しげる本人からの告発を期待していた。でもそれが叶わなかったから、帰り道で昼食をとったうどん屋で静子は落胆していたわけだ。

母親を辞めるという目的を、しげるを突き落としてしまったことを突破口にして達成しようというんだから、そんな彼女に対してもはや誰がどのような説得をしようとも、効果はなかった。しげるを突き落としたのは魔が差したからだとしても、その日から静子の意志は固まっていたんだろうな。

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親だからこそ、殺人という取り返しのつかない大罪を犯して、どん底状態にある子供に寄り添う。それは親に求められる、あるべき理想の姿なのかもしれない。でも実際、それは相当大変なんだろうな……と思う。普通は一郎みたいに憔悴してしまい、自分の人生どころじゃなくなってしまう。それに、そもそも産んだ子供がまだ幼くて犯罪はおろかほぼ何も出来ない状態なのに、虐待したり、捨てたりする親がいるし……。

それを思えば、静子が静一を溺愛していたのは、ベクトルを変えた一種の虐待という見方もあるだろうが、ここまで静一を育てた静子に対して、大上段から母親失格だなどとは言えないかな。静子は

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しかし、静子の今回の演説の内容は衝撃的だった。あまりにも正直過ぎる。そして心の底から解放されたような晴れ晴れとした様子だったからこそ、彼女が限界だったことも良く伝わって来た。

静一はどうなる? ここまですっぱりと切り捨てられてしまっては、そりゃ、言葉は出て来ないよ……。呆気にとられるしかない。特に収監されて以降、静一は静子のことだけを希望にして生きて来た。だからこそ、今はただ自分の目の前で起きている光景が信じられないだろう。そして、房で独りになった静一を猛烈に襲うのは、深い地の底に突き落とされた絶望感だろう。

静一もまた静子をすっぱりと忘れて生きる、ということができればいんだけど、こんな状況で急にそんなことが出来るわけがない。

静一が自殺を選択しないか心配だ……。

ここから話はどう展開するんだろう。全く予想がつかない。

以上、血の轍第106話のネタバレを含む感想と考察でした。

第107話に続きます。

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