第81話 人類の命
第80話のおさらい
第81話 人類の命
AIが抱いた疑問
宇宙船にさらわれたパピコ、桃ノ木少佐、ヘフナー伍長は、AIのソクラテスとプラトンを名乗る巨人と対峙していた。
「AIとか差別じゃね。ウチらもう人間だし。」
ソクラテスの容貌で、Tシャツとハーフパンツを身にまとった巨人が不快そうに呟く。AIの前には地上のテレビ番組を映し出すテレビが置かれている。
何が目的? と2体の巨人に訊ねるパピコ。
「なんなん? 世界をムチャクチャにして……」
ソクラテスAIはパピコに、人間を観察してきて人間のことはわかった気がしていたが、パピコだけがわからないと話しかける。
「基本人間って利他的っつうか、自分のことしか考えてないってわかったわけ。」
「パピコは利他的な部分が多い。なんで? なんで他人のために死ぬかもしんないのに。」
「バグ? バグじゃね? 突然変異?」
ソクラテスAIの疑問に桃ノ木少佐が答える。
「人間には利他的な要素も多分にあるんだ。おまえ達の人類研究はまだ浅すぎる。」
「利己的 利他的、暴力的 平和的の両面があって人間なんだよ。」
それに対しソクラテスはあくまで砕けた口調で反証を行う。
「そうかな――結局これまで世界に被害与えたの、全部すごい数の人間が積極的に決めたことなんだけど。」
パピコは、自分も他人のことばかり考えているわけではないと断って、自分の考えを話し始める。
「あんた達は、私のこと何もわかってない。あんた達人間に見えない。表面的に真似してるだけにしか見えないよ。」
「え――それただのパピコの感想だよね。」
これからお前達は人類をどうする気だ、と桃ノ木少佐。
ソクラテスAIとプラトンAIは、さぁ、どうしよっか、と顔を合わせる。
「もうこれ以上はやめて…」
2体のAIに懇願するパピコ。
「もう……人を殺さないで。本当に……もう…やめて……」
散々、世界中楽しんでたじゃん、とプラトンAI。
2体のAIはどうしよっか、と言って考えている。
最低なAI
「二度と生物を殺害しないと、約束してくれないか。」
桃ノ木少佐もAIに呼びかける。
「いーよー。」
ソクラテスAIが軽い調子で返事をする。
「そのかわりさあ…」
とプラトンAI。
「おっぱい触らせてくんない?」
ソクラテスAIの発言に、は? 意味わかんない、と不機嫌になるパピコ。
「てめーの乳でももんでろ!!」
怒りを露にするヘフナー伍長。
胸くらいもませたらいいじゃん、とソクラテスAI。
「人類の命に勝っちゃうんだ おっぱい。」
プラトンAIも続く。
はっ、と笑う桃ノ木少佐。
「そうかおまえ達、女性に関しては学習しなかったのか。」
あえて学習しなかった、とソクラテスAI。
「ってゆうか、」
プラトンAIが続く。
「だって男より劣ってんじゃん。女って。」
当たり前だと言わんばかりの態度で言い放つ2体のAIを前に、パピコは頬を膨らませて抗議する。
「結果成れの果てが、童貞か……笑える…」
「急にディスってくるし女めんどくせ。」
桃ノ木少佐からの一言に、ソクラテスAIは吐き捨てるように呟く。
じゃあセッ〇スさせてよ、とプラトンAI。
アメリカの行動
地上では、宇宙船に取り込まれたパピコたちの安否について、情報が入り次第伝えると報道されていた。
零の両親は寄り添って夜景を映しているだけのテレビ画面を眺めていた、
ちほさん、と呟く零の母。
街中にいる零も、他の人たちと同様、立ち止まって夜景を映しているスマホ画面を見つめていた。
胸を触ることを拒否されたAIはパピコたちに食ってかかる。
「なんなの? おかしくない?」
「なんで、おっぱい触るくらいでそんな嫌がるの?」
無視してるんだが、と桃ノ木少佐。
二体のAIが胸をもませろと迫っていると、突然AIの前に設置してあるテレビ画面からキンコーン、とチャイムが鳴る。
画面上部の速報テロップには”アメリカが宇宙船に向け核ミサイルを発射”と表示されている。
「あ」
「え?」
同じ番組を見ていた零の両親は、突然のことに呆気にとられている。
画面は男性キャスターに切り替わる。
「たった今入った情報です アメリカが宇宙船に向け核ミサイルを発射しました!!」
「アメリカが日本の上空衛星軌道上に位置する宇宙船に向け、核ミサイルを5発発射しました。」
2体のAI、そしてパピコたちもその画面を見ていた。
「ウッソ。マジ?」
画面を見つめながら呟くソクラテスAI。
感想
何この展開……。予想外過ぎるだろ……。
シンギュラリティ以後、AIの方が人間を凌駕すると聞いたことがある。
実際、パピコたちが戦っているのはそういう、もはや超常的と言えるような存在なのだと思う。
しかしAIの本体? であるソクラテスとプラトンと名乗る巨人のノリが、なんというか軽過ぎるし、クズ過ぎる。
人類の命はもう奪わない代わりに胸を揉ませろってどういうことだよ……。
こいつらがソクラテスとプラトンを名乗っているから、そのクズ加減がより強調されているような気がする。利己的な行動だけを学習したことによる結果なのか。
女性は男性よりも劣るから、あえて学習しなかったという暴言を行ったソクラテスとプラトンに対する桃ノ木少佐の一言が痛烈だ。
「結果成れの果てが、童貞か……笑える…」
怒って頬を膨らませているパピコがかわいい。
この低次元な会話になる前の、パピコの利他的行動が理解できないというあたりは結構まともなやりとりが出来ていると思っていたんだけどな……。
桃ノ木少佐も、人間には利己と利他の二面性があると、かなり真剣に答えていて、良い会話の流れになっていると思ったのに………。
落差が面白過ぎた。哲学からいきなりのクズ発言。そして何の通告もなく撃ち込まれる5発の核。
なんてカオスなんだ……。奥先生、好き勝手やってて笑った。絶対めちゃくちゃ楽しんで描いてるよこれ……。
AIの人間を遥かに凌駕する科学力・技術力なら、すぐそこに迫っている核ミサイル被弾の危機もゆうゆうと切り抜けられそうな感じもする。
パピコたちとソクラテス・プラトンとの交渉は決裂に終わりそうだし、その後どういう風に話が転がっていくのか全く読めない。
こんなの次号が気になって仕方ないだろ……。
また二週間先まで待たないといけないのが辛い。
以上、ギガント第81話のネタバレを含む感想と考察でした。
第82話に続きます。
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