血の轍 最新第44話お話をしようネタバレを含む感想と考察。静子が語り出したのは……。

血の轍 第43話 静一と静子

第44話 お話をしよう

第43話のおさらい

静一は静子に手を引かれ、帰宅する。

 

家の中に入り、居間に向かう。
居間はテーブルには食事した後の食器が載ったままで、床には衣類やゴミが散乱し、荒れ果てていた。

 

そこに一郎が登場する。
一郎は静一が無事であることに安堵した様子を見せたあと、すぐに、どこに行ってたん!? と追及を始めようとする。

 

しかし静子は、そんな一郎を制止する。
「何も、言わないであげて。」

 

言われた通り、黙る一郎。

 

静子に促され、静一は風呂に入る。

 

スポンサーリンク



 

脱衣所で服を脱いでいると、静一はパンツに射精した跡が残っていることに気づく。

 

しかし静一はそのパンツを丸めると、洗濯機に無造作に放り込むのだった。

 

風呂から出ると、居間のテーブルにはご飯、味噌汁、餃子、きゅうり、と食事が用意されていた。

 

そして荒れていた居間は、まだ衣類に関しては手付かずなものの、テーブルの上にあった食器類は片付いていた。

 

静子に食べるよう促され、静一は、いただきます、と言って食事を始める。

 

静子は静一が食事をする一挙手一投足を愛おしそうに見つめていた。
しかし静一は全く静子を見ることなく、静子の視線を気にする様子もなく、食事を続ける。

 

「静ちゃん。」
突然、静子が切り出す。
「パパは、おばあちゃんちに行ってもらったから。」

 

それを受けて、静一の様子に変わりはなかった。

 

「静ちゃんと2人で、お話するから…ぜんぶ。」
微笑を湛え、静子は話を続ける。

 

ようやく静一は視線を上げて静子を見る。

 

静子は右肘をテーブルについて頬杖をつき、静一を見つめていた。
「まず、ママのお話からするね。」

第43話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

 

スポンサーリンク



 

第44話 お話をしよう

しげるが落ちた時のこと

「しげちゃんが、落ちたときのこと。」

 

静一は目を見開いて、静子を見つめる。
食事の手は完全に止まっていた。

 

静子は目を細める。
「あのとき」
目を伏せる静子。
「あのときから、おかしくなっちゃったんだいね…静ちゃんも、ママも。」

 

「話さなきゃ、でしょ?」
そして静子は再び静一の顔に視線を向ける。
「ママ、もう逃げないから。」

 

静一は静子のその真剣な表情を受け、口を真一文字に引き締める。
箸をテーブルに置き、静子の話に集中するのだった。

 

一瞬の間の後、静子が手を左右に広げてみせる。
「うぇーい。」

 

それは、山でしげるが崖の上で見せたふざけた様子の再現だった。

 

スポンサーリンク



 

静子は、あのときしげるがこうやった、と前置きし、そこから静子としげるの会話を再現していく。

 

「ママ…ママは、『危ないからやめて!』」

 

「『ばっかじゃねぇん? ほんと過保護だいねぇ!』」

 

「そしたら、しげちゃんは、」
静子が左右に広げていた手を揺らす。
「バランスくずして…」

 

片足立ちになっていたしげるは、あっ、という声を上げる。
後ろの崖下に体が傾いていた。

 

その様子に驚く静一。

 

「しげちゃん!」
しげるの元に静子が駆け寄る。

 

「ママは…走ってって…」
静子は涙を流して言葉を絞り出していく。

 

「……」
静一はそんな必死な様子の静子の話を、涙を浮かべて聞いていた。
「うん…」

 

スポンサーリンク



 

改ざん

静子の回想が続く。

 

バランスを大きく崩し、崖に向けて体が傾いていくしげる。
静子は懸命にしげるに向かって走っていく。

 

「それで…」
溢れる涙を止めようとせず、静子は続ける。

 

「うん…!」
静一は力強く相槌を打つ。

 

「でも、間に合わなかった…」
上げていた両手を彷徨わせるようにして戻していく静子。

 

静一はきょとんとした様子で静子を見つめている。

 

「あとちょっとのとこで…手が…届かなくて……しげちゃん…は……」

 

「ごめんね…ママがもう少し…もう少し早く…しげちゃんを、つかまえてあげられてれば…」

 

静一の頬を涙が伝う。
その表情は愕然としていた。

 

がばっ、とテーブルに身を乗り出し静子を見つめる。

 

静子はそんな静一の様子を前にしても、特に何の反応も見せることはない。

 

スポンサーリンク



 

「……」
静一は震えながら、涙を流していた。
「……マ…」
その表情は悲しみに歪んでいる。

 

「ママが、しげちゃんを突き飛ばしたって、静ちゃんは思ってるん?」

 

そして、以前、家の廊下で静一がママがしげるを突き飛ばしたと指摘したことに触れる。

 

(どうして…しげちゃんを突き飛ばしたん!? 逃げないで!!)

 

静子は静一に近づいていく。
そして静一の肩と腕に手を置き、顔を近づける。
「ごめんね。ママ受けとめてやれなくて。不安…だったんだいね。苦しかったんだいね。」

 

「ぜんぶ、ママのせいにしたかったん?」

 

静一は何も言えず、ただ目の前の静子の顔を見つめていた。

 

「大丈夫。」

「静ちゃんもママも悪くない。しげちゃんは自分で落ちたの。」

 

スポンサーリンク



 

感想

歪んだ認識

まず冒頭のカラーページがすごい。
なんでただの親子の会話でこんなに禍々しい雰囲気が漂ってるんだ(笑)。

 

血がコマを横断して塗りつけられているだけで発生する、この異様な感じ。

 

このカラーページは単行本に収録されるかどうかわからないから、ぜひ一度、雑誌を手に取るべきだと思う。

 

そして静子が切り出した話!
それが何に関してのことなのか、気になって仕方なかった~。

 

でも前回予想していた、自分の過去の話なんかじゃ全然なかった。
それしか思い当たらなかったんだけど、そんな予想、とんでもなかったわ。

 

静子は腹なんて全然割るつもりもなかったし、割ってなかった。

 

「静ちゃんもママも悪くない。しげちゃんは自分で落ちたの。」

 

それが静子の答えか……。
いや薄々とそんな感じで自分を納得させていたんだろうな、とは思っていたけど、はっきりと口にしたなぁ。

 

スポンサーリンク



 

最初に語り始めた時は、静子が客観的に自身の罪を再認識し、懺悔でもする雰囲気だったように感じたんだけど、その逆でしげるを突き落としたことをここまで徹底的に認めない方向に舵を切るとは……。

 

むしろ静子がこれまでとってきた”罪を認めない”という方向性が、今回の話でより強化された気がする。

 

静子から深い闇を感じるわぁ。
何度も読んでいて、静子に同情まで抱いていた自分でさえ引いた。
今回の告白で、実はしげるに対する罪の意識と人知れずずっと戦っていたのかと思ったけど、でもその割には淡々としてた時点でこの流れは予期すべきだった。
衝撃を受けると同時に、だよね……、という感じでもある。
完全に鬼ですわ。女性の、というより人間の怖いとこが出てると思う。

 

スポンサーリンク



 

やはり静子は犯行を終えてすぐ、自身の内で生じていたであろう罪の意識との戦いに決着をつけていたようだ。
病院で刑事の事情聴取に対して、見事にしらばっくれてみせたし。

 

静一は静子の話の途中までは、自分や母の置かれている事態の解決に期待していた。
そのためにはまず静子が罪を認めることが肝要だからだ。

 

でもすぐに静子の言葉が自身の望んだものではないことを知り、絶望に顔を歪める。
静子の認識が変わっていない以上、現状が全く変わらないことがわかったのだろう。

 

静一は静子を守りたい一方で、罪は認めて欲しいと思っている。
しかし静一は最初に静子を刑事から庇ってしまい、その心に深い後悔が残った。
そのストレスはすぐに、吃音という形で静一に襲い掛かったわけだ。

 

スポンサーリンク



 

しらばっくれる静子

どうやら静子はあの時の目撃者が静一だけだったから、静一さえ何とかすればこのまま完全犯罪を達成できると確信しているようだ。
病院で刑事に対しても自分に都合のよい証言をしてくれたし、それで静一が自分を告発しないと考えるようになったのか。

 

今回の、この堂々たるしらばっくれっぷりは確信的だろう。
自分のあの山での行動があまりにショックだったから、自分に都合よく記憶を改ざんしているという可能性もあるけど、とてもそうは思えない。
完全にしらばっくれて罪から逃れる気だわ。
静一の認識は間違いだとして、彼を言いくるめようとしてる。

 

静子がしげるを突き落とした第6話を初めて読んだ時は、静子はあの時、つい魔が差してしまったという印象を受けた。
犯行直後の憔悴した様子は、今読んでも自身の行った愚行を悔いているように見える。
でもその後すぐに、静子はしげるは誤って落ちたという方向で、自身の犯行を完全に隠蔽する方向で動いていた。
それは既定の路線だと思っていたけど、今回で改めて静子の方針が分かったわ。この人ヤバイ。

 

スポンサーリンク



 

犯罪者の言い訳として「自分の弱さに負けた」というのはよく聞くけど、静子も捕まるようなことがあったらそんな事を言いそうな気がするわ。

 

彼女は実際強い人ではない。ある意味人間臭いと思うけど。

 

もし自分の犯してしまった罪を直視できず、尚且つ目撃者が自身の愛息のみということであれば、自分が仮に静子と同様の立場ならやはり静子のように自分は悪くない、しげるが落ちたのは不可抗力だったと主張するのかなと考えた。

 

全然想像がつかないけど、静子と同じ主張をしないと言い切れないかもしれない……。
しげるみたいな奴はムカつくし、当然その母である伯母だって嫌いなわけで、そいつらの為に罪を告白しようなんて心境になるかな? 黙ってれば誤魔化せるかもしれないのに。

 

ただ、罪の意識が普通の生活に戻ることを拒否しそうな気もする。
静一みたいに何らかの形で生活に支障が出そう。

 

スポンサーリンク



 

静一はどうする

静子の歪んだ認識を目の当たりにして、静一は今後、どう行動していくのだろうか。

 

中学生が親に働きかけられることなどたかが知れている。
ましてや完全にしらばっくれる気満々の静子を説得するなど到底無理だということは今回の静子の様子でわかったはずだ。

 

こうなった以上、やはり静一に出来ることは警察への告発しかないと思う。

 

静子の犯行を目撃したことが静一をこれまで苦しめてきたと同時に、静一を解放するカギとなるとは……。

 

今後は、静一が母を告発するまでの心境に至る過程が描かれていくのだろうか。

 

しかしあの時の静子の犯行を静一が目撃していなければ、しげるが植物状態になったこと以外はなにひとつ事件の後も変わらなかったと考えると恐ろしい。
世の中には、こういう犯罪がなかったことになっているケースもあるんだろうな。

 

静一はどんな選択をするのだろう。
静子の思惑通りになるのか、それとも静子に逆らうのか。

 

スポンサーリンク



 

そしてまだこの夜の会話は終わっていない。

 

静子は「全部話す」と前置きした以上、さらに別の話も出てくるのかもしれない。

 

あと今回静子は「ママの話からする」と言った。
ということは静一が尋問のような形で静子から根掘り葉掘り聞かれるという展開になる可能性がある。

 

きっと吹石に関してだろうな……。

 

静一が吹石家にいたことは、きっと吹石父から連絡があったんじゃないかな。

 

静子がどこか肚を決めているような様子で話を切り出したのも、実はそれを静一から聞き出すためだったんじゃないか。
今回静子がわざわざしげるについて言及したのは、こっちは腹を割ってしげるの話をしたから、静一も腹割れよ? って感じで詰めるための、その布石でもあったのかも。

 

そうなると、静一が完全に追い詰められるわけだ。

 

次回はさらに恐ろしい展開が待ってそうだ。

 

以上、血の轍第44話のネタバレを含む感想と考察でした。

第45話に続きます。

あわせてよみたい
押見修造先生のおすすめ作品や経歴をなるべく詳細にまとめました。

血の轍第4集の詳細は以下をクリック。

血の轍第3集の詳細は以下をクリック。

血の轍第2集の詳細は以下をクリック。

血の轍第1集の詳細は以下をクリック。

スポンサードリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA