第29話 なすすべ
第28話のおさらい
校門を出て、零と中島は駅に向かっていた。
駅前ではサラリーマンの巨人と警察官が戦っている。
電車に飛び乗って、周りの乗客に倣い、電話をしようとする零。
ふと窓の外を見ると街中を何体もの巨人がうろつき、人を襲っていた。
東京駅周辺はヤクザが、渋谷のスクランブル交差点では女子高生の巨人が闊歩し、浅草雷門前には、仁王像が巨大化して人を襲う。
駅に辿り着いた零と中島は、互いの無事を祈って別れる。
駅を出た零は、自宅まで全力で走りって無事に帰宅する。
零は父と母に出迎えられ、抱き締められる。
その夜、テレビのニュースは、政府がようやくこの事態に対し、自衛隊出動を決めたことを伝えていた。
家の外で相変わらずサイレンや、ドンッ、ドンッという音が響いている中、零はベッドで休んでいた。
近くで悲鳴が上がっているが、零は特にそれらに対し反応しない。
その時、零の部屋の窓から突如、巨人の手が猛烈な勢いで突っ込んでくる。
ベッドから起きて、部屋の中にある巨大な手を見つめる零。
「ちほ…さ…ん。」
あまりの光景に零は固まっていた。
第29話 なすすべ
巨人との戦い
拘置所の一室で、パピコは布団に体を横たえていた。
「零…くん……」
まだ世間の騒ぎに気づいた様子はない。
一方、零は自室で寝ているところを巨人に発見されていた。
巨人の手によって破壊された窓越しに巨人が零を見つめる。
零はベッドの上で巨人に対して怯えて、身動きがとれずにいた。
「零!! 零!! 大丈夫!?」
零の身を案じて階下より駆け上がってきた両親が零の部屋の入口で零に呼びかける。
「零!」
巨人の手がベッドの上の零に向かって伸びていく。
零はベッドから飛び降り、ギリギリで巨人の手をかわす。
両親は零に向けて必死に、こちらに来るように呼び掛ける。
しかし零は両親の元ではなく、窓と平行に走って自分の机に向かった。
そして巨人の手によってあえなく捕まってしまう。
巨人に掴まれた零は、猛烈な勢いで部屋の外に引きずり出されようとしていた。
部屋の入口に立つ両親から、どんどん遠ざかっていく。
零に向けて手を伸ばす母。
零は手に取っていたカッターの刃を出し、それを思いっきり巨人の手に突き立てて切り裂いていく。
思わぬ反撃を受けた巨人は悲鳴を上げ、零を手離すのだった。
痛いと大声で叫ぶ巨人。
「ふざけんな ちくしょうううう」
零と両親は部屋の中から、罵声を上げている巨人を呆然と見つめていた。
夜が明けると、路上には巨人の手にかかり亡くなった人たちが倒れていた。
情報収集
結局、巨人からの反撃を受けずに済んだ零は、無事に朝を迎えて両親とリビングで食事をしていた。
テレビのニュースは自衛隊の車両が早朝から街中を走っていく様子をレポートしている。
零のスマホには学校が休みだという連絡が来ていた。
テレビを観ながら、1日で何とかしてほしいよ、と呟く父。
それを受けて、本当、買い物も行けないわよ、と不満げな様子で母も続く。
零はスマホでETEを開いていた。
”ざまあ 東京 ざまああああ”
”がんがれ! 東京壊滅まであとわずか 超がんがれ!!”
”お前らなあ……東京都市機能も失ったら地方もかなり困るんだが……”
”東京はいやな奴ばっかりなので全員死んでよし”
「ったくこいつら。」
ヒドイ書き込みに怒りと同時に呆れた様子の零。
続いてツイッターを開くと、タイムラインは各々が受けた被害のツイートが大半だった。
零はそんな中にある、”パピコ釈放運動委員会”というアカウントからのツイートに目を留める。
パピコ釈放運動委員会
【拡散希望】
六本木の巨人を最速2時間で倒したパピコさんを釈放しよう!!巨人達に襲われている東京を救えるのはパピコさんしかいません。
先日の地裁第1審で弁護側の出した証拠 東京中の監視カメラにパピコさんが一般人を踏み潰したり怪我をさせたりしている事実は一切確認出来ませんでした。
そのツイートを読み、良かった、と呟く零。
「ちほさん…無実だ……」
”無実のパピコ 真のヒーローを釈放せよ!!”
パピコ釈放委員会によるツイートは続く。
生中継が映し出したもの
テレビは緊急生放送を行っていた。
市街地で、自衛隊が巨人に対して銃を打ち込んでいる模様が映し出される。
銃弾の雨を受けて血を吹き出して倒れていく巨人たち。
その作戦は、東京各地で同時に行われていた。
その映像を見て、おーすげえ、と呟く父。
「テレビでこんなの映していいんか。」
ちょっとスーパー行って来ようかしら、と完全に平静を取り戻した様子で母が呟く。
零はスマホを凝視していた。
「………いや…」
ETEの掲示板では、巨大ロボ、という書き込みが増えていた。
テレビに視線を向けると、渋谷駅付近に巨大ロボが現れた様子が映し出されていた。
「なん…だ…アレ。」
父は呆然としている。
中継のリポーターは、突如現れた巨大ロボを前に、自衛隊が退避していく模様を伝えていた。
「これは!! なすすべありません!!」
巨大ロボの行進は止まらない。
感想
絶望
いよいよ日本がめちゃくちゃになって参りました。
ついに巨大ロボまで登場。
ロボット登場シーンは、読んでて思わず「あーあ」と声が出てしまった。
絶望感がヤバイ。
それでも以前の破壊神の時の方がより強い絶望感を覚えたけど、何しろ今回はパピコがいないからなー。
有効な対抗手段が無さ過ぎる。
巨人たちには自衛隊員の携行している銃器が有効だった。
でもこの巨大ロボにはそれが効かないことは容易に予測できる。
となると有効なのは戦車による砲撃、あるいはミサイルくらいじゃないのかな……?
国内で、それも東京の市街地でそんな威力の高い兵器を使わなくてはいけない事態という時点で、東京及び日本は一気に詰みに近い状況へと追い込まれたのではないか。
前回まではこの巨人たちを相手に人類もそこそこ優位に戦えていたけど、今回のロボでそれが甘いことを思い出した。
そもそもパピコが斃した破壊神だって自衛隊では対処不可能だろう。
やはりETEを相手にできるのはパピコのような巨大化デバイスを有した巨大化できるヒーローだけなのか。
パピコはいつ復活する?
作中ではパピコ釈放運動が広がっていたようだ。
多分自分もこの世界の住人ならそれに加わってたのかもしれない。
しかし法律に照らすとどうしてもあれだけの破壊を生んだパピコを釈放することは難しいようだ。
世間の声など無力なのだろう。
冒頭でパピコの様子が描写されたけど、どうやらパピコはどうやら塀の外では大変なことになっているのを知らないようだ。
もし外で起きている事態を知っていたら、零のことが心配なあまり、すぐに巨大化して脱走し、駆けつけるんじゃないかな。
でもパピコには情報を得る手段がないようだ。
拘置所を巨人やロボが破壊すればさすがにパピコも事態の深刻さに気づいて自分の力を発揮するのだろうけど、そんな状況任せなのはどうなんだろう。
気付いた時には手遅れになりそう。
あの巨大ロボに対抗できるのはパピコしかいない。
ロボットのデザインが武骨でカッコイイけど、敵だからなーこれ。
GANTZの大阪編の時のような味方だったら最高に痺れるんだけど……。
果たしてパピコはどんな形でこの戦闘に参戦するのか。
以上、ギガント第29話のネタバレを含む感想と考察でした。
第30話に続きます。
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