血の轍 最新第133話脱ぐネタバレを含む感想と考察。なぜ静子は俳優にならなかったのか。

血の轍 8巻

第133話 脱ぐ

第132話のおさらい

静子は小学生くらいの物心ついか時に感じていたことを隣で体を横たえている静一に向けて語っていた。

中学生のころまではふさぎ込みがちだったが、高校で佐知子という友達に演技部に誘われることで人生が変わるのだった。

高校では佐知子の勧めで演劇部に入り、静子は徐々に絵の腕を上達させていく。

静子は東京で俳優として生きることを目標に 昼のバイトを続けていた。

新幹線の車中で、もう地元には帰らず、俳優になるのだと密かに宣伝したという)

第132話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

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第133話

静子の過去が明らかになっていく。まさに『人に歴史あり』だ。
フィクションなんだけど、でも、静子の語りはきちんとリアリティを伴っていると感じた。

女優になりたいという漠然とした憧れを抱いてとりあえず専門学校に入るという理由で上京したというのが前回までの話で、今回はその続きだった。

どうしても憧れていた劇団の門を叩くという行動を起こせないまま、20歳になった静子は専門学校卒業後に広告会社に就職していた。
就職してからも観に行っていた劇団の公演の場で、友達と一緒に来ていた当時23歳の大学生だった一郎と再会する。

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その夜、静子は一郎たちと一緒に入った飲み屋で一郎の友人から静子が入りたいと思っている劇団では新人女優は脱がされると聞き、静子はそれでも劇団に入って俳優になりたいとは言えず、憧れから一気に目が覚めてしまう。

その夜、一郎から劇団の戯曲の本を貸そうかと尋ねられたことから一郎との交際が始まり、静子が新しく借りた広い部屋で一緒に暮らすようになっていた。

静子は忙しく働く一方、一郎は勉強もアルバイトもろくにせず、ひたすら詩を書くことに没頭する毎日だったが、次第に一郎は詩を書くために机に向かうことが苦痛になっていく。

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静子が24歳、一郎が27歳になると、静子は劇団に足を運ばなくなっていた。そして大学を8年かけて卒業した一郎は、実家の会計事務所を継ぐことを決め、静子に結婚を申し込み、静子はそれを受け入れる。

一郎の実家で一郎の両親に挨拶していると、一郎の姉、静一の伯母とも顔を合わせることになる……。

と、ここまでが今回の話だった。

なるほど。静子はこういう経緯で一郎と結婚したのか。

静子が上京した一番の目的は、当初は俳優になることであり、そのために考えていたのは静子が憧れていた劇団の一員となることだった。

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しかし何度も劇団の公演に足を運んで、劇団の主宰者に劇団に入りたいと告げることができない。これ、実は結構共感できる人がいるんじゃないかな……。
憧れを前にして一歩足を踏み出せるというか、踏み出してしまう足を止められない人と、自分にはまだこの舞台に上がる資格がないと自分で判断し、一歩踏み出せない人が……。

自分は後者の、静子と同じ側の人間だと思う。そしてその逡巡を重ねる内に、さらに自分には遠い世界なんだという信念が強化され、いつしかその世界に近づくことすらしなくなってしまうんだよなぁ……。

静子の場合は、もしこの劇団に入るなら、人前で裸体を晒すことに抵抗はないのかと問われ、自分がその立場になることを意識して目が覚めた自分に気付き、それにより完全に打ちのめされてしまったように思う。

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もし俳優になりたいという想いが本物なら躊躇せずに、脱ぐと即答できる。しかし静子はこれまで舞台を散々観てきたはずなのに、自分が劇団の一員になって演じる際に、舞台の上で脱ぐ立場になることは全く意識してはいなかった、

静子が俳優を諦めていく大きな要因は、静子自身、自分に俳優の道を進むという、当事者意識の欠如に気付かされたからなのかなと思う。

専門学校を出て、広告の会社に就職して毎日忙しく働くというきちんとした生活を送っていた静子だが、そもそも上京の一番の理由だったはずの俳優への道はその一歩を踏み出す事すらできず、とうとう何も為さないまま一郎の求めに応じるまま結婚することになる。

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高校で演劇の楽しさに目覚め、俳優になりたいと思ったのは、誰に指示されたわけでも、与えられたわけでもなく、間違いなく静子が自分自身で見出した大切な夢だった。
しかし静子にはその夢に手を伸ばす事すらできず、結局その夢を手放して一郎と結婚する。
静子にとっては、一郎と結婚することを選んだというよりも、一郎の求めに応じたという意識だろう。静子自身、この人生を自分で選んだという意識はほぼ無いと思う。

不満だらけというわけではないだろうけど、でも無力感や後悔がある。まぁ大概の大人は多かれ少なかれ抱く感情だと思うが、これまでの人生で初めて抱いたと言っても良い俳優になりたいという想いが完全に不完全燃焼に終わったことは、静子にとってはとりわけショックだったのではないかと思う。

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そんな想いを抱えながらも新しい環境で生きていこうというその矢先に、後にしげるをの母となる義姉と出会うことになるわけか……。

ラストのページから、静子にとってこの義姉は初対面の時からいけ好かない人間と認識していたであろうことがわかる。かといってこれから長部家の人間として長く付き合っていかざるを得ないわけだから、敵対せずに上手くやっていくには自分が折れなくてはならないと静子は考えたのではないか。

そうして無理を重ねていく内に、静子は疲れてしまい、ついには犯行に至ったのか……。
静子は、まだ幼児だった静一を高台から投げ落としている。それを考えると結婚から何年もたたない内に静子はもうダメだったんだろうな……。

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静一を産んでも、どうしても母という立場になり切ることが出来なかった。
つまり静一の裁判の場で、静一を捨てると堂々と宣言するまで、静子には心底からの晴れ晴れとした気持ちになったことはなかったということなのか……。

次回もおそらく静子の過去の話の続きになるだろう。
もしそうなら、特に伯母との話がメインになってくると思う。

伯母に対してどんな感情を抱き、どう対応してきたか。
つまり、これまで散々考えてきた、静子が伯母にどういった感情を抱いてきたかの答え合わせになるのかなと思う。次回が今から楽しみだ。

以上、血の轍第133話のネタバレを含む考察と感想でした。

第134話に続きます。

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