血の轍 最新第111話父の来る日ネタバレを含む感想と考察。一郎が確認したかったこと。

血の轍 第44話 静子

第111話 父の来る日

第110話のおさらい

仕事場であるパン工場に着くと、作業着に着替えて、持ち場へ向かう静一。

小さな丸いパンを容器に詰めたり、いちごのヘタをとったりと、休憩を挟みながら着実に仕事をこなしていく。

しかしそんな静一の脳裏には、奇怪な妄想が蠢いていた。

この日の業務が終わり、着替えて退勤する静一。

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通勤ラッシュの乗客に交じって電車に乗り、帰宅した静一は、途中で買ったビールとつまみに手をつけて一息ついていた。

そして何気なくスマホを確認すると、着信履歴に昨日4回、父から電話があったことに気付く。

スマホを伏せ一時は見ないふりをしようとするが、折り返す静一。

父は一言二言静一と簡単な会話をした後、今度上京する際に静一の家に寄ろうと思っていると本題を切り出すのだった。

静一は父に訪れる予定日時を聞いて、電話を切る。

ふう、とため息をつく静一。

第110話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

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第111話 父の来る日

再会

ピンポーンというチャイムに起こされる静一。

寝床から出て扉を開く。

「ひさりぶり。」
扉の前に立っていたのはスーツ姿でビニール袋を手に提げた父だった。

テーブルに置かれたビニール袋。その中にはインスタント食品が詰まっていた。

これ色々買ってきたから、という父に、どうも……、とだけ返す静一。

一郎は床に積まれたゴミ袋を見て、こんなとこ住んでるんか、と呟く。

仕事だったの? という静一の問いかけに、一郎は主張と答える。

静一は、ここは散らかってるから、と外に出ることを提案するのだった。

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良い天気の中を歩く二人。

「ああ…今日は気持ちいいんなあ。」
あったかくて、と一郎。
いいところだなこの辺と一郎が呟いているのを静一は隣を歩きながら黙って聞いている。

公園を通りかかる二人。

向かいから若い夫婦と子供が歩いて来る。

静一は一郎の隣を歩きながら、親子を見つめていた。

二人は商店街に来ていた。
一郎は腕時計で時刻が4時だと知り、静一に飯を食ったのかと確認する。

さっき起きたから食べていないという静一に、何か食おうと誘う一郎。
視界に入った一軒の居酒屋を指さす。
「お。そこの居酒屋やってるんかな? 入るか?」

寝起きで酒はあれか、と静一を気遣う一郎だが、静一は、べつにいいけど、と答える。

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居酒屋

テーブルを挟み、向かい合って座る二人。
一郎はすぐに生ビールを頼むと、メニューを確認する。

「お! たらの芽の天ぷらあるぞ!」
声を弾ませる一郎。
「大将!」 私大好きなんですよ たらの芽! ひとつください!」

静一はどこか浮かれた様子の一郎をじっと見つめていた。

そして一郎は続けて大将に笑顔で話しかける。
「いやー息子とね、久しぶりに会ったんです。」

あ、息子さんですかあ、と大将。

一郎は静一に笑顔を向ける。
「ふたりで居酒屋なんか、はじめてじゃねぇんかい」

目を伏せ、無表情で、そうかもね、と答える静一。

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注文した料理が来て、食事を始める二人。

一郎は煙草を一吸いすると笑顔で、最近はどうだ? と静一に話しかける。
「めしはちゃんと食べてるん?」

静一はその質問に答えず、ビールのおかわりを頼む。

「静一は…いくつになったんだっけ?」

「………36だよ」

「そうか……俺ももう63だよ。早かったような…長かったような…」

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大将がビールのおかわりとたらの芽の天ぷらを運んでくる。

おっ 来た! と声を弾ませる一郎。
「食うんべ。静一もどうだ?」

うん、と静一。

一郎は出来立てで熱い天ぷらを頬張ると、目を閉じて呟く。
「うん。うまい。」
そして同じように天ぷらを食べている静一に、どうだ? と感想を訊ねる。

「……うん。うまいね。」

静一の様子を目を細めて見つめる一郎。

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「……なあ 静一。あいかわらず、ひとりなんかい?」

「……何が? …こんな人間……誰かといられるわけないだろ。」

一郎はさきほどまでの楽しそうな様子から一転、寂しそうな表情になる。
「……ごめんな。何も……してやれなくて…」

静一はビールを一気に半分くらい飲み干し、テーブルにゴンとジョッキを置く。
「…べつに。こんな人間を見捨てないでいてくれただけで、もう十分だよ。」

一郎は黙ってテーブルを見つめていた。

外はすっかり暗くなっていた。
二人は居酒屋を出て、駅に到着していた。

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一郎が聞きたかったこと

ごちそうさまでした、と言う静一に、いやいや、と一郎。

「じゃあまたな。久しぶりに会えて良かったよ。」
自動改札に向かう一郎。
「…あ。」
すぐに足を止めて静一に振り返る。
「静一…ひとつ聞いておいてもいいかい?」

「静子のこと。」

「もうこのまま……一生会わないままでいいんかい?」

……いいよ、と静一。
「どうでもいいよ。あたりまえだろ。」

一郎は、そうだよな、と静一の答えを受け入れる。
「わるい。それだけだ。」

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そして一郎は静一に背を向け、じゃあ、またな、とだけ言って改札に向かっていく。

一郎を見送って、アパートに戻る静一。
夜道を歩いていると、背後に気配を感じる。
それはしげるだった。

「……うん しげちゃん。もうじきそっちに行くから。」

「僕の中身はもう死んでるから。外身も死ぬまで。生きてるだけ。」
しげるはじっと静一の背中を見つめている。

帰ろう、と振り返る静一。
しげると手を繋いで歩き始める。

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感想

二人の会話から、時の流れを感じた。
父と子の、大人同士の会話だ。この何ともリアルな感じ。

久々に父子で顔を合わせたということらしい。
どのくらい期間が空いたのかはわからないが、顔を合わせる機会は1年ぶりというレベルではないようだ。
居酒屋に入って以降の一郎の浮かれた様子を見ると、初めて父子で居酒屋で飲めることがよほどうれしいんだろうなと思った。

静一は、過去に取り返しのつかない罪を犯してしまった自分を許していない。今後の人生で人並みの幸せを掴もうとも、また、掴めるとも考えていない。ラストのしげるへの言葉から、色々と諦めることを受け入れている。
しかしそんな荒んだ心境にありながらも、これまで決して自分を見捨てなかった父対する感謝の気持ちは持っていることがわかった。公園で自分と同じくらいの年の男性が妻と子と一緒に歩いているのを見て、自分が父にそういった姿を見せられないことを気にしているようにも見える。

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そして一郎は楽しそうだった。気持ちよく酔っているからということもあるかもしれないが、少なくとも静一の少年時代では、ここまで楽しそうにしている一郎を見たことがなかい。静一がきちんと更生し、自分で生計を立てていることが嬉しいのだろう。

父として当たり前のことなのかもしれないけど、一郎の様子から、静一の幸せを願っていることを感じた。かと言って、押しつけがましくするわけでもない。20年以上を経ても尚、自分自身を”こんな人間”呼ばわりしてしまう静一を窘めるわけでもなく、辛そうな表情で静一の言葉を受け入れているのが見ていて切なかった。

今回、一郎が静一に会いに来たのは、もちろん出張のついでに久々に顔を合わせたかったという理由が大きいだろう。しかし、一郎が一番話したかったのは、おそらく改札での別れ際に切り出した、静子についてのことだろう。一郎は63歳だというから、静子も一郎と同じ60代前半か、もしくは少し下の世代となる50代になるのだろうか。

このまま一生静子に会わなくても良いのか、という一郎の質問は、つまり少なくとも一郎はあの裁判以来、現在も静子と会う機会があるということなのか?

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静子はあの裁判中に静一を捨てて、新しい人生を生きると宣言した。それは同時に夫であり、静一の父でもある一郎を捨てたということでもあるとばかり思っていたんだけど、ひょっとして一郎と静子は離婚していなかったのか?

静一はあれ以来本当に静子に会っていないようだが、一郎は会っているように見える。
一時は長部家を出たけど、その後戻って来たということなのか。

一体、長部家はどういう状況にあるのだろう……。

そういえばこれは前回気付くべきだったんだけど、静一は名前を一切変えていなかったんだな。
少年犯罪でセンセーショナルに報じられたはずだから、ひょっとしたら当時の週刊誌で名前が出たかもしれない。

今後、静子が出て来るとしたら、どういう状況なんだろう?
多分どこかで出て来るはずなんだけど、今回の静一の様子だと、少なくとも静一からは会いに行くことはないように思える。

次回以降の展開がまたわからなくなった。果たして静一はどうなるのか。

以上、血の轍第111話のネタバレを含む感想と考察でした。

第112話に続きます。

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