血の轍(押見修造の漫画)の最新第37話目覚めの感想(ネタバレ含む)と考察。目覚めた静一は吹石の案内でトイレへ向かう。そこで受けた衝撃とは。

第37話 目覚め

第36話のおさらい

静一は吹石と一緒にベッドに入り、緊張した様子で天井を見つめていた。

 

その左隣で吹石も静一と同じく頬を紅く染めて寝ている。

 

静一の右腕、吹石の左腕は僅かに触れ合っている。
触れあっている部分でじんじんと響くような感触を、二人は強く意識していた。

 

静一は一度吹石の方を見るが、静一からはその表情が見えない。
静一は心臓の鼓動を感じつつも、目を薄く閉じる。

 

その瞬間、静一は自身の左手に吹石が触れたのを感じ、心臓が大きく跳ね上がる。

 

吹石はどんどん静一の左手の小指に自身の右手の小指を絡ませていく。

 

 

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間もなく、小指だけ絡めていた指は、恋人繋ぎとなり、密着する面を増やしていた。

 

ぎゅっと握りしめる感触に、静一は吹石の方を見る。

 

吹石は、いつの間にか静一の方に体ごと向いていた。

 

じっと見つめて来る吹石。
静一は吹石から目を逸らすことなく、少し驚いた表情で吹石を見つめ返す。

 

「私のこと…すき…?」

 

「ずっと…捨てない…?」
静一の目をじっと見つめて、吹石がぽつりぽつりと問いかける。

 

その時、静一の脳裏には、涙を流して微笑を浮かべる静子の姿が浮かんでいた。

 

「………うん。」
静一は吹石を見つめ返す。

 

それを合図にしたかのように、吹石は目を閉じ、唇を尖らせる。

 

 

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静一と吹石が繋いでいる手は熱を帯びていた。汗がじっとりと滲む。

 

静一は体を巡る血流がズグンズグンと音を立てて駆け巡るのを感じながら、ゆっくりと吹石の唇に近づいてく。

 

静子の顔が二人の接近を邪魔するかのように何度も脳裏に浮かぶが、二人の唇は着実に近づいていく。

 

そして静一は、むにゅ、という感触を唇に感じる。

 

その瞬間、眼球がぐるんと上を向き、一気に頂点に達する静一。
静一は、まるで体が液状に溶け、股間と顔を中心に派手に四散してしまったような感覚に陥っていた。

 

ドクッドクッドクッ

 

静一から飛び散った液体が静子の微笑を汚していく。

 

やがて最後の鼓動と共に、静一の意識はブラックアウトする。

第36話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

 

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第37話 目覚め

(「ほら」)

 

ぼやけた視界に静子の声が響く。

 

(「ゆうこときいて。」)
幼い静一の小さな足に、小さな靴を丁寧に履かせながら静子は優しく静一に呼びかける。
(いいから はやく くつはいて。)

 

静一は、んん~、と若干不機嫌な声を上げる。

 

(「いいところつれてってあげる。たーのしいところ。」)
静子は笑顔で静一と目線を合わせる。
(「ね。ままもいっしょにいぐから。」)
静一の小さな手と手を繋ぐ。
(「ね。いご。」)

 

 

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二人は住宅街を歩いていく。
幼い静一は、隣を歩く静子をずっと見上げていた。
(「まま、どこいくん?」)

 

(「ああ、きょうはあったかいんねぇ。」)

 

(「ねぇまま、どこいくん?」)

 

静子は静一の質問に答えず、んーんんー、と鼻歌を歌い出していた。

 

(「んんんんんんー んんー んんんー」)
鼻歌を止めて、嬉しそうに歯を出して笑う。
(「ああたのしい。」)
そして静一に振り向く。
(「まま、すっごくたのしい。」)
心底楽しそうな様子の静子。

 

 

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目を覚ます静一。
顔は汗にまみれている。
目の前には静かに寝息を立てている吹石がいる。

 

吹石の唇をじっと見つめていると、静一の耳に寝息とは違う音が混じる。
(「せいちゃん。」)

 

静子の声が聞こえたような錯覚に、思わずがばっ、と体を起こす静一。

 

明るくなっている外からは小鳥の鳴く声が聞こえる。
時計の針は朝6時を示そうとしていた。

 

はあっはあっ、と荒くなっていた呼吸を整える静一。

 

「どうしたん?」
上半身を起こして呆然としていた静一に、目を覚ました吹石が声をかける。

 

 

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静一が吹石に振り向くと、彼女は布団で口元を隠し、少し照れたような表情で静一を見上げていた。

 

その表情に見惚れたように吹石を見返す静一。
「……あ…!」
何かに気付き、静一はにわかに慌て始める。
「あっ………どう…どうしよう…!? 学校…今日…どう…!!」

 

吹石はそんな静一を落ち着いた様子でじっと見つめたまま答える。
「今日は学校休みだよ。 第二土曜日だがん。」

 

「………あ…」
きょとんとした様子の静一。

 

吹石は静一の手をそっと握って優しく呼びかける。
「一緒にいよ。今日も。」

 

静一は頬を染め、吹石からそっと視線を外す。
「あ…あの…トイレ…行きたいんだけど…」

 

 

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トイレ

吹石の後について廊下を行く静一。

 

はい、と吹石がトイレのドアを開ける。
「私ここで見張ってるから…」

 

静一はコク、と頷いてトイレに入りドアを閉める。
そしてズボンをずらそうとした時、パンツの中の様子に目が釘付けになる。

 

「……何これ…何か…ついてる……」

 

白いものを観察する静一。
それが出たきっかけが昨夜交わした吹石とのキスだったことに思い当たる。

 

「…………あのとき……あのとき……なんか出た…」

 

「なに…?」
静一には自分の体に何が起こっているのか分からない。
「なに? なに?」
ただただ戸惑いながら、パンツの中を探る。

 

 

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そうして局部に触れているうちに、徐々に呼吸が荒くなっていく。
「……あ……」

 

(「すっごくたのしい。」)
静一の脳裏に夢で見た静子の満面の笑みがフラッシュバックする。
その途端、静一は反射的に股間から手を離す。

 

そして静一は頬を染め、呼吸を荒くしたまま立ち尽くしていた。

 

ガチャ

どたどたどた

 

「あっ」
吹石の声が聞こえる。

 

その直後、トイレまで足音を立ててやってきた人物が声を上げる。
「おっ! びっくりしたあ~ 由衣子かい!」

 

「お…お父さん…」

 

静一は便器に向かって立ったまま、ドア越しに二人の会話を聞いていた。

 

 

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感想

幼少期の記憶?

昨夜、静子とあれだけ明確に対立したにも関わらず、夢に彼女が出て来るんだ……。
むしろ、だからこそ、なのかな。

 

目覚めても静子の声が聞こえたような錯覚に捉われてるあたり、静一は自分が思っているよりも精神を消耗しているのかもしれない。

 

でも14歳くらいなら、親に反抗して神経をすり減らすことが特別という事はない。
この歳なら親の動向を気にして、いちいちその影響を受けることは当たり前だと思う。
親が怒ってればビクビクするし、悲しんでいればオロオロする。間違いなく自分はそうだった。

 

静一は静子から吹石を守るという、意味のある反抗をした。
男として真っ当な成長を見せている。

 

 

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静一が見ていた夢は、夢として再構成された記憶ではなく、幼少期の思い出をそのまま思い出しているように見えた。
これは1話冒頭とはまた違うのかな?
この後、二人は道端で死んでいる猫を発見するのだろうか。

 

そもそも二人はどこに行こうとしてるんだろう。ただの散歩かな。
静子が心底ご機嫌で楽しそうなのは何故だろう。

 

そもそも何故、静一は幼い自分が静子と一緒に歩く夢ばかり見るのだろう。

 

この夢の光景がどういう意味を持つのか、今後明確に示される時が来るのだろうか。

 

 

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静一の”目覚め”

今回のタイトルは「目覚め」。
二つの意味での「目覚め」だなぁと感じた。

 

やはり前回の見開きでの溶けてしまったような静一の描写は果てていたのね……。
まさに性の目覚め。
あの精通の描写はマジで引いた(笑)。
あれをキモいと思った人は、押見先生の術中に完全に嵌っていると言って良いだろう。

 

ちなみに自分は、静一のような幸せな体験をきっかけに精通したわけでは無いけど、精通した朝はやはりトイレで静一のように「これは何だろう?」と不思議に思ったのを思い出した。
静一がトイレで戸惑っている様子は、大概の男なら誰でもあるような記憶を刺激する描写だったと思う。
思い出すんだよなー。あの「自分は一体何をやらかしてしまったのか?」という呆然とした感覚を。

 

結局あの頃の自分は汚したパンツをどう処理して良いか分からず、こっそりタンスに隠して(汚い)、カピカピに乾いた奴を捨てたっけな~。
あの黄ばんだブリーフは忘れられない(笑)。
あと、パンツがなくなったことを母親に咎められないかと冷や冷やしたっけな~。何もかもが懐かしい。

 

 

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女性読者のみなさん、精通ってマジでこんな感じです。
もし思春期にある息子さんが、朝、おかしな素振りを見せていたとしても、彼のパンツがどこにも見あたらなくても、息子さんの部屋やトイレ、洗面所なんかでそんな”臭い”がしても、そっと見ないフリをしてあげてください。
本人はものすごく戸惑っているんです……。

差し出がましくて恐縮ですが、しつこく追及したり、揶揄ったりしないであげてくださいね……。うん、やっぱそういう時は見ないフリが一番ありがたかったです……。

 

しかし静一はまたいきなり窮地に立ったなー。
彼はこの父親の接近をかわせるのかな? なんかいきなり見つかりそうなんだけど……。
これ明らかに父親はトイレに用を足しに来てるよね。朝一番にやることといえばそれしかないと思う。

 

仮に吹石が父親を引き付けて、その間に静一が間一髪トイレから脱出できたとしても、トイレに残った精液の臭いですぐにバレそうな気がする……。
ただでさえ初めてのことで動揺しているというのに、素早く処理出来るわけもないだろうし。

 

見つかったらさすがに大目玉か。
こんな朝っぱらから遊びに来たとは考えないだろうし、静一のこの後がどうなるか気になるわ。

 

しかしこんな大変な状況にあるけど、静一いいなぁ~。

 

「一緒にいよ。今日も。」

 

だってさ! こんなの経験したかった~。羨まし過ぎる。
きっと吹石は、静一の寝癖すらかわいいと思ってるんだろうな~。はぁ~。

 

 

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吹石のお父さん

「おっ! びっくりしたあ~ 由衣子かい!」

 

吹石はお父さんとしょっちゅう喧嘩すると言っていた。
ひょっとしたら暴力的なのかな、と思っていたけど、ラストの父親のセリフからは粗暴な印象は受けなかった。
もちろんまだ一言しか喋ってない時点で判断するのは早計なんだろうけど……。

 

今のところ、二人が喧嘩するのは、ただ単に思春期真っ盛りの娘と合わないだけなんじゃないかと思う。
吹石は、今がまさに反抗期なのだろう。

 

家庭内DVとか虐待を受けていたらもっとおどおどしていたり、暗い影がありそうなもの。
でも吹石からはそういった気配は全く感じられない。
多分まともな父親だと思う。

 

もし静一がこの父親に見つかったなら、説教よりまずは事情を聞かれそう。
そしてその後に長部家に電話報告する感じかな。

 

 

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あ、でもあの”臭い”をさせてるのは非常にマズイかも……。
こんな早朝に、かわいい一人娘の元にこんな男の臭いさせてる中学生男子が知らない内に来ていたななら、仮に自分が父親なら怒るかもしれない。

 

自分は、後者の方が自然な流れのような気がしてきたなー。
もしその通りになるとすれば、静一は相当な修羅場に投げ込まれることになるわけだ。

 

まさか中学生でこんな修羅場を体験できるかもしれないとは……。
静一くん、今は辛いだろうけど、後に笑い話兼武勇伝になるよ(笑)。

 

相変わらず次回への引きが強い。

 

果たして静一は見つからずに無事にこの場を切り抜けることが出来るか。
それとも修羅場となってしまうのか。

 

以上、血の轍第37話のネタバレを含む感想と考察でした。

第38話に続きます。

 

あわせてよみたい
押見修造先生のおすすめ作品や経歴をなるべく詳細にまとめました。

血の轍第4集の詳細は以下をクリック。

血の轍第3集の詳細は以下をクリック。

血の轍第2集の詳細は以下をクリック。

血の轍第1集の詳細は以下をクリック。

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2 件のコメント

  • 嵐の前の静けさなのか、ほのぼのとした展開ですね。

    確かに吹石の父親は、想像とは違いまともな印象を受けますし、
    この後、静一を家まで連れて行き~という展開も考えられますが、
    それでは漫画としてつまらない。

    静一と静子の間に、第三者は簡単に立ち入れないとも思いますし、
    ここは見つからずに切り抜けると思います。
    吹石が機転を利かせて先にトイレに入り、生理か何かで腹痛がする、
    しばらくトイレに入っているとかで、父親をトイレから引き離すのかな。
    (当然、静一の変化に気付くでしょうが、キスより進展するか?)

    吹石の父親が台詞だけで登場しましたが、本当に普通の父親だったら、
    母親との関係も含め、しばらく吹石の家庭についての話になるような気もします。

    • きこりさん、コメントありがとうございます!

      ここは無事に切り抜けられますかね。
      確かに父親に見つかって家に連行より、もう少し何か一悶着あって欲しいところですね。静一には悪いけど(笑)。

      >吹石が機転を利かせて先にトイレに入り、生理か何かで

      確かに彼女ならそんなことを咄嗟に思いついて実行できそうです。
      しかしその場合、トイレ内には静一の”臭い”がこもってるはずなので、きこりさんの仰るように何かあるかもですね。
      そっちの方が展開としては面白い(笑)。

      >しばらく吹石の家庭についての話になるような気もします

      それも気になりますね~。
      先がどうなるか全然わからない。
      次号が楽しみだな~。

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