血の轍(押見修造の漫画)の最新第23話指の感想(ネタバレ含む)と考察。静子に再びキスを求められた静一に起きた異変。

血の轍 第22話 静一

第23話 指

第22話のおさらい

しげるの病室で伯母さんと同じようにベッドの傍らの椅子に腰かけていた一郎と静一。

 

一郎がそろそろ帰ると切り出す。

血の轍 第22話 静一と一郎

伯母は笑顔で見舞いに来てくれた静一にお礼を言う。

 

静一の視線はしげるを見るともなく見ている。

 

帰り際、しげるに一言話しかけてやれ、と一郎は静一を促す。

 

しげる、また来るから、という一郎の言葉にしげるは何の反応も示さない。

 

伯母からしげるの手を握ってあげて、と促され、静一はゆっくりとしげるの手を取る。

 

その瞬間、静一の脳裏に山登りに行ったあの夏の日、静子がしげるを突き落とした瞬間を思い出す。

 

吃音に苦労しながら静一はしげるに早く良くなって、と告げる。

 

帰宅した一郎と静一。

 

静子の姿が無い事に気付くも一郎は買い物に行ったのだろうと軽く考え、飲み会があるからと静一を一人リビングに残して家を出る。

 

家に一人になった静一は、自室のベッドに横たわって視線をどこを見るともなく、ぼうっと一点を見つめる。

 

そのまま時間が過ぎ、辺りは暗くなっていく。

 

腹が鳴り、静一は台所へと向かう。
リビングの入口で静止し、じっと室内を見つめていると、玄関の扉が開く。

 

帰宅した静子は静一の姿を見つけるやいなや静一に駆け寄ってぎゅっと抱きしめる。

 

あまりにも静一の帰りが遅く、外を探していたのだという静子。

 

静一はそれを聞いて静子の背中に腕を回す。

 

どこに行っていたのかと問われた静一は、吃音に苦しみながらも父のと一緒だったと説明しようとする。

血の轍 第22話 静一と静子

しげるの所に行ったのか、と急に雰囲気を変える静子。

 

静子は静一から体を離し、両肩にそれぞれの左右それぞれの手を載せて威圧的に静一を見下ろす。

 

その視線に気圧される静一。

 

「そうなん?」

暗闇の中、静子の冷めた目が静一をじっと見据えている。

 

第22話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

 

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第23話 指

「ママ決めた」

夜、電気を点けず暗い自宅の廊下で、静一と静子は向かい合う。

 

静子は静一の両肩を持ち、目をじっと見据える。
「しげちゃんのところ、行ったん?」

 

静子の不気味な、そして威圧的な視線から目を逸らす静一。
静子の背中に両手を回したまま、静一は静子の質問に答えようとする。
しかし、吃音で言葉にならず、沈黙する。

 

「…………」

 

静子の顔をちらと見る静一。

 

静子は感情の感じられない、まるで放心したかのような表情で静一をじっと見下ろしている。

 

「……あ…」
その表情を浮かべる静子に声をかけようとするが、やはり言葉にならない。
「い………」

 

静子は静一の頭をぎゅっと抱き寄せる。

 

特に手抗することなく、静一は静子の胸に顔を埋める。

 

「かわいそうに。」
静子は静一を抱きしめたままぽつりと呟く。

 

胸に顔を埋めたまま、静一は視線だけを真上の静子の顔に向ける。

 

「イヤだったんね! つらかったんね!」
静子は静一を見つめながら続ける。
「行ぎたくないのに、パパに無理矢理連れて行かれたんね!?」

 

静子は再び、静一の頭をぎゅうう、と強く自分の胸に押し付けるようにして抱きしめる。

 

「許せない…」

「パパが大事なのは、結局あの人達なんね。私達のことなんかどうでもいいんね…」

ううっ、と嗚咽を上げる静子。

 

「私達…私達のことなんて…」

また嗚咽し、静子は静かに、しかし意を決したように呟く。

「…行こう。」
静子は抱く力を緩め、自分と静一の間に出来た隙間から静一の顔を見つめる。
「静ちゃん。2人で出よう。この家を。」

 

静一は再び視線を上げ、静子の表情を見つめている。

 

「ママ決めた。」
有無を言わせない、静子のどろりとした視線が静一に注がれる。
「その時が来たら、一緒に来てくれる?」

 

魅入られたように、静一は静子の目を見つめる。

 

そのまま続く沈黙の後。

 

静一はコクリ、と頷く。

 

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突如嘔吐く静一

静ちゃん…、と静子は感慨深い様子で呟いた後。
「ありがとう…」
静子は目を閉じ、唇を尖らせて静一に近づいていく。

 

目を見開いたまま、静一は静子の唇を凝視する。

 

静子の唇が静一の視野で拡大されていく。

 

「ぐぶっ」
静一は突然嘔吐き、急いで右手で口を塞ぐ。

 

静一の異変に気付き、目を開く静子。

 

「おっ…おおえええっ」
静一は口に手を当てたまま、廊下に両膝をつき四つん這いになる。
「がはっ う…げえっ」

 

吐き気に苦しんでいる静一を、静子はぽかんとした表情で見つめる。

 

「えっ…ぐえっ」
何度も吐こうとしているが、中々吐けない静一。

 

「静ちゃん!」
静子は何度も嘔吐く静一の前にしゃがみ、声をかける。
「どうしたん!? 大丈夫!?」

 

静一は口を大きく開け、必死に吐こうとするが何も出てこない。
「はっ…吐け…ない…」
左手で喉を覆うように押さえる。
「吐けない…!」

 

「いき…が…」

 

静子は、急に苦しみだした静一の様子を放心したように見つめる。

 

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対処しようとした静子に……

「静ちゃん!」
再び大きく嘔吐いた瞬間、静子は静一の両肩を抱き、静一に強く語り掛ける。
「口開いて!」

 

静子の言葉に従い、静一は顔を歪ませたまま口を開く。
「ぐあ…」

 

静子は、右手の人差し指と中指をゆっくりと静一の口に向けて近づけていく。

 

「げっ…」

 

静子の伸ばした二本の指が静一の口中に挿入される。
「大丈夫だから、げーして静ちゃん。」
静子は静一の顔に自身の顔を近づけ、目を合わせる。

 

静子の指に抵抗せず、静一はそのままじっと受け入れる。

 

「ほら。げー。」
冷静に静一の喉の奥に指を突っ込んでいく静子。
激しく嘔吐く静一。

 

静一の喉の奥に、さらに静子の指が突っ込まれていく。

 

「お”お”…」

 

静一は突然、静子の体を両手で思いっきり突き飛ばす。

 

尻もちをついたような形で静子は廊下に座り込む。
そして、静一を呆然と見つめて呟く。
「…静ちゃん?」

 

土下座するような姿勢のまま廊下をじっと見つめて固まる静一。
静一の視界には、廊下に八の字に置かれた自身の両手がある。
目を見開いたまま、沈黙の時間は続く。

 

しかし、静一がぽつりと呟き沈黙は破られる。

 

「僕のせい?」

 

静子は静一を見つめている。

 

「全部、僕のせいなん?」

 

廊下に顔を伏したままの静一。
その瞳に涙が溢れ、大粒の塊となって廊下に落ちていく。

 

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感想

かわいそうに

しげるの見舞いに行った静一に対し、静子はかわいそうに、と言った。

 

静子にとっては、伯母をはじめとした親族に会う事は苦痛以外の何物でもないから出た言葉だと思う。

 

静一が実際にしげると面会して何を感じたか、そもそもしげるの容態がどうなのかに関しては全く興味が無いようだ。

 

自分の感じ方、考えが全てであり、もう中学生二年生である静一に自分の意思を求めていないのが分かる。
冒頭、静一を冷たく見つめる静子のどろりとした視線は、つまりそういう意味なんだと解釈した。

 

これが毒親の基本姿勢なのか……。

 

子供はいくつになっても自分の付属物に過ぎず、自分にとって役に立つ物である必要があるってこと?

 

しかし静一は静子とは逆に、自分の身を顧みる事無く静子を守ろうとしている。

 

静一が吐き気を催したのは、静子の邪悪と評してもよい心の内に気付き、しかしそれでもなお、これまで自分を愛してくれた母親が好きで、嫌いたくない想いがあるからなのか?

 

相反する心が強大なストレスとなって静一を蝕んでいるのだろう。

 

静一の吃音は静子の犯罪を黙秘する罪悪感に由来するものだと思うけど、今回の吐き気もまた精神的なものが原因なのは明らかだ。

 

静一が可哀想でならない。もうめちゃくちゃだ。

 

愛する静子が、特に夏の山登り以降、強く絶縁している伯母は、静一にとってはとても優しい人だった。
さらに静子が否定している一郎に関しても、長部家の長として影響力はイマイチではあるが、決して邪悪ではない。

 

彼らと対立する母を守らなくてはと思い、警察や伯母に対してしげるへの犯罪を黙秘する静一。

 

そもそも、登校日であるこの日は、もうとにかく色々あり過ぎた。

 

吃音を揶揄われ、静子の本音を知り、しげるの変わり果てた姿を見て、伯母の親切に触れた。

 

そして、この大変な一日を閉めるラストのイベントがこれ。

 

なんて濃密な一日なのか。

 

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スムーズに出た言葉

吃音に苦しんでいるはずの静一が、今回の話の最後で吃音に邪魔されずに、滑らかに言葉が出た。

 

これは、静一がどうしても静子に問いかけたかった、本心から出た言葉だから自然に出てきたのか。

 

病院に行く前、窓ガラス越しに聞いた一郎と静子の言い争いの内容は静一の心に深い傷を残したんだろうなぁ。

 

「静一が生まれてからずーっとひとりぼっち。」

 

静一を溺愛しているはずの静子が言うとは思えないセリフだと感じた。

 

ここらへんから、静子は静一を可愛がっているわけではないってことなのかな? と思うようになった。

 

自分の為に静一を可愛がっているという感じというのか……。

 

「全部消したい。あなたも静一も。私も全部。」

 

静一はこれまで無条件に自分を愛してくれていると信じていた母が、静一の存在を否定するような言葉を口にしたのを聞いた事で、母に愛されているという自分の支えてきた大前提が崩れてしまったのを感じていたのかな……。

 

幼稚園にもついてくるくらいに過保護な母親だった静子から、怒られたり暴言を吐かれるなど静一には想像しようもなかったのかもしれない。

 

さらには、母がしげるを突き落とすなど、おかしくなってしまったのは自分が原因なのだと理解したのかも……。

 

しかし、静子がおかしくなったのは静一が原因ではないだろう。

 

「戻りたい。産まれる前に戻りたい。」
「全部消したい。あなたも静一も。私も全部。」

 

20話で、静子が一郎に語ったこのセリフは本当に闇が深過ぎるのを感じる。

 

静一はただ静子の闇に巻き込まれただけなのだろう。

 

 

むしろ静一の存在は、暗闇の中を歩いていた静子に救いを与えたと言っても良いのではないか。

 

だからこそ静一に過干渉になったと考える方が自然だと思う。

 

静子は最後の静一の心から知りたいと思っているであろう質問に対し、真正面から答えるのか。

 

以上、血の轍第23話のネタバレを含む感想と考察でした。

 

第24話に続きます。

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