血の轍 最新第102話いい知らせネタバレを含む感想と考察。一郎と江角が静一にもたらした知らせとは。

血の轍 8巻

第102話 いい知らせ

第101話のおさらい

検事は、静子が新しい主張を展開していることを静一に伝える。

それは、本当はしげるを突き落としておらず、しげるが自分で落ちたという主張だった。

それを踏まえて、検事は、静子がしげるを突き落としたのを見たのか静一に確認する。

静一は検事からの問いかけを受けて、放心状態になっていた。

検事からハッキリと見たのかと問われた静一は、すぐには答えられなかった。

静一の脳裏に、あの夏の日の光景が甦る。
その中では、静子は確かにしげるを突き落としていることから、静一は、静子がしげるを突き落としたように見えたと答える。

しかしその後、あの時、自分は静子に対して「突き落とせ!」と思っていたと付け加えて、それが原因で静子が突き落としたように見えたのかもしれないと続ける。
「ぜんぶ……僕の……さっかく……だったのかも…?」

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静一の回答を受けて、二人の検事は互いに視線を交わす。
そして検事は、静子が警察に連行される前、自宅に伯父と伯母がいたことと、その際に伯父が一郎を殴り、その後静子の髪を掴んで土下座させたことは間違いないかと確認する。

その時の光景を思い出した静一は検事の問いかけに、はい、と答える。

検事は、静子が、伯父の暴力が怖くて、自分が悪者になればいいと思い罪を認めたのだと主張していると説明する。

検事の言葉に呆然とする静一。

「『静一にこんな姿を見せたくない』と。」

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そして検事は、もう一度、静子の犯行について最初から順に話すよう静一に求めるのだった。

静一の視界は一気に色を失う。
「…じゃあ……じゃあ…僕は…なんなん?」

「もしママが…やってないなら……僕の……今までは…なんなん?」

静一はそう呟くと、急に立ち上がって「なんなん!?」と大声で連呼する。

職員に身体を取り押さえられるも、静一は「なんなん!?」と叫び続けていた。

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自分の房に戻って来てぼうっとしていた静一の脳裏には、死体で発見されたしげるの虚ろな表情が浮かんでいた。

しげるの死体が静一に話しかける。
「僕はなんのためにしんだの」

「ねえおしえて 僕はただ…なんの意味もなくしんだの」

「静ちゃん…」

静一は闇の中で暗闇をぼうっと見つめている。

中空を飛ぶ蝶。
飛んで行った蝶がいた場所が光を放ち始める。
その光の中に微笑を浮かべた静子の顔が浮かぶ。

「…ママ。」
静一は縋るような目つきで静子を求めるように手を伸ばす。

第101話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

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第102話 いい知らせ

3月2日

いつものように職員に付き添われ、面会室に向かう静一。

面会室では一郎と弁護士の江角が待っていた。

「静一……」
すっかりやつれて、年老いた一郎が呟く。

対面に座った静一もまた目が落ちくぼみ、頬がこけている。
ちゃんと食べているのか、眠れているのかと気遣う一郎の言葉を受けた静一は、黙ったまま俯き、両手で頭を抱える。
しかし机に突っ伏したまま、その視線だはぎょろりと一郎の方を向いている。

一郎は、今日は良い知らせがあると話を切り出す。
「これを…聞けば、きっと元気が出る……な。」

頭を抱えたまま、静一は一郎をきょとんと見つめる。

一郎は笑みを浮かべて静一に呼びかける。
「ママが、ママがな、ママが、帰ってきたんさ。」

「…え?」

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証拠不十分

一郎は静子が不起訴で釈放されたのだと答える。
「ママはやってないって認められたんだ。な? わかるか。」

呆然とする静一。
「ど………うして……なん……で……?」

静一の微かな呟きに答えたのは江角だった。
「お母さんがやったっていう、物的証拠は無かったの。」
そしてしげる自身からは証言をほぼとれておらず、伯母の憶測が多かったと判断されたと説明する。
「……よかったね。静一君。」

驚きのあまり江角を見つめて呆然としていた静一。眉根を寄せ、表情が悲しげに歪む。

一郎は目を伏せて、静子と会ったと呟く。
「元気そうだった。静一のこと心配してたよ。」

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静一は、しん…ぱい? と信じられない様子で呟く。
「どう…いう…ふうに…? なんて……言って…?」

一郎は静一をじっと見つめたかと思うと、いや…と呟いて視線を外す。
「『静一はどうしてる?』って……」

「『うん…がんばってやってるよ』…って…言っといた。」

表情を強張らせる静一。

そして一郎は続ける。
「今日は…来れなかったけど、会いに来るから……ここへ。」

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会いに来る

なんで今日は来れなかったん? と問い返す静一。
疑うような目つきになった静一が矢継ぎ早に質問する。
「本当に来るん? ママは今どこにいるん?」

一郎は静一から視線を逸らし、静子は今ホテルにいると答える。
「家は…うるさいから。テレビの人が来て……出たばっかりで……色々大変なんさ。」

静一は眉根を寄せ、一郎をじっと見据えている。

一郎は静一を諭すように呼びかける。
「ママに……会いたいよな。」

ぽかんとした表情になる静一。

「すぐ…会えるから…来てくれるから…だから…だから…がんばろう。静一…な。三人で……」

静一は呆然としていた。
(ママが来る ママが会いに来る ママが)

静一は想像していた。
部屋の入口に静子が立っている。
「静ちゃん。」
逆光でその表情は見えない。

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感想

不起訴

静子が不起訴で釈放されていた。

そりゃ、昨年の夏に崖の上という滅多に人が来ないようなところで静子がしげるを突き落とした物的証拠なんて見つかりっこないだろう……。
検察からすれば、静子の犯行を裏付て、起訴するための唯一と言っても良い手掛かりは、あの日現場に居合わせた静一の証言だけだった。
そしてその証言があやふやで、きちんと静子を犯人だと示していないのであれば、証拠不十分になるのは当然のこと。

結局、前回の静一の元にやってきた検事による事情聴取後、静子の犯行は伯母による憶測ということで片付けられてしまったようだ。つまりしげるが足を滑らせて落ちた(それどころか、静子はしげるを助けようとした?)という静子の証言が採用されたということだ。
一郎は素直に静子の釈放を喜んでいるが、果たして伯母はどのような心境なのだろう……。

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母が親戚の子を突き落とした容疑で捕まった後で釈放され、その母の息子が親戚の子を突き落として殺害した。この一連の事件はかなりセンセーショナルに伝えられているはずだ。

一郎曰く、釈放された母を取材すべく家の周りには今もマスコミが来ているという。
当然伯母は警察から報告を受けているだろうし、マスコミが逐一ニュースにしているだろうから静子の釈放は絶対に知っている。

世間の注目の的になることに、もし自分が被害者家族であるしげるの親、あるいは加害者家族の一郎の立場だったら耐えられないだろうな……。

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静子は本当に静一に会いたいのか?

静子の不起訴を喜ぶ一郎。
しかしわずか2、3ヶ月の間に老けすぎだろ……。明らかに日々の心労が蓄積していることがわかるなぁ。気の毒すぎる。
静子が不起訴で釈放され、自分のところに戻って来たことを素直に喜んでいるのがまた健気というか……。
自分だったら一郎のように捕まった妻を待っていられただろうか。何もかも捨てて逃げてしまいそうだ。
やはり、一郎は本当に静子のことを愛しているんだろうな。そして人を殺めるという大罪を犯した息子も見捨てない。

静一は静子の釈放を一郎ほど素直には喜べないようだ。
少年鑑別所で暮らす日々に疲れてしまったのか。
いや、一転して無罪を主張し始めた静子のことを考え続けていたからなのか。すっかりやつれてしまった。

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当初は罪を認めていた静子が無罪を主張し始めたのは、静一がしげるを殺めてしまったことを知ってからだった。これは、静一からすれば身代わりにされたのと同じだろう。
少なくとも自分が静一の立場ならそう思う。

しかし、静一から静子に関する質問を受けた一郎は明らかに嘘を答えてるだろ……。

静子は静一のことを心配していたと一郎から伝えられて、静一はどういうふうに、何と言っていたのかと質問する。
その質問を受けた一郎は静一から視線を外して、静子との短いやりとりを伝えるだけ。

いや、そのやりとり、今考えただろ……。

なぜ今日面会に来れなかったのか、本当に来るのかという静一の質問にも、静一の目を決して見ることなく、静子はマスコミを避けるためにホテルにいて色々大変なんだと答えるのみ。

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静子がマスコミを避けるためにホテルに滞在していることは、おそらく間違っていない。
しかし静子が静一に会いたいと言っていたとは思えない。

「すぐ…会えるから…来てくれるから…だから…だから頑張ろう。」

このセリフを言っている時の一郎の表情から、静子が静一に会いたいと強く希望してなどいないことが伝わってくる。

「ママに……会いたいよな」
このセリフを言っている時、一郎は何としても静子をこの場に連れてこないといけないと静かに決意を固めているように見えた。

そもそも本当に息子のことを愛している母であれば、マスコミの好奇の視線など一顧だにせず、何としてもこの面会の場に同席しようとするはずだ。

静一は相変わらず静子に執心しているが、静子は……。

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しかし静子が会いに来ると聞かされても、静一が喜んでいるようには見えない。
本当に会いに来てくれるのか、あるいは来たところで果たして自分が望むような言葉をかけてくれるかどうか不安という感じに見える。

静一からしたら静子に見捨てられたら、自分がこれまでやってきたことが全く意味がないことだったと突きつけられるのと同じだ。
しげるを突き落とした静子の犯行を秘密にして大きなストレスを抱えたのも、しげるを突き落としたのも、全ては静子を想ってやったことだった。

静子は本当に静一に会いに来るのだろうか。
何となくだけど、もし面会にやって来たとしても、すっかりやつれてしまった一郎や静一とは違い、静子の様子だけは以前と全く変わっていない気がする。

静子、久々の登場となるか。
次回が待ち遠しい。

以上、血の轍第102話のネタバレを含む感想と考察でした。
第103話に続きます。

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