第6話 家族(ファミリー)
目次
第5話のおさらい
トイレで何の気無しに腕の機器を操作したパピコは巨大化してしまう。
天井につくほどにまで巨大化してしまったパピコは、混乱しながらも何とか外に這い出て竜二に助けを求める。
意味が分からず唖然とする竜二。
パピコは、巨大化する直前に腕の機器を操作していた事を思い出して再び機器をいじる。
見る見る元の大きさに戻るパピコを見て、竜二がAVの新企画になる、と大喜びでパピコを説く。
ん~、と悩むも、竜二に従うパピコ。
AV監督の前で巨大化して見せる。
すぐに巨大化したパピコで作品の撮影開始となる。
零はパピコからの連絡が無い事で憂鬱になっていた。
友達に、最近AV女優に会ったと切り出すが友達の反応が悪い。
しかしスマホで”パピコ AV”と検索するやいなや、一気にテンションを上げる友達。
矢継ぎ早に飛んでくる質問に答えていく零。
ラインが来ないからもう会わないかも、と弱気になる。
深夜、零のスマホからラインのメッセージ受信音が鳴る。
指定のファミレスに行くと、そこにはパピコがいる。
夜に呼び出してごめん、と謝るパピコに、零は会えた喜びでいえいえ、と否定する。
パピコが話を切り出そうとすると、零はパピコの右腕に妙な機器を見つける。
伝えたいことはまさにそれだ、とばかりにパピコは必死に街を彷徨っていたヘルメットにブリーフのオジサンについて話し出す。
そのオジサンが自分の目の前で車に轢かれ、救急車を呼んでいる時にオジサンによって腕にくっつけられてしまったのだと説明するパピコ。
パピコのイマイチ要領を得ない説明に、零は首を傾げる。
オジサンの安否を問う零に、パピコは、ぬいぐるみになっちゃった、と答える。
パピコは、真実を言っているにも関わらず零に分かってもらえず、忘れて、と恥ずかしさを誤魔化す。
そしてあの日拾ったオジサンの持ち物らしきDVDを零に渡す。
用はこれだけ、と外に出る二人。
去り行くパピコの背中に、零は勇気を出して、自転車で送ると呼びかける。
パピコは遠慮を見せるが、零の自転車の荷台に乗る。
パピコの鼻歌を背中越しに聴きながら零は深夜の街を自転車で走る。
星が見える、と夜空を見上げるパピコ。
零もパピコと同じように空を見上げるが、こっそりとパピコの横顔を見つめる。
パピコは笑みを浮かべたまま夜空を見上げている。
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第6話 家族(ファミリー)
ディスクの内容
零が自室のゲーム機でパピコから受け取ったディスクをセットしている。
ヘッドホンをつけ、胸を高鳴らせながらゲーム機のコントローラーを押す。
映像が再生される。
画面に映ったのはヘルメットを被り、ランドセルを背負ったおじさん。
「いわがみこうえん………」
バックには岩神公園駅の改札が映っている。
「シンギュラリティはもうとっくに訪れているというのに…なんだこの平和ボケした世界は……」
呟きながら街を闊歩するおじさん。
子供がおじさんを見て、ヘンタイだー、と呟いている。
「……」
涙を浮かべて映像を見つめる零。
映像を早送りし、ヘッドホンをゆっくり頭から外す。
「………」
その瞳には涙が浮かんだまま。
「衛星軌道にはすでに…もう、ギガストラクチャーが建設されているはず………目視はできない………」
天高く陽光が輝いているのを背景に、おじさんが呟く。
「それにしてもこの時代はみんな、」
街を歩く女性たちを見て笑うおじさん。
「珍妙なカッコウをしているなあハハハハハ。」
「長い……何これ…」
画面下、タイムレコードに注目する零。
「ん!? は?」
00:52:37 / 168:00:00
「168時間!? 1080ピクセル?」
零は、ブルーレイであっても収まるはずがない大容量に気付く。
「何このメディア? ブルーレイでも無理っしょ。」
ゲーム機からディスクを取り出し、ケースに納める。
「なんだこれマジで…」
集られ体質
パピコのマンション。
ベッドで寝ているパピコに竜二が、パチンコに行ってくる、と声をかけながら鞄を漁っている。
「ん………ん…?」
その声で起きたパピコは、竜二が財布から1万円を何枚も抜いているのを目撃する。
「あ!!」
半身を起こし、ちょっとーっ、と叫ぶパピコに、お土産買って来るから、と全く構わずズンズン玄関に歩いていく竜二。
「あーもう………」
パピコはバタッ、とベッドに倒れ込む。
次の瞬間、枕元のスマホに着信が来て驚く。
兄からの電話をとったパピコは、えー、と難色を示しつつも最終的には、わかった、と了解する。
「お母さん大丈夫かな?」
新幹線に乗り、実家に帰宅する。
兄弟
ただいまー、と玄関から声をかけるが誰も出て来ず、何の返事も無い。
上がり込んだパピコは居間でくつろいでいる3人の男を発見し、挨拶する。
「うーす。」
3人の男はパピコに注目するが、挨拶は返さない。
「ちほー」
坊主頭の男が、AVをまだ続けているのかと問いかける。
斜向かいに座っている男が、友達に指摘されて恥ずかしい、と続ける。
「そのお陰であんた達暮らせてんやろ。」
ソファに座りながら言い返すパピコ。
坊主は、キャバクラとか別の職があるだろ、と言い、もう一人が、ソープの方がまだ良いんじゃないのか、と続ける。
それには答えず、母の入院先を尋ね、一緒に行くかと坊主たちに問いかけるパピコ。
「行かへんて。」
「ちほ行って来て。」
スマホをいじり続ける二人。
「ふーん………」
立ち上がったパピコは、亡くなった父の写真が入った写真立てを見つけ、近寄っていく。
そして、手に取った写真立てを頬に当てて、そっと目を閉じる。
母親
病院に一人で向かうパピコ。
院内のロビーで右足にギブスをして松葉杖をついた母と向かい合い、立って話をしている。
「あのいやらしい仕事、まだ続けとるん?」
「何その腕時計。」
パピコは母の言葉に、いいやん別に、とだけ返す。
「家族全員あんたにぶら下がってるんやからな……」
母は、パピコに皆の生活がかかっているんよ、と恥ずかしげも無く口にする。
「うん。」
うんざりしたような表情のパピコ。
「もーわかっとるよー」
母は、治療費が30万かかるが支払いは大丈夫かとパピコに問いかける。
パピコは、うん…、と浮かない表情で答える。
用事を終え、パピコはとぼとぼと道を歩く。
寂しそうな表情を浮かべるその脳裏で思い出すのは幼少期、父の自転車に乗せてもらって走った楽しい記憶だった。
パピコに連絡したのは
新幹線を降り、マンションに帰宅したパピコはベッドに体を投げだす。
スマホを見ると、竜二からメッセージが入っている。
パチ3万負けた~
今日サウナ泊まるわ
よろしく~
パピコは飼い犬の”もち”を抱きしめながら、その名を連呼する。
すると、再びスマホにメッセージが入る。
今、入江と呑んでるからおいでー
ジョニーズの男の子来るって
バンドの男の子もいるよー
パピコに会いたいってー
パピコは、ごめんねー、風邪ひいたみたい、と返す。
そっかー残念
お大事にー
ベッドに仰向けになり、天井をじっと見つめるパピコ。
その頬をもちがペロペロと舐める。
態勢を横臥にし、そのまま眠りにつく。
夜、スマホに再びメッセージが入る。
DVD見たのですが……
ちょっと頭の中をまとめたので…
お会いできますか?
パピコは零からのメッセージを確認し、嬉しそうに微笑む。
うん!
今からうちに来てくれる?
パピコからの嬉しい返事に控えめな雄叫びを上げる零。
階段を駆け下り、自転車のロックを外す。
自転車に乗り、息を弾ませながらパピコのマンションに向かう。
感想
未来の技術
おじさんは未来から来たっぽい。
シンギュラリティが訪れているのに何だこの平和ボケした世界は、とおじさんは現代の在り方にケチをつけている。
おじさんのいる未来が平和ボケしていない整然とした世界だという事か?
あまり憧れないんだけど……。
もしくは、未来ではひょっとして何か争いでも起こっているのかもしれない。
そして、それを食い止める、もしくは食い止めるヒントを得る為に現代にやって来たとか?
ベタ過ぎるけど好きな設定なんだよね(笑)。でもやっぱり羨ましくは無い。
衛星軌道には既にギガストラクチャーが建設されているはず?
宇宙空間に建設された巨大建築物が今後物語に出て来る可能性があるってことか。
SFっぽくなってきた。散りばめて来てますね。いいよー。
現代の人間の恰好を見て珍妙な恰好をしている、と笑うってことはおじさんの珍妙な恰好は、どうも未来だと常識になっているようだ。
現代人からは頭がおかしいとしか思われていなかっただろうけど、逆もまた然りだったのか。
ブリーフ、ヘルメット、ランドセルはタイムトラベラーに必須の、現代ではあり得ないくらいに高度に発達した技術を詰め込んだ装備なのだろう。
おじさんが縮んだのも未来の技術の一環であることは間違いない。
零が再生していたディスクが恐らくはHD画質かそれ以上で168時間。
さらに細かく見ると、AVC+、12.1chや128khz、Dolby Atomosなどの表記がある。
AVC+に関しては完全に未来の規格だろう。
あまり詳しくないから自信は無いけど、これはつまり、音声に関しても信じられないくらいキレイで臨場感があるってことだと思う。
ただ、それらのデータを余さず再現できるスピーカーシステムを通さない事には意味がないと思うけど……。
これだけの膨大な情報量であれば、おそらくはテラバイト単位のデータを収納出来るメディアであることは明白だ。
一枚のディスクにそれだけの大容量を詰め込める技術は現代では実現していない……はず。
どこかで開発が進んでいるのかもしれないけど、少なくとも自分の知る限りはまだ無いはずだ。
零が映像を見て涙を浮かべていたのはおじさんが事故に遭ってもうこの世にいないからだと解釈したけど、それで合ってるんだよね?
最初読んだときは零の涙の意味が、全然分からなくて、よくよく考えてみたらそれしか思い当たらなかった。
勘違いや読み落としだったら恥ずかしいので、もし違ってたら教えて下さい(笑)。
———–
2018/02/26追記
チェリーさんからのコメントで、”パピコの最新AVだと思ったら違ってて、そんな期待してた自分が情けなくなって泣けた”という解説を頂きました。
自分の読み方より遥かに納得のいく理由で、実際合ってると思います。
チェリーさんありがとうございます。
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パピコが不憫過ぎる……
この子メチャクチャいい子だ。
しかしそれに付け込む連中しかパピコの周りにはいない事が判明した。
気を許せる相手は飼い犬の”もち”くらい。
実家の居間にいたのは兄弟だろう。二人しか喋っていなかったが、実際三人いるようだ。
今回の話では、パピコは少なくとも兄弟の内、二人から、恥ずかしいからAVではなくキャバクラかソープで働いてみたらと言われてしまう。
そのお陰で暮らせてんやろ、と窘めるだけのパピコが良い子過ぎて……。
人によってはこんな奴らのことを単なる寄生虫だと結論づけて突き放すのかもしれない。
この場合、むしろそれが正解だと思うんだけど、パピコはどうしてもこいつらを放っておけないんだな……。
見捨てるという発想すらなさそうで余計に不憫だ。
さらにパピコは、母親からも入院費用の支払いを肩代わりさせられてしまう。
母親はパートかなんかで働いているのだろうか、と思ったが、働いてないなこりゃ。
「家族全員あんたにぶら下がってるんやからな」
このセリフはつまりそういう事だ。ゾッとする。
仮にパートに出ていたとしてもほんの少しだろう。
身を粉にして働いている可能性は低い。
まぁ、働かずにお金が入るアテがある場合、働かなくなってしまう人は普通にいるとは思う。
しかしそのアテにしているのがAVで身を削って働いている娘の金とは……。
ここまで来ると家族はパピコの人生の重荷でしかない。人生の果実の全てを吸いつくす餓鬼だ。
彼氏の竜二からも軽く扱われ、金づるにされているのは既に知っている。これも胸糞悪い。
帰宅した友達(?)からのメッセージは、要は友達が男に気に入られる為にパピコを生贄として扱おうとしただけだろう。
友情が介在しているようには見えない。
ここまで状況を整理すると、パピコには哀しいくらいに味方がいない。
第1話でも嫌がらせを受けていたし、理不尽なまでに不幸を引きつけてしまっている。
今の彼女を救っているのは”もち”と父との楽しい記憶、そして零の存在くらいなのかもしれない。
一番大きいのは彼女の明るい性格と、物事を深刻には考えない思考の癖か。
零がこの不遇の環境からパピコを救い出してくれるのだろうか。
これまでの作品傾向からも、奥先生はきちんと読者にカタルシスを与えてくれるからパピコが今の環境から抜け出す事は間違いない。
というか、抜け出してくれ……。救いが無さ過ぎるから……。
次回、零がディスクの膨大な情報から読み解いた内容とは何なのか。
パピコの得た、大きくなる能力は今後どういう形で活かされていくのか。
少なくとも斬新なAVを撮影する為ではないだろう。
早く続きが読みたい……。
以上、GIGANT第6話のネタバレを含む感想と考察でした。
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あわせて読みたい記事。
初めまして。おじさんが言っていたシンギュラリティやらギガストラクチャーって聞いたことあるけど何だっけ?と検索していたら辿り着きました。
シンギュラリティの意味に関しては特に言及することもないですけど、
ギガストラクチャーの存在は気になりますね。GANTZにも同様のタイトルで巨人の母船が描かれた回がありましたが…。またあんな感じの巨大建築物が登場するのかなと思うとワクワクします!
零が泣いていた理由についてですが、自分が思うに多分パピコの発売前の新作AVとかを期待して満を持して再生したらまさかのおじさんの映像で、期待してた自分が情けなくて泣けて来たとかそんな理由だと思いますよw
まだ連載が始まったばかりで感想なども少ない中、これだけの考察をされていて凄いと思いました!また時間のある時に遊びに来ます~!
チェリーさん、コメントありがとうございます!
>GANTZにも同様のタイトルで巨人の母船が描かれた回がありましたが…。またあんな感じの巨大建築物が登場するのかなと思うとワクワクします!
そうなんですね。読み返してみよう。
やはり、奥先生のSFチックな描写はピカ一ですよね。
硬質な絵がSF向きというか。でも胸は柔らかそうなんだよなぁ(笑)。
>零が泣いていた理由についてですが、自分が思うに多分パピコの発売前の新作AVとかを期待して満を持して再生したらまさかのおじさんの映像で、期待してた自分が情けなくて泣けて来たとかそんな理由だと思いますよw
ああ~! 確かにそっちの読み方が自然!w そう考えると笑えますね!
何も会話した事の無い、知らないオッサンの死に泣くというのはないわけではないけど、零ならAVを期待した自分に情けなくなったという理由の方がはるかに納得できますね。
なんか奇麗な理由をつけてた自分が恥ずかしいw
読み違いは今後もあると思います。
お時間があればぜひ指摘してもらえればありがたいですね。
考察と呼ぶのも恥ずかしい代物ですが、思い出したらチェックして頂けると嬉しいです!