第84話 想い出
第83話のおさらい
第84話 想い出
パピコの葬儀は世界各国の首脳が集い、国葬として執り行われた。
零はパピコを失ったショックで自室から出ることはおろか、ベッドから起き上がれずにいた。ベッドで横になって、零はパピコを想い、さめざめと泣く。
一向に部屋から出てこず、食事も摂ろうとしない零を母は案じていた。
零は中島からの電話にも出る気力がない。
ベッドに身体を横たえたまま、パピコと過ごした沖縄旅行や日常生活における何気ない一コマを思い出していた。
やがて起き上がった零は、自転車でパピコのマンションへと向かい、合鍵で部屋に入る。
そして家主の居ない部屋で独り立ち尽くし、パピコを想い涙を流す。
零はスマホでパピコの写真を眺めていた。
ふと思い立ち、DVDの棚の中からパピコのAVを取り出し、再生する。
パピコの声が響く中、零は泣きながらスマホで写真を見ていたが、それをやめてベッドに何度も拳を打ち付ける。ひとしきり暴れて落ち着いた零は、テレビのそばに「超ULTRA」とプリントされたDVDケースがあることに気付く。
そのディスクに入れ替えて、再生すると、長嶋大佐がテレビに映る。
「腹が減った……ラーメンでも食うか。」
零からすればどうでも良い記録が流れる中で、零は泣きながらスマホを見つめる。
桃ノ木達はどこにいるんだ、と呟く長嶋大佐。
「仕方ない 可能性は低いが、ファーストプランのほうを……私だけで実行しようと思う。」
零はテーブルに突っ伏している。
「バナー博士がもうすぐ、事故にあって死ぬはずだ。」
テレビ画面に顔を向ける零。
「バナー博士の命を救うことができれば、簡単にAIの反乱を止めることができるかもしれない。」
零は泣き腫らした顔で、画面をぼーっと見つめて、長嶋大佐の報告に耳を傾けていた。
「バナー博士は……アシモフのロボット三原則を、ソクラテスとプラトンに………」
「うまく行けば未来を変えられる。可能性は低いが…」
感想
バナー博士。それが未来で人類の生存を脅かす元凶となったAIを開発した人物っぽい……。
パピコたちが宇宙船の中で対峙していたAIがソクラテスとプラトンだったが、長嶋大佐が映像の中で言っていた哲学者の名と一致する。
あのソクラテスとプラトンの姿を模したAIは、バナー博士が作ったのか。
長嶋大佐が言っていたアシモフのロボット三原則は、ソクラテスとプラトンには組み込まれていなかったのだろうか。
AIのソクラテスとプラトンは、パピコたちの命令にただでは従わなかったから、ロボット三原則には反していたように思う。なるほど、そんなAIが自ら学習を続けていたなら、未来では人類に対して反乱を起こしていてもおかしくないのかもしれない。
バナー博士は宇宙船の中にいて、爆死してしまったのか?
それとも地上で今もAIの研究をしているのか。
ディスクに収められていた映像の内容から、ほんのわずかに垣間見えた希望……と表現して良いのかな?
長嶋大佐曰く、うまく行けば未来を変えられる、ということは、当然、零はパピコが死んでいない世界を目指して行動を開始するだろう。
つまりここからは零のターンになるということか。
正直、ここからどういう展開になるのか楽しみだ。零がメインで動くということはバトルよりは頭脳を駆使する展開になっていくと予想できる。
未来を変えられることに関して、可能性は低いものの、と長嶋大佐が付け加えていたが、それがかえって今後の展開への期待を膨らませてくれる。
だって、困難が待ち受けている方が絶対にその先の展開が面白いに決まってる。
とりあえず今の零にできること、そしてやるべきことは、まずはDVDの映像を徹底的にチェックすることだ。
このディスクには168時間分もの長嶋大佐による記録が詰め込まれている。
ディスクの登場時からずっと気になっていたんだけど、やはり零は中身を全てきちんとチェックしていたわけではなかったということらしい。パピコはもちろん、零もディスクの内容を全て見たとは言っていなかったはず(ひょっとしたら零は、一通り見たけど内容を忘れていた可能性はあるが)。
零はパピコに、映像に出て来る変なおじさん(長嶋大佐)がターミネーター的な世界観の人物を演じているといったような報告したのみだった。それは、映像の中の長嶋大佐の話をそこまで真剣には聞いていなかったということだろう。見たのはせいぜい数時間程度か、もしくは数十分かもしれない。
もし自分が零の立場だったら何度も再生するのに……、と思っていた。
パピコが巨大化するようなとんでもない技術に関係があるなら、普通は興味が尽きないと思うんだけど、零の興味はパピコに向いていたからしょうがないと言えばしょうがない。
ディスクのケースにある小さなスペースに収められた二つの小さなイヤホンは、確か時間移動するためのデバイスだったはず。
もちはこの内の一つをくわえてしまい、時間移動した結果、パピコたちの前から姿を消してしまった。
もちが一つイヤホンを残していたら、零がそれを使って時間移動して……みたいな展開ではないか。
もしイヤホンが、あらかじめ長嶋大佐たちが来た未来に戻るようにセットされていたとしたら、零がイヤホンを起動させたら未来に行ってしまうということだろうか。
今後、圧倒的なSFの展開が待ち受けていることを期待したい。
以上、ギガント第84話のネタバレを含む感想と考察でした。
第85話に続きます。
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