血の轍(押見修造の漫画)の最新第18話始業式の感想(ネタバレ含む)と考察。吃音になった静一を待ち受けていたもの。

第18話 始業式

※前話”17話”のあらすじのみ。第18話はスペリオール発売後に後日追記予定。

第17話のおさらい

吹石のラブレターを静子と靜一が破り、静子が一郎に怒りをぶつけて三週間経っていた。

部屋の中で宿題をする静一に、長崎屋へ行こうと誘う静子。

静子と靜一は自転車で長崎屋へ向かう途中、知り合いのおばさんに話しかけられる。

愛想よく挨拶を返す静子。おばさんは静一に何気なく年齢を問う。

それに返答する静一は吃音を患っていた。
血の轍 第17話 静一
おばさんは静一が必死に発音するその様子に違和感を覚えながらもそれ以上踏み込まずに会話を終える。

長崎屋へ到着し、服売り場を練り歩く静子と靜一。

静子は静一に黒いTシャツを宛がい、これはどうかと問いかける。

静一は吃音で言葉に詰まりながらもべつにと答え、静子はそれを楽しそうに咎めながらまるで恋人のように静一の頬を突く。

その時、静一の耳に楽しそうな笑い声が聞こえる。

その方向を見ると、そこには小倉、酒井、比留間の三人がいる。
血の轍 第17話 小倉、酒井、比留間
静一は三人に気付かれないよう、帽子のつばで目を隠すのだった。

ファミレスに入った静子と靜一。

注文をとりにきた男性店員に対し、静一はメニューを読み上げるのではなく写真を指さす。

静子はいつも静一が頼んでいたタコの唐揚げを頼むかと静一に問いかけ、静一は頷く。

静子は窓の外がきれいだと静一に向かって呟く。

静一は静子に促されるままに窓の外を見るが、静子の発した、しげちゃん、という言葉に反応し、静子を見る。

まだ意識が戻らないって、と他人事のように言う静子。
伯母さんがずっと病院に泊まり、しげるに付き添っていることを大変だ、かわいそうだと繰り返す。
血の轍 第17話 静子
「私達が全然お見舞い行かないの、みんなはどう思ってるんかねえ。」

静一は何も答える事無く、沈黙する。

店員が持ってきたタコの唐揚げを、静子は静一にことわって先に食べる。

「おいひ。」

楽しそうに笑う静子。

第17話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

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第18話 始業式

変わらないのは静子だけ

闇の中からするりと手が伸びて来る。

 

掌が視界一杯に広がり、静ちゃん、と呼びかける声が聞こえる。

 

ベッドで目を覚ました静一の頬に静子が触れている。

血の轍 第18話 静一
「起きる時間よ。」
静子が微笑みながら静一に呼びかける。

 

「今日から、学校でしょ。」

 

静一の額から汗がしたたり落ちる。

静子から目を逸らす様に横を向く静一。

 

「ほら。こしょこしょ。」
静子は笑顔で静一をくすぐる。

血の轍 第18話 静子

静一は起床し、階下へと降りていく。

 

居間では一郎がテレビを見ている。
静一が居間の自分の席に座っても挨拶はおろか、そちらを見ようともしない。

血の轍 第18話 静一と一郎

静ちゃん、と静子が声をかける。
「肉まんとあんまん、どっちにするん?」

 

静一は口と目を大きく広げ、静子の質問に答えようとする。
「…あっ…あ……く…あっ」

 

静子は、中々言葉が出てこず苦しんでいる様子の静一を全く表情を変える事無く見つめる。

血の轍 第18話 静子

「ぐっ…く…くあっあっ」

 

一郎は静一の言葉を背中越しに確かに聞きながらも、静一を見る事が出来ない。

 

一瞬、静一の喘ぐような声が止まり、静一が答える。
「…肉まん。」

 

玄関を開けて外に出ようとする静一を、静ちゃん、と静子が呼び止める。

「大丈夫ね。気を付けて。」

振り向いた静一に静子が声をかける。

血の轍 第18話 静子

静一は何も答えずに静子をじっと見つめてから家を出る。

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吃音を抱えたままクラスメートとの初会話

蝉が鳴いている中、一人、通学路を行く静一。
自分の足を見ながら歩いていると、背後からカチャカチャと音が迫ってくるのに気付く。

 

うい―――! と小倉が勢いよく静一の背負ったバッグに突進する。

 

静一が視線を背後に向けると、そこには小倉、酒井、比留間の三人組がいる。

 

「長部――ひさしぶり!」
小倉が、宿題終わったー? と、静一に明るく話しかける。

血の轍 第18話 小倉、比留間、酒井

オレ、今朝までかかったー、と言う小倉の言葉を聞きながらぽかんとした表情で静一は小倉たちを見つめる。

 

静一は小倉たちから視線を逸らし、何も答えない。

 

その様子に一瞬小倉が真顔になり、えー!? 無視かよー、と、すぐに笑う。

 

静一は小倉の方を向きつつも目を合わせる事が出来ず、歯を食いしばりながら言葉を捻り出そうとする。

 

「あっ…が…ぐ…くおっ…かっ」

 

静一のただならぬ様子に呆気にとられる小倉たち。

 

「あがっ」

「ぐ…」

「ばっあ…」

「くかっ」

血の轍 第18話 静一

小倉たちを真正面から見る事が出来ず、眼球は不自然に目の下に止まる。

 

口を歪めながら喘いでいる静一の様子を3人組は呆然と見つめるのみ。

「かぐ…くっ」

 

「ぶはっ」
耐え切れなくなった小倉が思いっきり笑いだす。
「はははははっ」

 

やべー、それ長部、と笑いながら、小倉は静一のギャグだと解釈していた。

 

酒井も比留間も小倉につられるように笑う。

「腕を上げたな長部!」

「あははははは!」

 

静一はきょとんと小倉たちを見つめたかと思うと、再び視線を下に向ける。

血の轍 第18話 静一

腹いてー! と笑う三人組。

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静一、息を潜めてやり過ごす

体育館で始業式が行われている。

 

壇上では教師の話が続く。

 

男子の列に並び、俯き加減の静一。

 

吹石は静一の姿を女子の列から眺めている。

 

2年1組。

 

話を終えた担任教師は、日直に帰りの挨拶を促す。

 

日直の号令でクラスメート揃って挨拶をする。

 

静一は一人、既にバッグを背負ってすぐに教室から出られるように準備している。

 

「さようならー。」

 

挨拶が終わるなり、静一はざわついている教室の外に飛び出す。

血の轍 第18話 静一

「長部ー。帰るんべー。」
小倉が一緒に帰る為に静一を探す。
「あれ? 長部ー?」

 

静一がどこにいるのかを誰ともなく問いかける小倉。

 

問われたクラスメートは、もう帰ったんじゃねん? と返す。

 

吹石だけが、挨拶が終わってすぐに静一が教室を飛び出して行ったのを見送っていた。

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帰宅途中で吹石と

通学路。

 

家までの道をひた走る静一。

 

息が上がっても必死で、学校から逃げるようにして歩道を走っていく。

 

ズザッ

 

躓いて道路に前のめりに投げ出されるように転ぶ静一。

 

「はっ」
道路に手をつき、上半身を支えながら息をつく。
「はあっ」

 

そんな静一の肩に手がかかる。

血の轍 第18話 静一

静一がそちらを振り向くと、そこには片膝をついて吹石が静一を見つめている。
「…大丈夫?」

 

「はあ はあ はあ はあ」
静一は、吹石から視線を逸らす様に道路を見つめながら息を整えている。

 

吹石は、静一の方を掴んだまま静一を見つめる。
「血ぃ出てない? 見せて。ひざ。」

 

「え…」
静一は、吹石に言われるがままに道路に座ってズボンの裾を膝上までまくり上げる。
そこには擦りむいて出血している傷がある。

 

「うわ~~! 痛そう…」
思わず痛そうな表情を浮かべる吹石。

 

「待って。」
吹石はポケットからハンカチを取り出すと、静一の傷口に、ぎゅ、と両手でハンカチを押し当てる。

血の轍 第18話 静一と吹石

吹石がハンカチ越しに膝に押し当ててくれている手をぼうっと見つめる静一。

 

「長部。」
吹石が頬を染めながら静一を見つめる。
「手紙…読んでくれた?」

血の轍 第18話 吹石

静一の額から頬にかけて汗が流れ落ちる。
吹石を見返す事が出来ないまま、静一の目が見開く。

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感想

静子と一郎の静一の吃音に対する態度の違い

今回、一郎は静子から剥き出しの感情をぶつけられて以来、久々の登場となった。

 

気になってたけど、やはり以前とは同じではいられなかったようだ。

 

今回、一郎は顔を見せる事が無かった。
静一にも静子にも顔を見せていなければ言葉も発していない。

 

これは、一郎と、静子と静一の二人との間に溝が生じている事を意味していると思う。

 

静子の豹変を目の当たりにして以降、一郎は、一家の長として自信を喪失しているような印象を受ける。

 

静子から朝食は肉まんかあんまんかと問われ、静一がその問いに答える際に吃音に苦しむ様がすぐそばで展開していても何も声をかけることが出来ない。

 

しかし、それを当たり前のものとして受け入れているというよりも、何とかならないのか、と思っているような印象を受ける。

 

夏休みの始め頃に静一が吃音を発症してから、既に数週間が経っている。

 

この期間中、一郎は、自分が静一に何もしてあげられない無力感に苛まれているということなのだろうか。

 

物語の作中は90年代中頃だけど、当時は吃音を病院で医者に診せて対処法を相談するという選択肢があったのだろうか?
精神的なショックが原因だと知っているのか?
そもそも、その選択肢すら思い浮かばず、ただ見守るのが常識だったのではないか。

 

一郎は、静子が豹変したのと同時期に吃音を発症した静一を見て精神的に参ってしまった可能性がある。

 

親戚のしげるが重症を負い、まるでそれがきっかけのように静子が理解不能の怒りを表出させ、静一は吃音。

 

これだけ色々あると、受け止めきれずに現実逃避してもしょうがないかもしれない。

 

ここまでこの作品を読んできて、一郎は元々、そこまで一家の長として強権的に振舞うタイプでも無かったように思う。

 

おばさんが静子をバカにしてもそれを咎める事無くヘラヘラと弱々しく笑っていた一郎は人間として割と脆いのではないかと思う。

 

どうして接したら良いかわからないのがありありと伝わってくる。

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今回、一郎は一言も静子や静一と言葉を交わしていないし、目も合わせていない。
しかし逆に、その行動から、一郎は一家の中で自分の立ち位置を失っている印象を受けた。

 

それに対して静子は、静子だけは事件前と何も変わらない。

 

しげるは重体になり、おば夫婦も、描写は無いけど恐らくは祖父母も変わった。

 

静一は吃音を患って元気がなくなり、一郎も静子や静一とどう向き合っていいか分からず自信を喪失している。

 

長部家が皆変わった中で、一郎に向けて怒りをぶつけた事は別にして、静子だけが以前と変わらぬ日常を過ごしているように思う。

 

静子は静一が吃音に苦しんでいる様子も、まるで何事も起きていないかの表情で冷静に見つめている。

 

一郎はそんな静子の得体の知れなさに戦慄しているのかもしれない。

 

普通ならば自分の子供が言葉を発するのに苦しんでいたら心配の一つもするだろう。

 

しかし静子は全く違和感なく静一と会話する。

 

この異様な空間に、一郎が参ってしまっていても無理もない。

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クラスメートの静一の吃音に対する反応

心配していたけど、とりあえず二学期初日は誤魔化せた。

 

通学路で早速三人組との会った静一。

 

静一は、小倉の何気ない会話に対して必死に言葉を返そうする。
そしてやはり出た静一の吃音の症状に対して、小倉はそれが冗談だと思って笑った。

小倉たちが笑ってしまうのは理解できる。

血の轍 第18話 静一

こんなの見せられたらそりゃ笑うよ。

吃音という誰でもなり得る厄介な症状だと分かったら笑えなくなるんだけどね。

中学生という超多感な時期にこの症状はあまりに残酷過ぎる。

これは、人生捻じ曲がるよ。吹石にまで見放されるようになったら絶対に学校に行けない。

 

とうとう小倉たちには静一の吃音は冗談だと誤魔化す事が出来たが、次はもう通じないだろう。
翌日から地獄が始まるのだろうな。

 

授業中、教科書を音読する機会もあるし、そもそも友達との会話は避けられない。

 

静一の視線がほとんど前を向かず、決して相手の顔を捉える事が無いというのが静一が自信を失っている事を意味していると思う。

 

吃音に関してそこまで知識があるわけではないが、こうなると重症だと思う。

 

吃音で自信を失い、相手と目を合わせられない。

 

目を合わせられないからさらに自信を失う。

 

この負のループが静一の性格を一気に暗くする。

 

これは不登校になる可能性が高い。

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静子の思惑

不登校になっても静子は全く静一を咎めないであろう事は目に見えている。

 

そして以前よりもさらに静子へと傾倒していく事になるのか。

 

ひょっとしたら静子はそこまで見通して、静一の吃音を幸いだと思ってすらいるのかもしれない。
静一とずっと一緒にいられるのは静子にとっては幸せでしかない。

 

静子にとって、静一が社会で自立できるように成長出来るかどうかの優先順位は自分の幸せよりも低いのだと思う。

 

吹石のようなカワイイ子から好かれたのを息子の成長のステップとは見ず、静一が自分から離れていってしまう事が静子には耐えられなかった。そして吹石のラブレターを破るという信じられない行動に繋がる。

 

静一は、吹石から手紙を読んだかと問われた。

 

読んだことは読んだけど、付き合おうと返事は出来ないのではないかと思う。

 

吃音で物理的に返事が困難、というのもあるけど、ラブレターを破ったのは単に母のお願いというわけではなく、しげるを突き落として以来不安定な顔を見せる母を助けたいと思ったから。

 

母を助けると決心している静一に、「吹石と付き合う」という母が嫌がるであろう事を隠れて行えるか……?

 

静子に反発出来ない静一。
そして静一の子離れを望まない静子。

 

両者はガッチリ噛み合って、強固な依存関係が生まれている。

 

このままだと、本格的に静一の人生はねじ曲がっていくであろう事が目に見えている。

 

18話冒頭の闇の中から静一に向かって伸びる手は、自分の自由を奪う静子を象徴している。

 

静一も静子との関係がこれで良いわけがないと心の奥で本当は分かっているはず。

 

しげるを突き落とした犯人は静子だと告白しなくては静一の心の傷は快方へと向かうことは無い。

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静一と吹石は付き合うか

もし希望がある展開を考えるとしたら、吃音が原因で学校で肩身が狭い静一がそれでも自分に向き合おうとしてくれる吹石に母の犯行を洗いざらいぶちまける、という流れか。

 

吹石が静一を見放さない限り、静一は何とかなるような気がするんだよなぁ。

 

膝を押さえてもらっている時の表情から察するに、静一は明らかに吹石の事が好きだし、内緒で付き合う展開も十分あり得る。

 

静一も揺れてると思うんだよね。母の願いと吹石の魅力との狭間で。

 

話が面白くなるので静一には吹石と付き合って欲しい。

 

そして、内緒で付き合っている事に気付いた静子が静一ではなく吹石に怒りを向けて……、というホラーな展開に。

 

怖すぎるけど、ぜひ静一に希望を持たせてやって欲しい。

 

以上、血の轍第18話のネタバレを含む感想と考察でした。

第19話に続きます。

第18話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。

 

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