第124話 家
第123話のおさらい
静一は警官からの電話呼び出しで、警察で保護されている静子との20年以上経ての再会を果たす。
しかし静子は痴呆の症状が進んでおり、静一のことをほとんど覚えていなかった。
静一は警官から、静子を引き取るようにと説得され、それを拒絶する。
警官は静一の拒否に一切動じない。静一の所で引き取るか、それが嫌なら静子が元々住んでいたアパートの滞納した家賃を肩代わりして、さらに引き続き静子をアパートの一室に回せるよう大家と交渉できるかもしれないと静一に淡々と助言するのだった。
静一と警官のやりとりが続く中、静子は自分が迷惑をかけてしまったのかと、ごめんなさいと言いながら深々と頭を下げる。
静一はそんな静子を、軽蔑を含んだ、うんざりしたような表情で見下ろすと、諦めたようにアパートの家賃を支払うと呟く。
父の遺した金が少し残っているからそれで払うと続ける静一の表情には失望の色がありありと浮かんでいる。
そして静一は、警官が同行する形で、静子が追い出されたアパートに向かうのだった。
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今回は、静一はパトカーで静子、そして警官と共に静子の住んでいたアパートに向かう。
静子は半年も家賃を滞納していると静子を受け入れることに難色を示す大家さんに対して、静一は自分の元に静子を引き取ることを回避すべく、滞納していた家賃のみならず、払える分まで先払いをすると大家を説得し、静子は無事アパートに戻れることになる。
痴呆の症状なのか、静子はなぜ見ず知らずの青年が自分のことをこうまでして助けてくれるのか理解できない様子ながらも、静一を自室に招くところまでで今回の話は終了。
次回は静子の部屋で、約20年ぶりに一対一で会話することになるわけだ。
一体どんな会話になるのか、そして今後二人はどういう関係性になっていくのか楽しみだ。
しかし今回の話の静一、かなりヤケになってないか?(笑)
前回も警官には静子の家賃を負担すると言った。だから警官は大家の元に静一と静子を送ったわけだが、しかし静一はまさか滞納した家賃だけではなく、先払いまですることになるとは思っていなかっただろう。
大家は、静子は10年以上アパートに住んでくれたからとなんとかしてあげたいが、半年も家賃を滞納しているとなると息子である静一に静子のことを引き取ってもらうわけにはいかないかと提案する。その提案は、大家のみならず、多くの人が自然と思いつくものだと思う。
しかし静一はそれを拒否するために、滞納分を支払うだけではなく、この先の家賃を払える分だけ先払いをすると言って、何とか静子をアパートに戻した。というか、無理矢理ねじ込んだ。
確かに静一は人付き合いはほとんどなく、お金を使う機会も少なめだろうから、本当に滞納分の家賃と、いくらかの先払いを約束できる程度には貯金があるのだろうが……。
それも全ては静子を自分の家で引き取らないようにして静子と距離をとるためだ。自分には、そんな静一の行動は、自暴自棄気味ではあるが、静子への強烈な反発心の表現のように見えた。
しかしそうやって必死に静子を拒否しようとする一方で、本当に静一が彼女を心から拒否しているのであれば、そもそも警察の静子を引き取りに来て欲しいという要請に応じていないのではないかとも思う。何しろ20年以上も会っていないわけだし、静一が最後に接した静子は、自分の息子を捨ててスッキリした表情を浮かべていた。激昂した静一に首を絞められてもニヤニヤするのみ。静一からすれば自分への存在否定そのものでトラウマとなったことは間違いない。
だが、それでも静一は静子を迎えに行った。
やはり静一の心の底では、警察から静子を迎えに来て欲しいと電話を受けた直後に静一が見せた恍惚とした表情が物語っている通り、ついに静子と会えたという喜びがふつふつと湧き出しているということではないか。ここからの展開は、静一が徐々に静子を求めていくようになるのかもしれない。
それに、20年以上を経て再開した静子は、若干痴呆気味で静一のことを覚えていないとはいえ、かつて裁判の場で静一のことを自分の人生の邪魔者と嫌った頃の静子ではなくなっていた。
現在の静子の気性は、まるでかつて静一のことを溺愛していた頃のように穏やかであるように見える。
そして静一が家賃を肩代わりする、保証人になるの宣言に納得した大家さんが静子に部屋の鍵を返し、静子が自分は元の部屋に戻れると理解した時、静子は静一の腕にそっと触れた。
それはおそらく、自分を部屋に帰らせてくれた静一への、静子なりの感謝の意の示し方だったのではないか。
今後、静子が静一のことを忘れたままであるなら、静一はここから静子との関係を再構築していこうと試みるのかもしれない……。静子が今のまま静一のことを知らない人として認識している限り、おそらく静一が望めばここから新しい関係を作っていくことができる。
何しろ今の静子にとって静一は自分がホームレスになる危機から救ってくれた恩人だ。静一が望めば良好な関係にしていける可能性は高い。
果たしてどういう展開になっていくのか。
以上、血の轍第124話のネタバレを含む感想と考察でした。
第125話に続きます。
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