第58話 AI
第57話のおさらい
零の耳に、登校中に、通行人がパピコについて話している内容が入って来る。
パピコの話題をはじめ、芸能界に詳しくない人にとって、パピコは引退しているのではないかと勘違いしてしまうほどに露出が減っていた。
以前行われた記者会見でのパピコは目が死んでいたが、活動再開は近いという説明が聞こえて来る。
授業中、零の目から涙が溢れる。
零は中島と共に映画作りを行っていた。
学校の外で車を気にしつつ、ハンディカムで撮影を続ける。
食事中、母に映画の進捗状況を聞かれ、まだ四分の一程度の進み具合だと答える零。
続けて母から、ちほさんは芸能界をやめたのかと問われ、零は、もうすぐ活動再開だと答える。
パピコはグラビア撮影の仕事の最中だった。
撮影が終わった後、マネージャーに芝居が上手くなりたいからドラマのチョイ役でもいいから役者の仕事を入れてくれとパピコは嘆願する。
オファーはたくさん来ていると答えるマネージャー。
自宅に帰るタクシーの中で、パピコは涙を流していた。
零は泣きながら自転車で街中を走っていた。
マンションに着いたパピコは、自室の鍵が開いている事に気付く。
零が来ているのかと思いながら部屋の奥に入っていくパピコ。
部屋の中でパピコを待ち構えていたのは桃ノ木少佐を含めた四人の未来から来たヒーローたちだった。
戦闘態勢をとろうと巨大化デバイスに触れたパピコに対し、桃ノ木少佐が手のひらをかざす。
「待て。」
「?」
桃ノ木少佐たちを警戒するパピコ。
第58話 AI
長嶋大佐
桃ノ木少佐は、自分たちが2135年から来た未来人だと説明する。
「私の……子孫……」
パピコは彼女が、ドラえもんののび太君の子孫であるセワシ君のような存在だと思っていた。
子孫じゃない、とピシャリと否定した桃ノ木少佐。
腕のデバイスを見せられて、パピコは車に轢かれて亡くなる前に一方的に自分にデバイスを託したおじさんのことを思い出す。
「あの時の、おじさん…の、家族……」
桃ノ木少佐は同じ舞台の軍人だと答えると、パピコにデバイスを渡した人がどこにいるのかを訊ねる。
考え込むパピコ。
「無くなっちゃった…」
そしてテレビの脇を漁り始める。
「えーとこの辺…」
パピコが取り出したのは、おじさんが力尽き後に残ったおじさんを模した人形だった。
「ああ!! 大佐!! 長嶋大佐!!」
おじさん人形を掴みあげる桃ノ木少佐。
仲間たちも彼女と同じように長嶋大佐に起こった悲劇を嘆いていた。
パピコは長嶋大佐が自分の目の前で車に轢かれて自分に「あとはよろしく」とデバイスを託したのだと説明する。
「そうか……さぞ……無念だったろう…」
おじさん人形に黙祷を捧げる未来人たち。
そして桃ノ木少佐は、自分たちがなぜこの時代に来たのか、この時代の混乱がなぜ起きているのか説明を始める。
二つの人工知能
2019年GOGLE社の研究室で生まれたソクラテス、プラトンと名付けられた人工知能がネットに流出する。
その人工知能の目的は”人間を完全に模倣すること”だった。
人間を完璧に理解しようと努めたAIは、人類を知るために自分たちをコピーした約6kgのロボットを中国のロケットに乗せ、宇宙に打ちあげられる。
ロボットは軌道衛星上で宇宙空間に浮遊するデブリ(ゴミ)を取り込んで自身を拡大していき、1か月後には直径1KMもの超巨大実験施設へと変貌するのだった。
その施設は軌道上にいながら殺人が出来たり、自然現象に見せかけた地震を引き起こしたり、巨大なバイオプリンタ機能を活用して巨人を降臨させるなど、オーバーテクノロジーを持っていた。
「え? あ!! えっ?」
パピコは呆気にとられていたが、巨人の正体を知り納得するのだった。
「そう……なん……だ。」
桃ノ木少佐は、この時代で起きている奇妙な事の全てはAIが人間の本質、つまり人間・精神・魂とは何なのか、を知るための実験に過ぎないと結論する。
桃ノ木少佐は、じゃあETEは、というパピコのセリフを受けて、AIが作ったものだと答える。
「あのサイトには市民の本音の意見が反映されている。」
「ソクラテスとプラトンは純粋に人間の本質を追い求めた。人々の本音の通りを具現化して、粛々と殺戮を繰り返した。」
そうする内にAIは自分たちが人間の真似をする必要はなく、むしろ自分たちに劣る人類にとって代わることこそが進化だという結論に達し、人間を制圧していくのだった。
その結果、2135年には世界の人口は約8500万人と激減し、もはやAIとの戦争に勝てる戦力を人類は持たなかったのだった。
そして、桃ノ木少佐は自分たちの目的を述べる。
「我々は時間移動で、この段階で施設を破壊するために来た。」
感想
ターミネーター!
今回の話は特に重要だったな~。
ついに未来から来たヒーローたちの目的が明かされた。
零とパピコの恋愛はもちろんこの物語のメインなんだけど、
AIが人間に敵対し、人間が敗北する未来。
その歴史を変えるために、転換点になり得る2020年にやってきて、衛星軌道上にあるAIが建造した巨大実験施設(ギガストラクチャー)を破壊しにやってきたと。
以前零がちょっと言っていたけど、これ、完全にターミネーターだ。
一企業の開発した最先端技術が世界を破壊していく原因になる。
改めて、ターミネーターって面白い設定だなと思う。
ターミネーターではスカイネット社だったけど、GIGANTの世界ではGOGLE社……。
リアルの世界でもGoogleがとんでもなく優秀なAIを開発する可能性は高いから、かなり設定にリアリティを感じる。あと個人情報収集しまくりの中国もAIの分野でかなりすごいと聞くし……。
長嶋大佐が遺した168時間もの映像が詰まったディスクの内容は、未来がAIにより制圧されてしまった絶望的な状況下にあることを伝えていたということだ。
あれから零はディスクの中身を全て閲覧しなかったのだろうか?
長過ぎるから途中で止めてしまうというのは、まだ何も起こっていない状態ならば理解できる。
しかし実際にサタンにより日本を滅ぼされかけた経験があるのだから、普通はあれが何なのかを知るために映像を詳しくチェックすると思うんだけどな……。
パピコに政府に提出してもらって、分析を依頼するという手もあったはず。
未来人たちとパピコが出会ったことで、いよいよAIとの戦いは本格化していく。
パピコは長嶋大佐の代わりとして彼らと共同戦線を張るのではないか。
今際の際にある長嶋大佐から、巨大化する力と同時に、運命を託されているし……。
そもそもハワイからサタンが向かって来ていたはずなので、もはや芸能の仕事どころではない。日本国民からもパピコには戦う力があると認識されているし、パピコは戦いに身を投じざるを得ないだろう。
これからどうなっていくか非常に楽しみだ。
パピコと零の恋愛模様にも影響していくだろう。
以上、ギガント第57話のネタバレを含む感想と考察でした。
第58話に続きます。
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