第4話 DVD
目次
第3話のおさらい
AV撮影現場での仕事をこなし、帰りにコンビニで買い物をして帰途につくちほ。
途中、女性二人にスマホを向けられる、ブリーフ姿でヘルメットを被り、ランドセルを背負ったオッサンとすれ違う。
マンションに帰ったちほを待っていたのはTVゲームに熱中している彼氏らしき男。
男はちほに零とのラインを問い詰める。
ちほはただの友達というか高校生のファンだと答え、携帯を勝手に観たことを咎め、バカじゃないの、と冷蔵庫からビールを出して一口飲む。
突如、男がビールに口をつけているちほをビンタする。
そして男は、屈みこむちほをさらに追い打ちするように腹に連続で蹴りを入れていく。
ちほは男の隙を見て男の胴体を抱き込むようにしてタックルし、ベッドに一緒に倒れ込む。
男の腹の上に乗り、何度も男の顔を殴るちほ。
男は足を上げてちほを横倒しにする。
床に頭を打ちつけるちほ。
鼻血を出して虚ろな目で天井を見上げる。
ベッドを背もたれにしているちほに男が抱き着き、泣きながら謝る。
不安だった、好きなんだ、と何度も謝罪する男にちほは鼻血を出したまま冷静な視線を送る。
夜が明けて、男はパチンコに熱中しているのだった。
歩道を歩くちほ。
買い物袋を手に提げて零とのツイッターを楽しんでいると、突如ブレーキ音、そして何かに衝突する音が続く。
ちほの目の前に、口を開けたランドセルが転がっている。その周囲には鮮血が飛び散り、少し離れた場所ではブリーフのオッサンが仰向けに転がっている。
車道には、歩道に向けて斜め気味に不自然に停車している車がある。
ちほは、恐らくオッサンを跳ねたであろう車に駆け寄ろうとするが、車は走り去っていく。
オッサンに近寄り、大丈夫かと訊ねるちほ。
おっさんは口と鼻から血を流したまま倒れている。
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第4話
おじさんの謎の行動
ちほは、轢き逃げに遭って歩道に仰向けに倒れているおじさんに必死に呼びかける。
おじさんは口と鼻から血を流し、目を閉じて呻くのみ。
ちほはおじさんに呼びかけるのを止めて、スマホで119にかける。
おじさんは急に上半身を起こし、ちほがスマホを持っている右手の手首を左手で掴み、右手の人差し指でスマホに表示されている呼出画面の通話終了ボタンを押して救急車の呼び出しを止める。
おじさんの予想外の行動に、え? と驚くちほ。
「ダメ…救急車……ダメ……」
おじさんは必死に気を保っている様子でちほの目を見ながら懸命に呼びかける。
「えっ? えっ?」
ちほは意味不明な言動のおじさんに右手首を掴まれている状況が飲み込めない様子でただただ戸惑う。
そして、どうしよう、誰か、と繰り返しながら周囲を見回す。
おじさんは左手でちほの右手首を掴んだまま、さらに右手でもちほの右手首を掴み。両手の親指でぐっと手首を押す。
ちほは痛がり、おじさんの手をどかそうと右手を左右に振る。
おじさんの手からちほの右手が解放される。
すると、ちほは自身の右手首の内側にメーターの様な機器が埋め込まれているのに気付く。
突然の継承
「は?」
一瞬呆気にとられたあと、ちほは左手の指を右手首に埋まっている機器に引っ掛けるようにして取り外そうとする。
焦った様子で、ちょっちょっちょっ、何これ、と繰り返しながら必死で取り外そうとするが、くっついているどころか手首に深く埋まってしまっている事を確認するばかり。
これが何なのか問い詰めようと視線をおじさんに向けると、おじさんは再び歩道に体を横たえ、ヘルメットをきちんと被り直している。
「あ……あと……よろしく……お願いします………」
目を閉じ、それだけちほに向かって振り絞るように口にするおじさん。
「は?」
ちほは全く事態が呑み込めず、ぽかんとしている。
何故か、歩道に仰向けになった姿勢のまま、おじさんが縮んでいく。
目の前で起きている出来事を戸惑いながら見つめるちほ。
おじさんはどんどん縮んでいき、最後には文字通り人形になって収縮を止める。
ちほは、元はおじさんだった人形の足元に「超ULTRA」とプリントされた、ディスクを入れるような容器を発見し、拾い上げる。
「何…これ?」
続いて、元はおじさんだった人形を両手で拾って顔の前でじっと見つめる。
「え? 夢?」
記録
マンションへと帰宅したちほは、ベッドの上に仰向けになって漫画雑誌を読んでいる彼氏に何だと思う? と人形を見せながら問いかける。
「わっかんねえ………」
彼氏は、ちほの方を見ようともしない。
「病院行ってくれば?」
その冷たい対応に、ちほは不満げに頬を膨らませる。
「もち……」
ちほは飼っているコーギーを抱き上げ、頬ずりをする。
「もち……」
もちはされるがままの状態できょとんとしている。
もちを下ろし、今度は、おじさんの人形の足元にあったディスクを入れる容器のようなものを持ってしげしげと見つめるちほ。
少しいじるとカパッと蓋が開き、中からディスクが現れる。
「何…これ? DVD?」
ゲーム機に入れて再生する。
「あ………ちゃんと読み込んだ。」
テレビに映し出されたのは人形に変わる前のおじさんを斜め上の角度から移した映像。
画面の中のおじさんは、記録……、と口にする。
「なんか…だいぶ…早く来てしまったようだ……」
今度はおじさんを真横から映す画角に変わる。
「どこ…? ここ……」
おじさんはぶつぶつ呟きながら街を歩いている。
そんなおじさんが映し出された画面を何となく見つめている様子のちほ。
「何年なんだ……」
今度は、おじさんを後ろから映している。
「どこかに表記があるはずだ…」
「見あたらないな…」
背後のカメラに対して振りむくおじさん。
カメラ目線になっている。
「うーん。」
ちほはさきほどと変わらない様子で画面を見つめている。
「うぉっ、なんだ?」
駅の自動改札に引っかかるおじさんの様子が今度は前方から映し出されている。
「どうすればいいんだ…」
街を彷徨うおじさん。斜め後ろからの映像。
「お腹空いた…」
斜め後ろからのおじさんの横顔にズームしていく。
デバイスを触る
「何これ。」
ちほは再生を停止する。
「いいや…今度…見よ…」
「んーーー?」
ちほは容器にディスクを戻していると、下にあるディスクと干渉しない僅かな隙間部分に小さなイヤホンのような部品が二つ入っている事に気付く。
一度は摘まみ上げてみるも、すぐに元あったところに小さな部品を戻し、ディスクも収めて蓋を閉じる。
ディスクをテーブルに置き、トイレに入るちほ。
「ふーーーーっ」
ちほは便器にスカートをずらして座り、タバコを吸う。
「なんなの? ………」
煙草を吸う右手の手首にあるメーターのような機器を見て呟く。
「もーーー何これー?」
「こんなんくっついてたら………撮影できないじゃーん………」
肩を落とすちほ。
ちほは煙草の灰を灰皿に落として煙草を一吸いし、何気なく左手の指先でメーターの画面に触れる。
中心の数字をデジタル表示する部分を円形の線がぐるっと囲んでいる。
「おっ。」
円は下の部分が「超ULTRA」という文字で途切れており、円状になっている線を途切れている開始部分からなぞると中心の数字が0から1、そして5と増えていく。
「あっ、数字、動いた……」
タッチパネル? と呟きながら指をずらして数値を5から7に上げていく。
「しかし………それが…どうしたというのだ…」
操作を続けるちほ。数値は15まで上がっている。
効果
「あれ?」
ちほは右手の人差し指と中指で挟んでいる煙草が小さくなっていることに気付く。
「タバコちっちゃ!!」
「え?」
そして、ちほは自身が巨大化し、トイレの中にぎゅうぎゅうになっている事に気付く。
シャツが破れ始めており、足首まで下ろしていたスカートも千切れてしまう。
「えっ? えっ? 何? 何? 何?」
自身の身に起こっている事態が飲み込めず、戸惑うばかりのちほ。
「竜二―――竜二―――」
ちほはトイレから彼氏を呼ぶ。
トイレのすぐ外、もちがトイレのドアをじっと見つめている。
感想
これぞ奥浩哉
3話まではAVという特殊な環境でありながらも、その日常生活が描かれていた。
だから特にSF要素無しの恋愛モノになるのかもしれないと思っていた。
しかし今回、手首に埋め込まれたデバイスというSF要素が登場したことでやはり奥先生といえばこれだよな、と思った。
SFは奥先生の18番だし、この強みを活かさないわけがない。
正直、個人的には純粋な恋愛モノは面白いものもあるけど比較的苦手なジャンル(トラウマがあるのでw)なので、この作品がSFの方向に振れてくれて良かったと心から思っている。
恋愛要素はあっても、少なくともSF要素がそこにあることで話の展開が恋愛だけという状況に陥ることは無くなるわけで。
むしろ今回登場した巨大化するデバイスが今後の話の中心になっていく事になるのが楽しみ。
ここからどう話が展開していくのだろう。
何かと戦うのか。それともドタバタのラブコメ? 零とのサクセスストーリーという線もあるか……。
おじさんは未来から来た?
おじさんが人形になってしまう直前の、あとをよろしくという一言から推測するに、ちほはデバイスと同時に何か目的を託された。
そして、ちほが見た映像からはおじさんは今が一体何年なのかを気にしており、それが分かるような表記を探している事から違う時代からやってきた可能性がある。
ちほときちんと意思疎通が出来ているということは、おじさんが喋っているのは日本語のようだ。
しかし、格好がブリーフにヘルメット、そしてランドセルを背負うというおかしさ。
まるで小学生のような……。
何より謎だらけなのは、おじさんが恐らくは息絶えた後、体が縮んでいき、人形になってしまった事。
おじさんが人形になったのか、それとも人形を何かしらの技術で人間にして現代に送り込んだとか?
全然わからない。
謎だらけで今後が楽しみになった。
ちほはこれをどう使うのか
今回ちほが使ったのは巨大化だったが、それ以外にも何かしらの能力がある可能性は十分あると思う。
今回、トイレの中で巨大化したが、誤って彼氏の竜二をぷちっと潰して欲しいと思った(笑)。
15という数字は元々の体格を0として、1は起動で、それ以降は倍になっていくみたいな感じか?
15ならば元の15倍の大きさになるとか?
そういえばトイレが妙に縦に大きいなと感じたけど、良いマンションだとこのくらい天井が高いのかな。
それともこのデバイスの効果なのか?
それだと部屋の横幅が大きくなってないのはおかしいから、やはり元々上に広いのか。
この能力は映画監督志望の零にとってみれば僥倖だろう。
何しろ実際に大きいわけだからCG処理では出せない迫力が演出出来る。
今後の展開がますます見逃せなくなった。楽しみ。
以上、GIGANT(ギガント)の第4話のネタバレを含む感想と考察でした。
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