たかが黄昏れ第5話の感想(ネタバレ含む)と考察。寄り道するひなたと楓。広場に残された小便器を前に何を想う。

第5話

第4話のあらすじ

登校中のひなたをバスが低速で追い抜いていく。

 

そのバスの窓際の席には、ツインテールの友達が乗っていた。

 

乗るならバス停めてもらうよ、というツインテールからの申し出をひなたは、近道を通っていくから、と断り、田んぼの未舗装の道へ進んでいく。

 

鹿や猪の出没注意を促す看板を見て、これは”オス”だよね、と考えるひなた。
動物の「オス」は問題がなくて、人間の「それ」はダメであるのは何故なのかと悶々と考えながら、ひなたは砂利道を行く。

 

(私が生まれて17年間、日本から……「男」がいなくなって17年。学校の旗ポールの国旗はずっと半旗のままだ。)

 

(ずっと求めてるくせに、なかった事にしようとしている。)

(そして私たちは「ゼロ世代」なんて呼ばれている…)

 

前を行く同じ制服で松葉杖を使って歩いている女子生徒に気付いたひなたは、その子に挨拶をする。

 

 

スポンサーリンク




ひなたが楓と呼んだ女の子は、ショートカットで右目に眼帯をしている。

 

目の下のキズ治ったんだね、とひなたの左目下のキズに言及する楓。
「先週は大変だったね。痴情のもつれで殴られて。」

 

ひなたは楓にそれを、私は全く関係がない、と否定する。

 

そんなひなたを揶揄うように真似る楓。

 

全然似てない! とひなたはさらにムキになって否定する。
そして話題を切り替えようと、この辺りは猪が出るのに何故バスに乗らないのかと楓に質問する。

 

楓はフフフ、と笑って、猪に出会う確率とバスで転倒するのを比べたら後者が確率高いと答える。
猪に股をくぐられて動脈切られて、出血多量で死んだ子もいる、というひなたに、楓は即答する。
「バスで転倒して女たちに囲まれるよりマシかな。」

 

 

スポンサーリンク




そして今度は楓が、日本国憲法の前文を覚えているか、と話題を変える。

 

思い出そうとしているひなたに、楓は前文を暗唱してみせる。

 

「『国家の繁栄のために女性は出産の権利及び義務はこれを保持する。政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうに、日本国民は国防軍を保持し日本国民はこれを維持するために徴兵制はこれを参加するものとする』」

 

「となると、何もできない人は、どーなるんだろうね…」

 

ひなたは、何も言わずに楓の顔を見つめる。
そして、目の前の小さなどぶ川を片足だけ越えてから、楓の体を抱いて持ち上げて、一緒にどぶ川を越える。

 

スポンサーリンク




再び並んで歩き始める二人。
「そーいう優しいとこが結婚したい女子全学年3位なのかな。」

 

楓の言葉を、私、別に優しくないし、と素っ気なく否定するひなた。

 

さらにひなたは、結婚は? という楓からの質問にも、女とはいいや、と返す。

 

女と女がくっつくから『姞婚』なんだよ、と楓。

 

「昔は糸へんだったらしいし100年前はもっと選択肢があった。」
ひなたは前を見たまま答える。

 

100年前は居たかもしれないけど17年前に最後の1人が死んで絶滅したのでもう選択肢はない、と楓。

 

その楓の言葉を受け、ひなたは吐き捨てるように言う。
「どんどん減って絶滅危惧種に指定されてもみんなで奪いあって、大勢の人に行き届かないってわかったら、ぶっ壊してでも減らして、大人は本当にバカだっ」

 

「そりゃ独り占めしたいんじゃない?」
さらっと答える楓。
「好きな人は…」

 

 

スポンサーリンク




すぐそばの草叢がザザザ、と鳴り、ビクつくひなた。

 

「しっ! うしろにいてっ」
ひなたは楓を手で制するようして守る。

 

恐怖に固まりながらも、ひなたは楓に松葉杖を貸すように呼びかける。

 

ついに姿を現した音を立てていた”何か“はキジだった。

 

ほっとするひなたに、楓が声をかける。
「ひなちゃんカッコイイ。結婚してよ。」

 

ひなたはそんな楓の揶揄いに、遠慮しとくわ、と答える。

 

「じゃあ『負の遺産』見つけたけど、行かないかぁ」

 

「それは行きますっ!!」
即答するひなた。

スポンサーリンク



 

前回、第4話の詳細は以下をクリックしてくださいね。

第5話

1億2千万人 → 2千万人

先にフェンスを乗り越えたひなたは、次に楓がフェンスを乗り越えるの手伝う。

 

「重くてゴメンね。」

 

「重くねえって!」
楓を抱き留めるひなた。

 

ひなたは楓を直視しないよう目を逸らすが、楓は特に気にする風もなくその体をひなたに預ける。

 

「さっきのフェンスから自然保護区に入ったよ。」

 

そーなんだ、と先を行くひなたが相槌を打つ。

 

「ここからは人がいない世界。」

 

鉄塔をくぐる二人。

 

フェンスで保護されてるのは人間の方だけどね、と言う楓に、皮肉言うのね、と返すひなた。

 

楓は皮肉ではないと否定し、ひなたに100年前の日本の人口について訊ねる。

 

1億人、と答えたひなたに、楓は正確には1億2千万人だと答える。
「『男』が絶滅して6千万人残るはずだけど。今じゃ女は2千万人きっちゃう。」

 

「戦争や革命や粛清とかで死んだ人もたくさんいるけど結局一番多いのは」

 

自殺でしょ、とひなた。
「最初から存在しない世界に生まれた私にはその理由がわかんないや。」

 

 

スポンサーリンク



 

遺産?

天を仰ぐひなた。
森に差し込む太陽の光を受け、その眩しさに手で光を遮る。

 

ひなたは、ここまで来たら本当に猪が出るかも、と楓に話しかける。

 

ひなたが守ってくれるから大丈夫、と楓。

 

その答えを受けてひなたは、ギリギリまで守るけど最後は自分自身だと念押しする。

 

「こわいから手 つないで。」
手つなぎをせがむ楓。

 

「話聞いてる?」

 

ひなたの左手の小指を楓がぎゅっと掴む。
楓は満面の笑みでひなたを見つめる。

 

(2人だけだと、違うな…)
ひなたはそんなことを内心考えながらも楓の手を引いて先を歩く。

 

「ここら辺も街とかだったのかなぁ…」

 

レンガの敷き詰められた地面に差し掛かる二人。
レンガの間から雑草が生えている。

 

 

スポンサーリンク



 

今は道州制だけど昔は47都道府県だったんだよ、と楓。

 

「47もか 覚えられんなぁ」
ひなたはふと思いついた事を楓に訊ねる。
「楓ってさぁ なんで昔のこと詳しいの?」

 

楓はその理由を、祖母が反体制だったからかな、と答える。
「元気だった頃に色々話を聞いたんだ。」

 

楓の祖母が若い頃も既に「男」は少なく、滅多に姿を見ることが出来なかった。
男性を保護する側と、絶滅させることを主張する側という両極端の陣営が生まれて、保護したい側だった祖母の陣営は相当な数のメンバーが弾圧されたり投獄されたりしたのだという。

 

投獄ってスゴイな、と相槌を打つひなた。

 

「でも、おばあちゃん がんばって『男』の色んなモノをかくしたんだって。」

 

楓は、私はね、と何かを切り出そうとしている途中で、握っていたひなたの手を勢いよく離して指差す。
「あっ! あった!!」

 

草のまばらに生えた広場には、男性用小便器が散乱していた。

 

ひなたは、横倒しになっているその内の一つに近づいていく。
「…これが、……『男』の便器?」

 

 

スポンサーリンク



 

小便器

「『小便器』って言うの。」
ちょっとおいて行かないでよ、と手を振る楓。

 

「あ、ゴメン。『小便器』?」

 

あっちにもっとあるよ、と楓はひなたを誘導する。

 

行く行く! と乗り気で付いていくひなた。

 

移動した先には墓石の土台に男性用小便器が本来の形で立った状態で設置されていた。

 

「墓石に、『小便器』?」
不思議にしているひなた。

 

ひなたが、何で? と問うので、楓が諸説あると説明を始める。

 

弾圧していた人が死後も「男」を侮辱した説。

 

保護派が「男」の文化保存のために神聖な場所である墓地に置いて破壊を免れた説。

 

 

スポンサーリンク



 

楓は、祖母はもうおらず、その年代の人は喋りたがらない為に本当のことはわからないのだと結論する。

 

「あのさ、ちょっとわかんないんだけど、『小便器』って、特別さ、小さくないけど何で『小便器』?」

 

楓はアハハ、と軽く笑いながら、「小」といったらオシッコの「小」だと返す。

 

「そんなのわかってる!」
ひなたは楓に具体的に訊ね直す。
「なんで大と小 別けるわけ?」

 

ウヒヒヒ、と笑う楓。
「本気で言ってんの? それ。」

 

笑うな、笑い方が変、とひなたは質問をさらに続ける。
「ホラ」
横倒しになっている小便器の上に跨る。
「和式なら大も小もこれでいいじゃん。なんで別けるわけ?」

 

「『男』はね、立ってしたの。」

 

 

スポンサーリンク



 

楓の夢

「?」
ひなたには、楓の回答の意味がイマイチ分からない。

 

こっちにわかりやすいのがある、と楓はひなたの手を引く。

 

移動した先には、男性用小便器が円を描くように立てられていた。

 

「『男』は、あんな風に立ってる便器でしたんだよ。」

 

ひなたは、あれじゃ撒き散らかさない? と楓に食い下がる。

 

「キミさあ、『男』にはホースみたいなのついてたの知らないわけないよね?」

 

楓の問いかけにひなたは、知ってる、と即答する。
「でも、立ってする動物って見たことないじゃん!」

 

 

スポンサーリンク



 

ウヒヒ、と笑う楓に、ひなたは再び、笑うな、と突っ込む。

 

「立ってすることを『立ちション』って言ったんだって。」

 

「立ちション…」
男性用小便器を眺めながらひなたが呟く。

 

しばらく小便器が散乱している光景を眺めてから、二人は学校へ向かって再び歩き出す。

 

「そーいえば、さっき会話が途中だったけど?」

 

「あー」
ひなたに問われて、楓が答える。
「おばあちゃんのかくしたお宝をみつけるのが私の夢なの。」

 

ひなたはじっと楓の目を見つめる。

 

「ん?」

 

「わかった。その意思しっかり私が受け継ぐよ。」
楓を支えながら一緒に階段を登るひなた。

 

「ちょっと、私まだ死なないって!」

 

階段の先で、学校のチャイムが鳴っている。

 

 

スポンサーリンク



 

感想

日本は絶滅に向かっている?

100年前の日本の人口が1億2千万人だと楓が明言した。
ということは、どうやら現在(1980~2020年くらい)から100年後の未来の話の話っぽい。

 

ひなた達が生きる日本の人口は女性のみで2千万人を切ってしまうのだという。
それも何と、一番の原因は自殺……!

 

なんというディストピアだろう。
ここまでの話で、銭湯や商店街など、年配の女性ばかりという一種異様ではあるけど比較的秩序がきちんと保たれた平和な日常が淡々と描かれているだけに、余計に残酷に感じてしまう……。
生き残った人たちは色々乗り越えて来たんだなぁ。

 

しかもこの100年の間に戦争、革命、粛清もあったというから怖い。
2話くらいからじわじわと感じていたけど、少なくとも日本に関しては緩やかに絶滅に向かっている印象しかない。

 

もしこれが全世界的な傾向であれば、人類はほどなく終焉を迎えてしまうだろう。

 

スポンサーリンク



 

徴兵制度が憲法の前文に含まれているけど、これは世界中で戦争するのが常態化していることを示しているのか。
日本では既に絶滅した、男をとりあって戦争し合っている?
もしくは精子を奪い合っているのか?

 

この作品は、花沢先生の壮大な思考実験の一環でもあるように思えてきた。
ここから一体どういう話に展開していくんだろう。
1巻収録分は大体7話~9話くらいだから、多分あと4話くらいの間に何かしら劇的な出来事が起こるんじゃないかなと思う。
このペースだと学校に到着して、何かが起こるかも。

 

ちなみに総務省の人口推移をちょっと見てみたら、2100年くらいまで予測が載っていた。
2100年の日本の人口は約3770万人とされている。
ということは、そこから男性を完全に排除した数値と考えると、作中で”女性が2000万人を切った”と言っても、実はそれは割と順調(?)な人口推移なのかな? と感じた。
(※3770万人という数字はあくまで目安で、今後日本がとっていく方針によっては十分変化してく数値だと思うけど……。)

 

 

スポンサーリンク



 

何故男性が生まれなくなった?

男性が生まれなくなった理由が気になる。
これこそが、こんな未来を生んだ元凶である気がする。

 

仮に男性が大規模な戦争で大量に亡くなったとしても、その後生まれて来る男女の比率が5対5なら時間の経過とともに人口バランスは慣らされて、人口の減少は食い止められるはずだ。
でもそもそも男性が生まれなくなってしまったのであれば、男性比の減少に比例して人口もに緩やかに減っていくのは当然だろう。

 

突然、男性のみが持つというY染色体に異常が起こった?
もしくはそれを人為的に引き起こす細菌兵器が世界中で使用されて蔓延した結果とか?

 

はっきりとして原因がこのまま明かされないまま話が進んでいく可能性も十分あるので、そこは期待せずに、むしろ自分なりに推測しながら読んでいくのが正解かもしれない。

 

 

スポンサーリンク



 

しかし、今回は小便器が男性がいたことを示すモニュメント扱いになっているのが印象的だった。

 

「『男』はね、立ってしたの。」

 

男性が”かつて地上にいた珍獣”みたいな扱いになってて笑うしかない。

 

「立ってすることを『立ちション』って言ったんだって。」

 

「立ちション…」

 

このくだり、二人が真面目なのが面白い。

 

立ちションはある意味犬がションベンしてるのと同じかもしれない(笑)。
自分なら彼女たちにそう説明するかな。

 

 

スポンサーリンク



 

現代とそこまで変わらない生活

100年後というと、人工知能の発達のお陰で自動化できる仕事が増えて、その結果人類は単純労働から解放されるという良いイメージがある。

 

これは想像もつかないが、労働のみならず、日常生活においてももっと便利になっていると思うんだけど……でもこの作品の世界では、文明レベルが現代と遜色ないように見えるんだよなー。

 

というか、ツインテールを乗せて走っていったレトロ感があるバスを見ると、むしろ落ちているような印象を受ける。

 

ドローンでの空輸が実現されているけど、これもリアルでテストが始まっているし、100年後ならもっと発達していてもいいと思う。

 

男性がいなくなって、さらには戦争やら革命やら粛清などもあって、文明の発達が著しく鈍化したのかもしれない。

 

 

スポンサーリンク



 

楓はひなたに好意を持ってる?

たかが黄昏 第4話 楓
前回の楓のセリフから分かるが、楓はこの世界に女しかいない事実を完全に受け入れている。

 

またこれも前回の話で、女子生徒同士の”痴話喧嘩”というワードもでた。
つまり女性同士で恋の鞘当てが行われているということだろう。

 

1話でひなたの友達らしきツインテールとショートカットも、男性について話してはいけない風潮に疑問を持っている様子だった。
しかし、ひなたほどはっきりと男性を求めている風でもなかった。

 

これは楓に限らず、グラデーションの濃淡はあれど、女子生徒の中では”女性同士で好きになるのが常識”という考え方がこの世界における”普通”なのではないだろうか。

 

 

スポンサーリンク



 

ひなたは女性同士での恋愛に疑問を持ち続けているが、そんな考えを持つひなたはこれまでの話から推測するに、どうやら少数派っぽいんだよなー。いたとしても秘密にしていたり、地下に潜っていたりするのではないか。

 

楓のおばあちゃんは男性保護派で弾圧や投獄の対象になったらしい。
どちらかと言えばそちら側であるひなたも、その対象になってしまうかもしれない。

 

この話はひなたがそんな世界と戦いながら男性を探し求める話だったりするのかも。

 

……とは言ってみたものの、結局は全然予測がつかない。
果たして今後、ストーリーはどう転がっていくのか。

 

以上、たかが黄昏第5話のネタバレを含む感想と考察でした。

第6話に続きます。

スポンサードリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA