血の轍 最新第110話労働ネタバレを含む感想と考察。淡々と働く静一。

血の轍 第44話 静子

第110話 労働

第110話のおさらい

静一が通っていた中学校、教室が炎が燃え拡がるようにして消えていく。

自宅も、自室も、河原のベンチに座っている吹石も消えてしまう。

高台から見える街の風景も、大火のように燃え上がり、やがて風景が小さくなっていく。

寝床以外の床がゴミで埋め尽くされている部屋で静一は眠っていた。

17時30分。静一はスマホのアラームを止めて、ゆっくりと起き上がる。

卓上のカレンダーは2017年4月のページが表示されている。

パーカーを羽織り、バッグの取っ手を肩にかけて玄関を出た静一は、街中を歩いていく。

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第110話 労働

労働

静一は帰宅途中の乗客と一緒に電車に乗り、仕事場であるパン工場へ向かっていた。

工場に着くと、同じように夜勤で働く同僚たちと一緒に粛々と作業着に着替えて、持ち場へ向かう。

19時半。静一は小さな丸いパンを5個容器に入れていく作業を行っていた。
手袋をした手でパンを優しく掴み、ひたすらプラスチックのケースに詰めていく。

0時を過ぎ、休憩の時間になる。

「長部サン。オツカレサマデス。」
ラーメンを食べている静一に、静一と同じ作業着に身を包んだ外国人が話しかける。

おつかれさま、と返す静一。

「タバコイッポンモラエマスカ?」

笑顔でタバコをねだる外国人に、静一は目を伏せたまま返す。
「…………だから…俺吸わないから………」

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外国人は何も反応せず、別の作業員の元に行き、同じ質問をし始める。

「あ~つれ~ 思ったよりつれ~。足いて~。」

「あと6時間もあんのか~…」

働き始めの新人、もしくはバイトらしき若い作業員が愚痴を言い合っているのを聞きながら、静一はラーメンをすする。

3時半。静一はいちごのヘタを取る作業をしていた。
ひたすらヘタを取り続ける静一。
しかしその脳裏では、崩れた人の形をした何かが蠢く、奇怪な妄想が起こっていた。

いつの間にか、ピーッと作業終了を告げるブザーが鳴る。

放送でアナウンスされている通り、そうじと消毒を行う静一。

無事、この日の仕事を終えるのだった。

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連絡

作業着から着替えて、静一は退勤する。
「お疲れ様です。」

「お疲れ様ー。」

外は既に明るくなっていた。
通勤ラッシュで混雑する電車に乗り、静一は帰宅する。

帰宅途中で買ったビールとつまみに手をつけて一息ついていると、スマホの着信履歴に昨日付けで4回、父から電話があったことに気付く。

一度はスマホを伏せて見ないふりをしようとするが、折り返す静一。

「ああ…静一。」
ひさしぶり、と父。

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「……電話した?」

「うん わりぃんね。仕事中だったかい。」

「…ああ…うん……どうした?」

「元気にやってるかい?」

「……うん…」

「そうか。今度さ。東京行くんだよ。静一んとこ寄ろうと思ってさ。」

「…いい…けど……何日?」
訪れる日時を聞いて、電話を切る静一。

ふう、とため息をつく。

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感想

きちんと働いてる

きちんと社会人として働いているなぁというのが率直な感想。
静一は今の生活を楽しんでいるわけではないだろうが、受け入れて生きているように見える。

あの5個入りの小さなパンって人力でセットしてたのか……。
あとはいちごのヘタをひたすら取り続けたりと、慣れた仕事ぶりから、このかなり忍耐が必要な仕事をかなり継続しているのではないか。

「仕事」というか、まさに今回のタイトル通りの「労働」という感じ。
こういう労働はその日の気分によって手を抜いたりできる類のものではない。一定の注意力を持続した上で作業し続ける必要があるから、この仕事を長い間夜勤で行っているのであれば、本当に良くやっていると思う。

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長く続く単純労働で、ひたすら作業を向き合う、ある意味修行のような仕事だから、少なくとも人間関係からくる余計なストレスは少ないように見えた。人との会話を望まないなら適職の一つと言える。

ただ、だからこそ、仕事に慣れてしまうと、余計なことを考えてしまう余地が出来てしまうという側面もあるのかもしれない。

いちごのヘタを取る作業の途中で挟まってきた妄想が、静一が自分の内にある狂気を密かに育て続けているように思えてしまう。あのかろうじて人の形を成した化け物は、どう考えても健全な想像ではないだろう……。
きちんと社会人として生きているが、これから何かまた不穏なことが起きそうな予感もある。

今の静一からは、ずっとこの生活・人生が続くことへの諦観を感じるが、そのまま静かに一生を全うすることが出来るものなのか考えると、他人の人生であるにも関わらず不安になってくる。

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父との関係性

父からの着信に気付き、静一はきちんと折り返した。
上京する父をきちんと迎えるということは、これまで、少なくとも親子としての関係性が保たれていたということだ。密に連絡をとっていたわけではないようだが、父と子の距離感として、この程度は普通の範疇に入る気がする。

静一は父から連絡をもらって特に嬉しそうではない。だが、邪険にするわけでもない。
一度は連絡を無視しようとスマホを伏せたものの、その後折り返した。もちろん父からの久々の連絡で、一体どんな用件なのか確認のためでもあるだろう。でも、そもそも関係性が断絶していたらなら折り返す気にもならない。

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この静一の態度から、少なくとも一郎が殺人という大罪を犯してしまった静一のことを見捨てることなく、独り立ちするまで我慢強く支え続けていたであろうことが窺える。
静一と同じく、一郎もまたこれまで壮絶な人生だったと思うが、電話での話しぶりから、今は落ち着いているように見える。

かつて自分は、この物語の序盤、夏の山登りのあたりで、静子を笑う親類と一緒になって弱々しく笑みを浮かべるだけの一郎を、静子の立場に立って批判した。
だが、大罪を犯した静一をあっさり捨てた静子と、かたやそんな静一を変わらず支え続けた一郎という結果を見れば、自分はかつて、一郎の人物としての評価を完全に誤っていたわけだ。ピンチの時に助けてくれるかどうかが、その人物が味方かどうかを測る絶好の機会なんだな……。

この一郎の上京をきっかけに、静一の生活に何が起こるのか。

次回が楽しみ。

以上、血の轍第110話のネタバレを含む感想と考察でした。

第111話の続きます。

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