第1話 女優
第1話
ある男子高校生の日常
夜の渋谷をスマホで撮影しながら歩く少年、横山田零。
コンビニで通販の商品を受け取り、帰宅。
そして、荷物を開封し、パピコという女優のAVを鑑賞する。
翌日、授業中、零は斜め後ろの席に座っている女の子をチラチラと見る。
休み時間、零は友達と好きな映画の話題で盛り上がる。
そして会話の流れで、映画監督になりたいんでしょ? と友達に水を向けられて、零は友達が気になっている篠崎という女の子に女優を引き受けてもらえないかと話し合う。
篠崎を体育館に呼び出した零と友達は、学園祭で上映するような映画ではなく、フィルムフェスティバルに出品するような映画の撮影だと篠崎を口説き、面白そう、とOKを得る。
引き受けてもらえて有頂天の零と友達。
映画撮影の準備をするも……
撮影の為の人を集めて、精力的に脚本を書き上げる充実した日々が続く。
ある日、零は廊下で篠崎に、横山田君、と呼び止められる。
「恋愛モノなんだって? 映画」
「えっ? あ…うん…恋愛と…ファンタジー…ちょっと…」
戸惑いながら答える零。
「相手役横山田君がやるの?」
篠崎は笑顔で零に問いかける。
「えっ?」
零は篠崎から目を逸らしながら、僕じゃないよ、と答える。
横山田君だと思ってた、と篠崎がさらっと呟く。
「だって横山田君、よく見たらかわいい顔してるし。」
ニコッと笑う篠崎。
何も言えず黙る零。
「でも、映画かあ……」
篠崎は両手で髪をかき上げながら零に笑顔を向ける。
「奇麗に…撮ってね…」
零は、あ……、と戸惑いを見せつつも、うん!! と力強く返事をする。
そして零の自宅での撮影本番。
スタッフとして集まった男子学生とカメラのチェックをしていると、篠崎がやってくる。
しかし篠崎の表情は暗い。
「彼氏に断れって言われちゃった……ごめん!!」
撮影スタッフたちに両手を合わせて謝る篠崎。
篠崎の遥か後方には彼氏らしき男子学生が立って零達をじっと見ている。
取り残された零たちを背に、ごめんね、と去っていく篠崎と彼氏。
貼り紙
学校から二人で帰宅する零と友達。
目の前を歩くカップルや自転車に二人乗りしているカップルが二人の目に付く。
友達と別れ、零が呆然と街を歩いていると、ある貼り紙が零の目に留まる。
この街に
AV女優の
パピコが
住んでますたのんだら やらせて
くれます。
零は自宅に向けて街中を全力疾走する。
帰宅して自室でネットを見ていると、貼り紙の内容に一定の真実味を持たせるような掲示板への書き込みを見つける。
彼氏らしきチャラ男と二人でいた、という書き込みに零は明らかにテンションを下げる零。
その時、ドアをノックする音が響く。
部屋に入って来た父は、数学の成績が悪かった事を咎め、映画監督も大学は出ていないとなれない、と勉強する事を促す。
「次赤点とったら…映画の予算も出せないからな…」
零は仕方なく机に向かうもまるで勉強は手につかない。
出会い
夜。
寝付けない様子の零はベッドから起き上がり、ゴミ袋を片手に家を出る。
零は街を走り、パピコを中傷する貼り紙を剥がしてはゴミ袋に入れていく。
通行人の好奇の視線に耐えながら、数学の勉強をしなくてはいけない事を思い出しながら、零はひとまず目につく最後の貼り紙をゴミ袋に入れる。
「ふぅ………一袋でなんとかなった……」
仕事を終えて、その場でスマホでパピコのツイッターをチェックしていると、背後から声がかかる。
「君が貼ったの?」
驚いた零の身体が固まる。
「君が…貼ったの…?」
「あ、ち……違います……」
もう一度問われ、振り返りながら否定する零。
「あっ」
零は目の前にいるのがパピコ本人だと気付く。
パピコは零の目をじっと見据えながら問いかける。
「じゃあ…なんで?」
「いや」
零はどもりながらも答えようとする。
「パッ パッ パピコさん、こっ、こまるかなって………」
「あたしのこと……知ってんの?」
零をじっと見ながらパピコが再び問いかける。
「ファ………」
震えながら答える零。
「ファン………だから……」
「うそぉ…」
眉をハの字にして呟くパピコ。
パピコは震える零の首に両腕を回し、ぎゅっと抱き締める。
感想
ついに始まった奥先生の新連載。
冒頭のカラー、都会(ここ数年行って無いから自信が無いけど渋谷?)の雑踏、大勢の通行人が行き交う中をスマホで撮影しながら歩く主人公の絵が美しい。
待ちに待った新連載なのでわくわくする。
主人公は東王(東宝? 映画会社?)のプロデューサーを父に持つ男子高校生と割と恵まれていると言って良い。
ただ、身長は女の子である篠崎よりも小さく、性格も大人しくてイマイチ青春を謳歌出来ていないようだ。
自身も映画が好きで、映画を撮る事に興味があり、監督になりたいと思っており、友達が気になっている女の子――篠崎に勇気を持って主演女優をお願いするが、それも彼氏の干渉により泡と消える。
この、カワイイ女の子が女優を引き受けてくれて有頂天になった主人公が、いざ撮影の土壇場になって、これまで存在を知らなかった彼氏による容赦無いストップにより篠崎から女優が出来なくなったと言われてテンションがた落ちという、非モテの心をゴリゴリに削り取る描写がたまらない。
ほんと奥先生の作品は、こういう描写が冴え渡っているな~と思う。
これも女の子がかわいく、チャラついた彼氏がクッソムカツクのが一発で分かるからなんだよなぁ(笑)。
こういう描写が本当に卓越してると思うわ。
オッサンになった今もこういう描写にダメージを受けてしまうような、学生時代にトラウマを持つ自分特有の感想なのかもしれないけど……。
これは奥先生の作品に共通している様式美の一つとも言える描写の一つであり、GIGANTという作品は、これが最後にカタルシスに繋がる物語であることを期待したい。
ラスト、横山田の行動に感激したAV女優の女の子に感謝されて抱き着かれるという羨ましいシーンで終わるけど、まだまだ全く物語がどう進むのかが分からない。
とりあえずパピコが超かわいい。
貼り紙を片付けていた、という主張を信じてくれただけでも良い子だと思う。
多分、貼ったのはコイツだ、と罵倒されてもおかしくないシチュエーションだった。
パピコは良い子だ。そしてこの子はただのAV女優ではないはず。
誰に、なんで貼り紙されたんだろう。AV女優にはこういうリスクがあるってことなのか……。
ネットの掲示板に情報が流れていた通り、住んでいる大体の場所がバレているんだろうな。
今のところSF要素は見られないし、一体どんなジャンルの話なのか楽しみ。
奥先生の強みはSFだから多分今回もそれで攻めて来ると思うんだけどな~。
このパピコがサイボーグとか、未来から来たとかそういう話なのか。
それとも、もっと別の角度で話を展開させてくる?
新連載はこうして想像をこねくり回すもの楽しい。
以上、GIGANT(ギガント)の第1話のネタバレを含む感想と考察でした。
第2話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。あわせて読みたい記事。
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