第71話 真意
目次
第70話のおさらい
風車小屋内の一室で9人の仲間と出会ったエマ。
エマの前に、風車小屋にエマを導いたヴァイオレットが「エマに会わせたかった人」であるルーカスがやって来る。
エマはその名前からオジサンの仲間ではないかと直感する。
その旨を問いかけるエマに対してルーカスは肯定を示し、エマからオジサンが生き残っている事を聞いて心から安堵し感激する。
自分以外の仲間は全て失ってしまったと浮かない表情を見せるルーカスは、何故自分だけが生き残れたのかをエマに説明し始める。
オジサンを逃がし、囮になったルーカスはレウウィス太公に右腕を捥がれ、追い詰められていたその時に一人の謎の子供に出会う。
謎の子供はすぐに状況を察し、安全な場所へと避難させることでルーカスを救う。
怪物に見つからないように絶対に見つからない場所でかくれんぼをしているというその謎の子供は、ルーカスを匿う。
ルーカスは密猟者から追われる事無く風車小屋を拠点に13年隠れ住む事になるのだった。
謎の子供は5年前に病気で亡くなり、死を覚悟してシェルターへ戻ろうと考えることもあったルーカス。
しかし仲間の無念や子供の悲鳴、そして謎の子供の感じていた恐怖などを思い出し、猟場を無くすために同じ志を持つ仲間を集め、自分の持つ技術や情報を共有してレジスタンスを組織する。
ルーカスは、ミネルヴァがゴールディポンドに食用児を導いた理由、抜け穴の先の鍵のかかった扉を発見したとエマにそこに行くための螺旋階段を出現させて見せる。
ミネルヴァの真意に触れる為、エマの持つペン型端末を持ってミネルヴァの扉へと向かうルーカスとエマ。
一方、レイとオジサンは密猟者の手から辛くも逃れる事に成功していた。
エマを助けようとしているレイとオジサンは、密猟者から逃げながらもゴールディポンドに辿り着く。
シェルターの様に土中にある密猟者の猟場、ゴールディポンド。
レイとオジサンは危険を覚悟して森の中にあるその大穴へと潜入しようとしていた。
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疑い
螺旋階段を降り、岩を削って作った廊下を行くルーカスとエマ。
ルーカスは猟場に来てからずっと、ミネルヴァが何故ここに自分たちを呼んだのか考えていたと呟く。
そしてエマに対して、実はミネルヴァは敵で、シェルターにあった手紙は食用児を猟場におびき出す為の罠である可能性を考えた事はなかったかと問いかける。
ルーカスの言葉にゾッとするエマ。
エマの反応を見て、ルーカスはハハハと笑う。
「君は疑わなかったんだね」
「………」
エマは呆然とルーカスを見上げる。
扉を見つけてもミネルヴァを疑った、と俯くルーカス。
(善意なのか…それとも悪意なのか…)
扉を開く鍵となるペン型端末があれば確認できるがルーカスは持っていなかった。
ルーカスはエマに対して、確かめるチャンスなどないと諦めていたと続ける。
「けど君が来た」
さぁここだ、とルーカスがランタンの光を前方に照らしてエマの視線を誘導する。
扉を視界に収め、胸を高鳴らせるエマ。
その表情は強張っている。
手紙の意味、ミネルヴァの真意、その全ての答えが扉の先にある。
いよいよ扉の先へ
扉に鍵穴は無い。
しかしフクロウのマークの周りにモールス信号が施されている。
(P・E・N…?)
エマは自分の持つペン型端末を起動させる。
すると、扉の内部で電子音が鳴り、カチ、と解錠された音が続く。
エマとルーカスは互いに顔を見合わせた後、そっドアノブを回す。
部屋の中はコンピューターや機器で一面を覆われている。
「……え?」
きょとんとする二人。
二人は方々を見回す。
ルーカスは機器からその役割を確認していく。
気温を計測しているらしきメーター。
換気、電気、上下水道、時刻。
空の疑似映像を映し出しているらしきモニター。
(全てこの密猟場の…)
ルーカスはこの部屋が制御室、もしくは監督室ではないかと推測する。
しかし何故これらがここにあるのか分からない様子でエマに視線を送る。
「エマこの部屋は…」
ミネルヴァの示した真の目標地点
「ルーカスこっち! 見て!!」
エマがルーカスに向けて手を上げ、別の部屋に誘導する。
これ、とエマが指を差した先には金色の池がある。
地下深く、しかも部屋の奥という、あまりにも場違いなところにある池に驚きを隠せない様子のルーカス。
「うん…多分ここが…」
エマはペン型端末を起動させる。
「あの地図にあった”金の池(ゴールディ・ポンド)”」
ペン型端末により中空に文字が出力される。
WELCOME
TO
GOLDY
POND
ここが自分たちが目指してきたゴールディ・ポンドだと確信を持つエマ。
(……ここが? ここが”ゴールディ・ポンド”?)
ルーカスは目の前に広がる池を見つめる。
エマは、ミネルヴァは猟場ではなくこの池に自分たちを呼んだのではないか、と呟く。
ルーカスは池を見つめたまま言葉が出ない。
そして、自分たちは騙されてなどいなかったのか、ここは元々鬼の密猟場などではなかったのではないかとルーカスは思考する。
(だとしたら何故密猟場になってしまったんだ)
ミネルヴァはどこにいるのか。
そしてこの場所で一体何があったのか。
謎の小屋
「ルーカス! 見て! あの小屋」
エマが池に向かって指差す。
ルーカスが指の方向――池の中心を見ると、小屋が小島ごと浮遊している。
錯視か、と自分の目を疑うルーカスは、池の水深、透明度、屈折などが作用してそう見えるだけなのだ、と池に手を入れる。
「なんだこの水……」
ルーカスが目を見張る。
「そう…変なのこの水…」
エマもルーカスの驚きに続く。
「触れない」
池に入れた手から水がまるで逃げるように形を変える。触る事が出来ない。
(よける? 水が…弾けて消える…?)
どういうことだ、と呟くルーカス。
エマはわからない、と答え、この水は水ではないのかもしれない、と続ける。
二人は池の中心に小島ごと浮く小屋に向かう。
エマとルーカスは水の中を歩いて小屋に向かっていく。
エマは水の害を心配する。
恐らく大丈夫だろう、と答えるルーカス。
小屋に辿り着いた二人。
水の中をつっきってきたはずなのに服も体も全く濡れていない。
そして、そもそもどうやって小屋が浮いているのかルーカスの脳裏に疑問ばかりが浮かぶ。
謎の小屋の中には…
エマは小屋の扉をノックし、ドアノブに手をかける。
鍵がかかっておらず、そのままドアノブを回すと、部屋の中央にはエレベーターがある。
GF農園のハウスで見たことがある、と目の前のエレベーターを見つめるエマ。
ルーカスは目の前にあるのが古い型のエレベーターであると断定する。
なぜこんなところにエレベーターがあるのか、と考えるのと同時に、エマはある考えを口にする。
「ひょっとして…これに乗れば人間の世界へ行ける……とか…?」
一瞬二人の間に沈黙が流れる。
いやまさか、と戸惑うルーカス。
ですよね、と笑うエマ。
「ここまで散々苦労してここへ来てそんな簡単に…しかもエレベーターとか」
はははは、と二人は顔を見合わせて笑った後、急に笑うのを止めて今度は驚きの表情で見つめ合う。
それは考えられない話ではない、と言うルーカス。
「手紙でも”安住の先”と書いていたしミネルヴァさんは僕らをここへ呼んだ」
「ここにエレベーターなんてものがある意味はなんだ」
これが人間の世界と鬼の世界の行き来の手段なのかもしれないと結論する。
エマは、目の前のエレベーターこそが人間の世界へと渡る方法なのかとそれをじっと見つめる。
「試してみる価値はある」
ルーカスはエマに電源を入れるよう指示する。
「ここ! 穴がある!」
エレベーターの傍らにある操作盤らしき部位を見ながらエマが声を上げる。
そして、フクロウのマークがある事を確認する。
起動、しかし……
フクロウのマークの周りのモールス信号は先ほどの扉の時と同じく「PEN」となっている。
フクロウのマークの隣の穴にペンを挿し込んで矢印の方向に捻ると、小屋全体が大きく揺れ、電源がオンになる。
小屋にエレベーターの起動音が響く。
「動く…」
ルーカスがエレベーターを見つめながら呟く。
エマは、もしこのエレベーターで人間の世界へと行けたらこれまで会って来た鬼の世界で生き抜く食用児たち全てがもう苦しむ必要がないのだ、と祈りに近い気持ちでエレベーターの挙動を見守る。
(お願い動いて! お願い…お願い…!!)
しかし、操作盤に「FAILURE(失敗)」と表示されてエレベーターの動きが急速に停止する。
「えっ ”機能…停止”…?」
操作盤とにらめっこしながら、どうしてなのかと戸惑い焦るエマ。
ジリリリリリリリ
唐突に、エレベーターの脇に不自然に置いてあった黒電話が鳴る。
黒電話に振り返るエマとルーカス。
「…”電話”?」
電話は鳴り続けている。
感想
やはりミネルヴァの罠を疑っていた
ルーカスはシェルターでみつけたミネルヴァの手紙で示された先が鬼の猟場であったことからミネルヴァは食用児の味方などではないのではないかと疑っていた。
現状、A08-63が猟場であり、食用児にとっては死地でしかない以上、そういう考えを持つのも当然だろう。
ミネルヴァは猟場に食用児をおびき出したのではなく、まずゴールディ・ポンドの施設を整え、それが鬼に見つかった。
A08-63が他の鬼に中々見つからないような場所にあるのを利用したバイヨン卿が、禁忌である人間狩りを密かに楽しめる隠れた猟場へ作り替えたというのが真相だろう。
もしミネルヴァが鬼サイドの人間だったら救いようが無い話になってしまう。
ただ、ミネルヴァが敵だったとして、そこからエマたちがどうやって生き残って人間の世界への脱出を遂げるかという筋も面白そうだ。
エマたちは苦しむけど、読者は目が離せなくなる(笑)。
ついに見つけたゴールディ・ポンド
A08-63に到着したはいいけど、一体どこが「金色の池」なのか分からなかった。
鬼による猟場。
小奇麗な街。
そこに定期的に集められる食用児。
これらは全てミネルヴァの意図した所では無かった。
今回、ついにミネルヴァが本当に誘導したかった場所へと食用児が辿り着いたわけだ。
一体いつから待っていたのかわからないが、長い歴史の中でここまで辿り着いたのはルーカスとエマが初めてなのではないか?
少なくともオジサンたちが少年少女だった頃からゴールディ・ポンドは存在していた以上、長い期間だと言って良いと思う。
このゴールディポンドの発見が街で狩りの時間に怯える子供達を救うのか。
鬼を全滅させようとしているレジスタンスの気持ちは分かるけど、その行動は無茶だ。
エマとルーカスが、このゴールディ・ポンドで鬼たちへの総攻撃を踏みとどまるだけの理由が見つけられれば良いが……。
超技術
濡れない水って現実にあるのかな?
水に入れても濡れない砂があるのは知ってるけど、触っても濡れないどころか水自体があらゆる物質から逃げるように形を変えて弾けてしまうような奇妙な水は知らない。
エレベーターの配置されている小屋が浮いている
そして、そもそも果たしてこのエレベーターは一体どこに通じているのか。
上に行くのか? 下に行くのか?
エレベーターのある小屋は島ごと浮いているし、小屋の上にはきちんと屋根もある。
エレベーターが昇降機である以上、どっちかに突き抜けないと動かない。
エマが電源を入れたところ一度はエレベーターは一度は起動はしたけど停止。
そして直後に黒電話が鳴った。
この電話の相手はミネルヴァだったりするのだろうか。
あまりにもタイミングが合っている以上、エレベーターの挙動を監視している誰かがいると見て間違いないと思う。
果たして電話の相手は誰なのか。
これはマジで先が気になる。
以上、約束のネバーランド第71話のネタバレを含む感想と考察でした。
第72話の詳細はこちらをクリックしてくださいね。
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