第67話 禁じられた遊び2
目次
第66話のおさらい
狩りの刺激を求めて、知性鬼がぞくぞくとバイヨン卿の所有するゴールディ・ポンドに集う。
狩りの高揚感に浮かれる鬼達の中で、黒衣のレウウィス太公は一人静かに狩りの時間を待つ。
一方、エマは話しかけてきた男の子から今自分がいる場所に関する情報を得ていた。
ここが「秘密の猟庭」であることを聞き、ここは農園なのか、密猟者とは、と問いかけるエマ。
そのエマ様子から男の子は、エマに鬼や農園に関する知識があると知り、他の子達とは違うと呟く。
そして男の子は、ここが農園ではなくバイヨン卿という鬼の貴族が管理する猟庭であり、この街で生きている子供達は皆、鬼が狩りを楽しむ為に生かされているのだと続ける。
エマはソンジュから聞いた「約束」の件を思い出すが、男の子は農園に秘密の遊び場なのだと答える。
この街の子供達は狩りで減っても月一で農園から補充されるという。
エマや男の子と違い、補充されてくる子供達は自分が育てられたのが鬼の食料になるための農園であることや、そもそも鬼に関しての知識が無いのだと男の子に説明され、絶句するエマ。
エマは男の子から「会わせたい人がいる」とこの場からとりあえず逃げる事を促されるが、その時、森から悲鳴が響く。
瞬間的に悲鳴に反応し、森の中へと飛び込んでいくエマを男の子も追う。
森の中では二人の子供が鬼に四方を囲まれて身動きがとれずにいる。
狩りを楽しむ知性鬼。
初めて見る鬼に襲われ、戦意も尽き果てて怯える子供達。
その脳裏では、今なお偽りの幸せをくれた農園の管理者を”先生”と呼び、帰りたいと願い続けている。
木の陰に隠れて、鬼に囲まれて絶体絶命の二人の様子を窺う男の子。
恐怖で体が固まり助けに行くことが出来ない。
知性鬼がナイフをとり出し青ざめる子供達。
鬼はすぐにはナイフを振り上げることはせず、10のカウントダウン中に狩られる一人を選んで、他は逃げて良いと提案し、カウントダウンを始める。
その会話を遠巻きに聞いていたレウウィス太公は、今、捕えている子供に戦意が全くない事から、去っていい、とわざと逃がす。
人間と命の取り合いをして高揚感を得ていた昔を懐かしむレウウィス太公。
カウントダウンが進む中、何気無く子供達を見ると、一瞬をついてエマが木の陰にいた男の子から手斧を奪い、それを知性鬼に向けて投げる。
レウウィス太公は一瞬で距離を詰め、手斧を受け止める。
そして、手斧は真っ直ぐ鬼の弱点である目を狙っていた事に気付く。
そして、この一瞬で既に子供達は姿を消している。
知性鬼を間近で見たエマは、恐怖とともにミネルヴァの何かを見つけるチャンスだと感じ、必ずそれを見つけてここを脱出すると決意する。
レイとの連絡方法を考えるエマ。
一方、レウウィス太公はエマの鬼に対する殺意に賛辞を送り、エマを標的として行動を開始するのだった。
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第67話 禁じられた遊び2
鬼など信じない補充メンバー
回想。
看板の前に大挙して集まり、その内容を読んで不思議そうにしている子供達。
「新入りのみんな聞いてくれ」
子供達のリーダーらしき青年が子供達の前に立ち、ゴールディ・ポンドに関して説明をしている。
「この村からは出られない」
「音楽が鳴ったら怪物が襲いに来る」
「生き残る為には、もう一度音楽が鳴るまで逃げ切ること」
補充されたばかりのメンバーは青年が説明している間も何の緊張感もなく笑い合っていたり、欠伸をしたりしている。
エマに命を救われた子供も内心で、アホくさ、と思いながら聞いている。
回想終了。
情報を得る
森の中、全力疾走で鬼から逃げ切って休んでいるエマ達。
エマ以外の子供たちは皆息を整えるのに必死の中、エマは一人、地面に耳をつけて追手の気配を探る。
エマは、地面から足音が伝わってこない事からひとまずは無事に離れる事が出来たと判断する。
そして、次の行動をどうするかを考える。
レイとの連絡が必要だが、そもそも鬼だらけのここからどうやって逃げるのか。
バカ、と言ってエマを殴る、エマと行動を共にしている男の子。
自分の命を顧みる事無く、命がけで見ず知らずの子供達を助けた事を咎める。
「しかもよりによって一番ヤバイ奴に…」
男の子は戦慄している。
「あいつはヤバイんだ…あの帽子の奴は……」
男の子の言葉にピンと来ていない様子のエマ。
しかし引っ掛かる事があったエマは、ねぇ、と男の子に訊ねる。
「ひょっとしてこの”敷地”の鬼…怪物はいつも同じ顔ぶれなの?」
男の子は、そうだけど? と肯定する。
数は? と続けて訊ねるエマに、男の子は”お付きの者”を入れなければ5匹だと答える。
さらに、人間の数をエマに問われた男の子は、最大50人程度であり、今もその位だと答える。
「”狩り”は毎日?」
エマの質問攻勢は続く。男の子は3日に一度くらいと答えてから、それより、と質問を打ち切る。
「とにかく休んでるヒマはない」
男の子はエマの目を真正面から真剣な目で見据える。
「さっさと逃げて身を隠した方がいい」
その内追ってくるかもしれない、先ほどの怪物が追ってこなくても他の怪物に襲われるかも、とエマに真剣に訴える。
信じなかったのに
けど、とエマは先ほど助けた腕を負傷した男の子に視線を送る。
「行って!」
男の子は無理矢理笑みを作っている。しかしその全身は震えている。
「俺達は大丈夫 だから行って!」
男の子を心配そうな目で見つめる、一緒に逃げて来た女の子。
「ありがとう」
男の子はエマと、エマと行動を共にしている男の子の二人が命がけで自分たちを助けてくれた事に礼を言う。
斧を投げつけたエマ。そしてその間に男の子は怪我をした男の子を救いに駆け寄っていた。
(俺はあの時信じなかったのに)
男の子は反応に困ったようにして黙り、ケガをした男の子の言葉を聞いている。
(俺も…俺だって)
「もうちゃんと逃げられる」
男の子は、ケガした腕を押さえながら笑顔を作りエマ達に主張する。
「だから…」
エマは、わかった、とその男の子の言葉を受け入れる。
「じゃあ別々に逃げよう」
歯を見せて笑う負傷した男の子。
自分の身を餌にするエマ
「けど逃げるってどこへ?」
女の子が心配そうに問いかける。
「あんたケガして血が…」
エマは笑顔で、焦らなくていいから風下へ逃げてそこで隠れて、とアドバイスする。
風下なら匂いや音を察知されづらくなる。
逃げる途中でなるべく足跡を残さないようにと注意し、逆に敵の足跡を見つけたら見つかる前に逃げてと的確なアドバイスを続ける。
そして、敵に見つかって殺されそうになったら私を探して狩るよう言って、とエマ。
負傷した男の子がそれを聞いて驚く。
「『あいつはグレイス=フィールド』」
「『いいの?』」
「『早い者勝ちだよ』って」
エマは真剣な表情で子供たちに言い含める。
「とにかくそう言うの 大丈夫だから」
意味が分からない様子の子供達に、私はエマ、と自分の名を名乗りながら手を差し出す。
テオ、と負傷した男の子が手を差し出す。
女の子はモニカ、テオの兄で背の高い男の子はジェイクと名乗る。
「それじゃお互いまた後で会おう」
一行は二手に分かれてその場から駆け出す。
「ほっとけない」
(大丈夫)
エマは走りながら先ほど得た情報を頭の中で整理する。
鬼が5人に対して人間が50人、”補充”は月一度。
そして”狩り”の頻度は3日に一度。
となると一度の狩りで殺せる人間の数は限られ、たくさんは殺せないだろうと推測するエマ。
GF農園でのママの言葉を思い出す。
(「あなた達は特別なのよ」)
(「特別なお方しか食べられない特別な食用児」)
それならば”密猟者”も食べたいはずだと結論する。
(私の価値は使える!)
「死ぬ気はない 死ぬわけにもいかない」
エマは走りながら同行する男の子に、そして自らに向けて言い聞かせるように口にする。
「でもほっとけない むざむざ殺させるなんて絶対に嫌だ!!」
男の子はその言葉を聞いて、一瞬の間の後、エマに問いかける。
「にしては やけにあっさり別行動を受け入れたじゃん」
エマは理由を、5人だと目立つ、テオの出血、気持ち、と列挙するが、一番の理由は自分と一緒にいるのが危険だからだと答える。
「あの二体の鬼が追って狙うなら私の方かもと思ったから」
二人は森の中を駆けていく。
その頃、エマに鬼の弱点である目をめがけて斧を投げつけられた知性鬼が癇癪を起していた。
「楽しくない!! 楽しくないぞ!!」
お付きの者が暴れる知性鬼を諫める。
見つけ出して八つ裂きにしてやる! と叫ぶ知性鬼。
エマが投げつけた斧を受け止めたレウウィス太公はその斧をじっと見つめている。
行動方針
森の中を走るエマと男の子。
なるほど、と男の子はエマの主張に納得する。
「そりゃ確かにその方が賢明かもな」
エマは、私といるとあなたも危ない、と注意を促す。
男の子は、るせー、とエマの言葉を跳ねつける。
「オレはあんたに死なれちゃ困るんだよ」
「いい? 要は時間だ」
狩りは次に音楽が鳴れば終わると説明する。
「……でも私逃げながらやりたいことがあるの」
エマは男の子を見る。
男の子は不思議そうにエマを見返す。
二人は一旦その場に停止する。
ほら、とエマが地面を見ながら男の子に呼びかける。
地面には鬼の足跡が残されている。
エマは、あれだけ知能が高い鬼が自分たちの痕跡を隠していないと指摘し、それが単なる力量差からの余裕か、自分たちの位置を獲物に探らせるのも楽しみの内なのか、と考えられる理由を挙げる。
「とにかく人間も鬼の居所が探れる 判るの」
つまり? と男の子はエマに先の言葉を促す。
「鬼の近くにいて鬼に気づかず怯えてる人達を鬼より先に見つけて逃がしたい」
エマは男の子の顔を見ながらはっきりと主張する。
「できることなんてわずかかも それでも一人でも多く逃がしたい」
「『ほっとけない』?」
男の子はエマを見返す。
うん、と頷くエマに対し、一つため息をついてから、あんた相当面倒臭いね、と男の子が感想を言う。
よく言われる、とさらっと返すエマ。
エマは、狩りは自分もするが、鬼が行っている、まるで獲物を弄ぶような真似は嫌だ、と顔に怒りを漲らせる。
男の子は、いいよわかった、とエマの主張に折れる。
しかし、危ないと判断したら無理にでもエマを連れて逃げると付け加える。
異変を察知する知性鬼たち
他の”密猟者”達が異変を察知する。
「……何だ?」
二本角の仮面をした鬼が呟く。
「?」
別場所にいる全身がつるっとしたタイツを着込んだような鬼もまた変化に気付く。
「急に獲物がいなくなったわ」
エマと男の子は子供を連れて走っていた。
そして、周囲を見回す鬼の目から逃げるように藪に身を隠して鬼から遠ざかる。
森の中をゆっくりと歩くレウウィス太公。
私の獲物、と斧を持っているエマの姿を思い出す。
(いいねぇ 君は必ず私が狩るよ)
(だが今ではない)
そしてレウウィス太公はテオ、モニカ、ジェイクの前に立ちふさがる。
レウウィス太公に気付き、テオが叫ぶ。
「逃げろ!!」
恐怖に顔を引き攣らせるモニカとジェイク。
三人はレウウィス太公に背を向けて必死に逃げる。
逃げながら、テオは恐怖に青ざめつつ背後を振り返る。
「さぁ 君にはもっと強く美味くなってもらおう」
レスウィス太公はエマの姿を脳裏に思い描く。
感想
鬼は5人。人口50人。補充は月1。
具体的な数字が出てきた。
冒頭の場面で緊張感の無い子供は”補充”されてきた子供だろう。
補充されてきた子供達の数は、見た感じでは6~7人程度か。
高級農園で育っている食用児の総数は決して多くはない。
高級農園は全部で4か所だから、GF農園以外の高級農園3か所が仮にGF農園と同規模なら全部で100人以上はいるけど、200人はいないことになる。
月1で10人に満たない程度の”補充”は割とキツイような気がする。
ゴールディ・ポンドへの出荷は密かに行われている。
つまり普通の出荷よりも数は少ないはず。
となると4つの高級農園全体での月の出荷量は10人以上になる?
供給先は、別に高級農園だけではないということなのだろうか?
量産農園では子供は育てられているというよりも飼育されているんじゃなかったっけ?
学習も出来ず、まともに思考が出来ないような状況下にあると思ってたけど違うのかな……。
リーダー
冒頭に少し出てきたけど、リーダーは青年が行っているようだ。
そして立ち位置から推測すると、エマに同行してる男の子はその補佐を務めているらしい。
会わせたい人が居る、というのはこのリーダーの事だろう。
前回、ノーマンが生きているかも、と指摘したが、まだその可能性は潰えていない。
男の子と同じような立場で動いているかも、と期待してる。
このゴールディ・ポンドはオジサンが若い頃、少なくとも10年前程度昔から既にあった。
オジサンは仲間を全て失った。そして、このリーダーも似たような立場なのかもしれない。
長年、子供の頃から村で生きてきて”狩り”から逃げ続けた。結果成長した。
もう何年も村にいるならば、何かしら事態を打開する方法を見出していたもおかしくない。
しかし、それには頼りがいのある人員が必要で、ずっとその出会いを待っていたとか。
エマがリーダーを始めとした子供たちの救世主となるのか。
次か、もしくはその次の号にはリーダーが出て来ると思うからその時が楽しみ。
鬼、特に強キャラ感を醸し出すレウウィス太公とエマ達はどう戦う?
レウウィス太公は、静かに、退屈した様子で、前回は折角捕まえた”獲物”をつまらないと言って逃がすという他の鬼とは一線を画す大物感を漂わせている。
エマはまだピンと来ていないようだったが、男の子曰く、鬼の中では一番ヤバイのだという。
そんな太公が、弱すぎる子供たちの中で明らかに異彩を放っているエマに高い価値を見出し、執着し始めた。
エマはどう対処するのか。
投げられた斧をキャッチする驚異の身体能力から、まともに戦うのはまず無理だというのは分かる。
武器は村にあるものになるわけで、おそらく銃器の類は置いていないはず。
罠に掛けようにも、レウウィス太公だけではなく、知性鬼全員に通用するような罠をエマが知っているとは思えない。
”密猟者”として子供たちを舐め切っている知性鬼に対してはその油断を突く事も出来るかもしれないが、出来たとしてもその一回だけだろう。
そもそもまだ情報が足りなすぎる状況である今は、音楽が鳴るまで逃げつつ、なるべく他の子供を助ける、というミッションをこなす事になるだろう。
一度目の”狩り”を乗り切って、エマがリーダーと会ってどういう情報を得るのかが重要なポイントだと思う。
恐らく何度も”狩り”から逃げ切っているであろうリーダーは、ゴールディ・ポンドから逃げる、もしくは潰す何か決定的な情報を持っていて、しかしその情報を活かした作戦を実行する人間がいないという状況に苦しんでいるとか?
他の何も知らない子供とは明らかに違うエマが来た事で、恐らくはリーダーの側近であるエマに同行している男の子が、エマが鬼に対抗する力になってくれることを期待している。
だから鬼から子供たちを助けながら逃げる、という、ミッションを勝手に高難度に上げるエマに愛想を尽かす事無く、それに付き合っている。
レウウィス太公に追い詰められ、やられる寸前で鐘がなって狩りをストップ。そして、その場でエマとレウウィス太公が会話する、みたいな演出がありそう。
レウウィス太公みたいなタイプは他の漫画なら、何なら仲間になる可能性もあるキャラだと思う。
しかし無理だろうな。
ソンジュだって宗教が無ければエマを食ってた。ソンジュもムジカもかなり特殊な鬼だ。
基本的には、鬼と人間は互いに狩り合う運命にある。
”狩り”は、いわば子供たちにとっては終了の鐘が鳴るまで逃げ切る鬼ごっこ。
果たして逃げ切る事が出来るのか。
以上、約束のネバーランド第67話のネタバレを含む感想と考察でした。
前回第68話の詳細はこちらをクリックしてくださいね。
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