第128話 決めた
目次
第127話 対立のおさらい
邪血の少女の力
700年前、荒れ果てた鬼の村。
そこに住む鬼たちは2年人肉を口にしていなかった。
隣の村の鬼が獣まで退化してしまった、自分たちもそうなる、と悲観的な会話が続く。
そこに現れ、彼らに手を差し伸べたのが邪血の少女の一族だった。
エマから邪血の少女が生きているという情報を知り、呆然とするノーマン。
ノーマンは邪血の少女に関して存在を伝え聞く限りだがと前置きし、それが生後一度も人を食べずに、しかし人の形質及び知能を保てる超特異個体なのだと答える。
その詳細は一切不明であり、記録に初登場したのは700年前。
“約束”が成立した後の農園による人肉供給システムが出来る前に、飢餓の村に現れ、村人に血を与えたのだという。
第127話 対立の振り返り感想
理解できるけど、納得できないエマ
まあ、当然こうなるよね……。
ノーマンが言ってることは捕食される立場としてはあまりにも正論なのに対して、エマが言っていることはあまりにも理想的すぎる。
自分がそうだからといって、他人もそうだとはいえない。
あらゆる存在は、自己都合に従って動いているという大原則をエマはわかっているけど直視したくないんだと思う。
邪血の少女の一族の能力は、一滴の血で人の形質を保ったままでいられるという、鬼という種族を根本から救うものだった。
しかしその存在を許すと王家や五摂家による支配構造が崩れる。
よって、それを恐れた王家・五摂家により根こそぎ駆逐されてしまった。
第128話 決めた
ノーマンへの反論
エマの本音に対しノーマンは、何もかも選び取れるほど甘くはない、と諭すように告げる。
ノーマンは、鬼を絶滅させなければ家族で笑える未来はないと断言するのだった。
それは全食用児の未来のために何が最善なのかをノーマンが考えに考えた末に達した結論だった。
そしてエマもまた、ノーマンのその考えが正しいと思っている自分を自覚していた。
ノーマンのことを正しいと認めるも、エマは、それがあくまで確率論的な正しさに過ぎないと反論を続ける。
ノーマンの主張は数字の上では正しい。
しかしその正しさとはあくまで確実なこと、効率的なことだけ。
エマは、罪のない鬼の子供たちの殺戮に対して正しいとは思えないと主張するのだった。
エマは絶滅も、殺すことも重いと前置きし、ノーマンが指摘した人間の世界に食用児が受け入れてもらえるかどうかがわからないという点に関しても同意する。
しかし受け入れてもらえる可能性がゼロに決まっているわけではない以上、リスクをとってでも食用児、鬼が双方生き残る道があるならその道に賭けることを提案する。
脱獄を目指すことを決めた以降の自分たちの歩みは、まさに可能性に賭けてきた結果だとエマ。
そして、仮にムジカを殺さなければ生きられない未来ということであれば自分はきっと笑えない、と肩を落とすのだった。
そんなエマの主張に、あくまで鬼の絶滅を避けるつもりなのか、とノーマンは確認する。
新しい選択
ギーランとの同盟は撤回できないというノーマンに、わかってると即答するエマ。
そして自分の中にある今後のビジョンを話し始める。
王・五摂家の打倒と農園の解放は継続するが、王たちの血を鬼に分けることで人を食べずとも退化しない鬼を増やす。
それと並行し、七つの壁の先にいる鬼の首領と”約束”を結びなおし、人間の世界に向かう先鞭をつけておく。
全ての鬼を人間を食べなくても退化しない種に変え、さらに全ての農園を無くしてから、全ての食用児で人間の世界へ渡る。
「夢物語だね」
エマの語るビジョンをノーマンはピシャリと切り捨てる。
ノーマンは、そもそも七つの壁に関してあまりに不確定だと考えていた。
ラートリー家の資料にも七つの壁に関する記述は残っていない。
J・ラートリーですら七つの壁に辿り着けなかった。
以上のことからそもそも七つの壁自体がどこにも存在しないと理解しているノーマンにとって、エマの語るビジョンは夢物語以外の何物でもなかった。
「知ってるよ」
エマはまるでノーマンの機先を制するように答える。
そして、”七つの壁”への行き方を一年半の間に突き止めたと続ける。
そのために必要なものは既に収集済であり、条件が揃えばいつでも行けるとエマ。
その言葉に信じられない様子のノーマン。
エマはそれでも、七つの壁に本当に行けるのか、行って何があるのか、そして何より、辿り着いたところで”約束”を結び直せるのか、何もかもが謎だらけと表情を曇らせる。
しかし、それなら自分が行って確かめてくる、とまるで憑き物の落ちたようなすっきりした表情になるのだった。
「うん! 行って全部確かめてくるからちゃんと”約束”結び直せて戻って来られたら絶滅考え直してね」
自分で言って、自分で納得した様子のエマに勢いよく迫られ、いつの間にそんな話に、とノーマンはうろたえていた。
そしてエマが言った、『戻って来られたら』という言葉の真意を問う。
それに対しレイは、七つの壁を目指すにあたり、入口はわかるが出口はわからないのに加え、一度入ったら基本は帰って来られないという二つのリスクを説明する。
リスクだらけだと慌てるノーマン。
しかしエマは、でも行かなきゃ絶滅でしょ、と返す。
元々行くつもりだったし、と飄々としているエマに、ノーマンは大丈夫じゃない、と反対する。
確認
初代ラートリーが1000年前に行って”約束”を結んで無事に帰ってきている以上、帰る方法は見つけるとエマは主張する。
「絶滅させたくないのは私だしそのくらい自分で背負って確かめてくるよ」
そのくらいって、とノーマンは戸惑うのみ。
「ノーマンの方がもっと背負ってる 一人で全部 神様みたいに」
エマはノーマンの元に近づいていくと、おもむろに抱きしめ、神様になんかならなくていいんだよ、と声をかける。
「また一人で全部背負って遠くへ行っちゃうのやだよ…!」
ノーマンはエマを抱きしめようとしていた。
しかし思い直して体を離すと、僕はもうどこにも行かないよ、とエマに笑顔を見せる。
そしてエマの考えを理解したが、それでも自分の考えは変わらないこと。
計画は予定通り実行すると告げる。
しかしエマが絶滅を止めたいなら、自分が王家・五摂家をギーランに殺させる前に戻ってくるようにと続けるのだった。
”絶滅”を止める確約もしないが、エマが無事に戻ったなら、その時に初めて絶滅を止めるかどうかを考えるとノーマン。
それで十分、とエマは明るく返事をする。
レイはノーマンに名を呼ばれたその意図を理解していた。
「ああ 勿論俺も行く 任せろ」
「二人共必ず無事に戻って来てね」
ノーマンは笑顔でエマとレイを部屋から送り出す。
廊下を歩きながらエマはレイに決意表明していた。
「私決めた わかった! もう迷わない!」
そのころ、部屋に残されたノーマンはエマを自分の手のひらを見つめていた。
その目は寂しげな様子へと変わっていく。
「殺戮なんてさせない 絶対別の選択見つけ出そう もう二度とノーマンを一人で行かせたりしない…!」
強い決意を秘めたエマの言葉を受けレイは、おう、と返事をする。
第128話 決めたの感想
晴れた
ここのところエマの晴れやかな表情があまり見られなかったけど、ここにきてようやくいつものエマに戻った。
エマが選んだ道はとてもシンプルだった。
シェルタ-が襲撃される直前まで七つの壁を目指すつもりでいたわけで、楽園という子供たちの安全を確保できる当座の住まいも見つけたからこれでようやく従来の路線に戻ったということか。
鬼の絶滅を黙ってみていられないというのは、エマだからだよなー。
エマ以外の子供たちは、鬼の絶滅という青写真に大喜びしていたわけだから。
ムジカに世話になった経験があるGF組にしても、彼女の存在を忘れたかのように鬼の絶滅を喜んでいた。
鬼であるムジカが自分たちを助けてくれたという事実があっても、基本的に人間は鬼に捕食される危険性がある以上、人間として鬼の絶滅を望むのはしょうがないと思う。
GF組だってムジカに悪いと思いつつ、しかしそうやって自分を納得させるのではないか。
果たしてそんな子供たちをエマが納得させられるのだろうか。
七つの壁に向けて旅立つというのは、道中で鬼に襲われたり、辿り着いたとしても戻って来れなかったり、そもそも”約束”の結び直し自体が出来るかどうかすらわからないという、リスクだらけの道だ。
それに対し、ノーマンの作戦に乗ってれば当座の危険は回避しつつ、ギーランと王・五摂家との潰し合いを眺めていればいい。
自分だったら間違いなく後者を支持するだろうな……。
でもGF組はムジカたちに命を救われたという動かない事実がある。
おそらく、エマの、鬼を絶滅させないという言い分に納得するだろう。
気になるGV組
でもムジカたちと会った事の無いオリバーたちGV組は、そう簡単に納得はしないんじゃないか。
彼らの立場はノーマンたちに近い。
鬼に対する蓄積した恨みがあるから、鬼に対するスタンスはノーマンたちに近いだろう。
それでももしGV組がエマのビジョンを受け入れたなら、それは彼らのエマに対する信頼の強さの表れといえるのではないか。
それにGF組の生き残りに関して、GV組の力は大きい。
彼らの戦力なしに七つの壁を目指すのは難しいだろう。
果たしてエマは彼らの助力を得ることが出来るのか。
GV組は七つの壁を目指す旅に手を貸さないけど、代わりにハヤトとジンが加わるという展開になったら面白そう。
楽園は安全??
現状では食用児にとって、楽園よりも安全な場所はない。
ここに他の子どもたちを預けることが出来るので、エマも心置きなく七つの壁に向けて旅立てる。
ただ、エマたちがやってくる以前とは状況が違うのが気がかりなんだよなぁ。
ノーマンが本格的にギーランと手を結び、王家・五摂家との戦いが始まる。
状況によっては、平和だった楽園が鬼によって滅ぼされてしまう未来もあるのでは?
その場合、楽園に残ったメンバーで籠城?
それも面白そうだな……。
今後の展開が楽しみ。
以上、約束のネバーランド第128話のネタバレを含む感想と考察でした。
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