第135話 捜索
目次
第134話 Lost Boyのおさらい
漂流
常にもうもうと細かい砂が舞い上がる荒涼とした空間を、ボロボロの服装で歩く男がいる。
地面のそこかしこにはいくつも立てられた風車が回転しており、場違いなクローゼットが置かれている。
男は場所も時間もわからないままこの空間を彷徨っていた。
荒れた大地を所在なく歩きながら、呼びかける。
「エマ…おいエマ…!」
レイは銃を持っていない。
ふらふらと前進を続けるレイは、地面にバレルまで刺して立てた銃の横を通り過ぎていく。
「そうか…もういないのか」
銃にはエマがムジカからもらったペンダントがかけられている。
「俺は誰だ」
フードを脱いだレイの顔には深いしわが刻まれていた。
先の見えない、殺風景な景色を進み続けることを止め、その場に立ち止まる。
解くべき謎
(「みつけてごらんぼくを」)
(「ななつのかべは」)
(「このなかにある」)
大量のぬいぐるみの中に見つけたハッチから梯子で下に降りていくエマとレイ。
下に辿り着くと、そこはシェルターによく似た空間だった。
でもドアの数が違う、とエマ。
ここもまた〇〇の”お遊び”かよ、とレイ。
エマはミネルヴァのペン型端末の情報から、壁は現れる、という一文を思い出していた。
クヴィティダラの竜の目で昼と夜を探すべし
まず北へ10里
つぎに東へ10里
つぎに南へ10里
つぎに西へ10里
天へ10里地へ10里
砂の間で矢が止まり
日が東へ沈むとき
地が哭き壁は現れる
詩調で表現された謎にある条件を満たせば壁が現れ、〇〇に会えると二人は解釈する。
しかし狭いシェルターを模した空間で、10里も先に歩いていけるはずがないとレイはエマに次の別の行動の選択を迫る。
おかしな空間
二人は謎の通り、まずは手持ちのコンパスが指す北の方向にあるドアに向かう。
シェルターと同じく、北側にあるドアは同じだった。
ドアを開くとそこはモニター室だった。しかし天地が逆さになっており、奇妙な空間になっている。
これ以上先には進めない。
「また10里もクソもねぇな」
レイが呟く。
二人はモニター室に入っていく。
天井を歩いているみたい、とエマ。
一通り部屋の中探ってみるが、何もない。
「気をつけろ」
「うん…次ははぐれないように」
互いに警戒を促す。
部屋の中央で、二人は背中を預け合う。
銃を構えるレイ。しかし何も起こらないと判断し、廊下に戻って他の部屋を見てみることをエマに提案する。
矢印
モニター室のドアを開くと本来は廊下に戻るはずなのにそこは食堂だった。
先ほどのモニター室と違い、今度は壁面が床になっていた。
空間のそこかしこにノイズが走っている。
壁面が床になっているので、別の部屋に通じるドアが床にある。
床のドアを開くとそこはシャワー室だった。
エマは一度ドアを閉めて、すぐにもう一度同じドアを開く。
するとそこにあったのはシャワー室ではなく、寝室が広がっている。
もう一度同じ行動を繰り返すと、今度はモニター室だった。
(またモニター室 でもさっきと向きが違う)
エマはドアの開閉ごとに違う部屋に繋がることから、ここが先ほどまで自分たちがいたハウスと同じく空間がおかしいのだと判断する。
(まるで迷路)
そう思って、エマはふと何かに気づいてレイを呼ぶ。
ドアの先にあるモニター室のテーブルの天板に意味深な矢印があった。
「『あそぼ』か……」
エマは謎を解くためにもまずはこの場所のことを知らなくちゃ、と矢印の先に進むことを提案する。
しかしそれは謎の深みへとはまっていく道のりの始まりだった。
第134話 Lost Boyの振り返り感想
苦戦しそう
不穏な締め方だなあ。
これが今回の話の冒頭のレイの姿、状況につながっていくわけだ。
なんか老けているように見えたし、かなり絶望的な状況下に置かれているという印象を受ける。
謎が解けるどころか、深みにはまりこんで、もはや過ぎ去っていく時間の間隔も、自分がどこで何をしているのかも定かではない感じ。
しかし、時間の間隔もわからなくなってしまっているということは、時間の流れが現実と同じではない可能性が高い。
もしこの状況から無事に首領の元に辿り着いて、現実に戻っても時間がものすごく経ってしまっていました、では物語が消化不良のまま終わってしまう。
メタ的な先の展開の考察は自分で書いてて良くないと思う(笑)。
先の展開が予測がつかないから面白いのに、今レイの置かれている状況は一時的なもので必ず解決されるという姿勢で読むのは楽しみを失わせる。
しかしあの冷静沈着なレイをして「勝てると思っていた」という珍しい敗北を匂わせる弱気なモノローグを言わしめるのであれば、余程の仕掛けがレイとエマを待ち受けているに違いない。
この謎を解いて七つの壁に行くまでに、かなりの苦戦を強いられるのではないだろうか?
素直に見れば、GFから逃げ出して以来、いや物語が始まって以来の最大のピンチを迎えているような……。
謎の空間
ハッチの先はやはりシェルターだった。
この空間は、何らかの技術で作り出されているのだろうか。
空間のあちこちでまるで映像が乱れているようなノイズが生じている。
実体はあるみたいだから、ホログラム技術とは違うっぽい。
何かの機械で空間が生成及び構築されているように見える。
しかし中の構造は滅茶苦茶。上下が全然違っていたり、ドアを開ける度に異なる部屋へとつながっていく。
これはまるでエマとレイの反応を見て楽しむ為にイタズラしているかのような作りに見える。
遊び半分の試練として、この迷路を用意したのかな?
偽ハウスはチュートリアルみたいなものか。
だとすればいよいよエマとレイは本気でこの謎に立ち向かわなければならないということ。
門の先に行くと戻れないという言い伝えが真実味を持って迫ってくる。
今のところワナや攻撃は一切見られない。
しかし、ここからエマとレイは別れてしまう。
それは冒頭のレイの様子でそれは既に確定している。
ボロボロの様子は時間の経過を感じるが、実際にレイの体感時間はどのくらいなんだろう。
そんな長期間迷ってしまうほどに広いということなのか。
この空間は、狂暴な敵に命を狙われるような直接的な命の危険はない。
しかし荒涼とした大地や殺風景な景色だけが延々と続くとしたら、レイの身になって想像しただけで精神的にクる。
エマは既にゴール地点に?
偽ハウスで落とし穴に落とされて一時的に別れてしまったように、コンビの分離と孤立化は一瞬で終わるだろう。
レイの状況はかなり絶望的だと分かったが、しかしエマはどうなのか。
ムジカのペンダントがどういう経緯でエマの首からレイに渡ったかわからないけど、案外、エマだけはこの階層のゴールに辿り着いていて、レイを待っている状態かも。
レイは思い出したように、もういないのか、と呟いていたけど、まさか死んだわけないよな……。
もしエマがレイの目の前で死んでしまったのであっても、それはこの空間にそういう幻を見せられたのかもしれない。
エマのことは心配だけど、実はピンチに陥っているのはレイだけで、エマはすでに謎を解いて先に待っていたりするかも。
そうじゃないとエマとレイが再開できないと思う……。
これは二人にとってこれまでで最大の試練かもしれないな……。
二人とも同じような状況で、場所はもちろんのこと、時間の間隔すらも曖昧なままでさまよっていたら話が進まない。
何も目印がない、広い砂漠の真ん中、あるいは大海を小舟で彷徨っていてお互いに偶然再会する確率なんて相当低いのと同じに感じる。
一方がゴールで待っていて、一方が苦戦している。
今、エマとレイが置かれているのはそういう状況ではないか。
果たして二人は無事に再会し、この空間を突破できるのか。
首領に会うのはおろか、七つの壁までまだ遠いようだ。
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第135話 捜索
依頼
ドンとギルダは、ノーマンの部屋でノーマンからソンジュとムジカの捜索と保護を依頼されていた。
そしてソンジュとムジカが王やラートリーに殺される前に、こちらに引き入れられるのであれば既に彼らと顔見知りのドンたちならば可能だろうノーマンがその理由を続ける。
ソンジュとムジカと会ったのは2年前だというドンの言葉を受け、ノーマンはテーブル上に地図を広げる。
地図上にはソンジュとムジカが通りそうなポイントが絞り込まれていた。
そのポイントは、王兵が捜索している拠点、鬼の集落や都市、一般の鬼が普段近寄らない森や山道、穢れと呼ばれる場所などいない可能性の高い場所と、逆に王家に知られていない隠れ里、地下坑道、洞穴、逃げ道が多く隠れて進みやすい地形などを総合して絞り込まれていた。
地図上には、かつてソンジュとムジカに出会った地点もある。
ノーマンはこの範囲にソンジュとムジカがいる可能性があると自信を見せる。
「追われる者がどう逃げるかは同じく追われる者が一番わかっている」
そしてノーマンはドンとギルダに対して、護衛をつけるので、ソンジュとムジカを見つけ出して欲しいと改めて依頼するのだった。
ノーマンの思惑
ノーマンの部屋を後にした二人はノーマンの依頼に違和感を覚えていた。
少し前まではソンジュとムジカを殺す気だったにも関わらず、今度は一転、彼らの保護を依頼するのだという。
ドンはノーマンの依頼を、自分を餌にソンジュとムジカを誘き寄せて殺すためではないかと冷静に分析する。
しかしそれをノーマンに直接追求したとしても返答はないだろうし、そもそも自分たちがその依頼を拒否したところで、先ほどのポイントを楽園の人間で捜し、発見されたソンジュとムジカは殺されてしまう。
それならノーマンの話に乗り、自分たちでソンジュとムジカを見つけて守る。
ドンとギルダの意見は一致する。
アイシェ
ドンとギルダは旅支度を整え、出発しようとしていた。
二人に同行するというハヤトは、自分は護衛としての力はないのでもう一人、同行する護衛を紹介する。
「護衛のアイシェ 彼女は銃の名手で彼女の犬は探索の名手です」
アイシェはドンたちを無視して、三匹の大型犬を撫でている。
アイシェに近づき挨拶をするドンとギルダ。
しかし彼女は挨拶を返すことなく、そっぽを向いてしまう。
それを見たハヤトは慌てて、彼女には言葉が通じないのだと説明する。
彼女もラムダ出身なのか? というギルダに、ちょっと特殊で、とハヤト。
アイシェは、ノーマンや側近のバーバラたちが禁制区域の森に行った際、そこで鬼に飼われていたところをノーマンに救われていた。
鬼に飼育されていたアイシェは人語は分からない。
しかし鬼の言葉を解し、話すことが出来た。
そして鬼に対する憎しみと、鬼を撃ち殺せるだけの銃の腕を持ち合わせている。
ドンとギルダはハヤトの話を聞き、彼女にソンジュとムジカを殺させてなるものかと決意を固めるのだった。
(私達自身のためにも ムジカ達のためにも エマとレイのためにも そして…ノーマンのためにも)
かくしてドン、ギルダ、ハヤト、アイシェの4人は楽園を出発する。
エマの言っていた言葉を思い出すドン。
(「もうノーマンに自分を殺させたくないんだ どうかノーマンをお願い」)
(エマ レイ心配要らねぇからな こっちは全部――)
ドン達が楽園を出発した頃、レイは彷徨っていた。
「くそっ…!」
焦りに顔を歪めるレイ。
その腕には、エマらしき赤ん坊が抱かれていた。
第135話 捜索の感想
ここをどうやって抜ける?
レイがかなりの窮地に陥っている。
それも、おそらくここから前回の老け気味のレイの姿に繋がっていくんじゃないのかな?
だとすればかなり長期間この空間を彷徨うことになる?
それともエマが赤ん坊になったように、レイは老けたってこと?
この空間に来る前のGFハウスもどきでもエマとレイは子供の姿になったけど、すぐに戻っていた。
でも今後はそんな生易しい場所ではなかったということなのか。
前回の、不穏なナレーションでの締めを思い出す。
かなりの試練だわ。
しかも、まだレイとエマの身に何が起こったのかすら描かれていない。
どうやってここから抜け出すのか。今はまだ想像すらつかない。
重要ミッション
ドンとギルダもまた大事なミッションを負った。
ソンジュとムジカという、かつて自分たちを救ってくれた大事な友人であり、状況を一変させうる存在を王家やラートリー家だけではなく、ノーマンたち楽園勢からも保護しなくてはならない。
かなり困難なミッションだと思う。
きっとドンとギルダはソンジュとムジカに会えるのだろう。
しかしそれからどうなるかわからない。
ドンとギルダは、ノーマンに万が一にもソンジュとムジカを殺させないためにも二人を楽園に連れていきたくはない。
しかし同行者であるハヤト、アイシェはある意味ノーマンの命を受けた監視でもある。ドンとギルダの勝手な行動を許さないだろう。
そもそもドンとギルダがソンジュとムジカを守ろうとすることをノーマンは見抜いているはず。
ひょっとしたらハヤト、アイシェ以外に、楽園の誰かを尾行につけているのかもしれない。
何にせよ、ノーマンがソンジュとムジカを救おうとするであろうドンとギルダの考えを読めないはずがない。
何らかの、楽園に連れて来させる策を練っているはずだ。
果たしてドンとギルダの旅はどういう結末を迎えるのか。
面白そうな新キャラアイシェがどういう役割になるのか。
そして今、まさにピンチのエマたちの謎解き。
次回も面白くなっていきそうだ。
以上、約束のネバーランド第135話のネタバレを含む感想と考察でした。
第136話はこちらです。
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