第40話 アルヴァピネラの蛇
追っ手の姿
森の途切れた平野部を行く異形。
地面のにおいを嗅いでいる。
「降りてますね」
「遅かったか」
少し離れた場所で鬼が呟く。
地下は吸血樹の群生地であり、野良の下等種もうろつく地で我々以外に食われることだけはあってはならんと言う鬼。
「方角は分かるか。」
無数の四足獣型の鬼が並んでいる。
「はい 南東に真っ直ぐです」
書物の記述を思い出すエマ
ミネルヴァの残した特別な二冊の内の一冊である”約束”のモールス、『ウーゴ冒険記』を思い出すエマ。
あのヘビの話、と必死に細かい部分を思い出そうとしている。
そのエマの様子から、レイが、まさか、と何かに思い当たる。
「アルヴァピネラの蛇?」
それ! とエマがレイを指差す。
『ウーゴ冒険記』第3章アルヴァピネラの蛇の項には、エマ達の置かれている現状によく似た光景が描かれていた。
毒蛇の巣窟である海底洞窟アルヴァピネラ。
壁一面を埋め尽すほどの蛇が一つの生き物のように存在している。
足元には宝があり、蛇はその宝を守っているのか。それとも宝で人を誘うのかという内容が書かれている。
内容を説明し、似てるでしょ? とレイたちに言うエマ。
洞窟も宝石も蛇も、目の前の異形の木のことだったと断定する。
「この冒険小説は外の世界の手引書だったんだ!!」
レイは疑問の余地があるのでは、という素振りをするが、すぐに思い直す。
「……いや あり得るか」
試してみよう、とレイがエマに言う。
エマはレイに同意し、他の小さな子供たちを下がらせる。
根を見ながら、獲物の位置をどうやって知るのかと考えるレイ。
根に向かって投げたコップが根に触れた瞬間、触手のように伸びてコップを破壊する。
驚く一行。
「やっぱり! “接触”だ」
喜ぶエマとレイ。
熱、音、振動ではなく、”根の先に触れる”と位置を把握して攻撃を加えてくることを突き止める。
さらに、レイは冷静に植物を観察する。
根の動きを見れば、干からびた動物がどうして捕まったのか、自分たちがどう逃げたら良いのかわかると自分に言い聞かせるレイ。
(なんだ 冷静になれば未知だろうとすべきことは同じ)
(観察・分析 敵の策を読む)
観て考えて進路をつくる。
知らなければ知っていけばいい。
人間にはそれが出来るのだから。
突破口
レイがエマを呼ぶ。
エマの読み通り、アルヴァピネラの蛇だと断定するレイ。
でしょ、とエマは笑う。
そうこうしている間に、根は増え、徐々にエマ達に近づいてきている。
壁側から追い詰められ、俺たちも捕まって干からびるのか、と恐怖するドン。
エマはレイを呼ぶ。おうと返事するレイ。
エマとレイは、恐怖する子供たちをそよに、つかつかと壁に近づいていく。
壁の前でくると子供たちに向き直る。
「ほら大丈夫」
エマとレイは、笑顔で手を広げて他の子供たちに安全をアピールする。
驚く子供たち。
触らなければいい、と言うエマ。
襲ってくるのは壁からの音だけだが、触らなければ攻撃してこない。
近づいても根の先に触れなければ近づいてくるスピードも変わらない
説明するエマ。
「怖くない 落ち着こう」
エマは口元に笑顔を作り、真っ直ぐ子供たちに言う。
落ち着きを取り戻す子供たち。
レイが今後の作戦を話し始める。
近づいてくる壁に追いつかれる前に、当初の予定通り後ろの”木”を上まで登るのだという。
「お前らならできる」
レイが口元に笑みを浮かべる。
「木登りも訓練で飽きるほどやったろ」
訓練を思い出す子供たち。
作戦通り壁を登ったあとの事、そしてそもそも根に追いつかれる前に壁を登りきれるのかという疑問を抱く子供。
「出られるのね?」
ギルダは決意に満ちた表情でエマに問う。
「上まで行けば天井からみんなで地上に」
エマは、うん、と返事する。
「行きましょうみんな!」
ギルダは笑顔で他の子供たちに呼びかける。
子供たちは笑顔で返事をする。
脱出
さあここから出よう! とエマが率先して”木”に登り始める。
後に続く子供たち。
レイがアルヴァピネラの蛇について考える。
洞窟の天井の岩から生まれ増えていったというアルヴァピネラの蛇は、全て岩が化けてできた蛇であり、”木”も同じなのだと思い至るレイ。
まるで岩を蛇に変えていくかのように、今なお増え続けている根は全て天井から伸びてきている。
上まで逃げて下が壁の根で埋め尽くされるほどになれば動物たちのように捕まって干からびてしまう。
「みんな手伝って!!」と声をかけるエマ。
皆で一斉に天井の根にぶら下がる。
(アルヴァピネラの蛇から逃げるには洞窟の天井に穴をあければいい)
(どんな方法でもいい 難しくはない)
本の内容を思い出すエマ。
ぶら下がったエマ達にむけて下から根が伸びていく。
恐怖する子供たち。
天井の根がぶら下がった部分から千切れ、外から冷気が流れ込む。
(外は凍てつく北の海)
(蛇は寒さで眠ってしまう)
触手のように伸びていた根が風に吹かれると固まり、動きを止めていく。
ぶら下がったエマたちは根が千切れたので底に下りてしまうが、根は完全に動きを止めている。
喜ぶエマ達。
(恐れるな)
(怯えず空を目指せば彼らに食われることは決してない)
先に地上に登った子供がロープを垂らし、全員が地上への脱出を成功させる。
(ありがとうミネルヴァさん)
窮地を脱することが出来たことに感謝するエマ。
喜んでいる子供たちを見つめるエマ。
しかし、エマは一人、不穏な気配を感じ取っていた。
感想
意外とあっさり脱出できた。
しかしそれも過去に読んでいた本の記述を思い出す閃きと、何より冷静でいられたからだった。
レイの言う、未知の状況におかれてもやるべきことは同じというのはその通りなんだろう。
観察、分析、敵の策を知る。
結局窮地に陥った人間がやれること、やるべきことはそれほど多くない。
何にせよ、誰も死ななくて良かった。
この漫画は登場人物が多いから、事あるごとに減らされてしまうんじゃないかと恐れながら読んでいる。
実際、登場人物の退場は物語を盛り上げる機会だし。
ただ、子供たちかわいいから死んでほしくないんだよなぁ。
次の回でいよいよ鬼がエマたちに追いつくのか。
鬼もそうだけど、四足獣のようなタイプの鬼が禍々しくて怖い。
殺すのではなく、あくまで捕まえにきているとはいえ、追いつかれたら恐慌状態になることは間違いない。
見逃せない展開が続く。
以上、約束のネバーランド 第40話アルヴァピネラの蛇のネタバレ感想でした。
41話の詳細は上記リンクをクリック。
コメントを残す