第55話
第54話のおさらい
シェルター内で男と出会った子供達。
男はエマの首に腕をまわし、銃口をこめかみに突きつけレイの持つペン型端末を寄越せと要求した。
レイはペンが手元から無くなるということは自分たちにとっての生命線であるミネルヴァとの繋がりが無くなってしまうことを良く分かっていた。
人質のエマを救うために必死に状況の打開を図ろうと頭をフル回転させる。
男とレイの睨み合いによる膠着が続く中、突如エマが拳で男の金的を殴る。
男は悶絶し、エマの首にまわしていた腕を離す。
エマの解放と共にギルダが子供たちに部屋の外に出るようにと素早く指示し、子供達は出て行くが、エマは男の自分を撃つという脅しはハッタリであり、目的はエマ達を追い出したいだけなのだと喝破する。
男はエマに向けて銃を撃ち、ハッタリではないと再度脅しをかけるが、エマはそれを認めない。
ぶらつきながらもエマ達を手持ちのピストルの銃口を突きつける男に向けて、エマは、自分たちは出て行かないし、ペンも渡さないと堂々と宣言。
さらに、自分の家族は無駄ではないと啖呵を切る。
男はエマの啖呵によって気力を取り戻した子供達を見て、かつての自分を思い出していた。
頭を抱え、長い独り言を呟き、唐突にいない人間に向かって怒鳴る。
「マズイ…”奴ら”だ」という意味深な一言を呟き、男はその場に倒れ込む。
男の言葉に不安を覚えながらも、男が昏倒している間にレイはシェルター内の調査を提案。
レイとエマは男の言っていた”資料室”を探し、ドンとナットには男の見張り、他の子供達で今夜眠れる場所の発見と役割分担する。
眠れそうな場所を探して部屋を回っていたイベットとアンナは”poachers”(密漁者)と書かれた大きな文字に気づく。
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荒野に朝の光が降り注ぐ。
鳥が空を飛び回り、チュンチュンと鳴いている。
B06-32の”先輩”が目覚めると、仰向けに寝かされたテーブルと一緒にガムテープのようなものでぐるぐるに拘束されているのに気づく。
”先輩”は悪態をついて暴れるが動けない。
テーブルの足が動く音と”先輩”の罵声だけが部屋から響く。
カーン、と金属音が鳴り、布団で寝ていた子供達が目覚める。
ジェミマは頬に手を当てて布団で寝て、目覚める幸せを噛み締めている。
エマはカンカンと鍋におたまを打ち付けて子供達を起こす。
布団から起きて、フトン最高、と寝起きにも関わらずドミニクとクリスティが走り回る。
すっごい眠れた! と枕を抱き締めたままアシリアがテンション高くマルクとジェミマに報告する。
マルクは枕に頬ずりして、ふとんってこんなにフカフカしてた? とうっとりしている。
ね! 最高! と笑顔で同意するジェミマ。
ふとんを片付けるエマにドミニクとロッシーが近寄り、ふとんを片付けたから行ってきていい? とうずうずした様子で問いかける。
エマは笑顔で承諾し、ドミニクとロッシーは大喜びで駆けていく。
その背中に、無駄遣いするなよ、とレイが注意する。
風呂
「おフロだ――――!!」
子供達がが全裸になって浴場になだれ込む。
熱いシャワーを浴び、お湯を使える喜びを噛み締める一同。
水でもなく、蒸しタオルでもなくお湯を使えることを心から楽しむ。
湯で満たされた浴槽に気持ちよさそうに浸かるナット、ドミニク、ロッシー、ラニオン、トーマ、マルク。
ハウスから脱獄して7日お湯に浸かってなかっただけなのに10年フロに入ってなかったみたいだとドミニク。
俺達10年も生きてないだろ、とナットが突っ込む。
あれ? とロッシーの目から自分の意志と関係なしに涙がこぼれる。
ソンジュ達に助けてもらったり、ひどい旅じゃなかったはずなのにおかしいな、と戸惑うロッシーの頭にドンがポン、と手を置く
「変じゃねぇよ全然」
がんばって歩いてきてよかったな、とトーマがロッシーに笑顔で語り掛ける。
「B06-32に来れて…逃げてきてよかったな」
ロッシーは笑顔を浮かべているが涙が止めどなくこぼれていく。
「うん…!」
浴場の隣の更衣室では、笑顔を浮かべたエマとレイが子供達の着替えを用意している。
B06-32に用意されていた服に着替えたギルダ、ナット。
アリシアはダボダボのシャツを着ている。
アンナとジェミマは着ていた服を洗濯できることを喜んでいる。
ギルダはダボダボのシャツを着ている小さな子供達を見て、あとで何着か調整しようと呟く。
食事
大きなテーブルが部屋の中央に置かれた食堂らしき一室で子供達がお祈りをする。
「いただきます」
食事を始める子供達。
レイはこのシェルターは風呂もトイレもキッチンも、畑まであって予想以上にすごいとエマに語り掛ける。
シェルターについて調べていたレイはわかったことを説明する。
・水は地下水から引いている。
・地中の熱を使って有機廃棄物から発電。
・そうやって発電して足りない分は別燃料で稼働する補助発電機を使う。
ドンがユーキハイキブツ? とレイに訊ねる。
ごにょごにょとレイがドンに耳打ちするとドンは、ウンコで発電!? と立ち上がって驚く。
生ゴミもと言っただろと冷静に答えるレイ。
ギルダは、食事中! と言って二人を注意する。
レイは分かったことを元に、水と電気には困らず、ゴミも極力出ないと笑顔で結論を言う。
”先輩”のオジサンが13年使っているから食糧庫の備蓄はないが、外では鳥が飛び、トカゲ、ヘビも見かけたというエマ。
トカゲ、ヘビと聞いてテンションを上げるラニオン。
逆に、隣のナットは引いている。
ハウスから持ってきた保存食は予定以上に残っている。
一部屋”畑”を増やし、ムジカから得た種を育てよう、とエマは今後の計画を語る。
ここで暮らせる、この場所で、とエマは感慨深げに呟く。
ミネルヴァはおらず、”先輩”がいて、壁に書かれた謎の単語があるが、と前置きしつつ、レイは、ここは最高の隠れ家だとエマの言葉に同意し、自分たちの人数くらいなら余裕で住んでいける、と続ける。
レイの言葉にエマは安心し、15人誰ひとり死なせずに安全な生活出来る場所に来れたとほっとする。
ピアノを見つけたナットが弾いていいかなと他の子供達にことわり、弾き始める。
子供達は思い思いの表情を浮かべてナットのピアノの旋律を聴いている。
キッチンで食器を洗っているギルダとアリシアも作業の手を止めて聴き入っている。
「ここからだ…ここからだよね」
エマは笑顔で、静かに呟く。
その脳裏では、平和な”人間の世界”でハウスに置いてきた4歳以下の子供達も含めた子供全員が笑顔で集まっている光景を夢想していた。
「この幸せをフィル達も一緒に」
エマは強い意志を秘めた目で決意する。
「家族全員で人間の世界で」
ああ、と隣のレイが同意する。
エマの脳裏にハウスに残して来たフィル達の姿が浮かぶ。
「フィル達に会いたいなぁ」
ノーマンにも……、と自然に言葉を続けるエマ。
フィル達にはまた会える、とレイはエマに応じる。
「そのために探る”糸口”だろう?」
エマはレイの言葉に、うん、と頷き、資料室を見つけたしミネルヴァを探そう、と返す。
そして、ミネルヴァを探す為の鍵は、資料室の資料と、あの”オジサン”が握っていると続ける。
その頃、”先輩”はテーブルの上に自分とテーブルを縛っていたガムテープのようなものをびりびりに破いて拘束から脱していた。
”先輩”の左手にはナイフが握られている。
感想
ようやく辿り着いたシェルターは、常に最悪を想定して生きているようなレイであっても、今後生きていける見通しを明言出来るほどに素晴らしい施設だった。
とりあえずホッとした。
先週の引きから考えたら、そのまま”何か”と遭遇してシェルターから脱出するような展開があってもおかしくなかった。
荒野を歩いてきた疲労を回復出来たこと、シェルター内であれば今後も生き続けられる見通しが立った事で、子供たちの生存確率はまた上がった。
脱獄した全員を無事に連れて来れて良かったと幸せそうな子供達を感慨深げに見つめるエマは立派なリーダーだと思った。
そしてレイは優秀な参謀。
元々全員優秀な子供達だからということもあるだろうけど、きちんと組織として機能している。
ここまで、ミネルヴァに会えていないことを除けば、そう悪い展開ではない。
ただ、エマが、全員無事で良かった、と考えたとおり、そもそも脱獄した時からそうだったけど、今後誰かが欠けてもおかしくないという危険は常にあるということでもある。
安全なシェルターの内部とはいえ、正体不明の”密猟者”がいるかもしれないという危険性。
あと直近では、手持ちのナイフで拘束から脱した”先輩”の存在がある。
”先輩”の拘束の仕方を見るに、やはりなんだかんだエマやレイは甘いんだろうな。
後頭部に枕を敷いてあげていたし……。
ただテーブルに仰向けにした状態でぐるぐる巻きにするのではなく、後ろ手に縛って自由を奪っておくべきだった。
そもそもナイフを持っている事を見落としていたのはレイらしからぬミスだと思う。
ひょっとして、”先輩”を拘束したのは、彼の見張りを頼まれたドンとナットだけだったのか?
後で”先輩”質問をして色々答えてもらうために嫌われたくなかった為かもしれないけど、やはり拘束はキツクしとかないと意味がないね。
ラストのコマの”先輩”、目が怖い。
でも恐らくこの”先輩”は誰にも危害を加えない気がする。
根拠は無いけど、なんかそんな気がするんだよな~。
子供達を見て自分の仲間を思い出してたし、辛い記憶を思い出したくないのかなと感じたんだけど……。
次は何が起こるのか。
以上、約束のネバーランド第55話のネタバレを含む感想と考察でした。
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