第117話
目次
第116話 檻への侵入1のおさらい
潜入メンバー決定
ハヤトはクリスティを救うべく、ここから西へ5キロの地点にある農園に潜入し、薬の入手を提案する。
子供たちは農園に盗みに入ること事態に驚いていたが、オリバーやレイは、ミネルヴァたちが集団生活を維持できている理由に納得していた。
今から向かっても日暮れまでに戻れる、クリスを救える、とエマたちに行動を促すハヤト。
しかしたとえクリスティを助けられるとしても、どうしても農園への潜入に対して子供たちの間に不安が生じる。
一番に名乗りを上げたのはエマだった。
エマはクリスの薬だけを確保する目的であれば少人数での潜入が最適だと提案する。
そしてジンに、この場に残って、もし自分たちが日没までに戻らなかったらミネルヴァの元へ向かって欲しいと頼むのだった。
さらに、必要な薬がどれなのかを選別する知識を持ったメンバーの選定を頭の中で行う。
少し考えて、エマはザックに声をかける。
しかしそこに待ったをかけたのはアンナだった。
「私に行かせて エマ」
その場に驚きと動揺が広がる。
アンナは体調がよくないのはドミニクも同様であり、もしこの場に残るおおぜいの子供たちが鬼やラートリー家に襲われた際に戦力になり、尚且つ的確に対処できるのも自分よりはザックだから、とザックとサンディにこの場を守ってもらうことを提案する。
「行くべきは私 私がクリスの薬を手に入れてくるわ」
覚悟が決まった表情で宣言するアンナ。
納得がいかない子供たちだったが、ザックはアンナの提案に賛成する。
アンナに対して失礼ともいえる主張をするザックに、子供たちから非難めいた空気が生じる。
しかしザックは賛成の理由をアンナが言った内容ではなく、アンナがこの集団の中で最も薬に詳しいからだ、と続ける。
その指摘にはっとする一同。
ザックは、そうだろう? とサンディに問う。
ああ、とサンディは笑顔で頷くと、アンナがこれまで仲間を救うために、この一年半の間、薬や医療のことを誰よりも懸命に勉強してきたことを説明する。
アンナの知識量はルーカスも舌を巻くほどだった、、とアンナの実力に太鼓判を押すのだった。
ベタ褒めに、アンナは思わず顔を覆って照れる。
「行かせてやってくれ アンナなら目当ての薬がなかった時にも必ず対処できる」
アンナはメンバーに必要な戦力としてきちんと認められた充足感に笑顔を浮かべていた。
オリバーは、心配なのはわかる、とレイの帯同を提案する。
出発直前、アンナは髪を後ろで束ねてポニーテールにする。
かくして、潜入メンバーは農園に向けて出発するのだった。
潜入
エマ、レイ、アンナ、ハヤトの4人は量産農園の目前に迫っていた。
ハヤトは、潜入するのは低級の量産農園であり、基本的に警備は機械頼みで鬼の警備は薄いので、カメラやセンサーさえ避ければ大丈夫だと前置きする。
しかし監視カメラは音も拾うため、建物内に入ったら音を立てないで、と注意を促すことも忘れない。
「見つかれば最期 鬼達は全力で俺達を捕えます」
(あくまで秘かに迅速に気づかれずに侵入し戻ってくる)
マンホールのふたを開け、一行はハヤトを先頭に下水道を行く。
下水道から建物内へと侵入するエマたち。
廊下に降りる際、右手側にカメラがあるから気をつけてと注意を促すハヤト。
降りた先のつき当たりが薬品室だと目的の場所を示す。
監視室
農園の監視カメラをモニターしている部屋には二匹の鬼が隣り合って座って会話していた。
そして最近は”盗難”が増えたので、上から”面倒な命令”があったという話になる。
農園が最近また一つ潰されたことで貴族が警戒を強め、ここも見張りが強化されたのだという。
薬品室に向かう廊下を進んでいたエマたちは、その増やされた警備態勢に引っかかった形で鬼に発見されてしまう。
レイが鬼に銃を撃つ。
監視カメラはそんなレイの姿を捉えていた。
レイはエマたちに薬品室へ行くことを促し、自分は鬼を惹きつけようと逆方向へと駆け出していた。
途端に、檻の中をけたたましいサイレンが鳴り響く。
急いで現場に向かう鬼たち。
ハヤトはエマに薬を入手したら元来た道を戻るようにと言い残しレイの元に駆けていく。
(あの人 道も知らずに死んじまう…! 俺はザコでも恩人を死なせるなんてマネできねぇ…!)
「エマ…」
怯えたアンナに、エマは毅然とした表情で呼びかける。
「行くよアンナ」
それでアンナは気を取り戻す。
(そうだ 私のすべきこと…!)
(レイとハヤトが引きつけてくれている間に私とエマでクリスの薬を探し出す!!)
第116話 檻への侵入1の振り返り感想
アンナの能力
今回、農園に潜入するメンバーに名乗り出たアンナ。
その理由は仲間を想ってのことだった。
戦えない分、エマやレイよりも遥かに鬼への恐怖は強いだろう。
勇気があるよなあ。俺なら無理(笑)。
そしてそんな彼女、一番薬に詳しいから、と戦力として太鼓判を押して送り出すザックとサンディが素晴らしい。
これはアンナも嬉しいし、やる気も出るだろうな。
このクリスティの命のかかった、とても切羽詰まった状況でお世辞なんていうはずもない。
つまりアンナの薬や医療の知識を、実際に彼らは認めていたわけだ。
クリスティに必要な薬がわかるので、今回のミッションにおいて、かなり重要なポジションにあると考えて間違いない。
それにこのミッションを終えた後も、仲間の治療などを担っていくとても重要なキャラと言える。
ただ、彼女は戦うことができない。
それが仇にならなければいんだけど……。
ピンチ
ついてなかった。
ミネルヴァが農園を潰したばかりで、各地の農園の警備が強化されたばかりだったようだ。
低級の量産農園だから大丈夫だとハヤトは言っていた。
実際、もしモニターの監視だけであれば何の問題もなかったと思われる。
廊下を警備していたのは完全に警備強化のための増員だろう。
見つかったことで大勢の鬼が出てきたけど、レイとハヤトは鬼を食い止めることができるのか。
やはり今回の局面を乗り越えるために、最も重要な働きが期待されるのはアンナだ。
アンナがどれだけ早く薬を見つけることができるかで逃げる難易度が変わってくるだろう。
より早く見つけられれば鬼に追い込まれる前に廊下から逃げ出すことができる。
来るときに通ってきた狭い横穴なら鬼は追跡できない。
果たしてこのピンチを乗り切ることができるのか。
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第117話 檻への侵入2のおさらい
急ぐ
薬品庫に入ったエマとアンナは薬品がところせましと並べられたいくつもの棚から目的の薬品を探していた。
大量の薬の中、アンナは素早く目当ての薬を見つけていく。
アンナは急ぐ必要性を感じていた。
レイとハヤトが鬼たちの注意を引き付けている内に、自分たちは一刻も早くクリスティの為の薬を探し出さなくてはと薬品庫を駆けまわる。
役目をこなすレイとハヤト
レイは廊下を逃げながら、背後から迫る鬼の顔面を的確に銃で狙う。
鬼たちはレイからの射撃に思わず怯み、足を止める。
その内にレイは鬼を引き離して先へと進む。
「レイさぁ~ん!!」
遠くからレイの名を読んだのはハヤトだった。
ハヤトはレイに追いつくとそのまま並走する。
何でお前、とここまで来た理由をレイに問われたハヤトは、レイが道も知らずに飛び出したからだと答える。
ハヤトはレイから、エマとアンナを守れ、と言われるが、だからこそですと返す。
エマとアンナを守るには、自分たちが一秒でも長く逃げ回って鬼を引きつける必要があると主張するのだった。
レイは、怖いんですよ、と震えながらもこうして自分を追ってきたハヤトに感心していた。
「お前はいい奴だ 誰一人死なず無事に戻ろう」
レイは逃げ道の案内をハヤト任せて、鬼を引きつけて離脱すると方針を示す。
廊下を行くレイとハヤト。
レイはふと、壁についている窓から外の光景に視線をやる。
「え」
思わず立ち止まるレイ。
窮地
エマとアンナは必要な薬を全て回収して元来た道を戻っていた。
エマはアンナがレイたちのことを案じているであろうことを見抜き、彼らなら大丈夫だと声をかける。
「レイはハヤトを守るしレイ自身守る相手がいた方が死なないから」
確かに、と笑うアンナ。
エマとアンナは下水道にまで戻って来ていた。
エマはハシゴを登り、地上に出るマンホールの蓋を開ける。
しかし、マンホールの周囲では4体の鬼が出てくる者を待ち構えていた。
鬼に発見されたエマは急いで穴の中に引っ込んでマンホールの蓋を閉める。
そして自分のすぐ下で待機しているアンナに叫ぶ。
「アンナ下がって!! 逃げて!! 鬼が外に――」
開くマンホール。
鬼は長い手を伸ばしてエマの胴体を鷲掴みにし、外へと引きずり出してしまう。
そして鬼たちはエマの首元の数字を発見していた。
途端に狂喜し、涎を垂らして大口を開く。
エマにはその様子を呆然と見つめることしかできなかった。
「最高級肉(グレイス=フィールド)だァ――ッ!!!」
鬼を前にしてアンナは何もすることができない。
ただただ涙を流していた。
鬼たちの間では、自分がエマを食うんだ、と争いが起こっていた。
エマは鬼たちが揉めている内に胴体を掴む手から逃れようとする。
しかし強い力でホールドされているため逃げられない。
アンナは拳銃を取り出している。
しかし泣くばかりで、とても鬼を撃退できるような状況になかった。
鬼は他の鬼のスキをつき、一瞬でエマを自分の口に放り込もうとする。
しかし次の瞬間、顔に袋を被った人物が刀を3匹の鬼に突き刺し、切り裂いていた。
逃げようとする残り1体にも刀が振り下ろされる。
エマは訳も分からずに、自分を鬼から救った謎の人物を見上げていた。
謎の人物もまたエマを見下ろしている。
謎の人物はエマに顔を近づける。
「あうあー…」
呻いた後、エマに刀を突き刺そうとする。
「待った待った待ったァーッ!!」
エマと謎の人物の間に割って入るハヤト。
「仲間仲間! この人は仲間 恩人なんだ!!」
謎の人物は、うー、と唸るとエマへの攻撃を止める。
ギリギリで命拾いしたエマに駆け寄るレイとアンナ。
アンナは泣きながらエマを抱き締める。
エマはレイに、この人に鬼から助けてもらった、と説明する。
驚くレイ。彼がミネルヴァやハヤトの仲間なのかと問う。
ハヤトはこの人物はミネルヴァの腹心のザジと紹介する。
強いが考えてることが分からず、ミネルヴァの言うことしか聞かない狂犬なのだ説明し、エマたちに気をつけるよう告げる。
あうあー、と呻きながらちょうちょを目で追うザジ。
エマの脳裏ではザジが何者なのかという疑問が渦巻いていた。
一方、レイは鬼が来ることを心配し、急いで帰ることを提案していた。
アンナも目当ての薬を手に入れたので、それに同意する。
はい!、と元気よく同意するハヤト。
歩き出して距離が離れてから、ザジに、来るんだよ、と遠慮がちに声をかける。
「あうあうあー…」
ザジはぼうっと立っている。
第117話 檻への侵入2の振り返り感想
ザジ面白いなー
エマが疑問に思っていたけど、マジで何者なんだろう。
性別は多分、男だと思うけど……。
彼はミネルヴァと行動していた4人の腹心の内の一人だ。
食用児なんだろうけど、なぜこんなに動物みたいなんだ?
ひょっとしたら量産農園で何らかの処置を受けたか、もしくは正気を失うくらいに精神崩壊してしまったのか。
確か他の3人は普通に喋れていたはず。
その中でも明らかにザジだけが異質だった。
ミネルヴァしか制御できず、複雑な作戦をこなせない代わりに、戦闘力は随一という設定かな?
攻撃を仕掛けてこないのであれば、心強い味方であることは間違いない。
ミネルヴァの言う事を聞くのであれば人語は解しているということだ。
それならば、エマたち一行の中の誰かと意思の疎通ができる可能性はあるだろう。
4人の腹心は濃いキャラが揃っていたように思うが、ザジはその中でもとりわけ外見やその在り方が最も目立つ。
個人的にはこういう尖ったキャラは好き。
あとついでに言うならバット持った姉ちゃんも気になる。
他の3人と同様、どういう過去があるのかは今後明らかになっていくはずなので楽しみだ。
ミッションクリア
エマが捕食される寸前ではあったけど、結果的には無事にミッションをクリアすることができた。
これでクリスティが死なずに済む。
今回のMVPを決めるとしたらまずはアンナだな。
あの大量の薬の中から必要な薬だけ見つけて素早く回収できたのは彼女のおかげだった。
医療のプロというポジションを築いたので、今後はこれまで以上に出番が増えるはずだ。
これまでも地味に集団の会話の中では目立っていたけど、今回のことでよりそれが安定するだろう。
GF組の主力はエマ、レイ、ドン、ギルダの4人だったけど、アンナもそこに入ることになるだろう。
あと、もう一人、特に活躍したのはハヤトかな。
死にかけのクリスティを救えたのは彼が量産農園から薬を盗むことを思いついたからだし、量産農園までの道のりや、建物内に入ってからも薬品庫まできちんとガイドしていた。
そして自分が彼を良いな、と思ったのは、彼が自分の恐怖心を押し殺してレイの元に向かったことだ。
勇気があるキャラはいい。勇気とは恐怖を抱かないことではなく、恐怖を乗り越えられること。
自分は彼がGF組みたいな天才集団とは違って、おそらくは普通の知能の持ち主なのでよりリアルに感情移入できそうだと感じた。
あとは彼がどこかで死なないことを祈るのみだ。
ユウゴやルーカスみたいに名前有りキャラの死者枠に入ったらと思うと怖い。
いよいよミネルヴァか
ザジはここからエマたちを護衛してくれることになるだろう。
このままスムーズにミネルヴァの元へ無事に到着できる確率は高そうだ。
そうなると、いよいよ、エマたちがずっと目標としてきたミネルヴァとの邂逅がすぐそこに迫っていることになる。
ミネルヴァはエマたちに農園解放の手伝いをしてもらいたいはず。
でもエマたちにはリミットが迫っている。
ミネルヴァは七つの壁を目指すエマたちを助けるだろうか。
助けたいけど農園の解放運動に投じる人員を割けなかったりするかも?
とりあえずミネルヴァに会わない手はない。
主力メンバー以外がアジトに滞在できるのはとても大きい。
アジトに小さい子供たちを預けて、いよいよ七つの壁探し再開か。
続きが楽しみだ。
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