第108話 行かせねぇ
目次
第107話のおさらい
森を目指すエマたちは、アンドリューたちを足止めする為にシェルターに残ったユウゴとルーカスの身を案じていた。
不安を口にするアシリアに、エマは、大丈夫、と告げ、夜の内に森に到着すべく再び歩き始める。
敵から奪った武装に身を包んだユウゴとルーカスは、ボロボロのシェルターの入口からシェルター内部へ足を進める。
廊下を行くユウゴの胸に、シェルターにやってきた当初の記憶が甦る。
不安げな表情で廊下の先をランプで照らす少年期のユウゴ。
警戒の姿勢を崩すことなく廊下を進むユウゴとは対照的に、他の子供たちはが居ない安全な環境に感動したのか、子供たちが、わぁっ、と歓声を上げる。
ルーカスは、ミネルヴァ殺し、密猟場、全ての元凶がラートリー家だと断じる。
その言葉に、ユウゴは犠牲になったダイナや仲間の姿を思い出す。
ユウゴはシェルターで死ぬなら悪くないとしながらも、強い意志を込めて続ける。
「だがな 死ぬのは奴らだ」
「ああ」
そんなユウゴの気持ちを理解している様子のルーカス。
ユウゴは、刺し違えてでもエマ達には手は出させないと先を行く。
アンドリューは既に数人の兵を失ったことを理解していた。
(また予定外…)
アンドリューと一緒にいた兵が確認の為にモニター室へ向かう。
モニター室内に誰もいないことを確認してアンドリューに報告し中に入る。
ギイイイ、と閉じるドア。
ドアの陰にいたユウゴがドアを閉めた音だった。
兵を倒したユウゴは、奪った通信機を通じてアンドリューたちを挑発するように呼びかける。
「殺せるもんなら殺してみろよ 返り討ちにしてやる」
通信が途切れた後、アンドリューは他の兵に向けて通信機の周波数を変更を呼びかける。
アンドリューはシェルター内にいる敵は囮だと判断していた。
その上で、まずは囮を殺してから、逃げた本陣を追うと方針を決める。
シェルターさえ奪えば何とでもなると考えていたのだった。
残り5人の敵をおびき寄せる為に廊下で銃を乱射するルーカス。
アンドリューはそれが罠だ、と即判断する。
待機を命じられた兵は、了解、と返事をする。
いつの間にその兵の背後に立っていたユウゴが兵に向けて銃を撃つ。
あと4人、とカウントするユウゴ。
ユウゴは気配を感じて振り向く。
遠くから自分に向けて迫っていたのはアンドリューだった。
アンドリューは逃げるユウゴに向けて銃を乱射するが当たらない。
今度はユウゴの後頭部に照準を定めて銃弾を放つが、ちょうど壁の下にある抜け穴に向けて低く飛び込んだ為、やはりユウゴに弾は当たらない。
その抜け穴の先、曲がり角の死角にはルーカスが待機している。
追いついてきたアンドリューたちに向けてルーカスが銃を撃つ。
闘いの最中、ユウゴとルーカスの脳裏に様々な記憶が去来していた。
ユウゴが恋していた相手、ダイナ。
ユウゴとルーカスの友情。
施設の真実に気づいたユウゴが一冊の本を仲間たちに向けて放る。
廊下の先に回り込まれるも、ユウゴは素早く銃弾を敵にヒットさせる。
(こちとら13年 鬼を相手に一人で生きてきたんだ)
ユウゴの脳裏に、これまで味わってきた数々の悪夢が思い出されていた。
(あれも これも それも どれも 全部反吐が出る)
怒りに燃えるユウゴ。
(俺達の人生はてめぇらの道具じゃねぇ)
(全てを失った)
思い出す、かつての仲間たちの笑顔。
(思いがけずもう一度手に入れた)
エマたちの笑顔。
ユウゴは様々な想いにとらわれながらも、残り3人、と脳裏で冷静にカウントする。
(そう何度も奪われてたまるか!)
ユウゴとルーカスは敵に向けて銃を構える。
(ここで必ずてめぇらを食い止める!)
二人を前にしたアンドリューは、一気に怒りが沸点に達する。
(食用児風情が…!!)
前回第107話の詳細はこちらをクリックしてくださいね。
第108話 行かせねぇ
激戦
ユウゴはルーカスを逃がすため、後方から迫るアンドリューたちに向けて発砲する。
ユウゴを置いて先を行くルーカスだったが、左足に痛みが走る。その逃げ足は鈍い。
アンドリューは二人を追い詰めながらも最後まで仕留めきれずにいた。
そしてまた、ルーカスやユウゴのここまでの巧みな立ち回りから、この二人が本当に農園で育ったのかという違和感を覚えていた。
もはや子供ではない二人から、アンドリューは全滅していたと思っていた15年前のGBの脱走者がまだ生き残っていた可能性に思い当たる。
そして、現在戦っている相手はこの二人しかいないと判断するのだった。
もはや奇襲は受けないと攻勢に回るアンドリュー。
部下のコリンズとバークレーに指示を出し、逃げるユウゴとルーカスを挟撃する。
ユウゴはルーカスを追い抜き、左手にライフルを、右手に拳銃をそれぞれ構えて乱射し、突破しようとする。
その間、ルーカスはユウゴの死角をカバーするように背中を守っていた。
ユウゴの銃弾は一人を仕留める。
隠し通路に身を潜めていたアンドリューは、二人に向けて手榴弾を投げる。
それにいち早く気づいたルーカスは銃を投げ捨ててユウゴに覆いかぶさる。
その瞬間破裂する手榴弾。地下通路が崩れ、瓦礫がルーカスの背中に降り注ぐ。
瓦礫の下敷きになったユウゴとルーカスの元に、生き残ったアンドリューの部下が近づいてく。
アンドリューから、距離をとって頭を撃て、と指示を受ける部下。
その瞬間、ユウゴは右腕を瓦礫から素早く出し、ライフルを発砲。部下の顔面にヒットさせる。
ユウゴはぐったりとしているルーカスの体を支え起こし、再びアンドリューたちからの逃走を始める。
二人は背中をアンドリューたちからの銃弾の雨に晒されていた。
ユウゴは反撃しようと拳銃の引き金を引く。しかし弾切れなので銃を投げ捨て、ルーカスと共にひたすら逃げるのだった。
ぐったりとうなだれ、足も動いていないルーカスにユウゴは懸命に呼びかける。
爆発の威力は見た目ほどではないと手負いのルーカスを励まし、アンドリューたちを倒すべく次の攻撃のアイデアを口にする。
「いや…僕はもうだめだ」
ルーカスは、内臓のどこかが潰れており、足も動かないと自分の負った傷の状態が芳しくないので自分を置いて行くようにとユウゴに告げる。
「これじゃお前まで格好の的 お前一人ならここから生きて−−」
「バカ言え」
13年前にそうやってルーカスを置いてきたことでその後自分がどれだけ後悔し、さらには自分を呪ったかと思ってる、とユウゴ。
「生きるにも死ぬにも俺達は最期まで一緒だ」
「もう二度と一人になんてしない」
残る敵はあと二人、とユウゴはルーカスを奮い立たせ、アンドリューたちに向けて拳銃で反撃する。
しかし、それ以上の数の弾丸がユウゴとルーカスを襲う。
背中無数の銃弾を受け、うめき声をあげるルーカス。
ユウゴはルーカスに、もう少しだ、頑張れ、と声をかける。
「あの部屋まで辿り着けば…!」
二人がその部屋、武器庫に辿り着くのと同時にアンドリューの放った銃弾がユウゴを捉える。
武器庫に這々の体で辿り着いた二人。ユウゴは何とか上体を起こし、ルーカスに生きてるかと問いかける。
「ルーカス…?」
しかしルーカスは床にうつ伏せに突っ伏したまま反応しない。
「立派な武器庫だな」
アンドリューが武器庫にやってくる。
ずらりと並ぶ銃器を見て、アンドリューがユウゴに向けて呟く。
「馬鹿な奴だ」
ルーカスを置いて一人で逃げれば武器庫の武器でまだ戦えたのに、ユウゴにはもはや銃を握る力も残されていない。それは愚かな判断ミスだと続ける。
ハッ、と笑うユウゴ。
「バカはてめぇらだ」
「エマたちは今に世界を変える それは俺達を殺しても変わらない」
「てめぇらがどれだけ食用児を見下そうと1000年の秩序は直に終わる… この腐った世界も…! ザマァ見ろだ!」
吠えろ、とアンドリュー。
「お前達は死ぬ 残りも殺す それで終わりだ」
(”殺す”?)
ユウゴの脳裏にエマたちの笑顔が浮かぶ。
(させるかよ)
「今だルーカス」
ぐったりとしていたルーカスが拳銃をアンドリューに向ける。
(行かせねぇ)
「お前達もここで死ぬんだ」
シュウウウウウウ、という音に気づくアンドリュー。
ガスボンベから可燃ガスが漏れている。
拳銃の引き金を引くルーカス。
ユウゴがニヤリと笑う。
(エマ レイ みんな…頑張れよ)
可燃ガスに着火し、シェルターが爆発。シェルターの入り口から粉塵が舞い上がる。
感想
ユウゴとルーカス退場
敵を残り二人まで追い詰めたのに、健闘虚しくユウゴとルーカスの生還叶わず……。
まだ確実に死んでしまったとは限らないが、これは多分ダメじゃないかな。
ジャンプ漫画といえば、死んだにもかかわらず実は生きていて、主人公の窮地を鮮やかに救う形で華々しく再登場するというのがセオリーとしてあったが、この漫画に関してはそれは望めなさそうな感じがする。
実は生きていた”支援者”が瀕死のユウゴとルーカスを救っており、エマたちのピンチを救うとか、そんな展開があったら嬉しいんだけど、この漫画ではどうなのかな。期待していたら辛いだけだわ。
惜しいキャラを亡くした。二人ともいい奴らだった……。
ラストの二人のやりとりはかっこよかったなぁ。
でも、あの爆発を食らっても、アンドリューは生きてそうな感じがするんだよなぁ。前回も書いたが、フィルとの接見という伏線がある。
……いや、アンドリューが死んでたらその場面はフィルの回想として出てくるから必ずしもアンドリューが生きている必要はないのか。
それならユウゴとルーカスが仕留めていて欲しい。
たとえアンドリューが生きていたとしても負傷は免れないだろうからその場合はエマたちの追跡を中止せざると得ないだろう。
それはユウゴとルーカスが最低限の仕事をしたということなんだけど、やはり彼らの命との引き換えにもかかわらず敵が生きているのは許せん……。
払った犠牲に見合う成果を求めてしまう。いや、そもそもユウゴとルーカスの死に見合うものなんてないよな……。
折角ここまでなんとか生き残ってきたんだけどなー。
心強い仲間としてエマたちをこれからもバックアップしていってくれると思ったのに。
彼らは1年半子供たちと一緒に生きてきたとは言え、読者からしたらその時間は飛んでるも同然。
退場が早いと感じて当然だと思う。
ひょっとしたら、その1年半の間にあったユウゴやルーカスのエピソードは小説なんかで発表されるのかもしれない。
どうしようかな……。最近めっきり小説が苦手になってきたけど、出たら読もうかな……。
エマたちの今後の行動
今後はGF農園脱出の頃と同じ、子供だけで道を切り拓いていくことになる。
シェルターから脱出した子供たちは、まずは当座の生活を考えなくてはいけないのではないだろうか。
目的地を見つけたとはいえ、そこに60人で向かう訳ではなかったはず。
今エマたちが向かっているのは、ソンジュやムジカと一緒に暮らした地下道かな?
出来ればソンジュやムジカに会って、彼らの助けを求めたいところだろう。
それとも目的地に向かうのかな……。その途中で仮の住まいを確保していく感じ?
60人の大所帯で安心して暮らせる場所なんてまず見つからないと思うけど……。
エマたちの今後は果たしてどうなるのか。
以上、約束のネバーランド第108話のネタバレを含む感想と考察でした。
第109話に続きます。
コメントを残す